この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを! 作:山田プロキオン
駆け出しの街での出会い
「ハァハァ、まっ、待って!」
空色の服の上に黒いローブを羽織った黒髪黒目の少年が何かを追いかけていた。
少年が追いかけている対象は兎のような外見をしていているが、二足歩行で何やら大きな袋を担いでおり、時折『バニ〜、バニ〜』と鳴き声を発していた。そして身軽なこなしで少年の追跡を物ともしていないようだった。
追いかけっこが暫く続く中、突如少年の左腕のホルダーがモゾモゾと動き出し、展開したかと思うとタカのような生物が記載された一枚のカードが飛び出し、少年に何かを語りかけた。
『ホーク!ホーク!』
「え⁉︎もしかしていきたいのか?ホークスター」
『ホーク!』
「ホークスター」と少年に呼ばれたカードは少年の問いを肯定した。
少年はホークスターのカードを手に取ると腰につけていた紫色のミニガン型デバイスである
『ケミーライザー』を取り出し、スロット部分にカードをセットした。
『ケミーライズ!ホークスター!』
ケミーライザーから電子音が流れるとホークスターが召喚された。
ホークスターは目にも止まらぬ速さで飛行して兎のような生物の前に立ち塞がった。
『バッ、バニ⁉︎』
流石にこのことは予想外だったのか兎のような生物は狼狽えた。その隙を少年は逃がさず、ブランクカードを装填させたケミーライザーを再度起動させた。
『ケミーキャプチャー!』
再びケミーライザーから電子音が鳴ったかと思えば、兎のような生物はケミーライザーから発せられる光に吸い込まれていった。
ケミーライザーに装填されたカードを確認するとそこには『BOUNTYBUNNY』と記載され、先程の兎のような生物が記載されていた。
「バウンティバニーっていうのか…これからよろしくね」
『バニ〜』
少年の言葉にバウンティバニーは返事をしてくれた。刹那、少年の近くに魔法陣が出現し、青い装束に身を包み、黄色い目をした魔法使いが現れた。
『おめでとう錬太郎〜、また捕獲できたね〜』
魔法使いは少年を錬太郎と呼び、祝福の意味を込めてか錬太郎に抱きついた。
「クロっち、いきなりはやめてよ、びっくりするだろ…」
対する錬太郎は魔法使いのことをクロっちと呼び、困惑はしながらも照れ臭そうに彼の抱擁を受け入れた。
『へへ〜っ、錬太郎がケミー達と仲良くなっていくのが自分のことのようで僕は嬉しいんだよ。』
「ありがとう。じゃあそろそろアクセルの街に向かおうか。バウンティバニーと追いかけっこしてたらもう近くまで来ちゃったよ。」
『ああ、ちょっと待って!その前に…』
クロっちは錬太郎が歩き出そうとするのを静止して呪文のようなものを自分に唱えた。するとクロっちの姿が青い装束はそのままに、紫色の髪と星を瞳に宿した少女の姿に変わった。
『これでよし!他のみんなはともかく、僕はケミーの姿のままだったら騒ぎになるかもだからね』
「ああ、そうだったね。それじゃ、改めて向かおうか。」
クロっちの変身が完了したため、2人はアクセルの街に向けて歩き出した。
「それにしてもさクロっち、君って男の子なの?女の子なの?」
『ん〜?僕はケミーだから特に性別は関係ないよ?もしかして僕が女の子だったら何かあるの?』
「べっ、別にそんなんじゃないけど…」
『ウィ~ッヒッヒッヒ!錬太郎は面白いね!』
クロっちに揶揄われて錬太郎は少し顔を赤くするのだった。
数分ほど歩いて、2人はアクセルの街に到着した。大きな外壁が、街全体を一周囲んでおり、些か駆け出しの街の二つ名にしては守りがかなり堅いような気がしないでもないが、細かいことは気にせず、入り口と思われる門へと向かう。門の前には鎧に身を包んだ衛兵と思われる人達が数人いた。
「おや?あんたら見ない顔だね。服装からして冒険者になりに来たわけじゃなさそうだが…遠方の者かな?」
近づいて来た衛兵の1人が2人に尋ねる。まぁ、そのような感じですと錬太郎は言った後、詳細を話し始めた。
「今、この子達と一緒に探し回っているものがありましてね、ちょうど今回この街にあると言伝があったものでして…」
隣に魔法使いと思わしき女の子が1人しかいない中、『この子達』と言った錬太郎に少しばかり疑問を抱いたが、言い間違いであろうと勝手に察して、その手に収まった紙に目を移すと、何やら書き記した。
「男1人、女1人だ。開門してくれ!」
担当をしていた衛兵が叫ぶと門が開いた。街へ入ることの許可が降りたようだ。
『ウィ?入門の料金は払わなくていいの?』
「ここは駆け出しの街だ。大目に見られているからそういうのは必要ないよ。それと、ギルドは街の中心にあるから覚えておいてね。」
クロっちの問いに衛兵が朗らかな顔で答えた。そして親切にもギルドの場所まで教えてくれた。そんなこんなで2人は揃って街へと入った。
『それにしても言伝って…もっといい言い訳あったんじゃない?』
「いやいや、ケミーライザーのサーチ機能とか詳しく話してると日が暮れると思うけど…」
『まぁ、そうだね〜』
他愛もない会話をしながら錬太郎とクロっちは並んで歩いた。辺りを見回すと多種多様な服装や風貌の人々で溢れかえっており、様々な売店や飲食店、市庭等が広がっていて、誰もが長閑な雰囲気で過ごすその様子を表すのはまさしく「平和」とでしか形容しようがない。
駆け出しの街ということもあり、そこそこの力量の冒険者が大半を占めているだが、中には明らかに中堅クラスの、しかも男性の冒険者もよく見かけたため、錬太郎は少しばかり気になっていた。
『あ!着いたよ錬太郎!』
クロっちの言葉によって はっ!とすると、2人の目の前には年季の入った建物があった。ご丁寧なことに看板に「冒険者ギルド」としっかり記されてあるため、ここで間違いないのだろう。
「じゃあ、入ろうか。」
『うん!』
2人はギルドの両開きの扉を開けて中へと入っていく。このギルドには酒場が併設されているのもあってか昼間であるにも関わらず、冒険者同士で酒を飲み、盛り上がる者達も多いようだ。
「いらっしゃいませ〜、お食事の場合は空いてる席へどうぞ〜、お仕事に関しては奥のカウンターまでお越しください〜」
応対してくれた赤髪が特徴であるギルドのウェイトレスの言葉通り、奥にはカウンターがあった。依頼などはこちらで手続きをするのだろう。
取り敢えず錬太郎とクロっちは情報集めと何か依頼の案内はないか探してみることにした。
『じゃあ僕ができそうな依頼探してくるね!』
そう言うとクロっちはギルドの受付の方へトコトコと向かっていった。
「さて、誰から聞いていこうかなぁ」
錬太郎は腕を組みながらあたりにいる冒険者達を見渡す。なるべく有益な情報が欲しいためどうしても慎重になってしまう。
なかなか次に進めずう〜ん、と悩んでいると左腕のホルダーがモゾモゾと動き、一枚のカードが飛び出し、その中から飛蝗のような生物が現れた。
『ホッパー!』
「わっ!ホッパー1!びっくりしたよ…」
錬太郎がホッパー1と呼んだ生物はそのまま何処かに向かって飛び跳ねながら移動していった。
『ホッパホッパー!』
「ああ、待って!ホッパー1!」
錬太郎は慌ててホッパー1を追いかけた。
ホッパー1は自慢の足で跳ねながらやがて一台のテーブルの上に止まった。
「わっ、びっくりした…」
テーブルは利用者がおり、その利用者の女の子は突然目の前にホッパー1が現れたため少し驚いていたようだった。
「あ、やっと追いついたって…」
錬太郎はホッパー1が止まったテーブルの利用している女の子と目が合った。
その女の子は黒髪を二つ結びにしており、赤い瞳の整った顔立ちをしていて、胸部を強調するような黒い上着とピンク色のスカートを履いていた。さらに発育も良く、健康的な体型をしていた。
暫くの間、両者は見つめ合っていたが、錬太郎は電流が走ったように動き始めると、ホッパー1を抱えてテーブルから数歩遠のいた後、少女に向かって頭を下げた。
「ごっ、ごめんなさい!ホッパー1が…」
「い、いえ、大丈夫ですので…」
頭を下げた錬太郎に対して少女はあたふたとしながら返答した。その間もホッパー1は錬太郎の腕の中で動きながら何かを伝えようとしているようだった。
刹那、少女の付近からクローバー、竹を模したような狙撃手、サボテン、ウツボカズラ、ジャングルの葉を模した小人のような生物が飛び出して来た。
「わっ、みんな出て来ちゃったの?」
少女は現れた者達にびっくりしつつも、どこか知り合いであるかのように語りかける。
「もしかして、ホッパー1はケミー達の居場所を教えてくれたってこと?」
『ホッパー!』
「凄いな〜よしよし!」
錬太郎の問いを元気よく鳴き声で肯定するホッパー1。錬太郎は嬉しくなってホッパー1の頭を撫でた。
『ねー錬太郎!ちょうど良さそうな依頼があったんだけど…どういう状況?』
時同じくして錬太郎の元にやって来たクロっちは、ケミー達に対してオロオロしてる少女のそばでホッパー1を嬉しそうに撫でる錬太郎という如何にも奇妙な光景に疑問符を浮かべるのだった。
『成程ね~。僕がクエストを探しているうちにホッパー1がこの子の元にいるケミーの気配に勘付いて錬太郎を案内したってことか~』
クロっちは納得納得といった感じに首を縦にうんうんと振る。
「あの、質問なんですけど、ケミーってこの子達のことですか?」
「そうだよ。錬金術によって生み出された奇跡の生命体で計10種族、計100体のケミーが存在するんだ。君と一緒にいるのはプラント属性のハピクローバー、バンバンブー、サボニードル、ウツボッチャマ、ジャングルジャンだね。」
「へぇ〜そうなんですね。」
錬太郎は少女の問いに答え、さらにケミーの実態について一部紹介した。少女は瞳を輝かせて錬太郎の話を聞いていた。
「そういえば、自己紹介がまだだったね。
僕は百瀬 錬太郎。錬金術師をしているんだ、宜しく。」
『僕はクロっち!一応アークウィザードをやってるよ、宜しくね。』
錬太郎とクロっちは少女に向かって挨拶をした。
「はい!錬太郎さんと、クロっちさんですね。えっと、私は…」
少女は赤面しながらも深呼吸をして
「我が名はゆんゆん!!アークウィザードにして中級魔法を操る者!!やがては紅魔族の長となるもの!!」
どこぞのヒーローがするようなポーズをしながら大きな声で名乗った。
ゆんゆんの名乗りに暫くぽかんとしていた2人だが、すぐに元の調子に戻ると返答した。
「ゆんゆんだね、覚えたよ。」
『じゃあ改めて宜しくね〜、ゆんゆん。』
「え、笑わないんですか⁉︎名乗りや名前も…」
ゆんゆんは錬太郎とクロっちの反応が信じられない様子なのか聞いて来た。錬太郎とクロっちは顔を見合わせた後、ゆんゆんに言った。
「笑わないよ、だって自己紹介で笑うことなんて失礼なことだしさ」
『そうそう。それに可愛らしくていい名前だと思うよ』
2人に理由を聞いた後、ゆんゆんは暫く黙っていたが、突然大粒の涙を流した。
「あ⁈も、もしかして、何か不快に感じるようなこと言っちゃった?」
ゆんゆんが急に泣き出したため、錬太郎とクロっちはアワアワとしながら尋ねた。
「い、いえ…今まで名前や名乗りについては笑われるか、冷めた目で見られることばかりだったので…その…嬉しくて…」
2人の心配はどうやら杞憂だったようだ。確かに彼女の行った名乗りはどこか痛々しいところはあった。初めてこの名乗りを見る人の殆どは普通なら可笑しな人だと思って一蹴するだろう。
しかしながら錬太郎とクロっちはそれなりに旅をしてきた冒険者だ。痛々しい名乗りなどこれまでの冒険の中で何度か見てきたこともあり、ゆんゆんの名乗りに対してもそこまで気にならなかったのだ。
そんな2人の反応はゆんゆんの心に余程沁みたのだろう。
それはそうとして先程からまわりの冒険者達の視線が集まっていることに気づく。恐らくゆんゆんが泣いていることが主な理由だろう。
2人の冒険者が1人の少女の泣いている様子と相対しているこの状況。側から見れば色々と誤解を招きかねないのだ。
このことに早々に気づいたクロっちはなんとかしなくてはと思った。
『とはいえ、どうしようかな…』
ギルドにいる冒険者達に言葉で伝えるか…、否、かえって信用されない可能性もある。しかしそれ以外にはどうも良い考えが浮かばない。
この状況を打開する案を出すため、クロっちは頭を必死に捻る。ふと錬太郎の方へ視線を移した。そこで彼のしていた行動に思わず目を見開く。
錬太郎はゆんゆんの方へ移動しており、彼女の頭を撫でていた。
彼の眼差しは慈愛が篭っており、同時に撫でる手は心を込めた優しい手つきだった。それは宛ら泣いた子供を慰める母親のようであった。
錬太郎の行動は注目していた冒険者達の目にも入り、どうやら悪いことをしていたのではないと察すると皆の視線はあっという間に散っていった。
クロっちは誤解を生まなかったことに安堵しつつ、未だ泣き続けるゆんゆんの頭を撫でる錬太郎を見る。
『(やっぱり錬太郎の優しいところは今も昔も変わらないんだなぁ)』
クロっちはどこか感心するような様子だった。
数分後、漸く泣き止んだゆんゆんは自分の頭を錬太郎に撫でられていることに気づいた。戸惑いはしたものの、錬太郎の撫で方が心地良いのもあってか、だんだん落ち着いてきた。
暫く経ったのだが、錬太郎は撫でることをやめる様子がない。ずっと撫でられっぱなしというわけにもいかないので、錬太郎に声をかける。
「あ、あの…」
「ん?どうかした?」
「えっと…その…手…」
ゆんゆんの言葉でやっと気づいたのか錬太郎は慌てて撫でるのをやめてゆんゆんの頭から手を離した。
「ご、ごめん!嫌だった?撫で方、気持ち悪かった?」
「い、いえ…寧ろ安心できたというか気持ちよかったというか…」
ゆんゆんは顔を赤らめてモジモジしながら答えた。また錬太郎の撫でる手が名残惜しかったのか、ほんの少し頭が寒く感じていた。
錬太郎も錬太郎でゆんゆんに撫でられたことを感謝されたものの、僅かに罪悪感を抱いてしまい、両者の間には微妙な空気が流れた。
そんな気まずい空間を破るようにクロっちは2人に言った。
『取り敢えずさ、僕の見つけてきた依頼やりに行こうよ!』
クロっちの見つけてきた依頼は『ジャイアントトードの討伐』だった。ジャイアントトードというのはその名の通り巨大な蛙のことである。
彼らは繁殖の時期に入ると産卵に備えて体力をつける為、餌の多い人里に現れては家畜を丸呑みするのだという。
余談だが、ジャイアントトードの肉は多少の硬さはあるものの、淡白でサッパリとしているため、食材として重宝されるらしい。
『特徴としては分厚い脂肪による打撃等の無効化、それと金属を嫌うみたいだから装備を整えておけば捕食されることもないみたいだよ。』
「了解。でも装備はなくてもいいかも。」
「え⁉︎装備なしで行くんですか?」
錬太郎が装備なしでクエストに向かうと言うのでゆんゆんは錬太郎に尋ねる。
「うん。自分の持ってるスキルでなんとかするよ。」
『あ〜、アレで挑むんだね。でも素材はどうするの?』
「行った先のもので十分だよ。」
『わかった!じゃあ討伐に…せっかくならゆんゆんも一緒にどう?』
「ええ⁉︎い、いいんですか⁉︎」
ゆんゆんは誘われたことが信じられないかのようにクロっちの質問に質問で返した。
『もちろん!冒険は仲間が多い方が楽しいしね!」
「仲間…はい!宜しくお願いします!」
こうしてゆんゆんも錬太郎とクロっちのクエストに同行することになった。
クロっちから「仲間」と言われたことが余程嬉しかったのか、目的地に到着するまでゆんゆんは満面の笑みを浮かべていた。
草原に来てみると沢山のジャイアントトードがいた。確かに牛や山羊などの家畜に比べて数段と大きい。この巨体なら初めて見る人の中には腰を抜かす者もいるかもしれない。
「思ってた以上に大きいね…」
「大丈夫ですよ!捕食されても助けます、な、仲間なので!
それと、伸ばしてくる舌には注意してくださいね。」
初めてジャイアントトードに相対する2人にゆんゆんはアドバイスと万が一の状況の際は助けてくれる旨の発言をしてくれた。
「よし!じゃあいくか!」
錬太郎は懐から青色の矢印の装飾が施された指輪を取り出して、自身の右人差し指に装着した。そして右手を前に突き出すと、念じるように目を閉じた。
ジャイアントトードは錬太郎を見つけるや否や、彼の方向へと向かってきた。
「あ、あれ?錬太郎さんは何をしているんですか⁉︎このままじゃ捕食されてしまいますよ!」
『まぁまぁ見てなって。』
ジャイアントトードが迫る中、微動だにしない錬太郎をゆんゆんは心配するが、クロっちは然程気にしていない様子でゆんゆんを呼び止める。
どうしてクロっちがここまで危機感を抱いていないのか、ゆんゆんは疑問をおぼえた。
その時、自分を取り巻く空気が何処と無く張り詰めたように感じた。そしてその張り詰めた空気は錬太郎を中心に広がっていることがわかった。 詳しくはわからないが、何か凄いことが起こるかも知れないということは錬太郎と出会ってまだ少ししか経っていないゆんゆんでもわかった。
ジャイアントトードがもう後少しで目の前という時、錬太郎は目を見開いた。
「『万物はこれなる一者の改造として生まれうく』」
刹那、錬太郎の目の前の地面が隆起し、彼とジャイアントトードの間に大きな土の塊が出現した。そしてその土の塊は液状のように変化した後に鉄の剣へと姿を変えて、ジャイアントトードを刺し貫いた。
ゆんゆんは目の前で起こったことが信じられないのか、まるで狐につままれたような顔をしていた。そんなゆんゆんをクロっちは肘でこづいて
ね?大丈夫だったでしょ、とでも言いたげな表情をしていた。
「とまぁ、僕のスキルはこんな感じ」
「凄いですね…なんか…もう…ホントに凄いです…」
ゆんゆんは考えることをやめた。彼の用いた錬金術というスキルは知力の高い自分であっても今一瞬では理解できそうもない。
『よ〜し、それじゃ残りの討伐がんばろ〜』
クロっちの合図と共に各々はジャイアントトードーに向かっていった。
残りのジャイアントトードに対しても錬太郎は自身の錬金術を使って鉄の剣を錬成して応戦し、かなりの数を撃退した。
ゆんゆんも習得している中級魔法の『ライトニング』や『ファイヤーボール』を用いて次々と倒していった。尚、彼女の魔法に感激した錬太郎とクロっちに褒めまくられたため、暫し赤面してしまった。
そしてクロっちはゆんゆんと同じくアークウィザードのはずだが、何故か孔雀の羽のような装飾が施された大剣を取り出し、見事な太刀筋でカエル達を切り裂いていった。
そんなこんなでアクセルの街での初クエストは大成功に終わった。
『それじゃ、だいぶ倒したし、ギルドに戻ろっか!』
「そうだね」
クロっちの合図に3人はギルドに向かって歩いた。
(お二人とも凄い強かったなぁ…それに私の魔法を褒めてもらえたとき、嬉しかったなぁ)
その時、少し離れた場所から耳を擘くような轟音が聞こえた。爆発音だろうか。少しばかりその余波を風から感じることができるあたりきっと誰かがおこした爆発なのだろう。
『ウィ〜、とんでもない音だったね…』
「あの爆発…もしかして…」
クロっちは先程の爆発に呆気に取られ、ゆんゆんは心当たりがあるようだった。
「ねぇ…あの爆発、かなりやばくない?」
クロっちとゆんゆんが錬太郎の方へ視線を移すと、先程まで余裕のあった表情は崩れ、とても深刻そうな顔をしていた。
「もしかしたら怪我人が出てるかもしれない…ごめんゆんゆん、クロっち!僕行ってくる!」
2人にそう言い残すと錬太郎は爆発が起こった場所に向かって駆け出して行ってしまった。
「…行っちゃいましたね」
『まぁ、これが錬太郎だしね…僕も追いかけるか…』
「あ!わ、私も行きます!」
残されていた2人も錬太郎を追って、爆発の場所へと急いだ。
錬太郎が例の場所に着くと、大きなクレーターが出来ていた。辺りを見回してみると人が3人いた。3人一緒のため徒党を組んでいるのだろうか。
1人は青い髪に羽衣のような衣装を纏った少女で、カエルに捕食されたのか、粘液塗れで地面にへたり込んで泣いていた。
もう1人はゆんゆんと同じ赤い瞳を持ち、黒マントに黒いローブ、黒いブーツにトンガリ帽子を被っているいかにも魔法使いの少女で、彼女もまた粘液塗れで地面に倒れていた。
最後の1人は肩で息をしている見慣れない服装をした少年だった。年は見たところ錬太郎と同じくらいだろうか。
とにかく情報を得るため、彼らに声をかけた。
「すみません、少しお話を宜しいでしょうか?」
「え?あ、はい。」
錬太郎の声に3人は反応し、その中の少年が代表してか返事をしてくれた。
「先程、ここで大きな爆発がしたと思うのですが…」
錬太郎の問いに少年は少し気まずそうにトンガリ帽子の少女を見ると、彼女を指差して言った。
「その爆発起こしたの…コイツです…」
「へ?」
少年の口から語られた真実に錬太郎は間抜けな声を漏らした。
話によると、彼らもまたジャイアントトードを討伐しに来たらしいのだが、アークプリーストである青髪の少女が正面からカエルに挑んで捕食されてしまい、続いてトンガリ帽子の少女が『爆裂魔法』なるものを使用し、カエルを一匹撃破したものの、魔力が切れて動けなくなりそのままカエルに捕食され、その2人を少年が助けたらしい。
幸い爆裂魔法に巻き込まれた人はいなかったようなので錬太郎は安堵の溜め息を漏らした。
「そうだったんですね…よかったぁ〜」
「なんか…色々とすんません」
少年は申し訳なさそうに錬太郎に頭を下げる。しかし錬太郎は全く気にしなくて大丈夫ですよ、と両手をパタパタと振った。
『錬太郎〜』
少し離れたところから声がした。どうやらクロっち達も追いついたようだ。錬太郎はこの場所で起こったこと、怪我人はいなかったことをクロっちとゆんゆんに伝えた。
2人とも錬太郎と同じく安堵したのだが、ゆんゆんだけはトンガリ帽子の少女の元に歩み寄り、
「見つけたわよめぐみん!今日こそ決着をつけるわよ!」
ビシッと指を指し、どこか嬉しそうに言った。基本大人しめな感じだった彼女が、急に多弁な様子になったため、錬太郎とクロっちは少し驚いていた。そしてめぐみんと呼ばれた少女は
「…どちら様でしょう?」
まるでゆんゆんとは初対面であるかのように辛辣に返した。ゆんゆんもまさかこのように返されるとは思ってもいなかったのか、とても困惑していた。
「わ、私よ私!ほら、紅魔の里の学園で同期だったでしょ⁉︎」
ゆんゆんは必死になって
『いつも勝負を挑んでめぐみんに負けっぱなしだった!』
『負けたら対価としてお弁当のおかずを巻き上げていたじゃない!』
とも続けたが、対するめぐみんは気怠そうに紅い瞳で彼女を見据えて聞き流している。
『まぁまぁ、長くなりそうだし、続きはギルドに戻ってからにしない?』
ゆんゆんを慰めながらクロっちが言った。他の者達も賛同し、それぞれの徒党に分かれてギルドへと向かった。
その後、まだ勝負することを諦められないゆんゆんは仲間の少年に背負われためぐみんにギルドに戻ったら勝負するよう宣戦布告したのだった。
尚、無視された模様。
ガッチャード要素ケミー達とクロっちくらいしかない…
次回は、次回こそは変身させる予定です!
ガッチャード風の前回までのあらすじとか前書きに添えたりするのってありですかね?