この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

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天界の神々に対して反乱を起こした者がいた。
その名を『破壊神カタストロフ』。
カタストロフは天界での戦いを有利に進めるため、切り札となる賢者の石を錬金術師達から奪って取り込み、不死身の存在となった。
圧倒的な力を手に入れたカタストロフは、天界を制圧し、下界の世界で大災害を引き起こした。
大災害によって人類は愚か、全生物が絶滅の危機に瀕したのだった。

錬金見聞録 第3章:「破壊神カタストロフ」から一部抜粋


僕らはきっと分かり合える

薄暗い研究所のような狭い一室、

一部金色の装飾が施された黒いスーツに身を包み、丸渕メガネを掛けた男が、複数人の仮面をつけた人物達とともに、何やら実験のようなものを行っていた。

 

「さあ、ケミストリーの始まりだ…」

 

男は、黒い液体のようなものが入ったフラスコをいくつか手に取り、鍋のような容器を出すと、次々と液体を注いでいく。

容器の八分目ほどまで液体が入ると、注ぐのを止めて、自身の懐から5枚のケミーカードを取り出す。

カードに封印されているのは、『ビートルクス』、『リクシオン』、『テンフォートレス』、『ゼグドラシル』、『エクシードファイター』と、5枚とも数多のケミー達の中でも、その最強に君臨するレベルNo.10であった。

男は、5枚のカードを容器の上に浮遊させると、今度は自身の両掌の伸ばし、そして親指と人差し指の内、人差し指だけを対面させて上向きの矢印を作ると、呪文のようなものを唱え始めた。

 

「『そは地より天に昇り 再び地へと下る この世の創造もまた かくありき』、『万物はこれなる一者の改造として生まれうく』」

 

刹那、カードからケミー達の力が強引に解き放たれて、容器の中へと流れ込んでいく。

強大な力と液体は混ざり合い、やがて分厚く、武骨な形のモノへと変化した。

 

「完成した…『暗黒の釜』、ドレッドライバーだ…」

 

男は嬉々とした様子でドレッドライバーなるものを手にし、取り巻きの仮面達もまた、感嘆の声を漏らしている。

 

「ロード様!ただいま戻りました!」

 

大きな声がしたかと思うと、赤いローブを纏った青年、ソラトスがやってきた。ソラトスはロードと呼ぶ男の元へ駆け寄ると、跪き

 

「申し訳ございません、私目が未熟なばかりにガッチャードに敗北を許し、ケミーまで奪われました!ですが、もう一度チャンスをください!次こそは奴の…息の根を止めて見せます!」

 

切羽詰まった様子で弁明をする。しかしロードは怒りもしなければ失望もせず、ゆっくりとソラトスの方へ歩み寄ると、優しく彼の頭を撫でた。

 

「気に病むことはない。あの戦いのお陰でドレッドライバーに必要なエネルギーが集まったのだ…寧ろ感謝している。

それにケミー達は破壊神の封印を解く際に手元に揃っていればいいので構わん。逆に今は少年たちを踊らせておくのが吉だ…」

 

「…ッ、ありがとうございます!」

 

ロードは邪悪な笑みを浮かべてソラトスを励ます。対するソラトスも緊張の糸が解けたように安心した顔をする。

 

「まったく…早とちりをしやがって、ロード様の寛大さを忘れたのか?ソラトスはせっかちさんだな…」

 

「そうそう、でもそこが可愛くて面白いところでもあるけどね、弄ってて楽しい…プッ…キャハハハ!」

 

ロードとソラトスのやり取りを見て、青いローブと、怒りの表情を模した仮面を身につけた男性と、紫ローブに悲しみの表情を模した仮面をつけた女性が好き放題に言う。

 

2人からの言われようにソラトスは青筋を浮かべる。そして2人を睨みつけると、荒々しい声で怒鳴り散らす。

 

「うるさい、黙れ!俺はすこぶる機嫌が悪い!その気になれば今ここでお前らをぶっ殺してやれるんだからな!」

 

「まぁ落ち着け。喧嘩するほど仲がいいとは言うが、ここで殺し合いを起こして貰っては色々困るのだ。気を鎮めろ…」

 

ロードの宥めにより、多少不満そうにしながらも、ソラトスは殺気を抑える。

諍いが止んだのを確認すると、ロードは再び実験器具を手に取り、作業を再開する。

 

「さて…次はレプリケミーの錬成といこうか…」

 

 

 

 

所変わって、冒険者ギルド。すっかり日も沈んでいたため、今日も冒険やクエストに明け暮れた者達が集い、食事や会話を楽しんでいた。

 

それは錬太郎も例外ではなく、いつも利用しているものよりも、一回り大きなテーブル席を陣取り、カズマ達や魔剣の勇者の一味を集めていた。

 

皆が席に着いたのを確認すると、錬太郎は人数分の飲み物を注文する。

 

「すみませーーん!シュワシュワ5つとオレンジジュース4つお願いしまーす!」

 

「ご注文承りました〜、おや、錬太郎さん達、今日は多いですね〜。遠方からのお友達さんですか?」

 

「まぁ、そんな感じですよ」

 

「わかりました!では、少々お待ちくださーい」

 

ウェイターさんは飲み物の注文を確認すると、その場を後にする。程なくして、シュワシュワの入ったジョッキ5つに、残りのメンバーのオレンジジュースの入ったカップ4つをお盆に乗せて持ち運び、テーブルの上に並べる。

シュワシュワ5つは、アクアとカズマ、ダクネス、そしてミツルギの取り巻きの2人の分である。ミツルギと錬太郎はこの後の決闘があるため、酔いが回っては勝負にならないとのことでオレンジジュースである。

 

続いて錬太郎は肉野菜炒めや、ジャイアントトードの唐揚げ、パスタなどを注文していった。

 

皿に盛られた色とりどりの料理が机の上に並べられ、各人取り皿にそれぞれ料理を取り寄せたのを確認すると、錬太郎はオレンジジュースの入ったカップを手に取り、

 

「じゃあ、今日の各々の頑張りに対する労いと、冒険者同士の出会いに乾杯!」

 

1人だけ意気揚々とする錬太郎に合わせるように、他の者達は皆、おどおどとした様子でグラスやカップを交わす。

というよりも、錬太郎以外はずっとこんな調子である。

それは当然といえば当然だ。先程まで一触即発だったはずの徒党同士が現在同じ食卓に集まっているのだから。

 

しかし、いざ食事が始まると、そんな居心地の悪い空気は呆気なく粉砕された。

 

「んん〜〜っっっ、ぷはぁぁぁ!やっぱコレよコレ!クエスト終わりのシュワシュワに勝る幸福はないわぁ〜」

 

「おいおい、飲みすぎるなよ。また酔いが回ったりツケができたりするぞ?」

 

「サトウカズマ…アクア様はいつもこんな感じなのか…」

 

「ん?ああ、コイツ酒飲みまくるし、その上ここの酒場でツケまだ生み出すしでとんだ体たらくだよ」

 

「そ…そうなのか…」

 

「ん〜何話してるのよ2人とも…あ、唐揚げにレモンかけましょっと!」

 

2人の会話が少しばかり気になったものの、アクアはすぐにレモンをとって、ジャイアントトードの唐揚げにかけるとそのまま頬張った。

しかしその唐揚げは…

 

「おい、アクア!それ俺の唐揚げだったんだぞ!俺レモンかけない派なのに!ていうか、俺の皿のやつ何勝手に食ってんだよ!」

 

「ふぇ?はは、ほへんなひゃい、ふっはひひへはは。へほまははふんあひへふひひひえほ?(え?ああ、ごめんなさい、うっかりしてたわ。でもまだあるんだしいいでしょ?)」

 

なんの悪びれる様子もなく、唐揚げを咀嚼するアクア。カズマは仕返しとばかりにアクアの皿に置いてあったケバブを食らい尽くす。

 

「あーーー!私のケバブ!ちょっと何してくれてんのよ!」

 

「お前が先に始めたんだろ!唐揚げの恨みだ!」

 

「だとしても食べ尽くすなんてあんまりよ!謝って!私のケバブ返しなさいよヒキニート!」

 

「誰がヒキニートだ、アル中ビッチ駄女神が!」

 

アクアがカズマの胸ぐらを掴んで叫び散らかし、対するカズマもアクアの胸ぐらを掴み返して言い返す。もう完全にいつもの2人である。

 

アクセルのギルド恒例のカズアク節に完全に置いてけぼりにされたミツルギは1人モソモソと野菜炒めを口に運ぶ。

錬太郎は、気落ちしたミツルギを励ますように、パスタの入った皿を彼の前に差し出した。

 

「これとても美味しいよ、良かったら食べてみてよ」

 

「…ッ。呑気だな…これから僕と君はアクア様をかけて決闘する者同士というのに…」

 

「そうだけど、今は同じ食卓で飯を楽しむ仲間だ。後のことは考えないで、この瞬間を楽しもうよ、ミツルギくん!」

 

「は、はぁ、ではいただきます…んぅ、美味しい…」

 

ミツルギはアクアに出会えたことに対する喜びと、アクアに覚えてもらえてなかった複雑さと、パスタの味に感激したという、三重の意味の混じった涙をほろりと流しながら、麺を啜る。

そんなミツルギの様子を、錬太郎は労わるような、慈しむような瞳で眺めていた。

 

ミツルギの取り巻きの2人の少女、クレメアとフィオも、ダクネスやめぐみん、ゆんゆんといった女性陣と共に仲良く会話を弾ませている。

当初こそ、ミツルギの後ろで構えては、敵対心を剥き出しにしていたのだが、食事を通して和みに和みまくったため、出会った頃のピリピリした感じは影も形もなくなっていた。

 

「じゃあ、めぐみんちゃんとゆんゆんちゃんは紅魔の里の同期で、紅魔族の学園のツートップだったってこと⁉︎魔法の扱いに長けている紅魔族ってだけでもすごいのに、その中でも秀才に入ってたなんて、とても凄いじゃない!いいなぁ、うちのパーティーにも魔法職欲しいなぁ。」

 

「クレメアさん…あ、あの、ありがとう…ございます」

 

「どうしてこういう時に挙動不審になってしまうんですか、このぼっちは…我らは魔王軍も恐れる紅魔族ですよ?もっと堂々としてくださいよ!」

 

「うう…でも…」

 

「あはは、2人とも仲良いんだね。」

 

「フィオ殿は盗賊なのか…私の友にもクリスという者がいてだな…」

 

「へぇ〜、意外。ダクネスさんの知り合いにも盗賊職がいるなんて…」

 

先ほどまで敵同士だった2つの徒党が一緒に和気藹々と会食するという光景は、なんとも奇妙であったものの、カズマパーティーとミツルギパーティーの会食は互いの親交を少しばかり深めたのだった。

 

 

 

会食が終わり、各自解散となった。もう殆どの者が決闘のことなど忘れて楽しみ尽くしており、クレメアとフィオは宿に、アクアはダクネスに背負われ馬小屋へと連れて行かれた。

そして今この場には、錬太郎、カズマ、めぐみん、ゆんゆん、そしてミツルギだけが残されていた。

 

「ふぃ〜、食った食った…」

 

「なんだかカズマがおっさんみたいですね」

 

「何だとロリっ娘!優しいカズマさんは満腹で機嫌がいいから見逃してやるが、今度は容赦しねぇからなぁ!」

 

「私はロリっ娘ではない!」

 

会食が終わったばかりというのに早速喧嘩を始めるカズマとめぐみん。その様子はどこか年頃の兄妹のよう…まったく、仲が良いのか悪いのか…

 

「はいはい、2人とも、喧嘩は後でしようね。」

 

2人の間に入り、仲裁する錬太郎。カズマとめぐみんは渋々としながらも喧嘩を止めた。

 

「では、百瀬錬太郎。決闘といこうか」

 

ミツルギが錬太郎に向かって決闘のことを呼びかける。錬太郎も覚悟を秘めた瞳でミツルギを見据えて答える。

 

「…わかった」

 

「え〜、結局勝負するのかよ…」

 

「それが彼の覚悟だからね、受け止めなければ無作法というもの」

 

錬太郎の勝負を受ける気に変わりはないらしく、カズマとめぐみんは頭を抱える。どうしてこんな時に頑固になってしまうのかと。

 

「大丈夫、負けるつもり()ないから、信じてよ」

 

「…しょおがねぇなぁ〜、じゃあガッチャードでちょちょいと決めろよ」

 

「ガッチャードなら確実に勝てますもんね!」

 

「いや、ガッチャードにはならない。彼との一対一の真剣勝負にケミー達の力を借りるのはお門違いだからね。というわけで、これ持ってて」

 

錬太郎はガッチャードライバーをカズマに、ケミーライザーとガッチャードローホルダーをめぐみんに預けると、ミツルギの元へと向かい、彼と相対する。

 

「おいおい、まさか本当にあのままで戦うのかよ…」

 

「いくらレンタロウでも、武器を持つ相手に丸腰は…」

 

武器やベルトを持たずに戦いに臨む錬太郎に、カズマとめぐみんは懸念を抱く。しかしゆんゆんは

 

「大丈夫、錬太郎さんは負けない…」

 

いつの間にかカードから実体化したホッパー1を抱き抱えながら言った。

 

「ゆんゆん、どうしてそんなに信じられるのですか?」

 

「逆に2人は信じないの?ホッパーちゃんも、錬太郎さんにはちゃんと考えがあるって言ってるから…きっと大丈夫よ。」

 

『ホッパー!』

 

ゆんゆんの言葉に賛同するように元気よく声をあげるホッパー1。

 

そしてミツルギが剣の柄に手をかけた時、戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

魔剣グラム。ミツルギ自身に絶大な力を与える彼専用の神器。ミツルギはその剣を持ってして、いくつもの高難度クエストを突破してきた。そして今回の戦いもミツルギの圧勝かと思われた

相手が彼、もしくは佐藤和真以外ならば

 

「『下にあるものは上にあるもののごとく 上にあるものは下にあるもののごとく ただ一つたる 奇跡をなさん』」

 

グラムを手に、進撃するミツルギを前に、錬太郎は錬金術の詠唱を発動させ、アルケミストリングが装着された右手を前に出す。すると、目には捉えることできない障壁が、グラムの斬撃を弾き返した。

ミツルギは驚きながらも、グラムの斬り込む角度を変えて再び刃を振るう。しかし、その度に錬太郎は障壁を出現させて完全防御する。

 

「…なら」

 

ミツルギは一旦錬太郎から距離を取り、助走をつけてグラムを振りかぶる。錬太郎は焦る様子もなく、錬金術で障壁を作り、攻撃を防いだ。

 

次の瞬間、ミツルギの体が宙を舞った。助走による勢いと、障壁による攻撃の反発を利用したのだ。再び地面に着地したミツルギの眼前にはガラ空きの錬太郎の背中。

特大の隙とばかりに、ミツルギはグラムを下から上に向けて弧を描く様に振るった。

 

「「錬太郎(レンタロウ)!!!」」

 

カズマとめぐみんは、大切な仲間の名を叫ぶ。不安の色が滲んだ両者の声は、夜空にひどく響き渡った。

 

「『万物はこれなる一者の改造として生まれうく』」

 

グラムによる攻撃が炸裂する瞬間、錬太郎は再度錬金術を発動させる。

刹那、錬太郎とミツルギの間の地面が隆起し、巨大な土の塊が、壁の如く出現する。

グラムにより難なく切り裂かれたが、土の壁の向こうには、錬太郎の姿はなかった。

 

「ど、どこだ…」

 

突然対象を見失い、狼狽するミツルギ。

 

「『偽りなき真ニテ げに真なり』」

 

詠唱が聞こえたのはミツルギの背後。先程まで背後をとっていたはずが、今は逆にとられている。錬太郎はあの一瞬で、万物錬成と、空間錬成を同時に行い、見事、ミツルギを出し抜いたのだ。

 

「すげぇ」

 

「武器無しで魔剣の勇者をここまで翻弄するなんて…」

 

「だから言ったでしょ?錬太郎さんは大丈夫だって!」

 

錬金術を駆使して上手に立ち回る錬太郎にカズマとめぐみんは喫驚を隠せない。対するゆんゆんはまるで自分のように誇らしげにしている。

 

「(攻撃は防がれ、背後に回ったとしても対応される…もう攻める手立てがない…)」

 

ミツルギは万策尽きたようだ。元々彼は魔剣に頼った戦闘スタイルであるため、その魔剣が通用しなければ一気に形勢不利となる。錬太郎はそのことを戦闘中に把握していた訳ではないのだが、使用者次第で、あらゆる状況に柔軟に対応することが出来る錬金術は、ミツルギには相性が悪かったのかもしれない。

しかし、ミツルギも勇者。ここで諦めるのはプライドが許さない。だが、攻撃手段が軒並み潰されてしまった今、錬太郎の瞳を見据えるだけになってしまっている。

錬太郎も沈黙したまま、ミツルギの両目をジッと見ている。

両者の睨み合い(見つめ合い?)は暫く続いたのだが、錬太郎が口火を切り、沈黙を破った。

 

「ミツルギくん…君はアクアを自分の徒党に加えて、その先に何がある?」

 

「何⁉︎」

 

「アクアを仲間にして、その先に見据えるビジョンは何だ?望む景色も無く、ただの自己満足のためなら、アクアも快く受け入れてはくれないよ。」

 

錬太郎の言葉にミツルギは俯く。そして考えが纏まったのか顔を上げると大きな声で言い放った。

 

「この世界の平和!それ以外ないだろう!」

 

ミツルギの回答を聞いて、錬太郎はフリーズした機械のように一瞬固まる。その後、右人差し指のアルケミストリングを取り外して

 

「あの、ちょっと一回座ろう…」

 

「え?あ、ああ」

 

錬太郎に言われるがまま、ミツルギはグラムを地面に置いて正座する。そして錬太郎もミツルギと対面で正座する。

一応これでも男と男の決闘中である。

 

「さっき、世界平和って言ったよね?」

 

「あ、ああ…」

 

「それ、勇者やヒーローが誰しも心に秘めてるけど、絶対言っちゃいけないやつだよ!」

 

「えええ!!!」

 

錬太郎の言い分に何処かテンプレ感のある反応をみせるミツルギ。そんな彼の反応が少し可笑しかったのか、錬太郎はフッと小さく笑い、

 

「だってそうでしょ?世界平和なんて1人の女神と、1人の特典持ちの異界人だけで、はいどうぞって成し遂げられるものじゃない。そんな簡単なら、この世界に異界人が何人も訪れたりはしない…世界中の人々が共通の目標のために手を取り合って、やっと成し遂げられるようなものだから…」

 

「た、確かに…」

 

「後ね、アクアはこの世界でカズマ達と過ごす日々を少しずつだけど楽しく感じてるし、本人は多分口に出して絶対に言わないけど、カズマのことは、本当に凄く信頼してるだろうから…だから、今回は身を引いて欲しいかなぁ」

 

「そうか…だが…」

 

錬太郎の話を聞いて尚、ミツルギはまだアクアのことを諦められないようである。そのことを察した錬太郎は一つ提案を出す。

 

「ミツルギくんってさ、まだこの街にはいる?」

 

「あ、ああ。長くて2日ほどは。」

 

「じゃあ、僕たちのパーティーと君のパーティーで明日クエスト一緒に受けよう!」

 

「ちょ、錬太郎!」

 

「何勝手に決めているんですか⁉︎」

 

「錬太郎さん、それは…」

 

錬太郎の提案に抵抗を含む様子の3人。しかしミツルギはほんの少し期待の混じった様子で

 

「…いいのか?」

 

「大丈夫!リーダーのカズマに許可とって貰うから」

 

「…わかった。長く時間をとらせて申し訳なかった。では、また明日」

 

ミツルギは地面に置いてあったグラムを回収し、その場を後にした。

 

 

 

 

「全く、勝手に決めちまうなんてよ!」

 

「そうですよ、一言くらい相談してくれても良かったじゃないですか!」

 

「錬太郎さん、流石にあれはちょっと…」

 

錬太郎が勝手に決めた合同クエスト参加に苦言を呈する三人。明らかに不満な様子が態度から見て取れる。

カズマは腕を組みながら顰めっ面をし、めぐみんは腰に両手を当てて頬を膨らましており、ゆんゆんはじっとりとした紅く輝く目で錬太郎を睨んでいた。

 

「ごめんごめん、でも、ミツルギくんに納得してもらうにはこれしか思いつかなくてさ。アクアが誰の元にいることを望んでいて、誰とともに過ごしていきたいと思っているのかを、間近でもう少し見せた方がいいと思って…」

 

「はぁ〜、全くしょおがねぇなぁ…アクアとダクネスにはお前から説明しろよ」

 

「ありがとう、カズマ」

 

こうしてカズマの説得も無事完了し、明日ミツルギパーティーとの合同クエストが決定したのだった。

 

 

 

 

翌朝、ギルドにて

錬太郎は、作家を目指している遠方の女友達より送られた物語文を読んでいた。

旅の途中で彼女に出会った錬太郎は、彼女の描く小説を面白く思い、それから2人は意気投合し、不定期ではあるものの、手紙を通して小説感想のやり取りをしているのだ。

 

『今回は何の話なの〜?』

 

「架空の惑星を舞台に活躍する5人の王様のお話。5人とも主人公で読み応えがあるんだ」

 

『へぇ〜、僕も読ませて!』

 

クロっちも錬太郎の読んでいる小説に興味津々のようだ。

 

因みに昨日クロっちの帰りが遅かったのは、ケミー集めに夢中で時間を忘れていたらしい。

ケミー探しの途中でウィズが経営している店にも立ち寄ったらしく、

そこで『スケボーズ』、『スパイクル』、『ドクターコゾー』、『エナジール』、『オドリッパ』と計5体のケミーを捕獲した。

クロっちの憶測によると、ウィズがお店に集めた商品に興味をそそられたケミー達が引き寄せられたとのこと。

 

ミツルギ達とのクエストの件だが、ケミーライザー経由でダクネスとアクアにも伝えたところ、なんとか承認してもらうことができた。

アクアは対価としてシュワシュワを五杯奢るように言ってきたが、その条件を飲むことでOKを貰えたのだ。

 

錬太郎は小説を読み終えて、クロっちに渡すと、クエストの受付に向かう。その中で一つ気になるものを見つけた。

 

『コボルトの討伐』

 

どうやら近くの荒地に住み着いたコボルトの群れを退治して欲しいとのことだ。報酬もかなり高いが、どこか妙である。コボルトは群れで行動し、人間相手には強い敵意をむき出しにして攻撃を仕掛けてくるものの、それでも知能は低く、この世界でも弱い部類とされるモンスターである。

魔王軍幹部が住み着いて、碌な依頼を受けることが出来ない冒険者達にとって、これ程都合の良いクエストはないはずだ。なのに、誰も受けようとしていないのである。

 

不可解に思った錬太郎は受付嬢のルナの元に行き、クエストの詳細を聞くことができた。

 

このクエスト、途中離脱する者が続出しているらしい。

 

 




魔剣のミミラギ?さんは錬太郎に説き伏せられました。
さらにロードの手により、ドレッドライバーがついに完成しました!
ちなみにロードは忍者おじさんをマルガムにした人でもあります。

さて、錬太郎の人物像も大体掴めてきたでしょうか?なんか最後に文通?している女の子がいましたが…

そして不可解なコボルトのクエスト、ここからどうなっていくかは、また次回で…

次回予告
「ヴェノムコボルトと新たなるネガマスク」
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