この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

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始まりの錬金術師となった3人は、とある田舎の街を開拓し、錬金術を広く学べる街、『アルケミア』へと発展させた。
破壊神を封印した英雄達の街ということもあり、短期間の内に大勢の人達で溢れ、錬金術は急速に広まっていった。

そして、破壊神との激戦において用いられた
「ガッチャードライバー」は役目を終えたためか機能を停止し、100体のケミー達と共に長い眠りについた。

それから、60年の歳月が流れ、アルケミアに新たな天才が誕生し、彼によってケミー達は再び目を覚ますこととなる。
その少年の名は、ダン・アストロギア。

錬金見聞録 第6章:「次の世代へ」より、一部抜粋


この若夫婦に決断を!

アクセルの街から遠く離れた場所の丘上に聳え立つ廃城。

朽ち果てたその様はたいそう薄気味悪く、幽霊でも住み着いているように感じるほどである。いや、幽霊ではないが、それに近い存在は居候している。

それは、廃城のかつての玉座とおもしき場所に腰かける者。

漆黒の鎧を身に纏い、左脇には、兜を装備した首を抱えているその姿は、誰がどう見てもデュラハンだ。

そしてこのデュラハンこそ、魔王の命を受けてやってきた幹部の1人、『ベルディア』である。

 

「そんな、まさか…コボルト達が倒されるとは…」

 

閑散とした廃城にベルディアの驚く声が、抱えられた頭から響く。

駆け出しの街と称されるアクセルにおいて、自身が強化を施したコボルト達を蹴散らせる冒険者パーティーがいることなど、にわかには信じられなかったのだ。

しかし、数刻程して現実なのだと受け入れたベルディアは、重い腰を椅子から上げ、傍らに備えていた巨大な剣を右手に取り、肩に担ぐ。

 

「告げられていたあの"光"の存在…まさかとは思うがこの件に関係しているのか…それとも別で骨のある冒険者がこの街にいるのか…どちらにせよ、この俺が必ず突き止めてやる…」

 

自身の部下を屠られたという怒りと、自身を楽しませてくれるやもしれん強き冒険者との出会いに対する期待という、相反する二つの気持ちを胸に秘め、ベルディアは、その闘気の溢れる身体を前へと進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

ミツルギ達との合同クエストから数日。錬太郎、カズマ、めぐみん、ゆんゆんの4人は、今日もケミー集めに精を出していた。

コボルトの一件で、大量の報酬を得ることが出来、暫くはクエストを受けなくてもお金に困ることはなくなったため、王都からの腕利きの冒険者達が、魔王軍幹部を討伐するまで、自由行動をするという話になったのだ。

 

そのため、アクアは朝からギルドの酒場でシュワシュワを飲み干し、ダクネスは鎧の手入れとトレーニングの為に実家へと帰省している。

 

そして残りの4人はめぐみんの日課の爆裂散歩をこなしつつ、ケミー回収のために団体行動を取っている。

各々のケミーライザーの反応を頼りに入っていった深い森の中で、カズマが1体、ゆんゆんが1体ケミーを捕まえた。

 

「それにしてもカズマは本当に運がいいね、ファンタスティックケミーの『インフェニックス』を見つけるなんて…」

 

「俺、あんまりケミーの属性とか、レア度とかいまいちわからないんだが、そんなに凄いのか?」

 

「当たり前だよ!ファンタスティック属性は始祖のケミーが属してもいるんだし…」

 

「おお…思ったより凄かった…」

 

錬太郎の言うとおり、ファンタスティックは始祖のケミーの1体、「ドラゴナロス」が所属する属性であり、コズミックと並んで最初期に開拓された属性である。そのため、インセクトやアニマルといった他の属性とは一線を画すほどの力を秘めており、見つけ出すのも困難とされている。

それにも関わらず、カズマは捕獲して見せたのだから、彼の幸運値の高さたるや…

 

「それにゆんゆんもすっかりケミー集めに慣れたみたいだね、こんなに早いなんて驚いたよ、ありがとう」

 

「そ、そんな…私なんてまだまだですよ錬太郎さん、寧ろ御礼を言うのは私の方です、この子達と仲良くなれるのはとても嬉しいんです」

 

ゆんゆんはそう言うと、今回手に入れた『スタッグバイン』のケミーカードを満足気に眺める。そんなゆんゆんを見て、錬太郎もまた、心が温かくなるのを感じた。

しかし、カズマとゆんゆんのようにケミーを見つけることが出来ず、1人だけ除け者の様に思えてしまったのか、めぐみんは頬を膨らませ、

 

「ズルいですよ2人とも、私なんて1体も確保できていないのに…」

 

「めぐみん、気に病むことないだろ、俺達よりもケミー探し歴の長い錬太郎も今日は捕獲できてないんだ。あと錬太郎、その格好は何なんだ?」

 

慰めのつもりなのか、めぐみんを見下ろしながらカズマが言う。そして錬太郎へ視線を移すと、彼の格好に対して若干引き気味に声をかけた。

 

今現在、錬太郎は空色の服の上に黒いローブを羽織ったいつもの格好の上に、背中に植物の葉のような幾重にも枝分かれした背びれを生やしている、直立歩行の肉食恐竜型の着ぐるみを着ていたのだ。

 

「ハガネ兄さんとライラ姐さんが言っていたんだ、ケミーと仲良くなるにはケミーの気持ちになるのが一番だって!こういう森の中にはエンシェント属性のケミーが住みつきやすい、となると、同じ古代生物の姿をしていれば近寄ってくるかと思ってね…」

 

「形から入るのは違うだろ…あとその姿は恐竜というより怪獣王ゴジ…「カズマさん!それ以上はなんか言っちゃいけない気がします!」…わかった」

 

錬太郎の格好の詳細に触れようとしたカズマを慌ててゆんゆんが止めた。いったい何が問題だったのだろうか。

 

「そういえば、レンタロウの言っているハガネとライラとは誰なのですか?」

 

「2人は僕の師匠というか、兄弟子や姉弟子というか…憧れなんだ!」

 

錬太郎の回答を聞くと、めぐみんは首を縦にうんうんと降り、

 

「成程、尊敬する方々なんですね…わかりますよ、私もとある人物の爆裂魔法を見て、爆裂道を極めると決めましたから!」

 

「錬太郎さんのお師匠さん方ですか…いつか会ってみたいですね!」

 

「……うん!2人とも今は遠くにいるからいつか、ね。」

 

ゆんゆんの要望に錬太郎はほんの少しだけ、間を悪くしたが、ハガネとライラにいつか会わせることを約束したのだった。

 

4人が足を進めていくと、遠くから人影が見えた。

7〜8歳くらいだろうか。幼い女の子が地面に座ってメソメソと泣いていた。4人はその子の元に寄り、カズマが声をかける。

 

「ねぇねぇ、どうしたんだい?」

 

「!!ま…迷子…お散歩してたら…」

 

カズマの声に一瞬びくりとしながらも少女は口を開いて自分の現状を伝えた。そして再び泣き出してしまった。

 

「よしよし、怖かったですよね…もう大丈夫ですよ、さぁ、私達がお父さんとお母さんの元へ連れて行ってあげますから」

 

「ほ、ほんと⁉︎お姉ちゃん!」

 

「ええ、勿論です」

 

「わーい、やったー!」

 

めぐみんは手慣れた様子で少女を慰めると、親を探してあげると言い、それを聞いた少女も嬉しそうにしている。

 

「ゆんゆん、なんだかめぐみん慣れてるような感じだったね。」

 

「ああ、めぐみんには『こめっこ』ちゃんという妹がいるんですよ。今回もお姉ちゃんとして面倒を見てきていたから上手くいったんだと思います。それとこの子、なんだかこめっこちゃんに似ている気がします。瞳の色は茶色ですけどね…」

 

ゆんゆんは錬太郎に、めぐみんが姉として妹の面倒を見てきた要領で、今回少女に接し、慰めることができたのだという憶測を伝える。

それにしてもゆんゆんの言うとおり、少女はこめっこ、というより、幼い頃のめぐみんとどことなく似ていた。

刹那、近くから誰かを呼ぶ声がする。

 

「エミ〜!」

 

「いるんですか〜、返事をして下さ〜い!」

 

声は段々と近くなっていき、やがてその主達が錬太郎達の前に現れる。

20代後半〜30代前半くらいの若い夫婦だった。

旦那さんの方は、錬太郎やカズマよりもほんの少し背が高く、茶色の短髪と緑色の瞳をしており、

奥さんの方は黒髪ロングのドーリーバング、スラっとした体型で、紅い瞳をしている。

 

そして夫婦は錬太郎達を見るなり、驚いたような顔をして固まる。

そんな夫婦を他所に、少女は2人に向かって駆け出した。

 

「パパ〜、ママ〜!あのね、このお姉さん達が助けてくれたの!」

 

 

 

 

少女エミを助けた錬太郎達一行は、その父親と母親に家へと案内され、お礼とばかりに食事を振舞われた。

 

「…お前ら少しは遠慮しろよ」

 

対象の二人を一瞥して吐き捨てるカズマ。

彼の視線の先には、提供された料理を物凄い勢いで口の中へと運んでいくめぐみんと錬太郎。

2人の食欲は他人の家だろうとお構いなしのようだ。

 

「いいんですよ、娘を助けてくださりありがとうございます!遠慮なく食べていってください!おかわりたくさんありますからね!」

 

奥さんはそう言って笑うと、台所の方へ消えていく。旦那さんも錬太郎達と同じ机で食しているのだが、どこか穏やかで、懐かしそうに錬太郎達の様子を眺めていた。

暫くして食事を終えると、エミが錬太郎達の元に駆け寄ってきた。

 

「ねぇねぇ、お兄ちゃん、お姉ちゃん、一緒に遊ぼ!」

 

「こらこら、すみませんウチの子が…エミ!お兄さん達は忙しいですからね〜」

 

「い〜や〜だ〜!遊ぶの、絶対遊ぶの!」

 

奥さんの静止も聞かず、駄々をこねるエミ。錬太郎は奥さんに視線を送り、大丈夫ですよ、という意をこめて手をパタパタと振ると、エミの元へと近寄った。

 

「じゃあエミちゃん、何して遊ぼっか?」

 

「え〜っと、え〜っと、かくれんぼ!」

 

「よし、じゃあ僕が鬼になるよ!カズマ、めぐみん、ゆんゆん、エミちゃんと一緒に隠れてね!」

 

「はい、絶対見つからないような場所を見つけます!」

 

「ふっふっふ!私にかかれば上手に隠れることなんてちょちょいのちょいですよ!」

 

「まったく…しょおがねぇなぁ…フフ」

 

錬太郎が鬼となり、残りの4人はそれぞれ自分の決めた場所に隠れる。その後、錬太郎が全員見つけたため、鬼を交代して、再び遊んだ。全員見つける度に鬼を交代するを繰り返し、鬼ごっこは一時間程続いたのだった。

 

夫婦はそんな4人の様子を遠くから眺めている。

 

「どうしたんだ?」

 

「いえ、なんだか、夢を見ているようで…」

 

「…そうだな、もしかしたら俺たちも、こんな風にいつまでも面白おかしく過ごせたのかな…」

 

旦那さんの言葉を最後に両者の間には沈黙が流れる。

2人の瞳は、様々な感情の入り混じった少しだけ寂しげな色をしていた。

 

 

 

 

かくれんぼを楽しみ、すっかり疲れ果ててしまったエミは、旦那さんの膝の上で、瞼を閉じて規則正しく寝息をたてている。そんな愛娘の頭を、旦那さんは心を込めて撫でながら、奥さんに何かを尋ねた。

 

「そういえば今日は行かなくていいのか?」

 

「ああ、そうでしたね、それでは行ってきます。」

 

旦那さんへ返答すると、奥さんはどこかへと出かける支度をする。今日()ということは、日課なことなのだろうか。気になった錬太郎は旦那さんに尋ねる。

 

「奥さん、何か用事があるんですか?」

 

「ああ、うちの妻は爆裂魔法が大好きでね、1日一度撃たなければ落ち着かないらしいんだ」

 

「そうなんですね…それならめぐみん!一緒に行ってくればいいんじゃない?爆裂使い同士気が合うかもよ?あ、僕は旦那さんと話すことがあるからパスで」

 

「わかりました、ではカズマと、ゆんゆんもついて来てください。カズマは帰りに私をおぶって、ゆんゆんはモンスターが出てきたら相手を頼みます!」

 

「ったく、わかったよ…」

 

「じゃあ、錬太郎さん、行ってきます!」

 

奥さんと共にカズマとめぐみん、ゆんゆんも出かけて行った。

皆が出て行った後、錬太郎は旦那さんの隣に腰かける。

 

「それで、僕に話というのは…」

 

「ああ、そのことなんだけど、君、ガッチャードだろ?」

 

「⁉︎」

 

旦那さんに自身の正体を当てられ、動揺する錬太郎。それと同時に警戒心を露わにする。そんな錬太郎を見て、旦那さんは優しく笑うと、

 

「ああ、いや、この前偶然助けてもらった剣士さんがガッチャードのことを話しててね…特徴が似ているから君なのかなと思って…」

 

錬太郎は旦那さんの話を聞くと、警戒心を解く。おそらく旦那さんはミツルギから話を聞いたのだろうと頭の中で一人答えを出した。

 

「若いのにすごいなぁ…、俺には世界中を旅して回る気力なんてないよ」

 

「ええっ、そんな…自分なんてまだまだ三分の一人前ですよ…」

 

「それでも、大抵の人間は自分の意思でそんなことできやしないさ。」

 

「だって…自分がやらなきゃ他にやってくれる人はいませんし、誰かがやると信じて待つのは無理というか、結局何もしない事と同じで嫌だというか…」

 

錬太郎は、旦那さんからの突然の褒め言葉を反射的に謙遜し、頭の後ろをボリボリと掻き毟る。

 

「本当に君は変わっているね!でも、一人で抱え込みすぎるのはよくない…偶には仲間達にも背中を預けることも大切だ…なんて、知り合いでもない俺が言うのはおこがましいかもしれないが…」

 

「!!いえいえ、人生の先輩からアドバイス貰えるだけで嬉しいですよ、ありがとうございます!」

 

旦那さんに何度も何度も頭を下げる錬太郎。その様子が可笑しく思えたのか、旦那さんは思わず笑みをこぼす。

 

「あはははは、年端も行かないのに礼儀正しいな!ふぅ、では本題にいこうか…君への質問でね」

 

旦那さんは錬太郎に向き直ると、先ほどとは打って変わって真剣な声色になる。

 

「もし仮に、君が戦わなくても代わりにやってくれる人がいて、尚且つ約束された平和な時間が与えられるとする、もう戦いに関する嫌なことも考えなくていい、こんな時に君はどうする?」

 

旦那さんの質問に黙り込んでしまう錬太郎。旦那さんも旦那さんで、錬太郎の瞳を捉えて離さないようにじっと見つめている。

暫くして答えが定まったのか、錬太郎は口火を切った。

 

「確かに素晴らしい条件ですね…でも、僕は嫌ですね」

 

「それはどうしてだい?」

 

「だって、自分の人生じゃないですか!辛いこと、苦しいこと、悲しいこともちゃんと向き合って生きていきたいですよ!それに、誰かに与えられた、枠組みされた幸せなんかじゃ、絶対満足できませんよ、幸せは自分の手で掴み取ってこそですから!」

 

錬太郎は信念を宿した力強い瞳で、旦那さんに向き合いながら答えた。その答えを聞いた旦那さんは…

 

「そうだよな…お前はそういうやつだよな…」

 

誰にも聞こえないほどの小さな声で呟いた。

 

「…?どうかしましたか?」

 

「いや、君のお陰で覚悟が決まったというだけだよ、本当にありがとう!」

 

「…どう致しまして…?」

 

錬太郎は何に感謝されているのかわからず、曖昧な返事をする。

対して旦那さんはどこか勇気の湧いたような顔つきへと変わっていた。

 

丁度その時、奥さんとカズマ達も帰ってきた。めぐみんが何故か悔しげな表情をしながらカズマに背負われている。

 

「うぅ〜っ…杖も無しに私の全力と同等の威力の爆裂魔法を放つなんて…悔しい限りです…」

 

「お前なぁ、相手は人生の先輩だぞ?俺たちよりも多くの修羅場を潜り抜けできたんだ、負けて当然だ。」

 

「なんですかその慰めてるか貶してるのかわからないギリギリのラインは!」

 

相変わらずのカズマとめぐみんの兄妹のようなやり取りに、周りの皆が思わず笑いを溢す。

そんな7人の様子は、まるで1つの家族のようでもあった。

 

 

 

 

日も暮れて、そろそろアクアがギルドで待ちぼうけしているだろうとのことで、錬太郎達は夫婦の元を後にした。

 

「ありがとうございました!また機会があったら来ますね!」

 

錬太郎達は夫婦とエミに向かって手を振る。対するエミも、錬太郎達が見えなくなるまで手を振り続けた。

 

錬太郎達が去って暫くした頃、旦那さんは先ほどまでのラフな服装から、冒険者達が纏うような服装へと着替えていた。その瞳に、質問に答えてくれた錬太郎のように強い信念を宿して。

 

「やっぱりあなた()戻るつもりだったんですね…」

 

支度している旦那さんの様子を、ひょっこりあらわれた奥さんがわかっていたかのように見つめている。

奥さんも黒マントに黒いローブ、特徴的なトンガリ帽子を被った、いかにも魔法使いという格好をしていた。

 

旦那さんは、奥さんに向き直ると、

 

「この時代のアイツに言われてはっきりしたよ…確かにこの時代での生活は悪くなかった…でも、心の底から幸せだとはいえなかった。俺たちがお互いの好意を自覚して、子供を作っていたときにも、アイツは1人で戦い続けてる、そんなの、耐えられねぇよ…」

 

「それは私も同じです。あの人は背負いこみ過ぎです!確かに性格上仕方ないのかもしれない、それでも!もう守られてばかりは嫌です!我が爆裂魔法で、彼を支えたいのです!」

 

「ははっ、過去の自分に影響されたか?でも、そういうところ、嫌いじゃないぜ!」

 

旦那さんからの急な嫌いじゃない発言に、奥さんは顔をゆでダコのように真っ赤にして…

 

「⁉︎この男は!ズルいですよそれは!反則です!」

 

両腕を振って旦那さんの胸や肩をポカポカ殴る。そんな妻の様子が愛おしいのか、旦那さんは終始笑って流していた。

 

「ところで、エミはどうするんですか?」

 

「連れていくよ、この時代に1人残す訳にもいかない。」

 

「そうですよね…では、そろそろ行きますか!」

 

奥さんは眠っているエミを起こして、出掛けるという名目で彼女の興味を引かせる。

そして旦那さんと奥さんは荷物を纏めると、家の中庭の方へと移動する。

 

「ねぇねぇお母さん!今からお出かけするの⁉︎エミ、すっごい楽しみ!」

 

「ええ、ですが、少し危ないところなので、絶対に私達から離れないでくださいね!」

 

「うん!」

 

お出かけを楽しみにして羽目を外し掛けているエミを奥さんは優しく諭した。そして旦那さんが懐から1枚のカードを取り出して、空高く掲げる。

 

「『タイムロード』!俺たちを元いた時代に戻してくれ!」

 

『タイムロード!』

 

アーティファクトケミーのレベルナンバー7、タイムロードの力が発動し、白い光が3人を包み込む。

光はやがて消え、まるで初めからそこに誰もいなかったかのような静寂だけが残された。

 

 

 

 

次の瞬間に3人は、自宅とは別の場所にいた。

瓦礫の山に埋もれて、炎が辺り一面に広がる地へと。

 

「戻ってきたんですね…」

 

「ああ、それにしても酷いな。俺たちがいない間に…誰か来る!」

 

旦那さんが察した気配に奥さんも構える。3人の前に1人の男が現れた。

男は年季の入った、ボロボロの黒いローブを橙色の服の上に纏っており、戦いによる負傷のものか、右目に眼帯をしていた。

男を見るなり、夫婦は安心したような顔になって話しかける。

 

「びっくりしました…あなたでしたか…」

 

「えっとその…只今。帰ってきて急なんだけど、俺たちお前に…「何故戻ってきた?」…」

 

旦那さんの言葉を遮り、男は質問する。その左目からは強い怒りが感じ取れ、睨まれた旦那さんも少し狼狽える。

 

「俺は言ったはずだ。過去の世界で生きろと…それなのに…それなのになんで!」

 

「過去のお前に言われて気づいたんだ、与えられた幸せじゃ、俺達は満足出来ないって…それに、お前1人に背負わせるのも嫌なんだよ!だから、また昔みたいに一緒に戦わせてくれよ…15年…これでも色々辛かったんだぜ?」

 

旦那さんの言葉を聞いて男は黙り込む。そして2人に背を向けるとぶっきらぼうに言った。

 

「好きにしろ、だが死ぬなよ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カズマ、めぐみん」

 

 

「当たり前だ、

 

 

 

 

 

 

 

 

錬太郎(・・・)

 

 

 

 

 

 

「おやおや、感動の再会かな?」

 

突如声がした方に、皆視線を向ける。聞いただけで吐き気を催し、憎悪を激らせる声、一部金色の装飾が施された黒いスーツに身を包み、丸渕メガネを掛けた男がそこにいた。

 

「懐かしい顔ぶれだな…そこの2人が戻ってきたということは…サンドロスが過去でしくじったのは本当だったようだ…だが、関係ない…今日も私に絶望を見せておくれ」

 

男が話し終えると、背後から漆黒の鎧と銃を装備した量産型の集団が現れる。

 

「ロード!!!」

 

忌々しき男の名前を叫んだ未来の錬太郎は、熔鉱炉型の拡張デバイスが取り付けられたガッチャードライバーを腰に装着し、2枚のカードを取り出して装填する。

 

『ホッパー1!イグナイト!』

 

『スチームライナー!イグナイト!』

 

錬太郎は両手で円を描いた後に両手を重ね、その手を反転させると、矢印の先端を形作って正面に突き出し、勇ましい声を響かせる。

 

「変身!」

 

『ガッチャーーンコ!ファイヤー!』

 

『スチームホッパー!アチー!』

 

眩い光が錬太郎を包み込むと共に、その姿を蒼炎を纏ったガッチャードへと変える。ガッチャードはロードの呼び寄せた軍団を見据えて、地面を蹴って駆け出した。

 

「未来をーー希望を必ず取り戻す!」




というわけでちょっとだけ未来の世界を描いてみましたが、どうでしたでしょうか?

サンドロスが未来から追ってきたのは、未来のカズマとめぐみんでした。
各々の未来の姿はカズめぐがweb版、錬太郎が未来宝太郎みたいなイメージです。
ベースがデイブレイク世界とはいえ、この未来での錬太郎はケミーを100体揃えていないため、デイブレイクには至っておりません。

次回は現代の物語を進めていきますが、必ず未来世界と交わる展開がございますので気長にお待ちください。
それではまた次回

次回予告

「魔王軍幹部出陣!」

次回から2〜3日ペースで更新致します
それとリクエスト受付開始しました
下記のリンクより宜しくお願いします↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=318626&uid=466601
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