この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

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今日は錬金見聞録はおやすみです。

それでは本編にどうぞ


命を喰らう暗黒の破壊者

「ああ〜、いい湯だなぁ…」

 

錬金術師、百瀬錬太郎は現在、山奥の天然温泉に入浴し、連日の疲れを癒していた。

どうしてこうなったのかというと、エミとその夫婦の家を後にした際、偶然、エンシェントケミーのレベルナンバー2のアクマノカリス、

レベルナンバー6のワープテラを捕獲したのだが、彼らが見つけた秘湯があるとのことで、興味を抱いた錬太郎は、そこを訪れることにしたのだ。

 

ワープテラのワープ能力で、一瞬のうちに目的地へと到着した錬太郎は、自身の瞳に映る景色に心奪われる。

4万坪ほどの緑豊かな自然林に囲まれる温泉に、木々の間から見える、一筋の光の如く煌めいて流れる緩やかな滝は、まるで1本の剣のようであった。

 

その後服を脱いで浴し、今に至るというわけである。

錬太郎は、この雄大な自然を貸切気分で満喫していた。

地中奥深くから沸き上がる温泉に体を包まれるのは、まるで、この星の一部になっているのではないかと錯覚してしまいそうになる。

 

空を見上げると、木々によって形成された夜の道を、星々が輝きながら踊っており、祭囃子でも見ているように感じる。

 

錬太郎は、カズマ達がギルドに待っていると知りながらも、今夜だけは、ここにいたいなぁと、ぼんやりと思った。

 

刹那、錬太郎の目の前に、青白い光とともに人影が、空中に現れる。

そして重力に従うかのように、その人影は温泉の中へと引き摺り込まれ、飛沫を散らす。

 

「え⁉︎なんだなんだ⁉︎」

 

突然のことに錬太郎は驚きを隠せない。ここは基本的に誰も立ち入ることのない秘湯、だというのに突然何者かが現れて、温泉の中へと落下したのだから。

新手の奇襲かと、錬太郎は構える。暫くして温泉からブクブクと泡が立ち、落下した人物が飛び出してきた。

 

「けほっ、けほっ、え〜、どこなのここ?錬太郎さんのところにテレポートしたはずなのに…うう〜、びしょ濡れで気持ち悪い…」

 

現れたのは黒髪赤目で、胸部を強調した、黒い上着とピンク色のスカートが特徴的な女の子。そう錬太郎のよく知る人物で、元ぼっち兼中級魔法使いのアークウィザードのゆんゆんである。

 

「ゆ、ゆんゆん⁉︎どうして此処に⁉︎」

 

「あ、錬太郎さん!よかった、今からいっしょに…」

 

ゆんゆんは続く言葉を途切れされ、錬太郎の姿を凝視し、固まってしまう。

今錬太郎は入浴中、つまり一糸纏わぬ生まれたままの姿、全裸なのである。

ゆんゆんも年頃の女の子、歳の近い異性の裸を視界に入れて耐えられる訳がない。

次第にゆんゆんは顔を紅潮させていき…

 

「いやああああああああ!」

 

手に持っていた水晶を錬太郎に向かって投げつけた。水晶は見事、錬太郎の顔面にクリーンヒットし、錬太郎は鼻から血を垂れ流し、仰向けに倒れながら、意識を手放したのだった。

 

 

 

 

 

「ご、ごめんなさい錬太郎さん!わ、私突然のことで混乱しちゃってあ、あ、あんなこと…」

 

「いやいや、あれはどう考えても僕に非があるんだから、落ち着いて、ね」

 

あれから数刻して意識を取り戻した錬太郎。彼が意識を取り戻すや否や、ゆんゆんは、勢いよく頭をブンブンと上下して、謝罪する。対する錬太郎も、気負いすぎているゆんゆんにオロオロとしてしまっている。

 

「と、取り敢えず確認だけど、ゆんゆんは何か伝えることがあってここに来たんだよね?」

 

「あ…はい!デュラハンが、魔王軍幹部が!アクセルの街にやってきてしまって…それで錬太郎さんを連れてこようと思って…」

 

魔王軍幹部、そしてゆんゆんの焦っている様子から、一刻の猶予もない、深刻な事態なのだと読み取れる。

錬太郎はすぐに支度を終えると、ゆんゆんの方に向き直り、

 

「よし、それじゃあ急いで向かおう!」

 

「はい!ではこの水晶に…あれ?…嘘…なんで⁉︎もしかして…壊れちゃった⁉︎」

 

ゆんゆんが取り出した水晶に2人は手を触れるが、何も反応はない。この水晶にはテレポート機能が搭載されているのだが、恐らく温泉に落っこちた時か、錬太郎にぶつけた時に故障してしまったのだろう。

想定外の事態に、ゆんゆんは顔を真っ青にして、絶望する。

ゆんゆんの様子が心配になった錬太郎は、彼女の肩を叩き、尋ねた。

 

「どうしたの?」

 

「テレポート水晶が…壊れちゃったみたいで…どうしよう…これじゃみんなが…みんなが…」

 

ゆんゆんは地面にへたずり込み、嗚咽を漏らしながら泣き始める。

頼みの綱である錬太郎を見つけ出せたはいいが、その彼を魔王軍幹部の元に連れて行ける手段がないのだから当然だ。

しかし、彼女の絶望は杞憂となるだろう。錬太郎には現在、目的地へと一瞬のうちに移動することを可とするケミーが側にいるのだから。

 

「大丈夫だよ、ゆんゆん。皆のところにはすぐにいけるから…だから、泣かないで」

 

「ひぐっ…そんなこと…できるんですか…?」

 

「うん、ワープテラのワープ能力があるから目的地まで一っ飛びさ!」

 

『ワープ!』

 

錬太郎がワープテラのカードを取り出して、ゆんゆんに見せる。カードの中のワープテラも任せろと言わんばかりに元気な様子である。

 

「本当ですか⁉︎」

 

錬太郎からの言葉を聞いて、ゆんゆんの瞳が紅く輝く。先程とは違い、希望に満ち溢れた様子で。

 

「ああ、じゃあ…頼むよ!ワープテラ!」

 

『ワープテラ!』

 

ワープテラは、錬太郎の要請を聞き入れ、錬太郎とゆんゆん、2人の真上に赤黒いワームホールを出現させる。

 

「しっかり捕まっててね!」

 

「は、はい!」

 

ゆんゆんは錬太郎の言う通りに、彼の裾を掴んで体を寄せる。やがて、ワームホールは2人を吸い込み、消滅した。

2人がいなくなり、閑散としてしまった秘湯は、湯気を立ち昇らせて、その姿を隠すのだった。

 

 

 

 

少し遡ってアクセルの街、

魔王軍幹部の一柱、デュラハンのベルディアと、

ロードによってカズマが強制変身させられた

『暗黒の破壊者』、ドレッドが睨みを利かせ、お互いの出方を窺っていた。

 

「さあ、行け…」

 

ロードが口火を切り、ドレッドへ進軍の合図をかけたのと同時に、勝負の幕が上がった。

地を強く蹴り飛ばし、一瞬にして接近する両者。

ベルディアは勢いに乗りながら、自身の巨大な剣を振るい、ドレッドへと攻撃を仕掛けてくる。剣士として数十年、はたまた百数年の年月をかけて練り上げられた斬撃の一つ一つが容赦なく、ドレッドを襲う。

 

対するドレッドは、ベルディアの斬撃を腕で受け止めたり、躱したりしながら、徒手空間を用いて応戦している。

 

ベルディアとドレッドの戦いを、冒険者達は目を丸くして眺めている。

はっきり言って異様な光景だ。人ならざる者と、人が変貌した異形の戦士が戦っているというのもあるのだが、一番は、ドレッドが、魔王軍幹部相手に1人で立ち回れているということだ。

魔王軍幹部は、1人1人が王都の腕利きの冒険者達のパーティーが集まったとしても、軽く圧倒してしまう程の者達で構成され尽くしている。

 

中でもベルディアは武闘派で、長年に渡って魔王軍の最前線で戦闘を駆け抜けてきた猛者である。

剣士時代から錬磨されてきた剣術は勿論のこと、戦闘の合間に、相手の癖や動作などを見極め、最適な攻撃方法を導き出す洞察力も備えており、これだけでも1対1の戦いを、ベルディアに挑むことが無謀もいいところなのは周知の事実である。

筈なのに、だ。ドレッドは、そんなベルディアに押されることなく、喰らい付いている、否、寧ろ互角と言った方が正しい。

 

そして先程まで、防ぐ、躱すばかりだった斬撃を腕で振り払い、直撃したとしても、強固な骨格と超耐圧構造を誇る「ライダゴレム」の影響で怯むことなく、攻撃へと転じていく。

 

超高圧スチームの充填の影響により、強化された拳、「ダンテアクチュエーター」による打撃の嵐をベルディアに炸裂させ、その鎧に傷を付けていく。

 

「ば、馬鹿な…⁉︎お、俺の鎧を…」

 

自身の鎧を傷つけられたベルディアは、動揺する。

ベルディアの鎧は、彼の従事する魔王からの加護を受けており、並の攻撃では傷一つ付かず、さらにはアンデッド特有の浄化魔法への弱点を補うべく、耐性も付与されている。

 

そんな今までどんな冒険者の剣撃や魔法でも、対してダメージを通さなかった鎧が、一戦士の拳と蹴りによって破損し、尚且つ強力なダメージを与えてきている。

 

歴戦の戦士としての勘が、ベルディアに告げている。

『コイツは、只者ではない』と…

 

「ならば、これならどうだ!来い、アンデッドナイト達よ!」

 

ベルディアの呼びかけを合図に、大量のモンスターが出現し、ドレッドを取り囲む。ベルディア兜の下で不敵に笑い、挑発気味にドレッドへ言い放つ。

 

「さぁ、コイツらを倒すことができるかな?」

 

「これは…少しばかり本領発揮させた方がいいな…ドレッドよ、今こそレプリケミー達の力を解放するのだ」

 

対戦を静観していたロードは口を開くと、ドレッドに指示を出す。ドレッドはロードの言葉を受けて、腰に装着された「ドローホルダー」から2枚のレプリケミーカードを取り出した。

その後、カードをベルトの「ヴェヴェルセッター」に読み込み、倒立式蒸留器である「コンススティラー」に装填する。

 

『バレットバーン…ドレイン』

 

『フレイローズ…ドレイン』

 

ベルトの機能によって、ケミーの力を強制的に抽出し、ドレッドの手元に二丁拳銃の「ブラッディーBB」が召喚される。

 

次の瞬間、ドレッドは天高く舞い上がり、ベルトのレバー、『ネクベトヴォーク』を操作し、ケミー達の悲鳴と共に攻撃へと移った。

 

『ブラッドレイン…』

 

ドレッドは空中で身体を捻り回しながら、縦横無尽に銃撃を繰り出す。

「フレイローズ」の力も加わって、炎を纏った弾丸を、その身に受けたアンデッドナイト達の身体は忽ち燃え盛り、もがき苦しみながら一人、また一人と倒れていく。

 

ある程度の数を仕留めたドレッドは、地に降り立つと、新たに2枚のカードを取り出して、その力を無理矢理引き出していく。

 

『アッパレブシドー…ドレイン』

 

『ライデンジ…ドレイン』

 

今度は手元に日本刀を模した「ブラッディーAB」が出現し、それを手に取ると、ドレッドは残りのアンデッドナイトへと立ち向かっていく。

雷を纏った白銀の煌めく刃が振り回され、次々とアンデッドナイト達を斬り捨てていき、

そして…

 

『ブラッドレイン…』

 

再びネクベトヴォークを操作すると、古武術のような、重々しい構えをとる。

そして下から上へ、弧を描くように斬撃を放ち、その一閃は、地を這いまわる雷獣の如く、アンデッドナイト達を穿ち抜いていった。

 

全てのアンデッドナイトを仕留めたドレッドは、ベルディアの方へと向き直る。

対するベルディアは少しばかり狼狽するが、すぐに平常を装い…

 

「フッ、ハハハハハハ!まさかアンデッドナイト達を全員倒すとは…だが、これではっきりした…貴様は魔王様の障害になりうる…よって生かしておく訳にはいかない」

 

ベルディアはドレッドを見据えると、自身の手から赤黒く、禍々しい弾をドレッドに向けて放つ。

 

「汝に死の宣告を…今すぐ死に晒せ!」

 

ベルディアの能力の一つ、死の宣告。一流のプリーストの浄化魔法を持ってしても解くことはほぼ不可能に近い、文字通り、死を告げる呪いである。基本、ベルディアがこの呪いを使うときは、1週間など、猶予を持たせるのが普通なのだが、ドレッドに対しては即死…それほどまでに脅威と見ているのだろう。

一方のドレッドは、迫り来る死への片道切符の呪いを眺めながら、臆することなく堂々としている。そして、新たに1枚のカードからケミーの力を絞り取った。

 

『ユニコン…ドレイン』

 

ユニコンの力を取り出すと、ドレッドは両手を前に突き出す。

その瞬間、青白い光がドレッドの両掌から放たれ、ベルディアの死の宣告を打ち消した。

 

「ハハッ…小細工は通用しないということか…」

 

ベルディアの口から、自嘲するような乾いた笑いが漏れる。

正々堂々と、ぶつかり合うことしか方法はないと見たベルディアは、自身の大剣を肩に担ぎ、淡々とした様子で言い放つ。

 

「本気で相手をしてやろう…」

 

 

 

 

ベルディアは先程と同様に、自身の左腕に収まっていた頭を天高く投げ上げる。

再び上空で、ベルディアの赤い眼が光り輝き、禍々しい魔法陣のようなものが展開される。

滞空するベルディアの頭を、ドレッドは見上げる。その一瞬をついて、ベルディアはドレッドに肉薄する。

 

「くたばれぇぇぇぇぇ!」

 

ベルディアの本気の猛撃が、両手に握られた大剣から繰り出される。鋭く、正確なその太刀筋は、一撃受けただけでも死へと直結するだろう。

先程突っ込んでいった冒険者達も、その的確かつ、鋭利な斬撃によって、首を切り落とされ、死に至った。

 

だが、それもドレッドには通じない。

 

『ドンポセイドン…ドレイン』

 

水の神の名を冠するレプリケミーの力を引きずり出すと、曇天の空を裂いて、三叉の槍である

「ブラッディーDP」が出現する。

ドレッドはブラッディーDPを手に取り、ベルディアの斬撃を全て防いだ。両者の武器は何度も交わり、その都度、火花を散らす。

 

打ち合いは互角。埒が開かないと見たドレッドは、新たにレプリケミーカードを取り出すと、ベルトを通じてその能力を解き放つ。

 

『サスケマル…ドレイン』

 

その瞬間、ドレッドの姿が霧とともに消える。先ほどまで眼前にいた相手がいなくなったことに戸惑うベルディア。

そしてベルディアの背後に、再び霧とともに現れるのはドレッドの姿。

ドレッドはブラッディーDPを両手で握り締め、鋭い刺突攻撃を繰り出す

ーーしかし、

 

「甘いぞ…」

 

ベルディアはその攻撃を見切り、ドレッドの方へ向き直ると、大剣で受け止める。姿を消したドレッドに一瞬だけベルディアは狼狽えたが、その後はしっかりと動向を把握できていた。

上空にある頭によって、ドレッドの行動が全て丸見えだったのだ。

デュラハンであるベルディアだからこそ出来た離れ業である。

再び武器を交え、一歩として引かない両者。ドレッドは何とかベルディアの大剣を押し退ける。

 

そしてーー

 

ブラッディーDPの三筋から、強力な水の竜巻を起こし、ベルディアへと放つ。

 

「ま、まず…」

 

ベルディアは咄嗟の事で反応出来ず、その攻撃を一身に受けてしまい、フラフラとしながら、やがて膝をついた。

 

「なるほど、奴の弱点は水だったのか…それではドレッド、幕引きの時間だ…」

 

ロードの指令に応じ、ドレッドは4枚のレプリケミーカードを取り出して、その力を自身に纏わせていく。

 

『ホッパー1…ドレイン』

 

『ギガロドン…ドレイン』

 

『ディープマリナー…ドレイン』

 

『マーキュリン…ドレイン』

 

ドレッドは全てのカードを読み込み終え、そのままネクベトヴォークを操作して、必殺態勢に入る。

 

『ブラッドサクリファイス…』

 

刹那、ベルディアの足元に沼のような空間が出現し、その身を捕縛する。

 

「な、何だと⁉︎」

 

拘束を解こうと必死に足掻くベルディア。しかし、先程の水の嵐を受けたこともあり、思うように体の力が入らず、抜け出すことが出来ない。

 

ドレッドは狙いを定めると、空中に飛び上がり、鮫の牙の如く、ベルディアに鋏み蹴りを炸裂させる。

レプリホッパー1の力で強化された脚力と、レプリマーキュリンの能力によって水属性を得た両足の締め付けにベルディアはもがき苦しむが、動けば動くほど、ドレッドの両足に体を圧迫される。

そして頃合いと見たのか、ドレッドは、そのまま回転してベルディアを吹き飛ばし、地面へと叩きつける。

 

ダメージに呼応するかのように、空中に漂っていたベルディアの頭も地に落ちた。

 

時同じくして、錬太郎とゆんゆんもアクセルの街へと到着し、戦闘を傍観していた冒険者達の元へと駆け寄る。そして目の前の光景に驚愕した。

 

「嘘…魔王軍幹部が、負けてる…⁉︎」

 

「なんだあの黒い戦士は…デュラハンは一体…何と戦っていたんだ…?」

 

魔王の加護を受けた鎧はボロボロとなり、最早虫の息となっているベルディア。

剣を握る力も、立ち上がって攻撃を仕掛ける力も残ってはいない。

 

ベルディアは、兜の中から、光が消えかけている赤い瞳を覗かせながらドレッドを見上げ、

 

「その…力…恐る…べし…」

 

最後の力を振り絞り、弱々しく言葉を紡ぐ。その直後、身体が崩壊していき、やがて塵となって消滅した。

 

 

 

 

「素晴らしい!初陣としては上出来、流石だ!」

 

ロードはドレッドの勇姿を見届けると、感動のあまり拍手喝采を送る。

冒険者達の視線はロードへと集まり、やがて錬太郎達もロードへと目を向ける。

 

「ロード…」

 

特徴的な丸渕眼鏡の男を瞳に捉えると、錬太郎は眉間に皺を寄せ、歯を食いしばりながら、憮然とした様子になる。

 

「おや、百瀬錬太郎じゃないか…直接会うのは錬金事変以来かな?」

 

ロードも錬太郎に気がついたようで、昔馴染みと会ったように、飄々とした様子で話しかける。

そんな態度も錬太郎は腹立たしく感じるが、今は気になることがあるため、感情を抑え込み、淡々として尋ねる。

 

「あの黒い戦士は何だ?お前が生み出したのか…」

 

「その通りさ、私がレプリケミーと暗黒の釜を交えて生み出した、ドレッドだ。」

 

「何だと⁉︎じゃあなんでデュラハンを倒した!お前の部下のサンドロスの言う通りなら、お前と魔王軍は協力関係にあるんじゃなかったのか⁉︎」

 

錬太郎からの新たな質問に、ロードはそのことか、と言いたげな様子で額に手を当てて、やれやれと首を横に振る。

 

「サンドロスか…彼のことはよくわかっていなくてね…私も知らないネガマスクだったんだ…」

 

「…どういうことだ」

 

自分がサンドロスから聞き出したこととロードの言っていることが噛み合わず錬太郎は困惑する。ではサンドロスは何者なのか、なぜロード直属の部下のネガマスクを名乗っていたのか。

 

「まぁ、そんなことより、ドレッドの相手をしてくれないか?ガッチャード…それに、早くしないとドレッドの負荷に耐えられずにお友達が死んじゃうかもよ…?」

 

「何を言ってるんだ⁉︎」

 

ロードの発言が引っかかるものの、意味がわからないため、錬太郎は声を荒げて問いただす。

 

「カズマが…カズマがその黒い戦士に変えられてしまったんです!」

 

駆け寄ってきたアクアに背負われながら、ドレッドの真実を告げるめぐみん。そのことを聞くや否や、錬太郎は怒りを宿した瞳をロードに向ける。

 

「…相変わらず、趣味が悪いんだな」

 

「御宅はいい…さぁ、私にケミストリーを見せておくれ!」

 

錬太郎はガッチャードライバーを腰に装着すると、2枚のカードを取り出して装填する。

 

『カイザービー!』『アクマノカリス!』

 

錬太郎は、両手で円を描いた後に両手を重ねると、その手を反転させ、矢印の先端を形作って正面に突き出して、力強く叫ぶ。

 

「変身!」

 

『ガッチャーーンコ!カイザーカリス!』

 

眩い光に包まれた錬太郎は、戦士の姿へと生まれ変わる。

黄金の鎧を身に纏い、蜂の尾を模した巨大な鉤爪と、何枚も重なり合った

羽根を背に持つ威厳溢れるその姿は正に皇帝

 

ーー仮面ライダーガッチャード カイザーカリス

 

ガッチャードはドレッドに向かって歩みを寄せる。そして彼とは別に2人、ドレッドに対峙する者達がいた。ダクネスとゆんゆんである。

 

「2人とも、危険だよ⁉︎」

 

2人の身を案じたガッチャードは忠告し、退いておくよう促す。しかし、2人とも退身する様子は全くなかった。

 

「いえ、錬太郎さんが、友達が戦うのに見ているだけなんて出来ませんよ…それに、数が多い方が勝率も上がりますしね。絶対にカズマさんを助けましょう。」

 

「私も行くぞ、デュラハンのときは動けなかったが、今なら大丈夫だ。思う存分盾として使ってくれ」

 

その顔つきは覚悟したもののそれであった。いつもは性癖を出してくるダクネスでさえ真面目な様子である。

2人の強い決意を感じ取ったガッチャードはその想いを受け止め

 

「わかった、じゃあ僕とダクネスが前に出て攻めるから、ゆんゆんは後ろからサポートお願いね!」

 

「心得た!」

 

「はい!」

 

フォーメーションも決定すると、ガッチャードとダクネスは、共に駆け出してドレッドへ迫る。

ガッチャードは両腕を触手のように伸ばして、勢いのまま振りかぶる。

ドレッドはその間合いを瞬時に見極めて、紙一重で回避する。

そしてガッチャードの間合いへ入り、拳による攻撃を繰り出そうと構えた。

 

「させるかっ!」

 

間一髪で、割り込んできたダクネスによりドレッドの打撃は防がれ、その衝撃を受け止められる。

 

「今だ、錬太郎、ゆんゆん!」

 

「任せて!」

 

「わかりました!『ライトニング』!」

 

ダクネスの合図に、ガッチャードとゆんゆんは同時攻撃を仕掛けてドレッドを吹き飛ばす。

ドレッドは合体技により、地面を転がり回ったが、その後足元がおぼつかない様子でなんとか立ち上がった。

 

「何故だ?幹部と戦ってた時ほど勢いがないぞ?」

 

「多分だけど、中にいるカズマが大分弱ってるんだ、一気に必殺技で分離する!」

 

ガッチャードは、マルガムと化した人間とケミーを分離する要領で、必殺体勢に入る、これで決まる…そう思われたが

 

「そんなことをすれば、少年は死ぬぞ?」

 

ロードの言葉に皆、耳を疑う。カズマが死ぬと…皆の反応を楽しむように、ロードは愉快な様子で説明する。

 

「マルガムと同じように分離させるつもりだったのだろうが、ドレッドは禁術の戦士…分離するにも負荷がかかるからな、仮にリザレクションを持ったプリーストがいたとしても禁術により無駄となる、そしてそのまま…

アハハハハハ!」

 

ロードは続く言葉を笑い声に変えて、ガッチャード達を嘲る。

分離するにも命に関わる、かといって、変身させたままでも命に関わる、

今の自分達に手立てはない、正しく絶望的状況だ。

かつてない焦燥感が、ガッチャード達の心を蝕む。

 

そして攻撃を躊躇って生まれた隙は、ドレッドに反撃の好機を与えるには十分だった。ドレッドはベルトにカードをスキャンし、レプリケミーの力を抄出し、ネクベトヴォークを操作する。

 

『ゴキゲンメテオン…ドレイン』

 

『ブラッドレイン…』

 

刹那、無数の隕石が、天を貫いて、冒険者達に襲いかかる。

 

「皆避けろ!」

 

不規則な軌道で落下してくる隕石を、ガッチャード達はなんとか躱していく。隕石の衝突によって、正門は壊され、外壁も崩れ落ちていった。

そして、逃げ遅れた人々は、ガッチャードの左腕のホルダーから出現したクロっちのバリアによって守られた。

 

『錬太郎、これってかなりまずくない?』

 

「ああ、最悪が折り重なってとんでもないことになっちゃってる…クソ、どうすれば…」

 

突破口が全然見えてこない悲惨な状況に頭を抱えるガッチャード。そんな彼に追い討ちをかけるかの如く、ドレッドは再びレプリゴキゲンメテオンのカードを取り出した。

 

その時、光り輝く3つに連なった円盤が出現した。円盤はドレッドに向かってレーザー光線を放ち、ドレッドを後退させる。

突然の乱入者に困惑し始める冒険者達。しかし、ロードとクロっちだけはその存在に心当たりがある様子だった。

 

『まさか、人間不信の君がやって来るとはねぇ…』

 

「これはこれは、嬉しい誤算だな…錬金戦士同士の戦いに反応して導かれたのか…

 

 

 

 

オカルトケミーのレベルナンバー10、UFO-Xよ…」

 




ベルディア、ドレッドの前に散る
ということで今回は以上になります。
レプリケミーを使って変幻自在に戦うドレッドはやはり恐ろしいですよね…
そして最後に現れたUFO-X、彼はガッチャード達の味方なのか、敵なのか、それはまた次回で…

追記:水晶の件、ゆんゆんはテレポートをアクセルの街に登録してるから大丈夫じゃ、ってなるかもしれませんが、あのときはベルディア襲来、ラッキースケベ、水晶破損など色々あってパニックになっており、正常な思考ができていなかったということでお願いします。

その時テレポートを使えるクロっちは寝てた、以上。

次回予告
「あらたなケミストリー/X(クロス)する力
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