この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを! 作:山田プロキオン
満月の夜。月の青白い光が1座の山を照らしていた。その山では灼熱の溶岩がぐつぐつと激っており、並の冒険者はおろか、モンスターや魔王軍幹部等の存在であっても滅多に訪れないであろう場所だ。そんな場所でとある戦士と魔法使いが機械人形にも似た姿の巨大な怪物と交戦していた。戦士は飛蝗と汽車を模したような青い装甲に身を包んでおり、怪物の攻撃を躱しながら魔法使いが呪文を詠唱し終えるまで時間を稼いでいる。
しかしながら怪物の容赦のない連続攻撃は戦士に余裕を与えない。右腕から発射される光線や、左手から放たれる光弾が戦士を襲い続ける。
それは、掠っただけでも戦線離脱を意味するため戦士は油断も慢心も許されない。
しかし戦士にとって途方もないように思われたいたちごっこは魔法使いの詠唱終了によって終わりを告げる。
『いけぇぇぇぇ!!!!』
詠唱を終えた魔法使いの猛々しい声とともに発せられた魔法は怪物を穿ち、地面に大きな窪みを作った。並の生物ならこれ程の破壊力には敵わない筈である。
しかし、これほどの威力を持ってしても尚、その怪物は体の形を保っていた。流石に魔法の威力が予想以上であったために動くことは出来ないようであったが、それでも戦士と魔法使いに衝撃を与えるには十分だった。
『そんな…僕の魔法で倒せないなんて…』
「いや、動けなくなっただけでも十分だ。クロっち、あとは任せて!」
戦士は『クロっち』と呼んだ魔法使いを後方に退がるように促し、腰部のベルトの左右のレバーを操作した。
すると戦士は人型から飛蝗のような姿に変わり、空高く飛び上がると空中で再び人型に戻り、怪物目掛けて蹴りの体制で突っ込んでいく。
『スチームホッパー!フィーバー!』
戦士の一撃は怪物を貫き、怪物は爆発して跡形もなく消え去った。
死闘を終え、戦士は変身を解除して13歳程の少年の姿へと戻った。そして疲れ果てたのか地面に倒れかけるが、すんでのところで魔法使いに支えられた。刹那、一つの光が少年と魔法使いの元へと寄ってきて、少年は手馴れたようにカードのようなものを取り出した。光は少年の持つ札に収まり、札は無表記から
『RENKINGROBO』
と記され、さらにロボットのような容姿の存在が描かれたものに変化した。
カードを左腕のホルダーに締まった少年は魔法使いに支えられながら下山し、自分達をいつも温かく迎え入れてくれる故郷であり仲間達の待つ場所、『アルケミア』の錬金アカデミーへ戻った。
しかし、仲間達と夢や希望を語り合った故郷は辺り一面火の海と化しており、いつも自分達を迎え入れてくれた仲間や知り合いは誰一人としていなかった。
その非情な現実を前に、少年は膝から崩れ落ちた。当たり前の日常だったとしても、時に硝子のように、呆気ない程に一瞬のうちに脆く崩れ去るのだと痛感した。
燃え盛る炎の場で放たれた悲鳴にも似た少年の叫び声は、隣にいた魔法使い以外に届くことはなく、ただ虚しく、夜の空に木霊するのだった。
少年の故郷が滅んだこの一件は後に『錬金事変』として広く世間へ知れ渡ることとなる。
そして、2年の月日が流れた…。
作品を閲覧していただきありがとうございます。
今回は前日譚のような形のストーリーとなりました。
次回からはアクセルの街のストーリーとなっていきます。