魔法少女リリカルなのはHERO Tの名を持つ少女   作:陽炎=蜻蛉

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PVに期待して買った記念作品が余りの酷さだった時の絶望、昔ASBを買った人たちも同じ想いをしたのかと思うと余計に腹が立ちます。アプデ前提のバグ祭りなら価格を下げて欲しいと思います。


第2話「目覚めた力」

カスミ・テスタロッサは早起きである。同棲する4人の中ではいつも2番目に起きる。1番目は大体なのは、この日は朝食作りの途中だった。卵焼きのいい匂いにつられながら挨拶する。

 

「ふぁぁ…おはよう、なのはママ。」

 

「にゃはは、早いね。おはようカスミ。フェイトちゃんは?」

 

「まだ寝てるよ〜。ヴィヴィオも一緒だけどどうする?」

 

「フェイトちゃんは起こしてあげて。今日は大事な日だからね。」

 

「はーい。ふぁ……いかは一杯だ…」

 

若干カスミも寝ぼけているが、彼女の後に起きていたヴィヴィオに挨拶しつつ、ベッドルームへ向かう。

 

「まだ寝てる…」

 

フェイトは明らかに変な姿勢で寝ている。仕事の疲れがあるのは分かるが、寝過ぎというのも体には良くない。

 

「ん…なのはぁ…」

 

どうやら、夢の中でもなのはとイチャイチャやっているらしい。数日のうちに、フェイトとなのはの仲については概ね理解できたので、今更驚きはない。

 

「全くもう…親の威厳台無しになっちゃうのが分からないのかな…」

 

溜め息をつきつつも、静かにベッドの上に乗ると、顔をフェイトの耳元へと寄せ、そっと囁いた。

 

「フェイトママのねぼすけ…」

 

 

カスミの あまいささやき!

 

こうかはばつぐんだ!

 

フェイトはめをさました!

 

 

『はうっっ‼︎』

 

結果、バッと飛び起きるように体を起こそうとしたフェイトは、思い切りカスミと額をバッティングするのであった。

 

「どうしてこんなに小さな声で起きられるの…?」

 

「ど、どうして…かな…?」

 

今日もカスミの1日が始まる。

 

 

 

 

 

 

フェイトがカスミを家に連れ帰ってから1週間が経った。カスミ自身は色々と不安こそあれど、周囲が温かく迎えてくれたのが大きかったか、今やすっかり馴染んでいる。それと共に周囲の呼び方も自然に変化していった。

 

「カスミ〜、タオル取って〜」

 

「はーい、ちょっと待ってね…あ、ザフィーラ、ありがとう。」

 

先にこの部屋に住んでいた少女、ヴィヴィオともあっという間に仲良くなり、機動六課の寮母であるアイナのお手伝いをしつつ、一緒に遊ぶことが当たり前になっていた。

 

 

「さあ2人とも、今日はママたちを迎えにいくから、しっかり可愛くしていかないとね。」

 

『はーいっ!』

 

おめかしという事で、ヴィヴィオは青いリボン、カスミは赤いリボンを付けてもらった。2人のロングヘアーを纏めるリボンがヒラヒラと可愛く揺れる。

 

さて、今日は近くの陸戦試技場にて、先に出かけたなのはたち主導の訓練の見学する予定になっている。なのはお手製のミックスジュースを携えつつ、姉妹はザフィーラを連れて試技場に到着した。丁度訓練も終わったところらしく一息ついているようだ。すると、あっという間にヴィヴィオが駆け出す。

 

「あ、ママ〜!」 

 

「危ないよ〜!」

 

「転ばないでね〜!」

 

「うん…ふにゃっ⁉︎」パシッ!

 

挨拶をしていたカスミが声のした方を見ると、ヴィヴィオが転んでいた。地面に足を取られてしまったらしい。

 

「ヴィヴィオ!」

 

急いで妹のところに駆け寄ると、「立てそう?」と目線を合わせる。

 

「ふぇ…痛い…」

 

どうやら1人では無理そうと判断すると、カスミはヴィヴィオの前に手を差し出した。

 

「カスミ…?」

 

「ヴィヴィオ、助けが必要な時はこうやって手を伸ばして。1人で出来ないことも、2人ならきっと出来る、ね?」

 

「…(コクッ)」

 

ヴィヴィオは頷きつつ、ゆっくりと右手を伸ばした。その差し出された小さな手を掴むと、そっとヴィヴィオを立たせる。

「カスミ、ありがと…」

 

「はは、ヴィヴィオが泣いてるとこなんて、黙って見てられないからね。」

 

すると、2人は突然の浮遊感を得た。

 

「そうそう、ヴィヴィオもカスミも怪我なんてしたら、なのはママもフェイトママも、きっと泣いちゃうよ?」

 

「ヴィヴィオ、ちゃんと手を伸ばせて偉いね。でも、今度は自分の力で立てるように頑張ろうね?」

 

「うん!ヴィヴィオ、頑張る!」

 

というわけで、二人とも抱っこされたはいいものの…

 

「あの〜フェイトママ、この体勢をスバルさんたちの前でされるのは恥ずかしいのですが…」

 

「だーめ。我儘は聞きません。」

 

「ですよね…あはは…」

 

小さかった頃のエリオやキャロを育てていた時も、こんな感じだったのだろうか。カスミは顔を赤く染めながらも身を任せるのだった。

 

〜機動六課 食堂室〜

 

昼食は、カスミとヴィヴィオの姉妹、なのはにフェイトの母親2人の4人グループで食べることになった。

 

それをテーブルまで持って行く途中、スバルたちとの会話に花を咲かせていた。

 

「ヴィヴィオ、その髪飾り可愛いね!」

 

「アイナさんが付けてくれたの〜」

 

「とっても良い感じだよ!」

 

「えへへ〜」

 

その後、ヴィヴィオがピーマンを残すのをなのはが窘めようとして、カスミがそれを食べてあげたことをなのはに叱られたりしつつ、時間は流れていった。

「はひ〜、結構食べちゃったかな。」

 

「もう…スバル、何回それ繰り返してんのよ。ま、エリオも同じだけどね。」

 

「あはは…すみません…」

 

スバルたちは同世代の面子で談笑中である。もちろんスバルの姉、ギンガも一緒だ。すると、とことことカスミがやって来た。

 

「あの…ギンガさん。」

 

「あら、どうしたのカスミ?」

 

「ちょっと質問したいことがあるんですけど、良いですか?」

 

「ええ、勿論よ。教えてくれる?」

 

カスミが抱えていたひとつの悩み。

 

「私、この先ヴィヴィオにどんな風に接していけばいいのかなって。仲良くしてくれるのは嬉しいんですけど…」

 

「どんな風に…ああ、お姉さんとしてってことね。」

 

「ギンガさんはスバルさんとも歳が近そうですし、何かアドバイスを頂ければと思いまして…」

 

ギンガは少し腕を組んで考えると、カスミを座らせてから話し始める。

 

「正直、私はスバルの姉として、というよりは母親代わりみたいに思ってるの。小さい時に母さんは天国に行っちゃったからね。」

 

「あっ…ご、ゴメンなさい!私、そんなつもりじゃ…」

 

慌てて謝ろうとするカスミの口を、そっと人差し指で塞ぐ。

 

「もう…何かあるとす〜ぐ謝っちゃうところ、エリオやキャロにそっくりね。」

 

「はは…みたいですね。」

 

「それでね、あくまで私の考えなんだけど、無理に考えなくても、困っていたら助け合うくらいで当分は良いんじゃないかな。」 

 

変に兄弟姉妹を意識せずともいい、ギンガの考えは一つの道を示してくれた。

 

「そうそう!ギン姉に頼り切りにならないようにアタシたちも訓練してるんだから。」

 

「…って言うけど、前にアンタの仕事が残った時、アタシに泣きついてなかったっけ?同じチームの誼で助けて〜!なんて。」

 

「ちょっ、ティア!今は余計なこと言わないでよ〜!」

 

「アンタが仕事終わらせないのがいけないんでしょ!」

 

いつもの痴話喧嘩を聞き流しつつ、カスミはギンガと話を続ける。

 

「でも…大丈夫でしょうか。もし、ヴィヴィオに何か危険なことがあったらって思ったら…怖いんです。」

 

既にエリオやキャロから、フェイトが追っているとある人物についてのことは聞いている。事件発生時にヴィヴィオが狙われるのではないかという不安もある。

 

「大丈夫だよ。なのはさんたちと一緒に、みんなを守ってみせるから。ヴィヴィオのことも、カスミのことも。」

 

「はい!それを聞いて安心しました。でも無茶はしないで下さいね。」

 

「うん、お約束ね。」

 

さて、この日の午後はヴィヴィオを発見した日の分の振替休暇ということで、スバルとギンガの二人に連れられてショッピングに向かう。

 

「フェイトさんがビックリするくらい、もっと可愛くなろうね、カスミ!」

 

「はい、よろしくお願いします。」

 

本当はフェイトとなのは、更にヴィヴィオにも一緒に来てほしかったが、主力組はあくまで勤務時間帯、ヴィヴィオは一杯食べた後でお昼寝してしまったので一旦別れる形となった。そんなわけでデパートにてお買い物と洒落込んだはいいのだが。

 

「こらスバル、ちょっとお金使いすぎよ。」

 

「えへへ…カスミのコーディネートしようと思って気合い入れちゃった…」

 

「何だか色々とゴメンなさい…でも青のワンピース、素敵です!」

 

可愛くしてくれたのは嬉しかったが、コーディネートで散財したために、ギンガに叱られるスバル、それと一緒に謝るカスミ。ともあれ、ギンガも本気で怒っていた訳ではなく、カスミのためならと言うことでお許しを出して、六課に帰ろうとした時だった。

 

 

凄まじい爆発音と揺れがデパートを襲った。

 

 

「なっ…⁉︎」

 

「カスミ、絶対離れちゃダメだよ!」 

 

「は、はいっ!」

 

ギュッと2人の手を握るカスミ。恐怖を必死に押し殺しつつ、建物から避難しようとした。しかし、運の悪いことにデパートは大パニックに陥ったことで、3人は息つく間もなく、巨大な人混みの波に巻き込まれてしまれ、握っていた手を思わず離してしまった。

 

「スバルさん!ギンガさん!」

 

2人を呼ぶカスミの悲鳴は、圧倒的な人波によってかき消された。

 

同じ頃、フェイトはカスミのデータを改めて調べていた。自力で増やした資料を元に身元を照会しても、該当するデータはなし、加えてあの時見せた、不思議な力を持っているにも関わらず、やはり魔力値は全く検出されていない。保護責任者としてカスミと一緒に暮らすことに何ら迷いは無いが、彼女に関することを知っておきたいと思ったのも事実。

 

(でも、一つだけ分かったことがある。)

 

カスミが着ていた服のポケットには、一枚のカードが入っていた。なのはやはやてに見せたところ、2人の故郷である地球で人気だったゲームのもの、即ち彼女はミッドの人間ではなく、この地から遠く離れた、管理外世界の地球から誰も知らない内に移動したことになる。

 

(私たち管理局が探知できないほどの時空間移動…一体何が起きているんだろう。)

 

だが、それを考えている間も無く、緊急通報が飛び込んできた。市内のデパートでの爆発事件とガジェットの大量出現が連続したのだ。

 

「ガジェット出現エリアの方が近い…私となのははそっちに出動します!」

 

何度目かも数え忘れた緊急出動にも動じる事なく、最速でフェイトは飛びたっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ…はあっ…ホントに…ヤバいかも…」

 

何とか人混みを掻き分けた時には、既に2人を見失ってしまっていた。押し寄せる恐怖に潰されそうな中で、近くのトイレに駆け込むと必死に呼吸を落ち着かせるが、揺れは続いているし、既に爆発から発生した炎も迫ってきているのは本能で察知できる。とにかく、早く避難しなければならない。だが、頼れる人たちは今居ないのに一体どうすれば。

 

「このまま…誰にも知られないまま死んじゃうのかな…助けて…誰か…」

 

心が折れかけたその時、カスミの耳は小さな泣き声を確かに捉えた。

 

「…上?」

 

すると、カスミの体を白い光が包んだ。眩しさを感じて目を閉じ、数秒後に開けた時、カスミの腹には正体不明のベルトが巻き付き、右手には赤色のキーが握られていた。

 

「何…これ…?」

 

頭は自分の身に何が起きたのか考えようとした。だが、右手は既にキーをベルトに翳していた。

 

【ファイヤー!オーソライズ!】

 

叫びながら駆け出していた。

 

 

 

「ウオオオオーーーーーッッッ‼︎」

 

【プログライズ!

 

Gigant flare!フレイミングタイガー!

"Explosive power of 100 bombs."】

 

カスミの体は急激な成長と原理不明な赤色のアーマーを纏うという変化を遂げていた。だが、何故自分にこんな力が存在しているのかなんて考えている暇は無かった。考えるよりも先に、カスミは必死に残された人たちを捜索する。

 

(明確に異なる熱反応…あった!)

 

同じ階にいることを確認したのとほぼ同時に、小さな泣き声が聴こえた方向に大急ぎで向かう。すると、カスミと同い年くらいの少女と母親らしき女性が取り残されていた。

 

「今助けます!」

 

周りの瓦礫の除去と救助者の応急手当てを並行していく。その姿は正にレスキュー隊員のようだ。女性は気絶していたが、カスミの迅速な処置で意識を取り戻した。

 

「ママ!」

 

「ユリ…ここは…」

 

「急いで脱出します。しっかり掴まって!」

 

「は、はいっ!」

 

少女と母親をお姫様抱っこの体制にすると、確保した避難経路を通って、空いていた窓から一気に飛び降りる。

 

「刺され‼︎」

 

即座に鉤爪のようなものをビルの外壁に向けて突き刺すと、一定のスピードまで減速する。結果、カスミは2人を抱えたまま、無事に着地することができた。

 

「ふぅ…これでオッケー。」

 

「ありがとうございます…!本当にありがとうございます…!」

 

何度も頭を下げる母親に無事で良かったと返しつつ、カスミは少女の方に視線を合わせた。

 

「よく頑張ったね、偉いよ。」

 

「うん!ありがとう、お姉ちゃん!」

 

ホッと胸を撫で下ろすカスミだが、咄嗟の人命救助は心身共に負担が余りにも大きすぎた。安心したと同時にカスミの体は元に戻り、意識も消えていく。

 

「お姉ちゃん⁉︎」

 

「だ、大丈夫ですか⁉︎」

 

(私は…一体…なに…の…)

 

そして、その思考回路が結論に導かれる前に、ズルズルと座り込むような形でカスミの意識は手放されるのだった。

 

『カスミ‼︎』

 

数分後、駆けつけたスバルとギンガにカスミは引き渡され、すぐに病院へと搬送された。

 

「特に体の異常は見当たりませんでした。今日中に退院できると思います。」

 

「ありがとうございます。助かりました。」

 

「しかし不思議ですね…あの災害現場にいたなら、もっと危険な目に遭っていてもおかしくはなかったんですが…」

 

そう言いつつ、医者は部屋を後にした。今回の爆発事件による死者は幸いにも0人。カスミが頑張っていなかったら、尊い命が失われていたことは言うまでもない。

 

「ん…スバル…さん?ギンガさんも…」

 

「良かった…カスミ、大丈夫?」

 

「はい…色々とすみません。ワンピースも買ってもらったのに…」

 

「そんな事言わないの。謝らなきゃいけないのは私たちの方。本当にゴメンね。必死で探したんだけど見つけられなくて…」

 

「カスミが凄く頑張ってたところ、沢山サポートしたかったんだけど…」

 

「へ?な、何のこと…」

 

とぼけようとするカスミだが、ギンガはそっと人差し指をカスミの口に当てた。

 

「さっきね、カスミが助けたお母さんと女の子が一緒にお礼を言いに来てくれたの。お姉ちゃんが助けてくれたって。」

 

無事を改めて確認し、ホッとするカスミだが思い出したように2人にお願いをした。

 

「あの…出来ればこの事はママ達には内緒に…」

 

「アハハッ!良いよ、今はこの事は3人だけの秘密ね?でも、もう無茶はしないこと!私たちとのお約束だよ?」

 

「じゃあ、ちゃんと約束出来るように指切りしようか。」 

 

子供らしい一面を見せるカスミに噴き出しつつ、スバルもギンガも笑って指切りをする事で了承してくれた。

 

そして数時間後に退院したカスミは、ガジェットの撃破を終えて迎えに来たフェイトたちと一緒に帰宅するのだった。表向きは事件に巻き込まれて搬送されたという事で、泣きじゃくるフェイトを宥めるのには大変苦労したそうな。

 

 

 

それから数日後、はやては騎士カリムから、地上本部壊滅の日が公開意見陳述会当日である可能性が高いという連絡を受け取った。なのはたちもその日は警備に出なくてはならないのだが、その間の六課本部は手薄になってしまう。

 

「なら、私が残ります。ヴァイス陸曹もいますし、何かあったら連絡できるようにしておきますから。」

 

そこで、ギンガが主力として残ることを自ら提案。3人からは心配されたが、最終的にその方針でいくこととなった。 その日の夜、カスミはフェイトの母…リンディと映像電話で話していた。

 

【じゃあ、近いうちに手続きは取るってことでいいのね?】

 

「うん。なるべく早めが良いかなって。」

 

「そうしたら、私のフルネームは、カスミ・テスタロッサ・ハラオウンになるんだね。名前書く時が少し大変かも。」 

 

3人で笑いつつ、リンディから一つ嬉しい報告がされる。

 

【ひと段落したら、私も休暇を取って遊びに行くわね。ヴィヴィオにも会っておきたいし。】

 

「その時はリンディ茶も飲んでみたいな。フェイトママから聞いたの、とっても美味しいんでしょう?」

 

【もちろん!作り方も教えてあげるから、楽しみにしててね♪】

 

通話を終えると、フェイトは一つの写真立てを持ってきた。

 

「ねえ、カスミ。この人たちが誰か分かるかな?」

 

「フェイトママにそっくりだね、この人…?隣の人は…この人のママ?」

 

「そう、アリシアお姉ちゃんと、プレシア母さん、この2人も私の大切な家族なんだ。今はもう居ないんだけどね。」

 

「リンディさんにプレシアさん…ママが2人か…今の私たちと同じだね。凄く穏やかそうな顔してる。」

 

「あはは、そうだね。でもいつの日か…この2人に逢えたらなって思うの。」

 

希望を口にしつつも、その表情はどこか寂しげに見えた。カスミは、何も言えなかった。何となく…この話題に深く踏み込んではいけない気がしたから。

 

「さ、お話はおしまいにして、もう寝なくちゃね。おいで?」

 

「うん…」

 

いつもより、大人しめにベッドインするカスミ、行き先はいつも通りフェイトの胸の中。

 

「フェイトママ…約束して。」

 

「え?な、何かな?」

 

「ギンガさんにも言ったことだけど…もし、ヴィヴィオに何かあったら…全力で助けてほしいの。凄く嫌な予感がして…怖い。」

 

その声は震えている。ハッとしたフェイトがカスミの顔を見ると…その瞳から一雫の泪が流れている。かつて、戦いの果てに大切な家族を失った彼女には、その恐怖が痛いほど感じられた。

 

「大丈夫だよ…! 何があっても、私たちがいるから。それに、カスミのことだって、全力で守るんだから…ね?」

 

強く、強く、カスミを抱きしめる。大切な存在を絶対に守るという誓いを胸に抱きながら。

 

迎えた当日、カスミはギンガの部屋に、ヴィヴィオはいつもの部屋に預けられることになった。万が一のことがあった時、ヴィヴィオとカスミの両方に危険が及ばないようにするためだ。

 

その直前、カスミはギンガと一緒にヘリポートへ向かった。ヴィヴィオもアイナさんに連れられて来ている。

 

「ヴィヴィオ…カスミ…」

 

フェイトは驚いた表情。なのはは何となく来ることを察していたかのような表情をしていた。

 

「ゴメンね、2人がどうしても見送りたいからって。」

 

「もう…ダメだよ、2人とも。ワガママ言っちゃうのは。」

 

『ゴメンなさい…』

 

大事な仕事があるときに手間を取らせるのが迷惑なのは、カスミもヴィヴィオも分かってはいる。でも、どうしてもギリギリまで会っておきたかったのだ。

 

「なのはママ…フェイトママ。」

 

「…無事に帰ってきてね。」

 

「あはは、大丈夫だよ。ママたちは警備するだけだよ。何かあったらすぐに戻ってくるから。明日帰って来たら、2人の好きなキャラメルミルク、いっぱい作ってあげるからね。」

 

「帰ってくるまでちゃんとお留守番すること、お約束できるよね? 戻ったら皆んなでご飯食べようね。」

 

『…うんっ!』

 

ほぼ同時に頷くと、なのははヴィヴィオの、フェイトはカスミの頭を撫でてくれた。

 

「よし…それじゃ、行ってくるね。」

 

「行ってきます、2人とも。」

 

『行ってらっしゃい!』

 

やがて、皆を乗せたヘリは空高く飛んで行った。数時間程度で戻ってきてくれる…この時のカスミはそう信じていたし、何があってもママたちがいるから大丈夫だと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのわずか2時間後に起きた惨劇を目の当たりにするまでは。

 

 




今回カスミが纏ったのは、フレミングタイガーの形をしたバリアジャケットです。仮面はなく、全ての機能を使えるわけでもありませんが、人命救助には十分な力を発揮することが出来ます。カスミにとって、目の前の命を助けられないことは自分も助けられないことと同義なのです。

次回、JS事件発生と共に迫るそれぞれの命の危機、倒れるギンガ、スバルの涙、そしてカスミの覚醒。それではまたお会いしましょう。
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