この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

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始まりの錬金術師の1人、「リエ」の直系の子孫である「アストロギア家」の息子として生まれたダン。
錬金術師達が集う学舎である「錬金アカデミー」を飛び級で卒業し、ケミー達との交流を経て、一流の錬金術師でも、十分に力を発揮することが困難とされるレベルナンバー10、コズミック、ファンタスティックの力を難なく引き出すことができていた。
そしてダンは、「ガッチャードライバー」を元に、コズミック属性、ファンタスティック属性の力を多重武装錬成することを可能とする装置、「アルケミスドライバー」を生み出し、アルケミア中から注目を集める存在となったのだった。

錬金見聞録 第7章:「神童ダン」より、一部抜粋


魔王軍幹部出陣!

ギルドの食堂。

錬太郎達7人は、集まって朝食を食べていた。今はアクアとダクネス、クロっちに昨日出会った家族との出来事を話している。

 

「ふぅ〜ん、じゃあその旦那さんって、錬太郎がガッチャードだってこと知ってたのね、なんでなのかしら?」

 

「そうなんだよ、アクア。あれは最初ちょっと驚いたよ…」

 

「めぐみんと同じく爆裂魔法を愛する奥さんがいて、杖なしでめぐみんの全力と同等の威力を出すことができるとは…夫婦揃って何者なんだ…?

しかし、彼女の本気の爆裂魔法ならどれ程の威力なのだろうか…叶うことなら…是非、是非ともこの身に…」

 

話を聞いて、アクアは不思議そうに頭を傾げ、ダクネスは相変わらず自身の性癖を押し出して願望を語る。

頬に手を当てて、体をくねらせながら、涎を垂らし、妄想に入り浸るその様子は、誰がどう見ても変人である。

 

「おいダクネス、食事中くらい性癖を抑えろ!落ち着いて話も聞けないのかよ!」

 

「あはっ、カズマの久々の罵倒…イイ!さぁ、もっと、もっと来い!」

 

カズマは行儀の悪いダクネスに注意するが、それすらも当人は悦びに感じるよう。これ以上の面倒は避けるため、カズマはもうダクネスを無視した…が、

 

「こ、これが…放置プレイというものか…」

 

駄目だった。口を開こうが、閉じようが、どう足掻いてもダクネスは止まらない。どのように応対しようとも、彼女はそれを悦びへと還元する無敵の人である。

どうしようもない現実に、カズマは頭を抑える。

真に恐ろしいのは、モンスターでもマルガムでもなく、ダクネスなのかもしれない。

 

『話変わるけど、悪しき錬金術師の一味が魔王軍と手を組んでたみたいだね…』

 

クロっちは、ダクネスによって引っ搔き回され、色々面倒臭くなった場の空気を戻すため、前回のコボルト戦での話を始める。

 

「うん…暗黒のネガマスクの1人、サンドロスがそう言ってた。それに、あいつはとある人達を探してたらしいんだけど…」

 

「悪い錬金術師達が狙う方々なら相当な人だと思うんですけど…錬太郎さん心当たりありますか?」

 

「う〜ん、わかんないな…そもそも、錬金術師達の軍団が僕以外のどんな相手に喧嘩売ってるのかわからないし、あり得るのは王都の冒険者くらいしか…いや、でもなぁ…」

 

ゆんゆんからの質問に錬太郎は頭を捻る。ロード達、悪の錬金術師達の情報は定期的に入手しているのだが、基本それらは表沙汰では広まっていないため、散策専門のケミー達の力を得て、やっと仕入れている。

そのため、得られる情報は基本的に少なく、その中にロード達に一泡吹かせた冒険者がいるというものは、これまでに確認されていない。

 

だからこそ、サンドロスのあの言葉は気がかりなのだが…

 

「まぁ、考えてもわかんないことはしょうがないんじゃないか、錬太郎。いずれわかるかもしれないんだし、今はできることに集中しようぜ?」

 

「……そうだね」

 

カズマの言葉を聞いて、少し間を開けた後、言葉を返す錬太郎。

その瞳には、先程までの悩みを感じさせる陰りはなく、いつものように光が灯っている。

わからないことに悩んでいても仕方ない。今できることを全力でやろうという決意に満ち溢れていた。

 

「あ、そういえば昨日レンタロウが着ていた着ぐるみですけど、アレどこにやったんですか?」

 

「え…あーーー!エミちゃんの家に忘れてきちゃった…」

 

錬太郎はめぐみんの質問に、一瞬なんのこと?という表情を浮かべたあと、思い出し、叫んだ。

あんな目立つ着ぐるみなど、普通忘れなさそうなものなのだが、意外なところで抜けている一面のある錬太郎。

そんな錬太郎に対して、めぐみんは呆れるような表情で、頬杖をしながら言い放つ。

 

「まったく、あの夫婦やエミにえらい迷惑だと思いますよ。すぐに取りに行くべきでは?」

 

「うん…朝ご飯食べ終わったら行くよ…」

 

錬太郎は着ぐるみの回収を急ぐため、皿を手に持って、朝ご飯として注文した定食を、口の中に一気に駆け込んでいく。いつものように味わいながら食べる暇もないのは残念ではあるものの、自業自得であるため仕方がない。

その後、朝食を食べ終えた錬太郎は、カードに戻ったクロっちをホルダーに仕舞うと、ゴルドダッシュを呼び出して跨り、爆速でエミとその夫婦の家へと向かった。

 

残されたメンバーは、カズマとめぐみんが爆裂散歩、ダクネスはカズマとめぐみんの付き添い、ゆんゆんは実家への手紙、アクアは酒代のツケが来そうなのでバイトと、各々自由行動となり、ギルドの食堂で解散したのだった。

 

 

 

 

鬱蒼と茂る林の中を、1つの金色の光が駆け抜ける。

昨日皆で来た場所なのに、何処か違う場所のように錬太郎は感じる。

 

今回は錬太郎1人でやって来ていることと、今日の曇天の空が原因なのだろうか…

雨が降るようで降らず、朝から生温かい風が吹いていて、なんとも不気味である。

刹那、これから何か嫌なことが起こる予感がするという、当てにしたくもない直感が過ったが、錬太郎は首を横にブンブンと振って、ゴルドダッシュのアクセルのハンドルを握った。

 

暫くして森を抜け、そこから徒歩で移動すると、エミとその両親の家に辿り着いた。

錬太郎は家のドアをノックして、訪問したことを伝える。

 

「すみませ〜ん、昨日お世話になりました、百瀬錬太郎です、忘れ物がございましたので再び来ましたー!」

 

錬太郎はそれなりに大きな声を出したが、反応はない。出かけているのだろうか。

帰ってくるまで待つか、また明日来てみるか、そう錬太郎が悩んでいたとき、突然、左腕のカードホルダーからホッパー1が飛び出してきた。

 

『ホッパー!』

 

「おおっ!どうしたんだ、ホッパー1?」

 

ホッパー1は、錬太郎を家のポストのある所へと導いて、中を見てみるように促した。

 

『ホッパー!ホッパー!』

 

「いや、流石に人様の家のポストをあさくるのはよくないよ…」

 

錬太郎はホッパー1の提案に抵抗があるようだ。他人の家のポストの中を確認しようとするなんて、泥棒と大差ない行為である。

しかし、ホッパー1が自分の意見を汲んでくれることはなさそうなので、仕方なくポストの中を見ることにした。

 

「はぁ〜、わかったよ…エミちゃん、旦那さん、奥さん、ごめんなさい…」

 

意を決して、錬太郎はポストの中を開けて中を覗く。その中には1枚の封筒があり、『錬太郎くんへ』と記されていた。

まさか自分に宛てられていた手紙だとは思ってもおらず、錬太郎は驚きの声をあげる。そして、すぐに封を切って、中身を取り出すと、一通の手紙と、鍵が入っていた。

錬太郎は、入っていた手紙を広げ、左から右へと、旦那さん筆であろう文字を読み進めていく。

 

『錬太郎くんへ

 

俺達家族は、遠い場所に引っ越すことになりました。君が忘れ物をしていたので、取りに来た時、困らないようにと、鍵と手紙をポストの中に入れておきました。

また、引越しする際に、持ちきれなかった食材などが幾つか残っているので全て貰って構いません。

これからの君の健闘をお祈りしています。

 

           エミとその家族一同より』

 

成程、ホッパー1はこの手紙のことを感知してたのか、と錬太郎は納得する。それにしても、急に引っ越すとは…色々事情があるとは思うのだが、最後の文章で錬太郎は、この家族がどこか自分に肩入れし過ぎているように思った。

どうしてそこまで自分を気にかけてくれるのか…不思議で仕方なかったが、取り敢えず着ぐるみを取りに行こうと決め、鍵を右手に握り締め、ドアの方へと向かった。

 

ドアの鍵を開け、玄関を通り過ぎてリビングに入ると、着ぐるみがあったので、錬太郎は空間錬成を使って、片付けた。

旦那さんの手紙の通り、冷蔵庫の中には少しばかり肉や野菜などの食品が仕舞ってあった。残したままで、いずれ腐らせておくのも勿体ないと思い、錬太郎は旦那さんの厚意に甘えて、食材も貰うことにした。

 

「さて、そろそろ帰るか…ん?」

 

着ぐるみの回収や、食材の受け取りも終わり、家を後にしようとした錬太郎だが、ふと、机の上にあったあるものが目に留まった。

近づいて確認すると、1枚の写真があった。

この世界にカメラは無いため、転生者でもない限り驚くはずだが、錬太郎は母との会話や、アーティファクトケミーの「スマホーン」で、写真のことを知っているため別段そこに驚きはしなかった。

そう、写真というものには…

 

「何…この写真…」

 

錬太郎が驚いたのは写真に写っているものだった。

色褪せており、血のような赤い色が滲んではいるのだが、そこに写っていたのは、

 

錬太郎、カズマ、めぐみん、アクア、ダクネス、ゆんゆん、そしてクロっちとウィズの8人だったのだ。

何故自分達が写った写真があるのか、そして何故それがこの家にあったのか…

溢れ出す情報の波に、錬太郎は暫くの間、放心状態となってしまった。

 

 

 

 

 

カズマ、めぐみん、ダクネスの3人は、めぐみんの日課の爆裂散歩も終わり、共に昼ご飯を食べたり、お店で商品を物色したりして、冒険者としての束の間の休息を楽しんでいた。

 

そして今から、最近冒険者達に人気の洋菓子店に向かうことになっている。

 

めぐみん曰く、値段はそこそこするものの、生地の素材や、細部の装飾まで徹底的に拘っており、味も一級品故に、多くの人々の舌を虜にしているのだという。

 

ちなみに、その洋菓子店には、今アクアがバイトしているため、カズマは、あわよくばアクアとのコネで優遇して貰えるのでは、と仄かに期待を寄せた。

 

「なんだかカズマが良くないこと考えていそうなのです!」

 

「そうか、めぐみん?いつものことだと思うが?」

 

「おい、お前ら!言いたい放題言いやがって!お前らの中で俺はどんなふうに映ってんだよ!」

 

2人からの酷い言いように、カズマは声を荒げる。最近仲間のために命をかけたのだから、ほんの少しくらいは対応が優しくなるかなぁ…と思ってもいたのだが、残念、相変わらずである。

 

3人は暫く歩き、やがて一軒の店を目の前にして足を止める。

色付きが鮮やかなガラス窓や、独特な形の扉、そして洋菓子屋らしい木材使いのファサードが特徴的で、近くの看板には、『洋菓子専門店 チャーミング』と記されていた。

 

「ついに到着しました…アクセルに来てからどうしてもここを一度訪ねてみたかったのです!さぁ、いきましょう!カズマにダクネス、ケーキが私達を待っています!」

 

めぐみんは目に星を浮かべて、意気揚々としながら店の扉へと向かう。カズマとダクネスもその後を追い、入店しようとした。

 

その時、勢いよく扉が開かれ、店の中から誰かが飛び出してきた。

 

「はぁはぁ!あっ⁉︎かずましゃあああん!めぐみ〜〜〜ん、ダクネスぅぅぅぅ!お願い!私を助けてぇぇぇぇぇ!」

 

飛び出してきたのはアクアだった。洋菓子店でのバイトなので、コック服を着ているのだが、何故かボロボロになっており、彼女の特徴的な青髪も乱れに乱れまくっている。

一体何があったのか、洋菓子店でのバイトとは誰かに助けを求めて逃げ出したくなるほど過酷なものなのか、という疑問が3人の頭の中を駆け巡る。

 

刹那、店の奥から誰かがやってきた。

鍛え抜かれた体格、特徴的なつけまつげに加えて、フリルを用いた服装をしており、頭には黒いダーバンを巻いている。

男性にも女性にも見える不思議な顔つきをしており、しかも妙な威圧感もある。

 

「て…店長…」

 

アクアの店長呼びを聞いて、3人は目を見開いて店長なる人物を凝視する。

しかしその店長は3人の注目など気にする様子はなく、アクアの首根っこを掴むと、カズマ達に笑顔を見せ

 

「申し訳ございません、お客様。うちのバイトが大変ご迷惑をおかけしました。空いている席、好きな場所を選んでお待ちください。暫く致しましたらメニュー表を持ってきますので」

 

そう言うと、アクアを連れて、厨房へと消えていった。

 

「どうしたの、ミス・アクア?この程度で音を上げているようじゃ、本物にはなれないわよ?さぁ背筋ピーン!ビシバシいくわよ!」

 

「嫌ぁぁぁぁぁ!もう地獄のパティシエ修行は散々なのぉぉ!」

 

「口を動かさずに手を動かす!クリーム固まるだろうがぁ!さぁ早くする!」

 

「うぇぇぇぇん!」

 

厨房から店長の愛の鞭と、アクアの悲鳴が響き渡る。基本的にアクアが痛い目を見る時は自業自得な場合が多いのだが、今回ばかりはカズマやめぐみんも同情した。あんなガタイの良く、怖い人からの厳しい指導なんて、並の人なら失禁ものである。

しかし、例外中の例外であるダクネスは厨房からの悲鳴を聞いて、ポツリと呟く。

 

「ここのお店、まだバイト募集しているだろうか?」

 

「やめろよ?」

 

どこまでいってもブレないダクネスであった。

 

 

 

 

「うっ…ひぐぅ…怖かったよぅ…」

 

3人はアクアのバイトが終わるまで、店でケーキをはじめとしたスイーツを堪能したのだが、地獄のパティシエ修行によって、しごきにしごかれたアクアは、恐怖による涙を滝のように流しながら、カズマ達と帰路を共にする。

 

「アクア、いい加減泣き止んでくれよ…道行く人達からまた変な目で見られるかもしれないだろ…」

 

「だってだって怖かったんだもん!あの筋肉ダルマ嫌い!」

 

「わかった、わかったから…あ、アクア、ちょっとこっちに寄れ!」

 

後ろから、乗馬した者がやって来たため、カズマは3人と共に脇に避けて道を譲る。

 

「これは忝い。わざわざ道を譲って頂くとは…」

 

男は乗っている馬を止めると、道を譲ってくれたカズマ達に礼を言う。

かなりの長身で、背中には大剣を担いでいる。また、黒い鎧を身に纏っていて、おそらく、ミツルギのものよりも高価なものであろう。

乗っている馬も、これまた希少種のように感じるが、なぜか頭の上に布が覆い被されていた。

 

「い、いえいえ、もしかして、魔王軍幹部の討伐のためにやってきた冒険者でしょうか?」

 

カズマの問いに対して、男は一瞬驚いたように体をビクッと震わせるが、すぐに平常に戻ると

 

「その通りだ、まぁ、詳しい事情を聞くために今からギルドへと「アンタアンデッドね!くっさい臭いがプンプンするわ!」…へ?」

 

男が話している中、アクアが割り込み、鼻を摘みながら険しい顔をして、男がアンデッドであると断言する。アクアの発言にカズマは青ざめて、慌ててアクアを取り押さえると、男に謝罪する。

 

「こんの駄女神がぁぁ!すみません、本当すみません!うちの馬鹿が適当なこと行ってしまい申し訳ございません!」

 

「何するのよカズマ!私嘘ついてないもん!アイツは本当にアンデッドよ!」

 

「お前もう喋るな!ごめんなさい、コイツにはあとできつく言っておきますので…」

 

「え…え…お、おおお俺が…あああアンデッド⁉︎」

 

カズマが何度も謝る中、男はわかりやすく動揺した様子を見せた。まるでアクアの指摘が図星であるかのように。

 

「な、ななな何を言うんだお嬢ちゃん!お、俺がアンデッドな訳ないではないか!あ、で、でも一応どこら辺でそんな感じがしたのか聞かせてはくれないかな?一応、一応ね!」

 

堂々とした様子から一変、明らかに挙動不審な様子になる男。先程まで、アクアの発言を疑っていたカズマ達だったが、男の動揺している様子を見て、男の方へと嫌疑の視線を寄せる。

 

「まったくうるさいわね!アンデッド特有のくっさい匂いを放っているんだからわかるのは当然よ!とっとと浄化されなさい!『ターンアンデッド』」

 

「え、ちょ、まっ、ギャアアアアア!」

 

男の静止も聞かず、アクアは自身の手を突き出して、白い光を放つ。

光が男とその馬へと直撃すると、馬は消滅し、男も身体中から黒い煙を立ち上らせていたが、なんとか持ち堪えていた。

その様子を見たアクアは

 

「どうしよう皆!私の浄化魔法が効いてない!」

 

「いえ…悲鳴をあげていましたのでかなり効いているのかと…」

 

「アクアの浄化魔法で苦しむということは、本当に貴様はアンデッドなのだな!」

 

ダクネスの指摘に、男は観念したように口を開く。

 

「フッ、まさか魔王軍幹部である俺にも痛みを感じさせる程の強力な浄化魔法を駆使するプリーストがいるとは…」

 

男の発言に皆、耳を疑う。魔王軍幹部、男は自身のことを確かにそう言った。

そして男は、自身の頭部と胴体を引き離し、頭を左脇に抱える。

その姿はどこからどう見ても首なし剣士、デュラハンである。

 

「デュラハンだ!」

 

「魔王軍幹部が来たぞ!」

 

「至急ギルドに知らせろ!」

 

道行く人々は慌てふためいた様子で騒ぎ始める。

そんな人々の様子を他所にデュラハンは声高らかに名乗りを上げる。

 

「聞け、冒険者共!俺は偉大なる魔王様の命によりこの地へ遥々やってきた魔王軍幹部が1人、ベル「黒より黒く、闇より暗き漆黒に我が深紅の混淆を望みたもう…覚醒のとき来たれり!無謬の境界に落ちし理…無行の歪みとなりて現出せよ!踊れ踊れ踊れ!我が力の奔流に望むは崩壊なり… 並ぶ者なき崩壊なり…万象等しく灰塵に帰し、深淵より来たれ!」へ?」

 

しかし悲しきかな、こんな混乱下では、誰もデュラハンことベルディアの名乗りなど聞く余裕もない。それどころか、人類最大の攻撃魔法にしてネタ魔法である爆裂魔法を駆使する頭のぶっ飛んだ少女が、魔法の詠唱を始めている。

 

「おい、ロリっ娘!何やってんだお前ェ!!ていうか今日はもう爆裂魔法撃てないはずだろぉ!」

 

「インフェニックスの力で1日1回魔力を全回復できるのですよ!

目の前には魔王軍幹部、レンタロウとの修行やケミー達の協力もあって進化し続ける我が爆裂魔法、そして建造物への被害はケミー達のお陰で最小限に留まる!こんな最高条件の大盤振る舞いの中、爆裂魔法を我慢できるでしょうか、いえできません、撃ちます!」

 

大量の魔力がめぐみんの杖へと集まっていき、やがて魔力の量が限界に達すると、めぐみんは天高く杖を掲げる。

これから起こることを予想したカズマとアクアは、一目散にその場を離れ、ダクネスは性癖故か、涎を垂らしながら破顔し、そのまま突っ込んで行った。

 

「『エクスプロージョン!』ッッッッ!!!」

 

めぐみんが叫ぶと共に魔法陣が展開され、ベルディアに向かって激しい爆発が起きた。ついでにダクネスも巻き込まれた。その威力の高さたるや、ケミー達により抑制されたとはいえ、地面に大きなクレーターを残すほどだった。

 

錬太郎との修行、ケミー達の協力、さらにはレベルアップ毎に獲得したスキルポイントによって爆裂魔法の威力は格段に上昇しているため、いくら魔王軍幹部といえども、完全に消炭となった…そう誰もが思っていた。

 

「やはりそうか…強力な力を持つアークプリーストに、爆裂魔法を放つアークウィザード…情報から照らし合わせるとお前達がサンドロス達を倒したパーティーか…」

 

「おいおい、嘘だろ…」

 

爆心地の方から、鎧の動く金属音が響く。ユラユラと現れた漆黒の剣士は、左腕に首を抱えて、右手に大剣を担ぎ、堂々とした様子でカズマ達を見据えている。

あまりの衝撃にカズマは口から驚愕の意を零す。

ベルディアは耐えていた。ネタ魔法とは呼ばれつつも、同時に人類が行える中で最も威力のある攻撃手段でもある爆裂魔法。それを、耐えたのだ。

その事実は、カズマ達に今までにない不安感と焦燥感を齎した。

 

「(どうすればいい、錬太郎はもちろんクロっちも今はこの場にいない…ダクネスは爆裂魔法をモロに受けてダウンしているし、ゆんゆんはギルドの報告でもうすぐ来るかもしれないが、俺たちだけでなんとか出来るのか…アンデッドは物理攻撃も意味を成さない…どうすれば…)」

 

カズマが思考を巡らせる中、ギルドからの報告で駆けつけたであろう冒険者達がやってきた。

 

「こんなやつは見てくれだ!さっきのプリーストの浄化魔法でふらついていたらしいからな!」

 

「一度に掛かれば死角ができる!一斉攻撃だ!」

 

なんという死亡フラグの数々。そんなことお構いなしに、冒険者達はベルディアに向かって一斉に押し寄せる。

しかし、相手は魔王軍幹部、そして剣士ときた。恐らく生前も幾千もの戦場を駆け抜けてきた男が、たかが四方八方から攻め立てるくらいで敗北するはずがない。

 

「いいだろう、今日がお前達の命日だ…」

 

ベルディアは自身の頭を空高く放り投げた。

不穏を感じ取ったカズマは、立ち向かっていく冒険者達に向かって大声で叫ぶ。

 

「やめろ!行くなぁぁぁ!」

 

刹那、上空に巨大な赤い眼が出現し、ベルディアを取り囲んでいた冒険者達は次々と斬り捨てられていった。

全員が倒れたのを確認すると、宙を舞っていたベルディアの頭部が再び、彼の左腕へと収まった。

そしてベルディアはドスの効いた、威圧感のある声で淡々と述べる。

 

「さぁ、次はどいつだ…」

 

その圧倒的強さと言葉に、集まっていた冒険者達は皆怯み、中には恐怖のあまり、目尻に涙を浮かべる者もいた。

 

「カズマさん!これは…一体何が⁉︎」

 

冒険者達の中からゆんゆんが、カズマの元へと駆け寄った。

 

「ゆんゆん、至急錬太郎に戻ってくるよう言ってくれ!」

 

「⁉︎わかりました、でも今からだったら間に合わない可能性も…そうだ!」

 

ゆんゆんは青く煌めく水晶を取り出して、空に掲げた。

 

「このテレポート水晶なら、一瞬で錬太郎さんの元に行って連れてこれます!カズマさん、行ってきます!」

 

眩い光が水晶から放たれ、ゆんゆんは消えた。恐らく錬太郎の元へと移動したのだろう。もうすぐこの絶望的状況が打開される。

しかし、錬太郎が来るまでは?

誰かが犠牲になって時間を稼がなければならないのか。

カズマは己の無力さを痛感する。アクアのように強い浄化魔法を放てる訳でも、ダクネスのように耐久力がある訳でも、めぐみんのように強力な一撃を放てる訳でもない。

自身の持つ数多のスキルとケミー達の力を組み合わせればそれなりに抵抗できるかもしれないが、現在、殆どのケミー達は錬太郎の元にいるため、今の自分では悪足掻きも出来ない。

 

「(俺にも…錬太郎みたいに戦う力があれば…)」

 

「お困りのようだねぇ…」

 

瞬間、カズマの目の前に1人の男が現れる。男は背が高く、一部金色の装飾が施された黒いスーツに身を包み、丸渕メガネを掛けていた。

突然現れた男にカズマは驚きながら尋ねる。

 

「アンタ誰だ⁉︎」

 

男はカズマの方を向くと、穏やかな口調で話しかける。

 

「私はロード。君のことは見ていたぞサトウカズマ。自分にも力があれば…ガッチャードのようになれれば…と、理解するぞ、その羨望」

 

ロードと名乗る男は懐から分厚く、武骨な形のモノ、『ドレッドライバー』を取り出し、カズマの腰へと装着させる。

その瞬間、カズマの肉体に激痛が走る。身を焼かれるような、全身を貫かれるような、とても形容し難い痛みであった。

 

「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!」

 

その証拠にカズマは悲鳴をあげ、涙ぐんでいた。

しかし、そんなことロードにはお構い無しだった。

 

「時間が惜しい、さっさと検証実験に移るとしよう…」

 

『スチーム…』

 

ロードは鉄仮面を装着したような蒸気機関車のケミー、『レプリスチームライナー』のカードを取り出し、ベルトの『ヴェヴェルセッター』にスラッシュさせる。

 

『スチームライナー…』

 

その後カードを後部のスロットへと装填し、ベルトからは踏切の警告音のような待機音が流れ始める。

ロードは最後に、ベルトのレバー、『ネクベトヴォーク』を展開し、カズマに問いかける。

 

「さぁ、何と言えばいいのかな?」

 

ロードの質問に、カズマは震える声で言い放った。

 

「変…身…」

 

カズマの言葉を待っていたかのように、ベルトからレプリスチームライナーが飛び出す。

そして、紅蓮の炎がカズマの肉体を包みこみ、さらに黒い霧のようなものに染まった骨が全身に纏わりつき、姿が変わる。

 

『ドレッド・零式』

 

黒い外骨格に覆われたようなその姿は、ベルディアと比べても引けを取らないほど、見る人へ恐怖心を抱かせる。

 

「カ…カズマ」

 

突然の出来事にめぐみんは動揺を隠しきれていない。

そんな彼女と正反対に、ロードは嬉々として声を響かせる。

 

「さあ行け…暗黒の破壊者、ドレッドよ…」




どうも、山田です。今回も情報大量ですね…すみません
錬太郎が着ぐるみ忘れて取りに行く最中に見つけた写真、あれは一体なんなのか?
どこぞのブラーボさんが出てきたと思いますが、彼、また出します。
そしてベルディア襲来とまさかのカズマがドレッド強制変身。
実はドレッド強制変身はカズマかミツルギかでギリギリまで迷ってました
これからどうなっていくのでしょうか?
それでは、また次回

次回予告
「命を喰らう暗黒の破壊者」
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