魔法少女リリカルなのはHERO Tの名を持つ少女   作:陽炎=蜻蛉

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寝落ち→勤務前となった時の絶望、3年行ってない健康診断、そろそろ自室で朽ち果てるかもしれないと思うこの頃。


第4話「鉄槌」

 

 

マゼンタの外装で上空へと飛び上がったカスミは、高速でゆりかごへと突入する。

 

(待ってて、ヴィヴィオ。必ず…お姉ちゃんが助けるから‼︎)

 

すぐさま、内部への侵入者を迎撃すべく、大量のガジェットが襲来してきたが、決して慌てない。

 

【チャージライズ! フルチャージ!】

 

「退けェェェェェェッッッッ‼︎」

 

斬撃の波があっという間にガジェットを破壊し尽くす。だが、敵が来るたびに戦っていてはキリがない。

 

(考えろ…ヴィヴィオが拘束されるとしたら玉座…王様がお城に住む時いつもいるのは…)

 

「…一番上!」

 

強引な読みではあるが、いつまで変身が保てるか分からない以上、消耗はなるべく避けなければならない。ならばと、カスミは新しいキーを生成した。

 

【ジャンプ!オーソライズ!】

 

「変身‼︎」

 

【プログライズ!

 

飛び上がライズ!ライジングホッパー!

"A jump to the sky turns to a rider kick."】

 

今度は黄色を主体とした姿に変化すると、カスミは頭上を見渡す。

 

各所の破壊の爪痕によって、ゆりかご内には穴が無数の穴ができていた。これを辿れば行けるかもしれない。

 

「飛べ‼︎」

 

気合いと共に凄まじき大跳躍を披露したカスミは、穴付近を足場にすることでロスなく最上階まで到達する。

 

「えっ⁉︎」

 

そこにいたのは、やはりなのはだった。激戦の跡なのか、傷だらけの状態なのが見て取れる。そして、向かいから歩いてくる鎧を纏った少女は。

 

「あれが…ヴィヴィオ、だね?」

 

(これはこれはお姉様、ようこそこのゆりかごの玉座へ。)

 

モニター越しの声が聞こえた瞬間、カスミは怒りの視線を向ける。ヴィヴィオが奴らの手で何かされたことは状況から見れば理解できる。

 

「あなたは…誰?」

 

(陛下、その者は貴方のお母様を攫った共犯者ですわ。)

 

「そう…なら…あなたも敵…敵は…倒す‼︎」

 

既に洗脳されているのか、ヴィヴィオはモニター越しの声の言う通りに動いていた。

 

「カスミ!逃げて!」

 

避ける暇もなく、ヴィヴィオの魔力拳が炸裂し、砂煙が上がる。

 

(アハハハッ!目の前で娘が殺される気分はどうかしら、なのはさん? しかも殺すのはもう1人のーーーーッッ⁉︎)

 

クアットロの嘲笑が消えた。ヴィヴィオの右拳が動かないのだ。

 

「な…に…⁉︎」

 

「…なのはママのように、私が防御しかできないとでも思った?」

 

『Warning,warning. This is not a test!

ハイブリッドライズ!シャイニングアサルトホッパー!

 

"No chance of surviving this shot."』

 

ヴィヴィオの拳を受け止めたカスミの姿は、青と黄色を主体としたものに変化していた。

 

(バカな…あの一瞬でどうやって…⁉︎)

 

「ハアッッ‼︎」

 

返す刀で放たれたキックがヴィヴィオの肉体を弾き飛ばした。

 

「クアットロ…だっけ?安全な場所に隠れてコソコソ動くしかできない腰抜けさんに一つ教えてあげる。」

 

『オーソライズバスター!ガンライズ‼︎』

 

「想像は全てを超えていくってことをね!」

 

『ゼロワンダスト‼︎』

 

間髪入れず、銃型の武装兵器から放たれた黄色いバッタ型のエネルギー弾がヴィヴィオを捉える。

 

「ぐっ…!うわあぁぁぁぁっ‼︎」  

 

そのエネルギー弾は凄まじい速度でヴィヴィオを壁際に叩きつけ、小規模な爆発を起こした。

 

「これが…カスミの力…」

 

すると、カスミがなのはの方を向いて告げる。

 

「なのはママ、守ってるだけじゃあの子は助けられない。今あの子が、敵として私たちを認識している以上、ある程度は戦うしかないよ。」

 

余りにも冷静な見立て。あの時見た姿とは別の意味での怖さを感じるなのはだが、今は目の前のことに集中だと切り替え、戦いの中で覚えた情報を共有すべく口を開く。

 

「カスミ…今のヴィヴィオは一度受けた技をすぐに覚えて無効化できるの。それでも何とかできる?」

 

「そりゃ厄介。でも一度戦場に来たなら…」

 

次の瞬間、ピンク色のバッタ型エネルギー弾が2人に襲いかかる。

 

『シールド発動します』

 

「シャインシステム起動!」

 

それぞれの力で展開した防御壁により直撃を免れるが、明らかに威力が同値以上になっている。厳しい戦いになることは予測できた。だが、カスミはもうブレない。

 

「限界まで戦いづけてこそ、でしょ?」

 

「いくよカスミ…絶対に死なないで。」

 

「ハハっ!なのはママこそ!」

 

「オオオオオオオオオッッッ‼︎」

 

凄まじい速度で襲ってきたヴィヴィオを2人で迎え撃つ。壮絶な戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

「フェイトちゃん!聞こえるか!」

 

「はやて!どうしたの?」

 

「カスミが…カスミが、最上階でなのはちゃんと一緒に、ヴィヴィオと戦ってるんや!」

 

「えっ…⁉︎」

 

「成程…またあの少女か…聖王を助けようというのだろうがそうはいかんぞ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ハアッ…! ハアッ…!』

 

玉座での第2ラウンドは、余りに一方的な展開となっていた。最初こそ、カスミの初見殺しと呼べる攻撃の数々で押すことができたが、喰らうたびに学習してすぐに自分のものとしてくるヴィヴィオの成長速度に、カスミの力さえも追いつかれてしまう。

 

「まだまだァッ!」

 

『アサルトチャージ!』

 

「必殺の蹴り…それも覚えてる!」

 

『シャイニングストームインパクト!』 

 

「オラアァァァァァァァァァァァァァァ‼︎」

 

「ハァァァァァァァァァァッッ‼︎」

 

2人のキックがぶつかり合うが、すぐにヴィヴィオが押し勝ち、カスミを地面に叩きつける。

 

「ぐあっ…!」

 

「カスミ!」

 

(やはり陛下は無敵!想像なんて無意味よ!早く陛下に命を捧げなさい!)

 

その時、クアットロは聞いた。凄まじき雄叫びと共に鳴り響いた巨大な振動を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はや…て…」

 

「鉄槌の騎士ヴィータと、グラーフアイゼンがこんなになるまで頑張って、それでも壊せへん物なんて…この世のどこにも、ある訳ないやんか…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは…一体…?」

 

「クアットロがゆりかごの放棄を選択した…間も無くここは崩壊する…!私は最早用済みだ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「防御機構回復、予備エネルギー投入、自動修復開始、ふふ…まだまだ…」

 

事態に対応する中でクアットロは気づいた。自身の周りを飛ぶ光球を。その正体は。

 

『WAS 成功。座標特定、距離算出。』

 

「…見つけた。カスミ、今だよ!」

 

「OK!なのはママ!」

 

「レイジングハート!」

 

『指定ポイントへの移動を開始します』

 

「シャインシステム、再起動‼︎」

 

時間にして3秒にも満たなかった。カスミの体が二人に分裂したとほぼ同時、片方の姿がピンク色の光と共に消えたのだ。

 

(なっ…⁉︎ 一体何を…⁉︎)   

 

「やっと見つけたよ…クズ野郎。」

 

戸惑うクアットロの背後に響く怒りの戦士の声。そこにいたのは、紛れもなくカスミだった。

 

「なんで…⁉︎ どうやってこの場所を…⁉︎ 何故ここにいるの⁉︎」

 

モニターには、引き続きヴィヴィオと戦闘中のカスミの姿があるにも関わらず、全く同じ姿をし、しかも自立しているカスミが立っていた。

 

実は、カスミが纏っている姿には、1度の変身で一回だけ、本物の自立型の分身形態を発現させる能力が存在する。

 

「ヴィヴィオと戦いながら、なのはママはお前の場所を探し続けていた。そしてさっき、レイジングハートが見つけたポイントまで、転送魔法で移動させてもらった。」

 

「ふ…フフ…けど無駄よ! あなたの攻撃への防御策は既に組み込んだ!何をしようと、私を貫くことなんてできない!」

 

「なら…試してみろ。」

 

『ゼロワンダスト!』

 

「消し飛べッッ‼︎」

 

加減など一切なしの必殺砲撃が襲いかかるが、クアットロは即座にシールドを展開して直撃を回避する。

 

「何度やっても無駄よ!このまま持久戦になれば、あなたのその姿も解ける!何をしたって、あなた達に勝ち目はないのよ!」

 

「勝ち目…?私はあくまで下準備をしただけよ。メインディッシュ前のお膳立てとしてね!」

 

「は…何を言って………まさか…っ⁉︎」 

 

ゆりかご最上階、管理局の白い魔王と呼ばれた戦士の準備は完了していた。

 

「ブラスター3!」

 

(壁抜き…まさか…そんなっ…⁉︎)

 

クアットロの脳裏によぎったのは、自らが起こした事件で放たれた、貫通機能付きの魔力砲撃。最深部であろうと関係ない、放たれたら最後、待ち受ける結末は一つのみ。

 

「ディバイン・バスターーーーーーーーーーーッッッ‼︎‼︎」

 

爆音を上げながら砲撃が迫る中で、絶望するクアットロの耳元にカスミは囁いた。愛する妹を弄んだことへのありったけの侮蔑を込めて。

 

「さよなら…クズ野郎。」

 

カスミの分身が消えた直後、無駄な足掻きとばかりに悲鳴を上げながら逃げようとするクアットロを、最深部まで貫通して来たディバインバスターは容赦なく飲み込んでいった。 

 

「よし、やった!」

 

「隙だらけだよ!」

 

一瞬の油断が命取り、カスミがクアットロ撃破に気を緩めた瞬間、ヴィヴィオの魔力拳をまともに喰らってしまった。

 

「ハァッ…!ハァッ…!」

 

ブラスター3の反動で動けないなのはの近くまで吹っ飛ばされるカスミ。姿も黄色と黒の形態に戻ってしまった。それでも、その表情は笑っていた。

 

「痛つつ…やったね…なのはママ。」

 

「まだだよ、まだ終わってない!ヴィヴィオ !」

 

ヴィヴィオは頭痛を手で抑えながらも、その呼び声で大好きな母を思い出した。

 

「なのは、ママ…?」

 

「ヴィヴィオ!」

 

大急ぎで駆け寄ろうとしたなのは、しかし。

 

「ダメ!逃げてーーー!」

 

ヴィヴィオの意思とは無関係に放たれた拳がなのはを襲った。咄嗟に防御したが、衝撃だけで数メートル交代するほどの威力。

 

「そんな…!何で…⁉︎」

 

ゆりかご内部に響く機械音声は、ゆりかごが機能を喪失し、自動防御プログラムが作動したことを示していた。

 

「ヴィヴィオ…もうダメなの…帰れないの…!」

 

「それで…諦めてたまるかァァァァ‼︎」

 

『ライジングインパクト!』

 

絶対に諦めるわけにはいかない。レリックを抽出して破壊すべく、カスミは必殺の一撃を繰り出すが。

 

「カスミやめて!私の意思じゃもう止められない!」

 

「くっ…!うわぁぁぁぁぁっっ‼︎」

 

鎧で防御され、返す刀で魔力砲撃が直撃してまた地面に叩きつけられる。そして遂に。

 

「カスミ、変身が…!」

 

「しまった…!」

 

限界を迎えたのか、外装は光のように消えてしまった。最早絶体絶命。それでも必死に思考をフル回転させる。

 

(体内のレリックを破壊すれば、きっとヴィヴィオを助けられる。なのはママは既に危ない、だったら…もう…命張るしか、ないじゃない!)

 

導き出した結論を元に、カスミは再度立ち上がる。立っていられるのも不思議なくらいのダメージの蓄積。身体中が傷だらけ、とうに無敵のヒーローとしての姿はない。だが。

 

 

「私は…カッコいいヒーローにはなれないんだね…でも…!それでも…!」

 

ベルトは消えていない。カスミの意志は、まだ折れてはいない!

 

「今までの力じゃ破壊出来ないんだったら…もっと強い力をぶつけるしかない!」

 

命を顧みない覚悟は、彼女の右手に新しいキーを生成した。まるで地獄を表すかのような赤と黒2色のキー。

 

『ヘルライズ…!』

 

「カスミ、何するつもり⁉︎」

 

「ごめんなのはママ…私…もうこれしか思いつかなかった…!フェイトママにも、大嫌いなんて言ってごめんって伝えといて…!」

 

カスミの頬を伝う涙、大好きな母たちへのありったけの謝罪の気持ちと共に、カスミはキーを翳した。

 

『オーソライズ!』

 

瞬間、カスミの全身に激痛が走る。灼熱地獄に捉えられたかのような地獄の痛みが襲いかかったのだ。

 

「ぐっ…ガァァァァァァァァァッッ‼︎」

 

「カスミ!何をするつもり⁉︎」 

 

ヴィヴィオは目の前の光景に戦慄していた。見るからに激痛に苦しんでいるのに、カスミの目はまっすぐ、こちらを捉えているのだから。

 

「変身ッッッッ‼︎‼︎」

 

 

 

 

『プログライズ!

 

Hells energy as destroy the world

HELL RISINGHOPPER…

 

"HEAVEN or HELL it doesn't matter."』

 

 

 

 

「ウオオォォォォォォォァァァァアアアアアアッッ‼︎‼︎」

 

その場にいたもの全員が凍りつくほどの雄叫びと共に現れたのは、禍々しいほどの赤と黒の外装に染め上げられたカスミの姿。しかし見開かれた目はまるで見えていないかのような白色になっていた。不思議なことにカスミ自身の思考は激痛に苛まれながらも冷静さを欠いていない。

 

(この一撃に賭ける‼︎)

 

カスミの本能は、この姿では僅かな時間しか保たないことを感知していた。選ぶ手段はただ一つ。強引にヴィヴィオに向かっていく。対しヴィヴィオは…恐怖に縛られ動けなかった。

 

「来ないで…来ないで…!来ないでーーーーーッッッ‼︎」

 

『ヘルライズチャージ···!』

 

「壊す…こわす…こわす…ブッコワァァァァァァスゥゥヴゥァアアァアアアッッッ‼︎‼︎」

 

『ヘルライジングインパクト!』

 

全てのエネルギーを注ぎごんだ右ストレートがヴィヴィオを直撃し、レリックを強制抽出すると一気に破壊を始める。

 

「うぅ…アァァァァァァァァァァァァァァッッ‼︎」

 

「ゴオォォオオオオワァァァレェェェェェェェェェェロオオオオオォォォッッッ‼︎‼︎」

 

悲鳴と雄叫びが交錯する中で、レリックにヒビは入った。後少し、後少しで終わる。激痛にのたうち回りそうになるのを気合いで抑え込みながらカスミは叫び続けた…その時だった。

 

「ガァァァァァァァ…ア…ア…」

 

レリックが砕け散るよりも早く、カスミの精魂が尽き果てた。それを聖王の自動防御プログラムは見逃してはくれない。

 

「逃げてェェェェェェェェッッッッ‼︎」

 

最後に聞こえたのはヴィヴィオの叫び。最後に目に映ったのは抗うヴィヴィオから強制的に放たれた魔力砲撃の光。それは容赦なくカスミを直撃し、ドライバーもキーも木っ端微塵に消し飛ばしてしまった。

 

(あぁ…やっぱり…私…)

 

意識が消える直前、カスミの脳裏に浮かんだのは短い期間ながらも楽しかった家族としての光景だった。大好きなママたち、可愛い妹、皆んなで笑い合って…

 

(せめて…もう一度…)

 

「そんなっ…カスミ‼︎」

 

なのはは必死に助けようとしたが、これまで無理をしてきた分のダメージが一気に遅いかかり動けない。そして、カスミの体は無常にも壁面に叩きつけられ、その意識は闇へと消えていく。

 

(フェイトママ…ごめん…)

 

頬を伝う一筋の涙は冷たい大地に溶けていった。

 




第4話、如何だったでしょうか? 本当はメタクラも出したかったのですが、結局ヴィヴィオの戦闘力だけが爆上がりして間延びする可能性の方が高かったため泣く泣く封印しました。

次回、JS事件編最終回です。果たして、カスミたちの運命はどうなるか、沢山の感想お待ちしています。それではまたお会いしましょう。
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