この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

14 / 89
ガッチャードライバーを手に、ソラはカタストロフとの決戦に臨む。
リエによって生み出された100体のケミーとの融合による、「超多重錬成」を成し遂げたソラは、暁の戦士、「ガッチャードデイブレイク」へと変身する。
その力は、世界を滅ぼすと評されたカタストロフを軽く圧倒した。
最後はソラとリエ、ジュンとケミー達が力を合わせ、カタストロフを次元の狭間へと封印し、世界に平和が戻ったのだった。

この出来事を経て、「暁の錬金術師」となったソラは、リエ、ジュンと共に、後世において三賢人と称され、崇められることとなった。

錬金見聞録 第5章:「暁の錬金術師 ソラ」より一部抜粋


それぞれの覚悟、今こそブシドー極まれり!

ポイゾナスマッシュルームマルガムとガッチャード達の戦いは、熾烈を極めていた。

ガッチャードは自身の装甲の機能で、クロっちはケミーであるがため、マルガムの撒き散らす胞子の影響は受けないのだが、カズマ達5人は、胞子を防ぐ術がないため、お互いに庇い合いながら立ち回る。

そのため、思うように攻めることが出来ず、依然として、マルガムの優勢は変わらなかった。

 

「(クソ、攻撃しようにも胞子が邪魔で上手くいかねぇ!しかも動き回れば嫌でも胞子を吸っちまうから、徐々に体が痺れてくる…毒で動けなくなる前に倒さないとマジでやばいぞ!)」

 

弱音にも近い思考のカズマを嘲笑うかの如く、マルガムは全身から四方八方に胞子を撒き散らす。回避のしようがなく、胞子を吸ってしまった5人は体の自由が効かず、地面に倒れ伏してしまう。

 

『これはマズイなぁ…錬太郎!僕は皆の毒を治療するから暫くの間お願いね。』

 

「ああ、任せて!」

 

ガッチャードにマルガムの相手を任せると、クロっちはヴェノムダケ用の解毒剤を取り出し、倒れている面々の元へと向かった。

 

「さぁ、僕が相手だ…」

 

「相手ニハナラナイトイウノニ随分自信ガアルナ…マァ、足掻イテミセロ…」

 

二言交わすと、ガッチャードとマルガムは同時に地面を蹴って、激突する。

 

お互いの拳と脚が何度も何度も交差し、その衝撃がコロニー全体に響く。

互角に思われたその打ち合いは

 

「ハッ!」

 

ガッチャードが競り勝ち、マルガムの顔面に強烈な栄螺殻の一撃を叩き込む。

 

「ナン…ダト…」

 

体勢を崩すマルガム。しかしガッチャードは攻撃の手を緩めない。

下から上に突き上げるように、拳の連撃を腹に打ち込み、最後に軽く舞い上がると、遠心力を利用した力強い回し蹴りを脇腹に喰らわせる。

ガッチャードの猛攻が予想以上で、マルガムは狼狽えながら後退る。

 

「まだまだぁ!」

 

勢いのまま、ガッチャードはベルトのカードを入れ替え、フォームチェンジを行う。

 

『ヒーケスキュー!』『フレイローズ!』

 

『ガッチャーーンコ!ヒーケスローズ!』

 

ガッチャードの体が炎のようなものを纏い、赤と緑を基調とした新たな鎧が生成される。

薔薇の如き棘と、消防士の如き熱き救急魂を備えた姿

ーー仮面ライダーガッチャード ヒーケスローズ

 

「フン、姿ガ変ワッタトコロデ…」

 

ガッチャードの変化に怖気付くことなく、マルガムは突進を仕掛ける。

しかし、それはガッチャードには予測済み。

両腕の武装の「ソーニスプラッシャー」でマルガムの足元へと狙いを定める。次の瞬間、ソーニスプラッシャーからは大量の水が放たれる。

そしてーー

 

「何⁉︎」

 

マルガムは混乱する。

今自分の視界にあるのはガッチャードではなく、見慣れた天井。さらに体が宙に浮いている。

そう、ガッチャードによって濡らされた地面で足を滑らせたのだ。

 

「今だ!」

 

空中に身を放っているマルガムは、丸裸同然。そんな隙をガッチャードが見逃すはずがない。

ガッチャードはフレイローズと錬金術の力によって、自身の周囲に無数の火炎弾を出現させ、

 

「いけ!」

 

マルガムへ標準を合わせると、一斉に撃ち込んだ。攻撃を受けたマルガムは今までの攻撃よりも苦しそうにもがき、地面に這いつくばっている。

 

ガッチャードは思考を巡らす。何故、先程の攻撃でこれほど苦しんでいるのか…威力だけなら蹴りや拳の方が上である。

となると苦手属性があると考えられる。

…つまりポイゾナスマッシュルームマルガムの弱点は

 

 

『炎と熱』

 

 

「レンタロウ、ナイスです!」

 

「私達も回復しました!」

 

丁度めぐみんとゆんゆんもクロっちからの解毒剤で全快したようだ。ダクネスは他の皆よりも浴びた胞子の量が多いため、回復に時間がかかっている。そしてカズマとアクアには、まだ手が回っていないようだ。

 

『ウィ〜、やっと2人分の治療が終わったよ〜。さぁ、次はアクアとカズマの方を…錬太郎!』

 

「ヨソ見スルナ…クラエ…」

 

いつの間に立ち上がったのか、マルガムは胞子をエネルギー状にして、胸の前で集めて光球にすると、ガッチャード目掛けて投げつける。

 

めぐみんとゆんゆんが回復したことに安心し、すっかり油断していたガッチャードは反応出来ずに光球をその身に受けてしまう。

 

「グッ…ハァァァァァァァ⁉︎」

 

命中した光球は、光熱の奔流となってガッチャードを吹き飛ばす。

ガッチャードは地べたに転がり、スチームホッパーにフォーム解除してしまった。

 

「ヨクモココマデヤッテクレタナ…ン?」

 

マルガムは背後の気配を感じ取り、振り向く。

そこには未だ毒の影響で体を満足に動かすことの出来ないカズマとアクアがいた。

マルガムはそのうちのアクアの方を見据えると…

 

「チョウドイイ、ミセシメダ…マズハ、オマエカラアノ世へ送ッテヤル…」

 

右手を広げて前へ突き出し、大量の胞子を放つ。

不幸なことに、動ける者達は皆、アクアから離れており、胞子に対抗できるガッチャードもまだ起き上がれていない。

 

逃れられないことを悟ったアクアは、目を強く瞑る。

胞子の波はそのままアクアに直撃

 

 

することはなかった。

一つの人影がアクアの前に立ち塞がり、代わりに胞子を受け止め、その後倒れ伏す。

それはめぐみんでも、ゆんゆんでも、ダクネスでも、もちろんクロっちやガッチャードでもない。

アクアの間近にいた者…

 

「カズマぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

アクアは痺れる手足をなんとか動かしてカズマの元へと急ぐ。

 

「何やってんのよ!アンタ胞子のせいで碌に体も動かせないってのに…どうして…」

 

アクアの声はどんどん弱弱しく、ついには涙声になってしまう。

 

「何で…だろ…な…自分で…かんがえ…ろよ…だ…め…が…」

 

そこでカズマの意識は落ち、途切れ途切れだった言葉はもう聞こえてこない。

 

「何してんのよヒキニート…いつもは…頼りない癖に…どうして…こんな時に…カッコつけるのよぉ…」

 

アクアはカズマに対して何度も、何度も自身の魔法をかける。しかし結果は変わらない。何度やっても、カズマの目は開かない。

 

「なんでよ…私…女神なのよ…こんな毒くらい…すぐに浄化されなさいよ…なんでよ…うぅ…」

 

到底受け入れることのできない現実に、アクアは嗚咽を漏らした。

それは他の者達も同様で、めぐみんは目尻に涙を溜め、ゆんゆんは衝撃のあまり口に手を当てており、ガッチャードも仮面の下で悔しそうに唇を噛み締める。

その時、

 

『ユニユニ!ユニユニ!』

 

ガッチャードにだけ、声が聞こえた。今回のクエストで、アクアに渡したファンタスティックケミー、

「ユニコン」の声だ。

 

"アクア、カズマはまだ生きてる!お願い、私の声に気づいて!"

 

「ドウ足掻イテモ、無駄ナモノハ無駄。ソウダトイウノニ足掻クノダカラオ前等ハ猿ナノダ…コレデ終ワリダ…」

 

アクアに止めをさすべく、マルガムは拳を天高く振り上げ、勢いよく下ろすが…

 

「させるか!」

 

ガッチャードが咄嗟に乗り込んでマルガムの拳を受け止め、アクアを守った。

 

「シツコイナ…モウ諦メロ…」

 

「僕は諦めが悪いんでね…ケミー達の可能性を、お前達のような悪しき者共に奪わせる訳にはいかない!」

 

マルガムの拳を弾き返すと、ガッチャードはマルガムと攻防を繰り広げながら、アクアに向かって大声で言う。

 

「しっかりしろアクア、カズマはまだ生きてる!ケミーの心の叫びを聞け!ユニコンは、君の想いに応えようとしている!」

 

ガッチャードの声にハッとするアクア。その後、自身の懐からユニコンのカードを取り出すと、彼女に語りかける。

 

「錬太郎の言っていること本当なの?」

 

『ユニユニ!』

 

「そうなの⁉︎それに…力を合わせれば、アイツの毒も浄化できるの⁉︎」

 

『ユニユニ〜ユニコ〜ン!』

 

"できるよ!だからいつものアクアに戻って元気出して!"

そう言っているように感じた。励ましや慰めの一時的な言葉にも聞こえるかもしれない。けれどもユニコンの言葉は、アクアを十二分に奮い立たせた。

 

「そうよ、私は水の女神アクア様よ!こんなところでめげるなんて私らしくないわ!ユニコン、力を貸しなさい!」

 

アクアは自身のケミーライザーにユニコンのカードを装填し、起動させる。

 

『ケミーライズ!ユニコン!』

 

刹那、アクアの背後に巨大なユニコーンの幻影が出現し、温かな白い光を解き放つ。白い光はアクアの元へと集まっていき、彼女の力を限界以上に高める。そしてーー

 

「『セイクリッド・ハイネス・ヒール』」

 

ユニコンの加護により、強化されたアクアの魔法が戦場を包み込む。その浄化力の強さたるや、毒が全身に巡り掛けていたカズマやダクネスの身体異常を一瞬にして取り払った。

 

「へへ…どうよ…女神の力…あとは…任せた…わ…よ…」

 

限界以上に力を引き出したアクアは、疲れ果てて倒れかける。そんなアクアを、完全回復したカズマがギリギリのところで支えた。

 

「偶には役にたつじゃねぇか…ありがとな」

 

規則正しく寝息をたてるアクアにカズマは照れながら礼を言う。

そしてアクアを、クロっちと、自身と同じく復活したダクネスの元へと預けると、ガッチャード達の元へと向かう。

 

「悪い錬太郎、ちょっとくたばっちまってて迷惑かけたな…」

 

「いや、カズマとダクネスが無事で良かったよ。それと、アイツの弱点は炎と熱だ。だから、奴の身体を焼き尽くす技が必須だと思うんだ。」

 

「それならば、我が爆裂魔法の出番ですね!ザ・サンもいることですし、コロニーが崩壊することなく特大の一撃をしてみせますよ!」

 

「俺も病み上がりなりにサポートするから、前線は錬太郎とゆんゆんで頼む!」

 

作戦が決まると、マルガムとの戦闘が再開する。

 

ガッチャードは身軽な身のこなしで打撃や蹴りをマルガムに喰らわしていき、マルガムが反撃しようとすれば、ゆんゆんが魔法を使って牽制した。

 

先程のアクアの技によって戦場中の胞子は完全に浄化されており、ガッチャード達の連携は、完全にいつもの調子に戻り、マルガムを追い詰めている。

ガッチャードとゆんゆんの攻撃を受け続けたマルガムは、疲労が重なり肩で息をしている。最早、最初の威厳と余裕に溢れた様子は見る影もなかった。

 

「よし、今がチャンスだ!」

 

マルガムが疲労困憊の今が好機とみたカズマは自身のケミーライザーに

「ジャングルジャン」のカードを装填して起動させる。

 

「力を借りるぜ、ジャングルジャン!それとフィオさん、アンタから教わった技、使わせてもらうぜ、

『バインド』!!」

 

ケミーの力を解き放ちつつ、盗賊スキルの一つ、「バインド」を発動させるカズマ。

次の瞬間、ワイヤーと植物の蔦が出現してマルガムを縛り上げる。

その拘束力の高さたるや、マルガムがどれだけ力を込めようとも解かれることはなかった。

 

「目障リナ…ナラバ再ビ…⁉︎技ガ使エナイ…アノ青髪ノチカラカ…」

 

マルガムは胞子を放ち、状況を打開しようとしたが、アクアとユニコンの魔法の余波によって、能力を封じられていた。

これでマルガムの打つ手は完全に無くなった。

 

「クソ…オレノ…オレノコノチカラデ、全テ上手クイクハズダッタノニ…」

 

負け惜しみととれる言葉を漏らすマルガム。そんなマルガムにガッチャードは問いかける。

 

「お前、一度でもヴェノムダケに、力を貸してくれてありがとうって感謝したことがあるのか?」

 

「何ヲ言ウ?コレハオレノチカラダ!」

 

「違うッ!ケミーと人がお互いに信頼しなければ本当の力は引き出せない!王が自分を信頼する民がいなければ成り立たないのと同じだッ!」

 

ガッチャードの問いかけの意味が分からず、反論するマルガムだったが、ガッチャードの気迫に圧倒され、押し黙ってしまった。

そして

 

「レンタロウ!こっちも準備出来ました、いきますよ!」

 

『ケミーライズ!ザ・サン!』

 

めぐみんが自身のケミーライザーにザ・サンのカードを装填し、同時に爆裂魔法の体勢に移った。

 

「太陽よ!爆焰を纏いて駆け上がれ!

我の名の元に、行手を阻む全ての巨悪を屠り尽くせ!

 

『インフェルノ・サン・エクスプロージョン』!!!」

 

めぐみんの杖に、ザ・サンの太陽のエネルギーが圧縮され、放たれる。

そしてマルガムに直撃して、身体を焼き尽くし、やがて大爆発を起こした。

 

「ふふっ、最高でした…」

 

めぐみんはその場に倒れ伏し、心底満足そうな笑顔を見せた。

そしてヴェノムダケはガッチャードによってカードへと封印され、ホルダーの中に仕舞われた。

 

「はぁ〜、なんか凄い疲れたな…あのゴブリン強すぎるだろマジで…」

 

「そうだね…!まだ終わりじゃなかった!速くミツルギくんのところに行かないと!」

 

「何⁉︎ミネラルのところにも敵がいたのか?」

 

「ミツルギね、カズマ。クロっち、テレポートお願いできるかな?」

 

『ウィ〜!任せといて!』

 

ガッチャードの要望に親指と人差し指を用いてOKサインを作るクロっち。

クロっちの元にガッチャード、ダクネス、アクアを背負ったカズマとめぐみんを背負ったゆんゆんが集まると、テレポートが発動し、目的地へ移動した。

 

 

 

 

少し時間を遡り、ミツルギ達はサンドロスと対峙していた。

 

「ほらほら〜、全然私はピンピンしてますよ〜」

 

「はぁはぁ、化け物め…」

 

ゴリラマルガムとなったサンドロスは、ミツルギとその取り巻きであるクレメアやフィオの3人相手でも優位に立ち回っていた。

これまでの相手とは一線を画す存在に、ミツルギ達は様々な戦法で応戦した。

1人が先制し、その後に2人が奇襲したり、3人で同時攻撃を繰り出したりもしたが、サンドロスの強靭な肉体には傷一つつかず、逆にミツルギ達の体力がじわじわと削られていってしまった。

その証拠に、ミツルギ達3人は肩で息をしている。

 

「その程度で魔剣の勇者など、聞いて呆れますね…ヌフフフフ!」

 

「クッ、舐めるなァァァ!」

 

サンドロスの挑発に怒り、魔剣グラムの柄を力強く握りしめて、ミツルギは駆け出す。

サンドロスに対する怒りが篭っているその目は、対象を睨んだだけで殺せる程凄まじいものだった。

しかし、現実は非情。相変わらずサンドロスは涼しい顔で攻撃をその身に受けている。

 

「剣の振り方が単調です。そろそろ興醒めですね…フンッ!」

 

サンドロスは右腕の手の甲で、魔剣グラムの刀身を側面から叩き折った。

 

「なっ⁉︎そんな…グラムが…」

 

「おやおや、戦闘中に気を抜いてはいけませんよ?ハァァァァァァァ!」

 

狼狽するミツルギを背負い投げして地面に叩きつけるサンドロス。そして咳き込むミツルギをそのまま左足で踏みつけた。

 

「苦しいですか?苦しいですよねぇ〜、さぁもっとその顔を拝ませてくださいよ」

 

ミツルギの苦しむ顔を見てケラケラとするサンドロス。刹那、サンドロスの背中が何者かに斬りつけられる。

盗賊スキルの『潜伏』を利用して背後に回っていたフィオである。

 

「キョウヤを傷つけたわね。絶対許さないんだから!」

 

「いくわよ、フィオ!」

 

『身体強化』のスキルで自身のステータスを上昇させたクレメアは、先程よりも攻撃の速度や威力を上げて、剣撃を繰り出す。サンドロスは退屈そうにその攻撃に応対するが、それは読み通りだったのか、クレメアはアイコンタクトでフィオに何やらメッセージを送る。そして…

 

「『バインド』!!!」

 

隙をついて、フィオが『バインド』を発動し、サンドロスを拘束する。

 

「グッ…ォォォォォォ!」

 

抵抗すればするだけきつく締め上げるため、サンドロスは絶叫する。

 

「やったわね、フィオ!」

 

「キョウヤだけが強い訳じゃないのよ!」

 

サンドロスを出し抜き、勝ち誇る2人。バインドは一度発動すると、時間が来るまで解除することはない。縛り付けている間、相手は無防備であるため、その間に耐久が持たないほどの攻撃を叩き込み、倒すというのが2人の算段だ

がーー

 

「なんちゃって…フン!」

 

サンドロスは身体全体に力を込めて、本来出来ない筈のバインドの解除を強引にやってのけた。

 

「そんな…」

 

「嘘でしょ…バインドは解除魔法でもない限りは防ぎようはないのに…」

 

「ケミーの力に人間の常識は通じませんよ?さて、悪い子達にはお仕置きが必要ですねぇ…」

 

サンドロスは足音もなくクレメアとフィオに接近すると、両者の腹に拳を打ち込む。攻撃を受けた二人は地面に膝をつき、咽せ込んだ。

しかしサンドロスには、そんなことなどお構いなしであり、右手でフィオの左手でクレメアの首を締め、持ち上げる。

 

「ウッ…アア…」

 

「グッ…この…」

 

宙に吊るされた2人は苦しそうに全身を動かし踠きながら抵抗するが無意味であり、一向に緩まる気配はない。

それどころか、サンドロスは、2人の抵抗する様子を面白そうにしており、

 

「いいですねぇ…希望なき者達の無駄な抵抗というものは…この2人を殺し、更には絶望した勇者の顔を拝みながら彼の命も奪う…たまりませんねぇこれはぁ!」

 

狂っている。そういう表現の仕方が正しい。他人が苦しむ姿にどうすればここまで恍惚を感じられるだろう。しかしそんなサンドロスの残忍な様子は、ミツルギの心を折るとともに、彼が今までに感じることのなかった無力感を芽生えさせる。

 

今の自分では、2人が苦しみ、命散り行く様をただ見ているだけしか出来ない

 

ミツルギの瞳から、悔しさと虚しさが籠った一筋の光が流れ落ちる。

もう無理だと諦めかけた

その時、何処からともなく声が聞こえた。

 

『スケボー!スケボー!』

 

『ブシドー!ブシドー!』

 

ミツルギは、声に導かれるように視線を自身の手元に移すと、2枚のカードがあった。

「スケボーズ」と「アッパレブシドー」のカードである。恐らく、サンドロスに吹き飛ばれた際にガッチャードが落としたものだろう。

ミツルギがカードを拾い上げようとすると、何故か2枚とも、新しく飼ってくれた主人に食いつく猫のように抵抗した。

 

「な、何なんだ君達は?」

 

『ブシブシ、ブシドー!』

 

『スケボー、スケスケボー!』

 

アッパレブシドーとスケボーズはミツルギに訴えている。

"このまま終わっていいのか''と。

すっかり意気消沈しているミツルギは、気怠そうな様子で2体に答える。

 

「僕にはやつを倒す力はない…戦う術だってもう…」

 

『ブ・シ・ド〜!』

 

『スゥ〜ケェ〜ボォ!』

 

弱気になっているミツルギに荒々しい声になって、ケミー達は言う。

 

"例え力がないとしても、それでもやらなければいけないときがある、それが今だ!"と。

ケミー達の言葉にハッとするミツルギ。心を折られ、大切なことを見失い掛けていた。重い身体を起こし、刀身の折れたグラムの柄を再度握りしめて、サンドロスを見据える。

 

「そうだ、やるんだ…僕が!」

 

『スケボー♪』

 

『アッパレ!アッパレ!』

 

ミツルギの言葉を待っていたと言わんばかりに大はしゃぎするケミー達。そしてカードを飛び出すと、魔剣グラムに纏わりつくように融合し、新たな刀身が錬成され、さらに刀身に紅蓮の炎が燃えたぎっていた。

 

「おや?面白くなってきましたね…」

 

サンドロスはクレメアとフィオの首から手を離し、ミツルギの方へと向き直り、彼に向かって駆け出していく。

対するミツルギも、炎を纏った魔剣グラムを構えてサンドロスに相対する。

サンドロスの繰り出す、弧を描くように迫り来る拳の連続攻撃をミツルギは魔剣でいなしながら、同時に生じた隙を見計らって斬り込んでいく。

先程と違って、燃えたぎる魔剣による斬撃はマルガムとなったサンドロスにも有効打となっていた。

 

力の差が嘘だったかのように互角の勝負を繰り広げる両者。

しかし、次第にミツルギの攻撃が連続して命中していき、徐々にではあるが、サンドロスが劣勢に立たされていく。

 

「あり得ない…この時代の貴方のどこにそんな力が…」

 

「いや、僕だけの力じゃない!僕に大切なことを思い出させてくれた、恩人達の力だ!」

 

ミツルギは魔剣の刀身をサンドロスの身体に強く押し当て、勢いよく斬り裂く。その威力の高さから衝撃波が発生し、受けたサンドロスは膝をつき、放ったミツルギも後退りした。

そしてこのタイミングでガッチャード達もテレポートしてやって来た。

 

「ミツルギくん!大丈夫だった?」

 

「ああ、この方々のお陰でな…」

 

ミツルギはケミーカードを取り出すと、ガッチャードに返却する。

ガッチャードはカードを手に取ると、優しい声色でケミー達に語りかける。

 

「そうか、君達がミツルギくんを助けてくれたんだね、ありがとう!」

 

ガッチャードからの感謝にスケボーズとアッパレブシドーは嬉しそうにする。そしてベルトからホッパー1とスチームライナーのカードを抜き取った後、ミツルギの方を向いて言う。

 

「じゃあ、あとは任せて欲しい」

 

「…ああ、お言葉に甘えさせてもらうよ」

 

ミツルギはダクネスやクロっちに看病されているクレメアとフィオの元に駆け寄る。やはり仲間思いなのだなとガッチャードは改めて感心した。

 

「さぁ、決着をつけようか、サンドロス」

 

ガッチャードはサンドロスの方へと向き直ると、ミツルギから受け取った2枚のカードをベルトに装填する。

 

『スケボーズ!』『アッパレブシドー!』

 

『ガッチャーーンコ!アッパレスケボー!』

 

桜吹雪のようなオーラがガッチャードを包み込み、新たな姿が顕現する。

 

かつての武将、井伊直政と真田信繁の纏った甲冑の如く、紅蓮の装甲に身を包んだその姿は正に物怪を滅する赤鬼

ーー仮面ライダーガッチャード アッパレスケボー

 

変身してすぐさま、ガッチャードはサンドロスに対して見栄を切る。

 

 

「さぁさぁさぁ、花道で、オンパレードだぁぁ!」

 

 

 

 

 

 

「また新しい姿!しかも紅魔族と同じ赤!そしてなんですか、錬太郎のさっきのやつは!カッコ良すぎますよ!」

 

「あれは見栄切りってやつだな、興奮するのはわかるが、あまり羽目を外すなよ?」

 

宿命というべきか、ガッチャードの新しい姿にはしゃぐめぐみんと、それを宥めるカズマ。

そしていよいよガッチャードとサンドロスの戦いが幕を開ける。

 

ガッチャードはミツルギの使っていたグラムを借用し、サンドロスと対峙する。本来、ミツルギ以外には効果がない魔剣グラムだが、スケボーズとアッパレブシドーがミツルギに力を貸した際に、彼の因子を取り込んでいたこともあって、ガッチャードも問題なく扱えている。

 

拳と魔剣のぶつかり合い。一撃一撃が研ぎ澄まされており、一瞬の油断も許されない。しかし両者は防御へと転向するつもりは全くない。受けに回るということは、それすなわち、敗北を意味する。

 

「流石ですね…魔剣の加護も加わって私と互角までいくとは…」

 

「いや、超えていくよ。僕の本気はこんなものじゃない!」

 

ガッチャードは一度サンドロスから距離をとると、錬金術の呪文を詠唱する。

 

「『下にあるものは上にあるもののごとく 上にあるものは下にあるもののごとく ただ一つたる 奇跡をなさん』」

 

刹那、魔剣グラムが宙を舞い、まるで生きているかのようにサンドロスに向かっていく。サンドロスはその不規則な動きに翻弄され、一方的に斬りつけられている。風向きがガッチャードへ傾き始めた。

 

「まだまだぁ!

『万物はこれなる一者の改造として生まれうく』」

 

連続して別の錬金術を発動させるガッチャード。

今度は地面が隆起して、大きな土の塊が出現し、その土の塊から無数の鉄の剣が錬成されて、サンドロス目掛けて強烈な刺突を繰り出す。

度重なる猛攻は、サンドロスの体力を完膚なきまでに削り取ったのだった。

 

「ま、まさかこの私が…こんな時代の雑魚どもに…」

 

「侮ったな、人とケミーの力を、覚悟を決めた人間の強さを!」

 

ガッチャードは手に収めていた魔剣グラムを地面に突き刺すと、ベルトを操作して、再び魔剣を手に取ると、刀身が炎を纏う。

そしてーー

 

『アッパレスケボー!フィーバー!』

 

「輪切りにしてやるぜ!」

 

サンドロスに向かって飛びかかり、炎を纏った刀身で、不規則にあらゆる角度から斬りつけた。しかしながらこの切り方は…

 

「それ輪切りじゃなくて乱切りだ…」

 

「カズマ、そこに突っ込むのは野暮ですよ。カッコよければそれでいいのです!」

 

カズマのツッコミにめぐみんが一言申した後、サンドロスは叫び声を上げながら爆発した。

 

サンドロスから放たれたゴリラセンセイは、ガッチャードにより再びカードへと封印された。

 

「はぁ〜、やっとおわった…」

 

「⁉︎大丈夫ですか、錬太郎さん!」

 

変身解除した直後、倒れそうになった錬太郎をゆんゆんが支える。連戦の影響で、錬太郎の体は彼が思っている以上に限界だったようだ。

 

「あはは…ちょっと今回の戦いがきつかったかな…」

 

「じ、じゃあ、このまま肩貸しますね…」

 

「あ、ありがとう」

 

ゆんゆんは顔を赤くしながらも錬太郎の肩に腕を回して彼を支える。

一方で、カズマが背負っていたアクアも目を覚ました。

 

「う〜ん…」

 

「よう、アクア…その、調子はどうだ?」

 

カズマはようやく起きたアクアに尋ねるが、返答はない。代わりに背中にこめられるアクアの手の力が強まっていくのだけがわかる。

 

「おいおい、そんなに強くされると痛いから」

 

「アンタが生きててくれて良かったって思ってるのよ…」

 

「…そうか」

 

「でも、今回みたいな無茶は出来るだけしないで…」

 

「善処する」

 

「あと、もうちょっとこのままでいさせて…」

 

「しょおがねぇなぁ…」

 

ポイゾナスマッシュルームマルガム戦での出来事が未だトラウマらしいアクア。そんな彼女の願いを文句は垂れ流しながらもカズマは受け入れる。

 

その様子を見ていたミツルギは錬太郎の言った意味が漸く理解できたような気がした。そして嬉しそうな、寂しそうな瞳でアクアとカズマを眺めると、

 

「(サトウカズマ、アクア様のことを頼んだよ)」

 

そう、心の中で思うのだった。

 

 

 

 

 

 

ロードの研究室。

テーブルにおいたコップに注いだ水に錬金術を用いて、今回のコボルト戦の様子を訝しげな表情で観察するロード。何か引っかかるところがあるみたいである。

 

「魔王軍も力をつけてきているな…それにしてもあのサンドロス…私の知らないネガマスクか…少しばかり調査する必要があるかもな…」

 

そう言い残して、テーブルの周りを片付けるとどこかへと去ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

荒廃した大地

瓦礫の山に埋もれた地で、1人の男が一つだけポツンと置いてあった椅子に腰かけて、手に持っていた銀箔の押されたルービックキューブを弄り出す。

そして何かを感じ取ったのか、一瞬手の動きを止めた。

 

「サンドロスの反応が消えた…過去でしくじったのか?まぁ、いい。どんなことをしようと、滅びの運命を変えることは出来ない…とはいえ、そろそろガッチャードを始末しなければなぁ…フフフ…」

 

男は怪しげに笑うと椅子から立って歩き始める。歩きながらもキューブは弄り続けている。ふと、キューブに男の顔が反射する。

 

その顔は暗黒のネガマスク達を束ねる『ロード』その人だった。

 




やっと終わりました。
次回からいよいよベルディア戦に入っていきますが、次回はあんまべルディアさんは出てきません。
そして最後のシーン、一体どういうことなのか…その詳細につきましてはまた次回

次回予告

「この若夫婦に決断を!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。