この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

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始祖の錬金術師の1人の『ジュン』は空間錬成の定理を編み出し、亜空間への接触を可能にした。
そして彼は亜空間の中で、卑金属を金に変える際の触媒となる特殊な物質である「賢者の石」を発見し、錬金術の更なる発展へと貢献した。
しかし、この「賢者の石」が後の錬金術の歴史において、大きな災厄をもたらすことになろうとは、このときは誰も予想だにしていなかったであろう。

錬金見聞録 第2章:「亜空間仕掛けのジュン」より一部抜粋


腹が減っては戦はできぬ

めぐみんが最高の爆裂魔法を放ったあの日から数日、錬太郎達はいつものように冒険者ギルドへ集まっていた。朝早い時間帯にも関わらず、食堂は沢山の冒険者達で賑わっており、酒を飲んで世間話をしたり、食事を楽しんだりする人達で溢れていた。

 

『あ!この席空いてるから皆で座ろうよ!』

 

クロっちが端のほうの空いた席を見つけると、7人は移動し着席した。今日はクロっちから皆へ、何か渡すものがあるらしい。

席に着いたクロっちは肩に提げていた鞄をテーブルの上に置いて、中から橙色のデバイスを5つ取り出した。

 

『はい、錬太郎以外の皆の分のケミーライザーを作っておいたんだ!これで皆もケミーを捕まえられるよ!』

 

クロっちから手渡された量産型ケミーライザーを各自手に取った。その中でもカズマとめぐみん、ゆんゆんはやはりと言うべきか、興奮のあまり目を輝かせていた。

 

「おおー!この世界には似合わない機械的なアイテムだが、これで俺もケミーの捕獲ができるのか!」

 

「攻撃用とも探索用ともとれる造形…さらに中心の紋様…紅魔族的センスからみてもかなり高得点ですね!」

 

「これで皆と一緒にケミー探しできるんだ…えへへ、楽しみだなぁ」

 

新品のおもちゃを買って貰ってはしゃぐ子供のようになっている3人を眺めながら、錬太郎は静かに笑う。自分もハガネにケミーライザーを作って貰った際に同じように喜んでいたことを思い返しながら。

 

『ケミーライザーは連絡手段としても使えるから、いざという時の為に携帯しておいてね。あと、攻撃機能はオミットしてあるからそこは注意してね。』

 

「わかった、でもなんで攻撃機能は端折ったんだ?あったら便利だと思うんだが?」

 

『皆武器や魔法があるでしょ?それに…コストとか色々かかるの!』

 

「お…おう」

 

クロっちは、攻撃機能を削減した理由を質問したカズマにずいっと顔を近づけて説明した。クロっちの圧に、聞いちゃダメだったなぁと反省するカズマだった。

 

 

 

 

 

「クエストを請けましょう!たんまり報酬が手に入るやつで!」

 

ケミーライザーの配布が終わると、アクアが机をバン!と叩いて皆に言った。

しかし、未だ魔王軍幹部がやって来た影響もあって、高難度のクエストしか残っておらず、さらに殆どのメンバーがお金には困っていないこともあり、カズマとめぐみんは士気のない様子でクエスト参加を拒否した。

 

かろうじて、ダクネスとゆんゆんは賛成してくれたものの、高額な報酬が期待できる討伐クエストにおいて戦力になる錬太郎は

 

「最近爆裂散歩で休んでたケミー探しをそろそろ再開したいから僕はパスかな。」

 

とのこと。ちなみにクロっちも錬太郎とは別行動でケミー探しを優先するようだ。あまりの惨状にアクアはとうとう泣き出してしまった。

 

「お願いよぉぉ!!もうバイトばかりは嫌なのよぉぉ!コロッケが売れ残ると店長が物凄い怒るのぉ!私全力で頑張るからぁ!お願い!お願い!お願ぃ〜…」

 

青タンを垂らしながらカズマの足にしがみつくアクア。前に自身を清く美しい水の女神と言っていたが、この様子からは、そんな高貴なイメージは影も形もない。

 

「だぁぁぁぁ、ひっついてくるな、鼻水つくだろ!ていうか、お前前からずっとバイトに勤しんでたんだからお金には困らないだろ普通!」

 

「全部酒に費やしちゃったのぉぉぉぉ!」

 

「バカかお前!自業自得じゃねぇかよ!お前の都合に俺たちを振り回すんじゃねぇこの穀潰し!」

 

「わぁぁぁぁ!お願いカズマしゃぁぁぁん!見捨てないでぇぇ!なんでもするから!なんでもしますから!お願いしますぅぅぅ!あだじを見捨でないでぇぇぇ!」

 

アクアは、いつぞやのめぐみんのように見捨てないでだの、なんでもするだのと大声で叫ぶ。そしてその声を耳にしたギルドの冒険者達の視線が集まり、次第に彼らはカズマを横目にヒソヒソ話を始める。

 

「よーしわかった、クエスト受けてやる!さっさと掲示板行ってこい!」

 

またギルド内での自身の評価が下がるのを懸念して、カズマはクエストを受けてやることにした。カズマが協力してくれると聞いて、アクアは小躍りしながら掲示板へと向かっていった。

 

「カズマ、アクアがとんでもないクエストを持ってこないように一応見てきてくれませんか?」

 

めぐみんが少しばかり不安を滲ませた声色で言う。アクアのことであるから、確かに高難度のクエストを持ってきてもおかしくはない。

 

「わかった、行ってくる」

 

めぐみんの頼みを聞き入れ、カズマはアクアを追って掲示板の方へ向かった。

 

暫くすると2人は戻ってきた。今回受けるクエストが決まったようだ。

その内容とは

 

『湖の浄化』

 

街の水源の一つである湖の水質が汚染され、ブルータルアリゲーターが住みつき、困っているようだ。報酬は三十万エリスとかなり高い。

アクアは水の女神であるため、水を触れるだけで浄化出来るらしい。彼女には打ってつけのクエストだろう。しかし、問題が一つ…

 

「浄化している途中にモンスターが邪魔しに来るのではないか?」

 

「ふふん、大丈夫よダクネス!それについてはしっかり対策を練ってきたから!」

 

心配するダクネスに、アクアは自信満々に言ってのけた。

 

 

 

 

カズマとアクアの作戦は、湖の近くの大岩に鎖を巻きつけて、ギルドから借りた、希少モンスター捕獲用の鋼鉄製の檻に入ったアクアを湖に浸すというもの。流石にこれは色々と大丈夫なのかと錬太郎とクロっちは尋ねたが、アクアの合意の上とのことなのでそれ以上は言わなかった。

 

「じゃあ僕たちはケミー探しに行ってくるよ。夕方までには戻るから。あと、浄化まで半日かかるって聞いたから皆の分のお弁当作ってきたよ。朝食の余り物とかもあるけど、よかったら」

 

「おお!ありがとな、そっちも頑張ってこいよ!」

 

「うん!よし、行くぞゴルドダッシュ!」

 

『ダーッシュ!』

 

湖の浄化作業が問題ないことを確認すると、錬太郎とクロっちはケミー探しのため、それぞれその場を後にした。

 

 

 

 

薄暗い林の中、ケミーライザーの反応を頼りに歩みを進める錬太郎。だいぶ深くまで来たところで反応が強くなり、詳細情報が通達される。

 

『ケミーヒット!インセクトケミー!アニマルケミー!』

 

近くにいる、反応が示す辺りを錬太郎は見渡す。そして…

 

「あーー!見つけた!」

 

林の中を彷徨う2体のケミーを発見した。

1体は蜂の姿をしたレベルナンバー8のインセクトケミーのカイザービー、

もう1体は蠍の姿をしたレベルナンバー4のアニマルケミー、ブッサソーリーだった。

2体は錬太郎に気づくと、脇目も振らずに逃げ出した。

 

「あ、待って!」

 

錬太郎は逃げたケミー達を追って駆け出す。ケミー達はその小さく、身軽な体躯を利用して、木々の狭い隙間や、足場の安定しない石の道を駆け抜けていく。

流石に部が悪いと見た錬太郎は、アルケミストリングを取り出して、右人差し指に装着する。そして右手を目の前に翳し、錬金術の呪文を唱えた。

 

「『万物はこれなる一者の改造として生まれうく』」

 

刹那、近くの木の幹がロープのように再錬成され、長さを伸ばしてケミー達を捕らえた。

 

「よし、今だ!」

 

錬太郎はケミーライザーを取り出して、ブランクカードを装填する。

 

『ケミーキャプチャー!』

 

ケミーライザーが起動し、2体のケミーは光となって吸い寄せられ、カードに封印された。

 

「よし、カイザービーとブッサソーリーっていうんだね、これから宜しく!」

 

錬太郎はケミーを確認すると、左腕の『ガッチャードローホルダー』にケミーカードを収納した。

この場所でのケミーは集め終えたので、次なる場所へと錬太郎が向かおうとした

 

その時だった。

彼の目の前に1人の男が立ち塞がった。

 

「ごきげんよう、ガッチャード…」

 

錬太郎をガッチャードと呼んだ男は、赤いローブに身を包み、人間の喜びの表情を模したような仮面をつけている。胸の前で腕を組むその姿は威厳に満ち溢れていた。

 

「その仮面…ロード(・・・)の一味だな…」

 

「如何にも。俺は偉大なるロード様に仕えし『暗黒のネガマスク』が1人、その名もソラトス…『暗黒の釜』を錬成するエネルギー確保のため、相手になって貰うぞ…」

 

そう言うとソラトスは懐からプラント属性のレベルナンバー7、『フレイローズ』のケミーカードを取り出す。次の瞬間、ソラトスの体を黒い霧のようなものが包み、その姿を怪物へと変貌させる。

 

薔薇の花が体中のあちこちに巻きついていて、頭部は龍のようになっている異形の存在ーーローズマルガムである。

 

錬太郎はマルガムを見据え、ガッチャードライバーを腰に装着する。そして2枚のカードを取り出してベルトに装填する。

 

『ホッパー1!』 『スチームライナー!』

 

錬太郎は両手で円を描き、その後両手を重ね、さらにその手を反転させた後に矢印の先端を形作り、正面に突き出すと、力強く叫んだ。

 

「変身!」

 

『ガッチャーーンコ!スチームホッパー!』

 

眩い光が錬太郎を包み込み、仮面ライダーガッチャード スチームホッパーが現れる。

 

「いくぞ…」

 

ローズマルガムはガッチャードが変身するのを見届けると、口から火炎弾を連続発射する。対するガッチャードは臆することなく、火炎弾を両手を使って振り落として行き、マルガムに向かって駆けていく。

 

ガッチャードはマルガムに向かって風を振り切り、勢いの乗った右ストレートを繰り出す。しかし、マルガムは反射的に拳の動きを捉え、自身の左手で受け止める。マルガムの動きにガッチャードは少々狼狽える。しかしすぐさま左拳を奮い、再度マルガムに攻撃を仕掛ける…が、これまた空いていた右手で塞がれてしまう。

両腕を封じられた両者。しかし、己と相手の肉体のぶつかり合いにおいて武器となるのは拳だけではない。

ガッチャードは両腕が使えないと悟るや否や、右脚を振り上げて、マルガムの顔面を蹴り上げる。瞬間、自身の腕の拘束が緩んだため、その隙を見逃さず、解放された両腕で弧を描くようにマルガムの腹へと連続で拳を振るい、マルガムを後退させた。

 

「やるな…ならばこれはどうだ!」

 

マルガムは自身の体から大量の花弁のようなものを周囲に撒き散らす。何枚かはガッチャードに触れ、その瞬間大爆発を起こす。爆破に怯み、後退した先の花弁にも触れてしまい、再度ガッチャードは吹き飛ばされてしまう。

 

「さぁ、どう動く?錬金戦士ガッチャードよ…」

 

「さぁね?僕はケミー達の声に従うまでだ」

 

ガッチャードは新たに2枚のカードを取り出してはベルトに装填した。

 

『ゴルドダッシュ!』『メカニッカニ!』

 

『ガッチャーーンコ!ゴルドメカニッカー!』

 

刹那、フォームチェンジによる白い光のエネルギー波が発生し、撒き散らされていたマルガムの花弁が全て消滅した。

 

 

「なっ!バカな…そんな一瞬で…」

 

予想外の事態にマルガムは狼狽する。そして光が収まると、ガッチャードの新たな姿が露わとなった。

 

金色の武装に身を包んだ巨軀は、あらゆる悪を滅する

ーー仮面ライダーガッチャード ゴルドメカニッカー

 

「これでチェックメイトだ!」

 

ガッチャードはベルドの左右のレバーを操作する。途端、ガッチャードの体が変形し、蟹を模した黄金の機械型の姿である『ワイルドモード』となり、マルガムに接近して鋏による連続攻撃を繰り出す、そしてーー

 

『ゴルドメカニッカー!フィーバー!』

 

「ハァァァァァァァ!」

 

マルガムの至近距離で人型へ戻り、巨体による強力なキックを炸裂させる。マルガムはその威力に吹き飛ばされ、叫び声をあげて爆散した。

 

爆煙の上がる中、1つの光がガッチャードの取り出したブランクカードに収まり、フレイローズのケミーカードとなった。

 

「よし、これで今日3体目!」

 

ガッチャードは手作業がしやすいように、スチームホッパーにフォーム解除すると、ホルダーにケミーカードを収納する。

 

「クソ…この俺が…」

 

マルガムから人の姿へと戻ったソラトスはヨロヨロと立ち上がる。刹那、ソラトスの仮面にヒビが入り、そして

 

 

割れた。

 

「…え」

 

晒されたソラトスの素顔に、ガッチャードは絶句する。

特徴的な少し悪い目つきと七三分けの髪型

 

 

彼のよく知る先輩の錬金術師であるハガネ・ボルテックスと瓜二つの顔だったのだ。

 

ソラトスは痛みが走る自身の左頬を撫でる。手を見てみると血がついていた。戦闘による負傷のものだろう。

 

「よくも…よくも俺の顔に傷をつけたな…この借りは…必ず返してやる…」

 

ソラトスは、血走った目をしながらガッチャードを睨むと、空間錬成を発動させ、そのまま姿を消してしまった。

 

1人その場に残されたガッチャードは変身解除して錬太郎の姿へと戻る。

錬太郎は俯いて、地面を見つめる。

その表情は怒りと悲しみ、そして憂いの入り混じった複雑なものだった。

 

「そうか…兄さんまで…駄目だなぁ、僕は…覚悟は決めたはずなのに…戦うしかないって分かってるのに…」

 

『ホッパー…』

 

錬太郎の様子を心配そうにホッパー1は眺める。冬が近づいているためか、ほんの少し肌寒い風が錬太郎とホッパー1を包み込むのだった。

 

 

 

 

 

日も暮れかけた頃、カズマ達のクエストも終了した。結論から言うと、クエストは成功した。黒ずみ、濁り切っていた湖だったが、アクアによって穢れ一つない清水へと浄化された。

しかしその過程で、アクアの入っていた檻がブルータルアリゲーターによって執拗に攻撃され、それがトラウマとなり、アクアは廃人と化してしまったのだ。

今も檻の中でドナドナドーナドーナとなっている。

 

「おいアクア、そろそろ出てきてくれよ。壊れかけの檻の中に女の子を入れて運んでる時点で沢山の人の注目を集めてるんだからさ」

 

「嫌よ、ここは私の聖域。しばらく出ないから」

 

重症である。双方の合意の上の作戦だったとはいえ、よもやアクアをここまで追い詰めてしまう結果になってしまうとは。

カズマがどうにかしてアクアを檻から出せないかと思考を巡らせていると…

 

「女神様じゃないですか⁉︎そんな所でどうしたのですか⁉︎」

 

檻の前に上等な鎧に身を包んだ茶髪の青年と2人の少女が現れた。

そして青年は檻をいとも簡単に破壊して、中にいたアクアに手を差し伸べた。

 

「女神様!もう大丈夫です!」

 

「おい、私の仲間に馴れ馴れしく触るな。貴様は何者だ?」

 

アクアの手を取ろうとした青年にダクネスが詰め寄る。青年はダクネスを一瞥し、いかにも、自分は厄介事に巻き込まれたく無いのだけど仕方がない、と言いたげな様子でため息を吐きながら首を振った。

流石にこの態度にはダクネスも堪えていた。

なんだか面倒臭いことになりそうだと踏んだカズマは檻の中のアクアに耳打ちする。

 

「おい、アイツお前の知り合いなんだろ?お前のこと女神って知ってるみたいだしさ、何とかしろよ」

 

「女神…女神、ああ!そうよ!女神よ私は。話を戻すけど要は私に今の状況をどうにかして欲しいってこと?しょうがないわね!」

 

カズマの言葉で正気に戻ったアクアは、漸く檻から出てきた。そして青年の元へと向かったが、彼の顔を見るなり首を傾げて

 

「あんた誰?」

 

まるで初対面かのように青年に尋ねた。

 

「何を言ってるんですか!僕ですよ!御剣響夜(みつるぎきょうや)!あなたから転生特典として魔剣グラムを頂いた!」

 

ミツルギと名乗った男の説明を聞いて尚、ピンとこない様子のアクア。そして暫く頭を捻った後に

 

「ああ、そういえばいたわね…」

 

やっと思い出したようだ。

覚えていなかったことが引っかかったのか、若干顔を引きつらせながらも、ミツルギはアクアに笑みを見せて語り始める。

 

「アクア様、お久しぶりです。あなたから神託を受けた勇者として、日々精進していますよ。ところで、あなたがどうしてここに?そして何故檻の中にいたのですか?」

 

「それは、まぁ…」

 

カズマはミツルギに、自身と共にアクアがこの世界に来る事となった経緯、そして今回のクエストのことについて簡潔に説明し始めた。

 

「バカな、ありえないそんな事!女神様をこの世界に引き摺り込んだだけに飽き足らず、今回のクエストで檻に閉じ込め、湖に浸しただと⁉︎正気か⁉︎」

 

カズマはミツルギに胸倉を掴まれて詰め寄られる。その様子を見たアクアが慌てて止め入った。

 

「ちょっと、ちょっと、このクエスト受注したのは私だし、作戦も話し合って合意の上だったから…それに私は楽しんでるからいいのよ!」

 

アクアの発言を聞いたミツルギは憐憫の眼差しをアクアに向けて

 

「アクア様、こんな男に丸め込まれてはいけません!貴方の今の扱いは不当もいいところです!話は変わりますがアクア様、今はどこで寝泊まりを?」

 

「馬小屋だけど?」

 

「馬小屋に⁉︎アクア様を⁉︎貴様ぁ!」

 

ミツルギはカズマの胸倉を掴む手にさらに力を込める。カズマもカズマで初対面にも関わらず言いたい放題なミツルギに怒りを募らせる。

 

「(こんなときに錬太郎かクロっちがいればな…ん?)」

 

カズマ達の方に向かって誰かが歩いてくる。空色の服の上に黒いローブを羽織った黒髪黒目の少年ーー

 

「おーい、錬太郎!」

 

「ん?あ、カズマ…そっちも終わったのって…道端で何やってるの?」

 

「ああ、いやな。突然現れたコイツに絡まれてさ…」

 

カズマは胸倉を掴んでいるミツルギを指差して錬太郎に説明する。

 

「成程、君はカズマと同じく異界人ということか…僕は百瀬錬太郎、錬金術師をやってる、よろしくね。」

 

「御剣響夜、ソードマスターだ。アクア様より魔王討伐の命を受け、この世界へとやってきた。ところで君はアクア様のパーティーの1人なのか?」

 

「うん、今日は用事があって別行動してたんだけどね」

 

錬太郎の話を聞くや否や、ミツルギはフッと鼻で笑い、

 

「別行動か…それも成り手が少なく専門スキル以外習得出来ないハズレ職の錬金術師なら仕方ないか…

別行動というのも、本当はモンスターと戦闘する技量がない故に逃げるためについた弱い君の嘘なんだろう!」

 

「「「あ"???」」」

 

錬太郎に対しても好き勝手に言うミツルギ。彼の言いがかりは、錬太郎とそれなりに仲を深めていたカズマ、めぐみん、ゆんゆんの腑を煮えくり返すのには十分だった。

めぐみんとゆんゆんに至っては、杖を取り出し、今にも魔法を放たんとする勢いだ。

 

しかし、そんな3人の前に錬太郎は手をかざして静止するよう促す。

 

「落ち着いて3人とも、こんな言いがかり気にするなって」

 

優しく諭す錬太郎に対して、ゆんゆんは俯きながら口を開く。

 

「悔しいんですよ…私も、カズマさんも、めぐみんも…錬太郎さんは弱くなんてないのに…好き勝手に言われて…」

 

「…まぁ、誰にも本当のことを言っても信じて貰えないことに慣れちゃってるからなぁ…ごめん、それと、ありがとう」

 

錬太郎はゆんゆん、めぐみん、カズマの順に頭をぽんぽんとすると、ミツルギに向き直る。

 

「とどのつまり、君は僕とカズマが気にいらないということでいいのかな?」

 

「そうだ、アクア様を君達のような男と一緒に冒険させるわけにはいかない!」

 

錬太郎とミツルギはお互いの瞳を見据えて火花を散らす。

ケミーとの絆で無類の強さを誇る錬金戦士と、水の女神の神託を受けて剣を振るう異界から来た勇者。

今、決闘の幕が切って落とされる

 

 

 

 

ことはなかった。 

ぐぅぅぅぅぅ〜と錬太郎の腹の音が大きく鳴り、その場にいた錬太郎以外の者達が呆けた顔をしてしまった。

 

「う〜ん…お腹空いたなぁ…先ずはご飯だね!」

 

「「「「「「「「へ?」」」」」」」」

 

錬太郎の宣言にカズマ達とミツルギとその取り巻きは間抜けな声を漏らす。

 

「腹が減っては戦はできぬって言うからね、それに皆お腹空いてるでしょ?勝負はご飯の後にしよう!」

 

「何を言っているんだ!ふざけているのか!」

 

「ふざけていないさ。君も行こうよ、ほら」

 

「へ、ちょ、まっ…」

 

「おい、錬太郎!」

 

「待ってくださいよ〜」

 

錬太郎はミツルギの手を引いてギルドの食場へと駆け出していく。そしてカズマやめぐみんらもそんな自由過ぎる錬太郎の後を追うのだった。




というわけで魔剣の勇者との邂逅でした。勝負はお預けに、皆でご飯となりましたが、はてさてこの先どうなりますことやら。
そして暗黒のネガマスクなるソラトスの登場。
名前の由来は哲学者のソクラテスから。
何故ハガネ兄さんと同じ顔なのか、今後の展開もお見逃しなく
それではまた次回

次回予告
「僕らはきっと分かり合える」
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