この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

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カタストロフによって取り込まれた賢者の石だが、一欠片だけ吸収されかねていた。
カタストロフに対抗するため、リエは賢者の石の破片を用いて、新たなケミーの卵を錬成した。しかし、卵が孵化する様子は一向に無かった。
そのため、多重錬成の定理を生み出した「ソラ」によって、卵はケミーの力を掛け合わせるための多重錬成用具、『ガッチャードライバー』へと再錬成されたのだった。

錬金見聞録 第四章:「反撃の狼煙」より、一部抜粋


ヴェノムコボルトと新たなネガマスク

クロっちの魔法によって、合同パーティーは目的地の近くまでテレポートし、その後は徒歩で移動した。なぜ目的地に直接移動しなかったのかというと、クエストの詳細を改めて確認し合うためである。

今回のクエストは『コボルト討伐』。

 

荒地に住み着いたコボルトの群れを退治してほしいという、至ってシンプルかつ、簡単な内容…と思われていたのだが、どうやら曰く付きなのだ。

 

その証拠に、これまでいくつものパーティーがこのクエストに参加してはリタイアを繰り返している。

 

面倒ごとに首を突っ込みたくないカズマは、当初そのクエストを拒否したが、報酬の高さに目が眩んだアクアに『錬太郎やみたらしがいるんだからいいでしょ⁉︎』とせがまれ、仕方なく受諾することにした。

 

「情報によると、コボルト達は頭にキノコのようなものが生えていて、常時胞子のようなものを撒き散らしていたようだ。しかもその胞子に触れると、プリーストでも解除出来ない体の痺れや、目眩、悪寒といった状態異常を一定時間引き起こすらしい。」

 

「それはおそらく麻痺なのか⁉︎その胞子に触れて私の体が蝕まれていくと思うと…んにゃはぁん」

 

ミツルギの説明を聞いている最中でも自身の性癖全開のダクネス。相変わらずブレない。

 

「あの…ダクネスさん?」

 

「だめよフィオ、ダクネスさんは相対する魔物とのイメージトレーニングをしてるんだから」

 

「!!そうだったのね、迂闊だったわ…」

 

ミツルギの取り巻きの2人は、ダクネスの邪魔にならぬよう、話しかけないように注意する。

クレメアは、ダクネスが戦闘前であろうとも敵への対策を怠らない騎士の鑑のような人だと思っているようだが、盛大な勘違いだ。

実際のダクネスは、自身が魔物との戦いや毒によって打ちのめされる様子を妄想して興奮している、生粋のドMである。

そんなダクネスを他所に、錬太郎はミツルギに質問をする。

 

「冬中夏草の可能性は?」

 

「それも考えられたのだが、他の目撃証言からして違うみたいだ。コボルトを操っていると思わしき存在と出会したらしいが、銀色の素体に、毒々しい笠を持つ巨大なキノコが包帯で強引に固定されたような見た目をしていたそうだ。冬中夏草にそのような変異種は確認されていないから、僕は別の新種のモンスターなのではと考えている。」

 

ミツルギの説明を聴き終えると、錬太郎はクロっちの方を向いて

 

「成程。クロっち、これってもしかして…」

 

『うん、間違いないね、ヴェノムダケのマルガムだよ』

 

どうやら2人は、コボルトの主とされる者の正体を突き止めたようだ。

 

「ん?ヴェノムダケってなんだ?」

 

『ヴェノムダケ』が気になったカズマは2人に尋ねる。

 

「ヴェノムダケは、プラント属性のレベルナンバー5のケミーで、キノコの見た目をしているんだ。様々な毒を体の中に備えていて、その毒の使い方を誤れば街ひとつ簡単にアウトブレイクしてしまうんだよ」

 

「おいおいおい、序盤で戦う相手じゃねぇだろ!それ絶対ラスボスクラスのやつじゃねぇかよ!」

 

カズマはヴェノムダケの能力を聞いて戦慄する。街一つ滅ぼしかねない存在と対峙するかもしれないのだから当然だ。

 

そんなカズマにでも、と錬太郎は続けて

 

「ヴェノムダケの力を応用すれば薬にもなるから、ケミーの力は使い方次第ってことさ。」

 

『そうそう、それにヴェノムダケ用の解毒薬も持ってるから後で皆に配るね〜』

 

クロっちの解毒薬持参発言に安心して、カズマは胸を撫で下ろす。

その後、カズマは何かを思い出したのか、錬太郎に話しかける。

 

「そういえばカツラギのやつ、何で頬を腫らしてるんだ?」

 

カズマに対してそんなこと今聞く⁉︎と錬太郎は思ったものの、理由を知っているため、経緯を説明する。

 

「ミツルギね、カズマ。実は昨日のクエストでミツルギくんがアクアの入ってた檻を壊したと思うんだけど、そのせいで湖の浄化の報酬から檻の弁償代を差し引かれちゃったみたいなんだ。それで怒ったアクアがギルドに来たミツルギくんに思いっきり右ストレートを打ちかましちゃって…」

 

「プッ…へぇ〜、そうか…」

 

錬太郎の説明を聞いてカズマは吹き出し、顔を綻ばして嬉しそうにする。昨日の一件をまだ完全に許せた訳ではないらしく、ミツルギが心を寄せているアクアに殴られたことが心底面白く、いい気味だと思ったようだ。

そんなカズマを見て、めぐみんは軽く引きながら、

 

「何故急にニヤニヤし始めるんですか⁉︎気持ち悪いですよ」

 

と辛辣に吐き捨てた。その後、めぐみんの発言に青筋を立てたカズマが彼女と口論になったのは想像に難くない。

 

 

 

 

話をしながら漸く目的地へと到着した一同。

そこには大きな洞窟のような、コボルト達のコロニーがあり、かなり大人数の見張りが構えていた。

最初から攻め込むのではなく、暫く様子見しようというカズマの意見の元、今現在、全員近くの岩場に身を隠している。

 

『う〜ん、ここから見た感じだとまだ気づかれていないっぽいね…。目撃証言通り頭にキノコも生えてるね…』

 

クロっちは双眼鏡を取り出してゴボルトの様子を偵察する。

 

「ていうかクロっち、双眼鏡なんていつ買ったの?」

 

『ついこないだ、錬太郎にも貸そうか?』

 

「じゃあ、お願いするよ。」

 

『了解、ウィ。』

 

錬太郎はクロっちから双眼鏡を手渡されると、コボルトの群れに双眼鏡の対物レンズを向けた後、自身の両目に接眼レンズを近づける。

 

「え〜と、成程。全員武器を持ってて、弓矢を持ってるのと剣を持っているのとで半々か…」

 

「まぁいくら知能が低いコボルトとはいえ、統率者がいるならこれくらいの武装はあり得るな」

 

「今のところはキノコ以外は普通のコボルトの群れって感じね…」

 

錬太郎からの情報にダクネスとアクアがそれぞれの見解や意見を述べる。

しかし、次に語られた情報が、冒険者達に衝撃を与える。

 

「待って…コボルト達の持ってる矢…毒が塗られてる⁉︎」

 

錬太郎の見聞に皆、一斉に彼の方を向く。

コボルトの弓矢部隊は、いつでも敵を迎撃できるようにするためか、片手に弓を持ち、空いているもう片方の手に何本かの矢を握りしめているのだが、矢尻の先端部分に毒が塗られているというのだ。

 

「どういうことですか⁉︎どうしてコボルトが…」

 

「毒を駆使する程の知力はないはずなのに…」

 

知力の高い紅魔族のめぐみんやゆんゆんでさえ動揺を隠せていない。

錬太郎達が対峙しようとしているコボルト達はそれほどまでに異様なのだ。

 

『2人とも落ち着いて。取り敢えず僕の魔法で皆にバリアを張るからその後に「クロっち」…どうしたの錬太郎?』

 

「ごめん、気づかれた…」

 

錬太郎からの伝達に皆静まり返り、暫くして

 

「「「「「「「「「ええええええええええええ」」」」」」」」」

 

驚きの声を上げる。そんな間にも放たれた矢が一同が隠れている岩に突き刺さり、岩を超えてきた矢達も、各々の足元の地面へと貫通する。さらに剣部隊も岩の方へと駆け出している。

 

「ひぃぃぃぃ!カズマしゃあん、れんたろしゃあん、コオロギしゃあん!どうしようどうしようどうしよう!」

 

アクアは恐怖の余り、目に涙を溜めてカズマに縋り付く。カズマも命の危機に瀕しているのを感じとっているいるため、震えながらアクアを諭す。

 

「こ、怖いのはわかるが、い、い、一旦落ち着け…」

 

「アクア様、ミツルギです。こうなったら僕が!」

 

「駄目だ。今出ていくと蜂の巣にされる。それに仮に矢を避けれたとしても胞子の影響で上手く立ち回れないよ」

 

ミツルギは一人飛び出そうとするが、錬太郎に静止され、悔しそうに俯く。

 

「では、どうするんだ百瀬錬太郎!このままではいずれ剣撃部隊がやってきて全滅は必至だ!」

 

「僕がなんとかするよ、ガッチャードの装甲なら毒の矢ごときで破損しないし、胞子も防げるからね。それに、元はと言えば僕のせいだし、自分の落とし前は自分で始末をつけるよ…」

 

「ん、ガッチャード?」

 

ガッチャードという言葉にミツルギは心当たりがあるようだが、状況が状況であるため、そんなことは気にせず錬太郎はガッチャードライバーを装着し、2枚のカードを装填して変身する。

 

『ホッパー1!』『スチームライナー!』

 

「変身!」

 

『ガッチャーーンコ!スチームホッパー!』

 

錬太郎は瞬く間にガッチャード スチームホッパーに姿を変え、岩から飛び出すと、コボルト達を岩より遠くの場所へと挑発しながら誘導する。

 

「こっちだ!コボルト共!」

 

 

 

 

広場にコボルト達を誘導し、ようやく戦闘態勢に入るガッチャード。接近戦を用いる剣部隊のコボルトには拳を振るい、遠くから弓矢で迎撃してくる部隊には錬金術を用いて対応していき、徐々に敵の数を減らしていく。

 

「さあ、ジャンジャン行くぞ!」

 

ガッチャードはカードを手に取り、ベルトに装填する。

 

『グレイトンボ!』『ブッサソーリー!』

 

『ガッチャーーンコ!グレイトサソーリー!』

 

ガッチャードの体が光に包まれ、姿が変わる。

 

短躯な蠍の姿ながらも、蜻蛉の如き羽根を備えた

グレイトサソーリー ワイルドモード

 

ガッチャードはその小さな体をうまく利用してちょこまかと飛び回り、コボルト達を翻弄する。そして、隙をついてコボルト達に毒の尾を打ち込んで撃破していく。

ある程度仕留めると、新たにカードを取り出し…

 

「次はこれだ!」

 

『サスケマル!』『エナジール!』

 

『ガッチャーーンコ!エナジーマル!』

 

瞬く間にガッチャードの姿が再び変化し、容器から液状の手裏剣が飛び出している、一枚の絵のような姿

エナジーマル ワイルドモード となる。

 

この姿でも宙を舞うガッチャードを目掛けて、コボルト達は弓で狙い撃つ。しかし、肉体が液状となっているガッチャードの体を一方的に矢が通過するだけで、攻撃は通らなかった。

 

「今度はこっちの番だ!」

 

ガッチャードは自身の液状の肉体を五分割すると、それぞれ手裏剣へと姿を変えて、コボルト達を次々と斬り捨てていった。

 

「もういっちょ!」

 

『オドリッパ!』『カマンティス!』

 

『ガッチャーーンコ!オドリマンティス!』

 

ガッチャードが再度カードを入れ替えると、また新たな姿が露わになる。

 

踊り子の舞装束と民族衣装を合わせたような鎧を纏い、両腕には巨大な鎌を備えし淡緑色の戦士ーー

仮面ライダーガッチャード オドリマンティス

 

「これで決める!」

 

ガッチャードはベルトを操作して必殺体勢に入る。すると風がガッチャードを中心に集まっていき、宙へと運ぶ。そして…

 

『オドリマンティス!フィーバー!』

 

全身から風を纏った無数の斬撃をあらゆる方向に放ち、ついに全ての見張りのコボルトを撃退した。

 

ガッチャードが変身解除して、錬太郎に戻るとカズマパーティーの面々が駆け寄ってくる。

 

「やったな錬太郎、あのコボルト達を倒すなんて!」

 

「新しい姿、どれも我が琴線にビンビン来ましたよ〜」

 

「もうこのクエストもクリアしたも同然ね!さっさとボスも倒しちゃいましょ」

 

「こらこら、アクア。あまり調子に乗っては駄目だぞ…それにしても最後の間の無数の刃…是非一度受けてみたいものだ…ハァ…」

 

「流石錬太郎さんです!」

 

「…ええと」

 

各人各様の反応に、誰から返せばいいのか、錬太郎はオロオロとしている。そんな中、岩場に残されていたミツルギ達もやって来た。

暫く黙っていたミツルギは口を開くと…

 

「百瀬錬太郎…まさか…君が噂の錬金戦士ガッチャードだったのか…」

 

震える声で錬太郎に尋ねたのだった。

 

 

 

 

「え、錬太郎ってそんな有名なのか?」

 

「有名なんてものじゃないぞ、サトウカズマ!錬金戦士ガッチャードはその素顔を知らぬ者も多い仮面の戦士として王都でもよく噂になっているのだ!

それに、ここ2年間で国家指名手配されている悪しき錬金術師達を次々と倒していることもあって、王家からも一目置かれているのだぞ!」

 

ミツルギの話を聞いてカズマ達は錬太郎の方に向き直り、

 

「は⁉︎お前そんな名高い冒険者だったのかよ?なんで教えてくれなかったんだよ!」

 

「いや…そんな噂になってるなんて知らなくて…」

 

「本気で言っているのか⁉︎自分が成し遂げた功績から考えたこともなかったのか⁉︎」

 

「いやねぇ、ダクネス…終わったことはなるべく振り返らないようにしてるから…」

 

「やっぱり錬太郎さんは凄い人だったんですね!これまでの戦いでの強さも納得です!」

 

「ああ…どうも」

 

錬太郎はカズマ、ダクネス、ゆんゆんのマシンガントークにおどおどとしながらも対応した。

 

「しかし、錬金術を悪しきことに使う不届者を私と同い年の頃から退治してきたなんて物凄いですね!それに正義の錬金術師が悪の錬金術師に天誅を下す…かっこいいですよこれは!」

 

めぐみんの発言を聞いて、一瞬錬太郎の目から光が消える。そして、

 

「でも…皆が思うほど、かっこいいものじゃないよ」

 

悲しそうに笑みを浮かべて言った。

 

「またまた〜、褒められる機会があんまなくて照れてるのか〜、うりうり〜」

 

「そうですよ、素直に喜んでくださいよ。ほらほら〜」

 

錬太郎が謙遜してるように思ったのか、カズマとめぐみんは肘を錬太郎に押し付けてグリグリとやって揶揄う。そんな2人を見て、錬太郎は困ったように笑うのだった。

 

「てなると、賞金もかなり貰ってるはずよね、錬太郎さん?」

 

アクアも目を爛々と輝かせて、媚を売るように錬太郎の元に寄る。出来ることなら、シュワシュワを大量に奢って貰おうという算段なのだろうが…

 

「ごめん、全額寄付しちゃった…」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎何してんのよ、アンタのことだからそこは普通貯金するでしょうが!」

 

アクアは錬太郎の胸ぐらを掴んでぐわんぐわんと揺らす。見かねたカズマがアクアを制止しようと駆け寄った

 

が、その前に錬太郎はアクアの手を強引に振り払い、

 

「うるさいな!自分の金の使い方くらい僕の自由にしたっていいだろ!」

 

今までの大人びた様子から一変、感情に身を任せて言い放つ。

普段からは想像もつかない錬太郎の様子に周りの皆は黙ってしまう。

 

気まずい空間になってしまったことを漸く理解した錬太郎は、皆に頭を下げて、「ごめん」と弱々しい声で謝罪するのだった。

 

 

 

 

あらから数分して、カズアク節、カズめぐ節のお陰で場の空気もようやく和んだ。

 

胞子の危険性を考慮して、クロっちの魔法で全員がバリアを身に纏い、意を決してコボルト達のコロニーへと潜入する。

 

一同が列を組んで進んでいくと、途中から道が二手に別れていた。

 

話し合いの結果、

カズマ、アクア、めぐみん、ダクネス、ゆんゆん、クロっちのグループと

錬太郎、ミツルギ、クレメア、フィオのグループにわかれて散策することとなった。

 

「カズマ、大丈夫?それにめぐみんも閉所で爆裂魔法は…」

 

「心配すんな錬太郎。フィオさんから残りの盗賊スキルも教えてもらったし、それに俺たちにもケミー達がついてるからな!」

 

「私もそこは懸念していましたが、ザ・サンが爆裂魔法の威力を上げつつ、コロニーが崩れないように調整してくれるとのことなので大丈夫ですよ!」

 

心配する錬太郎にカズマはウインクしてみせ、めぐみんは洗練された動きでポーズをとった。

今回カズマ達をサポートするために、「ユニコン」、「ザ・サン」、「カリュードス」、「ジャングルジャン」が同伴することになっている。

錬太郎はケミー達にも宜しく頼むよう伝える。

 

「では、ご武運を…」

 

ゆんゆんの言葉を合図に、二班はそれぞれのルートへと足を進めていった。

 

 

 

 

「すごい、すごいぞみんな!私でも攻撃を当てられる!これが…これがケミーの力⁉︎フフフフフ、ハハハハハハ!」

 

ダクネスを先頭にしながら道を進んでいくカズマ達。ダクネスがケミーライザーを通じてカリュードスの力を解放し、行手を阻むコボルト達をバッサバッサと斬り倒して行った。

 

「なんだかダクネスさんの性格変わってませんか?」

 

「ゆんゆんの言うとおりいつものダクネスらしくないですね…」

 

『君の影響なの、カリュードス?』

 

めぐみんとゆんゆんの話を耳に挟んだクロっちがダクネスに力を貸しているカリュードスに尋ねた。

 

『カリュー』

 

『よくわからない、ボクも怖いだってさ…』

 

「おいおいクロっち、肝が冷えるようなこと言うなよ…あれはダクネス本人の意思でああなってるってことかよ⁉︎まぁ、いいダクネス、そのままガンガンやっていけ!」

 

「心得たぞ、カズマ!」

 

声高らかに答えると、ダクネスはより勢いを増して道を切り拓いていく。その様子を見届けると、カズマはアクアの方に視線を移す。

錬太郎に怒鳴られたことがまだ引っかかっているのか、やけに静かだ。

 

「錬太郎とのこと気にしてんのか?」

 

「…別にそんなんじゃないわよ…」

 

わかりやすい。アクアはカズマの言ったことが完全に図星なようだ。

 

「まぁ、今は目の前のことに集中するぞ?クエスト終わった後にでも謝ればいい」

 

「⁉︎そうね」

 

珍しく優しく声を掛けてくれたカズマに少々驚きながらも、アクアはいつもの調子に切り替える。そしてちょうどその時、道を照らす一筋の光が入り込んでいるのが見えた。

 

出口はそろそろのようだ。

 

カズマ達が出口を抜けると、そこには松明で照らされた空間があり、そこに一体のコボルトが待ち構えていた。しかし他のコボルト達と違い、明らかに質の良い鎧を身に纏っていて、頭には冠のようなものを被っており、明らかにコボルトの王ともいえるモンスターだった。

 

「来タカ…人間…」

 

コボルトの王は口を開くなり言葉を話した。その事実にカズマ達は驚愕の表情を浮かべる。

 

「嘘だろ…コボルトが言葉を話すなんて…」

 

「明らかに知性が異常ですよ、これは一体…」

 

「驚クノハ無理モナイ…俺ハ、魔王軍ノ幹部ノデュラハン様ヨリチカラヲ頂イタノダ…」

 

コボルトの言葉から明かされた事実に、またしても皆当惑する。

 

「つまり貴様は、魔王軍の手先ということか…」

 

「ソウダ…ソシテ、アイツ、サンドロスカラモスゴイチカラヲ受ケ取ッタ…ミセテヤル…」

 

そう告げると、コボルトの王の体を黒い霧が包み込み、その姿を変貌させる。

 

毒々しい青い笠を持つ巨大なキノコが包帯で強引に固定されたような悍ましい見た目の怪物ーー

ポイゾナスマッシュルームマルガムが現れた。

 

マルガムを目前に、カズマ達は身構える。マルガムはカズマ達を堂々とした様子で見据えて言い放った。

 

「サア、来イ…」

 

 

 

 

一方こちらは錬太郎達のグループ。一本道に沿って進んでいくが、行手を阻むコボルトと全く遭遇しないのだ。

 

「なんか妙だね…」

 

「そうだな、これまでに一度もコボルトに出くわさないのは明らかにおかしいな」

 

「ねぇ、なんだか怖くなってきたわ…」

 

「私も…」

 

「心配するな2人とも、いざとなったら僕が必ず守る!」

 

「流石キョウヤ!」

 

「男前ね!たよりになるわ!」

 

未知への恐怖に怯えていたクレメアとフィオを慰めるミツルギ。そしてそんなミツルギにひっつく2人。世の男共が目にしたら血涙を流しそうな光景だが、純粋な錬太郎は特に妬むことはせず、頼りになるなぁと感心していた。

そして錬太郎達も出口を抜けた。

 

「ん?来客ですかね…」

 

そこには白いローブを身に纏い、下唇を噛み締めて悔しがる、怨みの表情を模した仮面を身につけた男がいた。

 

「おお…これはこれは。面白いことになりそうですね…」

 

男は錬太郎とミツルギ、そしてクレメアとフィオをジロジロと眺めた後、自身の仮面を外し、ローブを脱ぎおろす。

 

そして現れたのは上等な鎧に身を包んだ茶髪の青年…つまり

 

「ウソ…どういうこと」

 

「キョウヤがもう1人?」

 

「どうなっているんだ…」

 

「こんなことが…」

 

そう、4人の前にはもう1人のミツルギがいたのだ。

予想外の事態に錬太郎でさえも動揺を隠しきれていない。

そんな4人をお構いなしに、もう1人のミツルギは

「ゴリラセンセイ」のケミーカードを取り出すと、その力を取り込み、

頭部に左拳、右肩に苦しむゴリラの顔という特殊な見た目の怪物

ーーゴリラマルガムへと変貌する。

 

「私は暗黒のネガマスクが1人、『サンドロス』。以後、お見知りおきを…それにしてもオリジナルケミーはいいですね…力が漲ります…」

 

ゴリラマルガムは自身をサンドロスと名乗り、構える。

錬太郎もガッチャードライバーを取り出して腰に装着し、2枚のカードを装填する。

 

『ホッパー1!』『スチームライナー!』

 

「変身!」

 

『ガッチャーーンコ!スチームホッパー!』

 

勇ましい錬太郎の掛け声とともに、蒼き装甲が彼を包み込み、仮面ライダーガッチャードへと変化させた。

 

ガッチャードとサンドロスは互いに接近し、拳をぶつけ合いながら会話をする。

 

「ネガマスクということは…お前もロードの一味だな」

 

「フン…半分正解というところですかね?私はあのお方に頼まれてとある人物達を探しに来ておりましたね…そのための情報収集の一貫として、今は魔王軍に潜入しているのですよ」

 

「ロードが一目おく人物だと?誰だ!」

 

「さぁ、意外と貴方の知っている方々かもしれませんよ?おっと、無駄話はこれくらいにしておきましょうか…それ!」

 

サンドロスは一瞬の隙をついてガッチャードの懐に拳をいれる。

咄嗟のことで防御が出来なかったガッチャードは後退り、地面に膝をついてしまう。

 

「もう、終わりですか?」

 

「僕を忘れるな!」

 

ミツルギは、魔剣グラムを両手で力強く握りしめながら振るい、サンドロスを斬りかかる。

対するサンドロスは棒立ちのまま、ミツルギの攻撃を受けたが、全然ダメージはないようで、ビクともしていない。

 

「こんなものですか…」

 

サンドロスはやれやれと言いたげに、ミツルギの腹部に右膝蹴りを喰らわせ、その後、脇腹に回し蹴りを入れて吹き飛ばした。

 

「「キョウヤ!!」」

 

ミツルギを案じ、クレメアとフィオは駆け寄る。

 

「このままじゃ、ここは…」

 

ガッチャードは「スケボーズ」と「アッパレブシドー」のカードを取り出す。フォームチェンジを駆使してこの状況を打開しようと試みる

が、

 

「させませんよ、ハァ!」

 

「!?」

 

サンドロスは右腕を正拳突きのように突き出し、ガッチャードへ向けて拳圧を放つ。その威力は凄まじく、壁を突き破り、ガッチャードをカズマ達のいる方へと飛ばしてしまった。

 

「あらあら、ガッチャードにしては骨が無いですね…まぁ、時期を考えれば当然ですが…では魔剣の勇者さん、続きを始めましょうか…」

 

 

 

 

 

 

カズマ達はポイゾナスマッシュルームマルガムと対峙している。クロっちが予め張っておいたバリアがあるため、戦闘は有利に進むかと思われたが…

 

『まさか…僕のバリアが溶かされるなんて…』

 

マルガムの発する胞子は思った以上に強力で、各々のバリアを無効化してしまった。

 

「クラエ…」

 

「危ない!」

 

マルガムは両手から毒の粉末を弾丸のようにして撒き散らす。ダクネスは皆を守るように前に出て、その攻撃を一身にうけた。

本来ダクネスは耐久力や状態異常に対する耐性が強いのだが、マルガムの毒は屈強な彼女でも耐えることは出来ず、膝をついてしまう。

 

「おいダクネス、大丈夫か?」

 

「…気をつけろ、一発でも喰らえば…麻痺で体を動かせなくなる…」

 

身体を震わした様子でダクネスは駆け寄ったカズマに答える。そこにいつもの悦びに悶える様子は微塵もなかった。

 

「安心しなさい、こんなときの私よ!『セイクリッド・ブレイクスペル』!」

 

アクアは自身のスキルでダクネスの状態異常を無効化しようとする。しかし、何も起こらなかった。

 

「ど、どういうこと?どうして私の魔法が効かないの?」

 

狼狽えるアクアにクロっちが説明する。

 

『多分だけど、魔王軍幹部から与えられた力とヴェノムダケの力が混ざり合って、アクアの力の範疇を超えているんだ…』

 

「そんなのありかよ、クソッ!」

 

女神の力を一時的に超えているというあまりの理不尽にカズマは舌打ちをする。はっきり言って追い詰められかけている、この状況をどうするべきか、カズマが悩んでいたその時…

 

ものすごい勢いで壁が突き破られ、ガッチャードが飛ばされてきたのだ。

 

「れ、錬太郎⁉︎大丈夫か?」

 

カズマは吹き飛ばされてきたガッチャードに駆け寄り、安否を確認する。対するガッチャードも首を縦に振り、無事を伝える。

 

「次々ト猿ドモガ降ッテハ沸クナ…全員オレガ倒ス…」

 

マルガムが低い声で淡々と告げる。その圧倒的威圧感にガッチャードも、すぐにはこの場を離れてミツルギ達の元へは戻れないと察する。

 

「(ごめんミツルギくん、もう少し持ち堪えてくれ…)」




どうも、最近RAMM feat Ayami様の「Freedom」を聴きながら執筆しております山田です。
今回はミツルギパーティーとの合同クエスト回でした。
親交を深めたのもあり、フィオを通じて、カズマさんが原作よりも早く他の盗賊スキルを覚えました。
そして珍しく錬太郎がマジギレ 一体何が地雷だったのか…
さらに魔王軍幹部とヴェノムダケによって凶悪化したコボルトの王、かなり激戦の予感がしますね。
新たなネガマスク、前回の予告でライラ姐さん似かと思いましたか?
残念、ミツルギと瓜二つのサンドロスでした。
名前の由来はアレクサンドロス大王から。
サンドロスは探している者達がいるそうですが、それは誰なのか、またガッチャードにしては骨が無いといった複数の意味深発言の真意とは?

後最初に言っておきます
この回と次の回、そしてさらにその次の話は今後の展開においてかなり重要になってきますので、是非お楽しみに

それではまた次回

次回予告
「それぞれの覚悟、今こそブシドー極まれり!」
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