魔法少女リリカルなのはHERO Tの名を持つ少女 作:陽炎=蜻蛉
「いらっしゃい、カスミ!」
「お邪魔します、はやてさん。」
今日は折角のお休みだが、なのはもフェイトもお仕事ということで、八神家にお世話になっていた。
「ヴィヴィオは図書館?」
「はい、誘ったんですけど、お気に入りの本読み終わってから行くと言ってて。」
「そうか、あの子らしいな。」
中に入ると、ザフィーラが麻雀卓がついたテーブルを運んでいる最中だった。
「ザフィーラ、それは?」
「麻雀というゲームだ。主たちと一緒に時々遊んでいる。」
麻雀については、カスミもルールはある程度知っている。ただ、オセロとは違い、賭けという分野において発達しているため、フェイトもなのはも余り好ましく見てはいない。
「せや!カスミもやってみるか?」
「え、えーと…でも、ママたちはこういう遊び絶対ダメって言うと思うので…その…」
「ふっふっふ、1位になった人は美味しいケーキが食べられるで?」
子どもらしく、甘い物が大好きなカスミにってはケーキは正に神の食べ物。即座に自制心が吹っ飛んだ。
「や、やります!あ、でもルール説明だけお願いします…」
〜少女説明中〜
「大体わかりました。やりましょう!」
ルールは赤アリの25000点持ちというオーソドックスなもの。また、カスミは初めて麻雀を打つため、チョンボなどは無しとなった。
こうして、ハンデ付きで意気揚々と参戦したカスミだったが…
「ロン!メンタンピンドラ1、8000点やね。」
「ツモ!メンホン一通で6000オールだ!」
「ロンだ。七対子ドラドラ6400は7000。」
試合は壮絶な高打点での殴り合いとなった。
その中でただ1人無和了のカスミは、放銃していないにも関わらずラスに沈んでいた。
(ハンデつけてもらってるのに、全然上がれないなあ…)
他の3人のように勝負手が来ることがなく、どうにか聴牌する前に局が終わってしまうことばかりでは苦しい。そうこうしているうちに試合はオーラスを迎えた。
オーラス時点の点棒状況は以下の通り。
はやて 32300
ヴィータ 35200
ザフィーラ 27300
カスミ 5200
倍満ツモで逆転は見えるが、赤があるとはいえ一局で作るのは相当苦しい。
「じゃあオーラス、ドラは…九索やね。」
そしてカスミが開いた配牌は。
(筒子多め…一撃狙うなら清一色か。)
倍満ツモを作るならば、清一色は最も有効な手段だ。面前で揃えれば必要な8翻の内の6翻を作ることができる。すると…
(凄い…カスミちゃんの手がどんどん…)
後ろで観戦していたシャマルやシグナムも注目していた。途中、満貫ツモなら逆転できるザフィーラが索子の混一色で一つ仕掛けを入れていたが、カスミの手はというと。
筒子と字牌のくっつきの一向聴になっていた。カスミの狙い通り、門前での清一色が狙える形。他方、3人はまだ一向聴に辿り着いていない。そして次順のヴィータのツモは。
(ダメだ…索子はザフィーラに当たる可能性がある。仮に聴牌じゃなくても鳴かれたらかなり苦しい。となると…)
捨て牌の河を見るに、萬子で染めている可能性が高い上家のはやてにポンされるのを防ぐため、ヴィータは三筒を切った。そして、次のザフィーラのツモは。
(これでどちらの役牌を鳴けても満貫が確定する。問題は主の手だが…)
ザフィーラが気にする下家のはやてはというと。
(うーん、南が重なったのは嬉しいけど、混一色のみじゃ逆転できへんし…出来れば門前で揃えたいな。)
逆転を狙う者達が勝負手になる中で、カスミが持ってきたのは。
(出来た!後は…引くだけ。)
待ちは1.4.7の筒子。4で上がれば一盃口、1で上がると更に一気通貫の役がつく。すると、ザフィーラが次順掴んだのは…1筒。
(まさか…な。)
自身も満貫の一向聴ではツモ切りするしかない。シャマルとシグナムは、これでカスミが親の倍満を上がると思っていた。しかし。
「…………」
(え⁉︎ スルーしたの⁉︎)
(確かに出上がっただけでは3着止まりだが…)
そう、3着目のザフィーラから24000点を上がっても、カスミはまだ3着。理屈は分かる。けれど、既に6枚見えていて、最高目が1枚、次にいつ上がれるかも分からない状況下で見逃せる人が果たしているだろうか。
(ダメや…ウチも張ってくれへん。)
はやても有効牌が引けずに九萬をツモ切る。そして迎えたカスミのツモ番。その胆力は最高の形で花開いた。
「ツモ!」
「か〜!メチャ高いやん!」
「えっと…ツモ、清一色…ダメだ、細かくて全然分からん!」
「門前清一色、平和、一気通貫、一盃口にツモがついて合計11翻、つまり…」
「はい、12000オールです!トップいただきました!」
最終結果は以下のようになった。
1位 カスミ 41200点
2位 ヴィータ 23200点
3位 はやて 20300点
4位 ザフィーラ 15300点
「おめでとう、カスミちゃん!はい、好きなケーキ選んでね。」
「わーい!いただきまーす!」
勝利者のご褒美、はやて行きつけのお店で買ってきた特製ケーキを頬張るカスミ。
「しっかし、よくザフィーラの1筒見逃せたよな。本当に初めてかお前?」
「だって、あんなに綺麗な手だったらツモりたいじゃないですか!」
「せやな、自分で揃えたら絶対嬉しいもんな〜、本当ナイストップやったで。」
ヨシヨシとカスミの頭を撫でるはやて。ハンデ付きとはいえ、カスミが楽しんでくれたのなら十分だろう。
「いや〜フェイトちゃん達が不在の時で良かったわ。大事な娘を麻雀に誘ってるなんてバレたら、偉いことに…」
「そっか〜、一体どんなことになるんだろうね〜…はやてちゃん?」
「はやて…何してるの?」
瞬間、はやての背中に寒気が走った。声の主は勿論、はやてが最もよく知る2人。
「な、なのはちゃんにフェイトちゃん…随分と早いお帰りやね…」
「カスミのお迎えに早く行きたかったから、お仕事頑張ったんだよ。」
「ねえはやてちゃん。前にヴィヴィオやカスミにこういうことはまだ教えちゃダメって言ったの、もう忘れた?」
2人の母から迸る親友への怒りのオーラ。はやての背中に汗が流れる。
「ご、ごめんてなのはちゃん。でもほら!カスミは初めてやから、ちょっとくらいええかなって……」
「フェイトママ、なのはママ。」
「どうしたの?カスミ。」
(……ん?)
「麻雀って面白いね!」
「え?」
「だって、1位になったらケーキこんなに食べられるんだもん!」
(カスミ〜!今その台詞は言ったら絶対あかん!)
物で釣って麻雀をさせた、その事実を認識した2人の母は恐ろしいほどの笑みを浮かべ、はやての背中の汗はもう滝のようになっていた。
「そっかぁ……じゃあヴィヴィオと一緒にもっとケーキ、食べたいよね?」
「うん!」
「フェイトちゃん、これはちょっと……」
「そうだね…はやて、この後少しお買い物に付き合ってもらうよ…?」
(ああ、私のお財布が死んだ……)
数時間後、八神家では金銭面で干物になったはやてがいたとかいないとか……
果たしてはやては一体いくら出費したのか、最強ママ2人を怒らせたらどうなるか、身をもって知ったことでしょう。次回はカスミがある人物と夢の中で邂逅します。お楽しみに。