魔法少女リリカルなのはHERO Tの名を持つ少女   作:陽炎=蜻蛉

6 / 18
StS編は終わりと言ったな?あれは嘘だ…というわけでもありませんが、VIVID編突入までに周囲の関係を掘り下げるお話を幾つか書いていきたいと思います。章タイトルの通り、短めです。


短編集
ノーヴェの夢


 

 

『…………』

 

カスミ・T・ハラオウンは帰り道、途中のエレベーターに閉じ込められていた。隣にいるのは、愛する妹、ヴィヴィオにストライクアーツを教えているノーヴェ。そう、JS事件の際、カスミが怒りのままにフルボッコにした1人である。

 

「し、修理の方、10分くらいだそうですよ…?」

 

「そ、そうか…ずっと閉じ込められるよりマシだな…ハハ…」

 

今でこそ、更生組のナンバーズ達はそれぞれの場所で頑張っている。勿論、ノーヴェもその一人であるのは言うまでもない。ただ…

 

『気まずい……』

 

カスミからすれば、散々に痛めつけたことが尾を引いているし、ノーヴェにしても色々と迷惑をかけたことが重荷となって、お互い会話らしきものも出来ずに時間だけが過ぎていた。すると…

 

「…ヴィヴィオは、どうですか?格闘技、楽しくやれてますか?」

 

「あ、ああ!荒削りなところもあるけど、順調に上手くなってるよ。」

 

「良かった……あの子、いつも楽しそうに貴方とのトレーニングの話してるから、聞いてる私も嬉しくなるんです。」

 

「…そっか。カスミも一緒にやらないのか?」

 

ノーヴェの何気ない質問。妹大好きのカスミからすれば、一緒に始めていてもおかしくないのだが。

 

「…怖いんです。最初は楽しくても、いざ戦いになって追い込まれた時に、あの日みたいなことが起きたらと思うと。」

 

「お互い、大分トラウマになっちまったな…アタシ達はもう何とも思ってないから気にすんな…って言っても無理、だよな。」

 

「あはは…私もナンバーズの皆さんのこと、もう変に思ったりしてないんですけどね…どうしたものやら…」

 

アークワンとなった時、カスミは殺意のままにノーヴェたちを叩きのめした。次の目的が決まっていたために、殺すまでには至らなかったが、もし一歩間違えていれば。そんな恐怖ゆえにカスミは一歩引いていた。

 

再び訪れる沈黙、今度はノーヴェが口を開く。

 

「アタシはさ、楽しそうに練習してるヴィヴィオたちを見ていて、羨ましくなる時があるんだ。」

 

「戦闘機人…だからですか?スバルさんは参加しなかったって言ってました。」

 

「半分正解。確かに選手として参加はできないけどそれ以上に…一緒に競い合える同年代の友だちがいるのが羨ましい。」

 

「……友だち。」

 

「もし、チビ達に格闘技を教えることが、戦うことしか選択肢が無いと思っていたアタシ達を救ってくれた、ナカジマ家の皆んなへの恩返しになるなら、今の仕事を続けてもいいのかなって思うんだ。そしていつか、チビ達と一緒に頂点まで駆け上がりたい、それがアタシの夢なんだ。」

 

すると、止まっていたエレベーターが漸く動き出し、無事にドアが開く。

 

「ま、何にせよ生きてる限りは前を見たほうが絶対楽しいってことだな! じゃあ、アタシは先に失礼するぜ。」

 

ノーヴェが笑顔で発した言葉、そしてその大きな背中にハッとなるカスミ。その姿はまるで、かつてのギンガのようだった。

 

「あの…ノーヴェさん!」

  

初めて、カスミがノーヴェを名前で呼んだ。

 

「私にも…格闘技を教えてもらえませんか?」

 

「いいのか…?怖いんじゃないのか?」

 

「怖いですよ、今も。でも…いつか本番で、ママたちが見ている前で、ヴィヴィオと真剣勝負がしたいんです!」

 

カスミの脳裏に浮かんだビジョンには、決勝戦で対峙する姉妹の姿があった。見守る母達、大歓声が上がる中で笑う、ボロボロの二人、そして最後の力を振り絞って二人は激突するーーそんな光景。

 

「良いんだな?アタシの練習は厳しいぜ?」

 

「ハハ…望むところです!」

 

覚悟を示すように、カスミは拳を突き出す。ノーヴェはニッと笑うと、拳を突き合わせた。

 

「これからよろしくな、カスミ!」

 

「はい!」

 

あの日の痛みを乗り越えて。いつか夢の舞台で大好きな人と競うために。

 

「あ、でも教えてもらうのにノーヴェさんってのもアレですし、これからは師匠って呼ばせていただきますね!」

 

「師匠はやめてくれ…そんな高尚じゃねえ…」

 

「じゃあ先生!」

 

「だああもう!そんな敬われても何も出さないからな〜!」

 

…まだ少し時間はかかりそうである。

 

 




記念すべき初回はコーチであるノーヴェとのお話でした。StS編とVivid編での変化が最も大きいのは彼女で間違いないでしょう。常に教え子達のことを第一に考え行動する彼女が、後にジムを設立するほどに規模を拡大できたのも頷けます。

次回は、カスミが兄姉と慕うエリオ、キャロとのお話です。では、またお会いしましょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。