この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

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第2章、開幕です。

錬金見聞録は次回より再開致します

それでは本編にどうぞ


第2章:動き出す歯車/希望は過去に
冬将軍、参る


 

「まだまだ戦闘データが必要だな…」

 

 薄暗く、閑散とした研究室の中で、ロードがポツリと呟く。前回、冒険者である佐藤和真(さとうかずま)を媒介にして、暗黒の破壊者であるドレッドを顕現させることに成功し、その圧倒的な力を量ることが出来たのだが、自身の追い求める更なるケミストリーのためにはまだまだドレッドの戦闘の記録が必要なのである。

 しかし、そう簡単にいかないのが現実。カズマの肉体を持ってして、全力を出せていたのはほんの短時間。普通の人間では、暗黒の破壊者の負荷に長時間耐え、尚且つ常に全力を発揮し続けるなど無理な話である。

 

「では、彼に任せるとするか…」

 

 ロードは右手の親指と中指を弾き、その()を呼ぶ。その呼びかけに応じ、奥の方から人影が現れ、ロードの前で跪く。

 赤いローブを羽織り、少しばかり悪い目つきと七三分けが特徴で、左頬に傷を持つ男、ロードに仕える暗黒のネガマスクの一人であるソラトスだ。

 

「何なりと申しつけを!」

 

 ロードは屈んでソラトスと目線を合わせると、ドレッドライバーと、レプリケミーカードを一式手渡す。

 

「ソラトスよ、ドレッドの力を使って戦闘エネルギーを集めて来て欲しい。戦う相手は勿論ガッチャードだ、手加減は必要ない…思う存分暴れて来い…」

 

 そう言い終えると、ロードは何処へと消えてしまった。研究室にはソラトスが1人。しばらくしてソラトスは、口角をあげてわなわなと震え出す。

歓喜、欣悦といった感情が、沸騰するように身体中から溢れ出してきていた。

 

「フ…フフ…フハハハハ!やったぞ!あのお方から直々に暗黒の釜を託されるとは…!待っていろ小僧!必ず貴様の息の根を止めてやる!」

 

 ソラトスは笑い声をあげ、ガッチャードこと錬太郎への復讐を、声高らかに誓うのだった。

 

 

 

 

 白銀が風に揺られてひらひらと舞いながら、辺り一面に降り積もる。アクセルの街もすっかり冬の季節だ。今現在、時間帯は朝であるにも関わらず、空は未だに鉛色。日に日に寒さも厳しさを増している。それでも、今日も命を繋ぐため、日銭を稼ぐため、冒険者達の朝は始まる。

それは錬金術師、百瀬錬太郎も例外ではない。

 

「ぶぇ〜っくしょい!ヴヴ〜ン、風邪かな…」

 

 宿を出て早々、盛大なくしゃみをする錬太郎。昨日の夜頃からだろうか、喉の痛みが目立ち、その後鼻詰まりも酷くなってきた。一応、定期的に換気や、手洗いうがいをやってきてはいたのだが、それでも風邪にかかってしまうのは生きる者故の性か…

 今日はいつもの仲間達とギルドに集まる予定なので、取り敢えず錬太郎は、その時にアクアからセイクリッド・ハイネス・ヒールをかけて貰おうと考え、目的地へと向かう。

 外は風が強く、刃によって切りつけられるような感触に襲われ、錬太郎は度々顔を顰める。加えて、鼻詰まりのせいで口で呼吸をしなければならず、嫌でも冷たい空気が肺胞を刺激し、その都度咽せてしまいそうにもなる。

 そんな感じで四苦八苦しながら歩いていると、遠くから見覚えのある人物がやって来るのが見えた。

 金髪碧眼で、黒いインナーを纏い、腰には修行用の剣を携えた女性ーー

錬太郎の所属するパーティーメンバーの一人、クルセイダーのダクネスである。

 

「おはようダクネス、もしかして朝のトレーニングの後だった?」

 

「錬太郎か。おはよう、まぁそんなところだ。ところで大丈夫か?鼻声になっているが…」

 

額の汗を拭いながら、ダクネスは錬太郎に様子を尋ねる。

 

「いやぁ…僕としたことが、うっかり風邪引いちゃってさ…そういうダクネスは大丈夫なの?鎧も無しにこの寒さは流石にきついんじゃない?」

 

「ああ、そのことか。気にするな、薄着だからこそこの時期の寒さが骨身に染みる…この感触が…とてもいいッ!」

 

 頬を染め、息遣いを荒くするダクネス。そうだ、ダクネスはこういう人だ。普通なら皆が忌み嫌い、早く過ぎ去って欲しいと願う寒さも、特殊な性癖を持つ彼女にとっては至福なのだ。

 どこまでもブレないダクネスに、錬太郎は無意識のうちにじっとりとした視線を向けてしまう。

 

「くぅ…その目…カズマ程ではないが成長したな、錬太郎!」

 

 褒められても嬉しくない成長である。錬太郎は、もう完全にダクネスの性癖にも慣れてしまった自身を恨めしく思ったのだった。

 

 

 

 

 合流した2人は、そのまま冒険者ギルドへと向かった。ギルドではカズマにアクア、めぐみんとゆんゆんが迎入れてくれた。

 

「みんなおはよォォォォッくしょ〜い…あ"あ"〜」

 

「大丈夫ですか錬太郎さん、はい塵紙どうぞ」

 

「あいあと〜ゆんゆん、チーーーン!」

 

 錬太郎はゆんゆんから塵紙を貰うと、思っ切り鼻をかむ。しかし湯水のように洟が鼻の底から湧いてくるため、結局アクアを頼ることになった。

 

「あ"〜、やっぱりダメだ…アクア、お願いしていいかな?」

 

「仕方ないわね、ほら錬太郎こっち向いて。『セイクリッド・ハイネス・ヒール』!!!」

 

 錬太郎に向かってアクアが回復魔法を放つ。その途端、錬太郎の鼻詰まりや喉、頭の痛みが嘘のように消え去り、錬太郎の顔もどこか晴れやかなものへと変わる。

 

「ありがとうアクア、今度お礼にシュワシュワ奢るね」

 

「あら、女神の慈悲に感謝して貢いでくれるの⁉︎いいわ、その調子で私を甘やかして!」

 

「おい調子乗ってんじゃねぇよアクア、錬太郎は風邪を治してくれた礼をしてくれるだけで、お前に貢ぐと言ってるわけじゃないからな?」

 

 カズマが図に乗るアクアに釘を刺し、アクアはそのことを不服そうにしてむくれる。

そしてカズマは頭を抱えると、心の底から思っていることを口から溢す。

 

「金が欲しい…」

 

 皆の視線がカズマへと集まる。なんの前置きもなくそんなことを言うのだから、何事なのかと不思議そうにしている。暫くして、その中のアクアが一番最初に口火を切った。

 

「お金が欲しいなんて誰だってそうじゃない。ていうか、仮にも女神であるこの私を毎日毎日馬小屋に泊めてくれちゃって、少しは恥ずかしいとか思わないんですか?」

 

「五月蝿いな!俺だって馬小屋生活はもう嫌だわ!でも仕方ないだろ?討伐報酬は全部借金返済で消えちまったしよぉ!それにもう冬だぞ、冬!

今朝なんて馬小屋の藁の中で目覚めたらまつ毛が凍ってたんだぞ!他の冒険者達は既に宿屋で部屋を予約して寝泊まりしてるそうじゃないか!今はまだしも、これ以上寒くなったらどうすんだよ!馬小屋の寝床じゃ凍え死ぬわ!はっきりいって、魔王を倒して日本に帰るどころの話じゃ無いんだよ!」

 

 好き勝手言うアクアに痺れを切らし、早口かつ物凄い剣幕で、自身がお金を求める理由を述べるカズマ。あまりの気迫にアクアは、体を震わせた後に視線を逸らし、他のパーティーメンバー達も驚いた顔をして固まる。

 

 そう、カズマの言う通り今の季節は冬。冒険者達にとっては辛い季節だ。これまで馬糞の臭いや、藁の鬱陶しさがありつつも、無料という理由で了簡していた馬小屋で寒さを凌ぐのは無謀もいいところ。そのため、大体の冒険者達は、冬に宿を取ることが多いのだが、当然ながら出費は手痛い。

 この時期だけだからと甘んじて受け入れて、依頼を沢山受ける者もいるとのことだが、冬季は殆どのモンスター達が冬眠しており、簡単なクエストは受けられない。そして結局体調を崩して冒険者を引退するという本末転倒な結末を迎えるということも少なくない…

冒険者達にとって越冬は、死に物狂いで挑まなければならない課題なのである。

 

「あとは拠点としての家を手に入れることくらいか…」

 

「あれ?錬太郎さん、俺の話聞いてました?宿を確保するためのお金がないって話してたってのにいきなり家の話?ウチにそんなお金は当然ながらありませんよ?」

 

 宿に泊まるためのお金を得るだけでも大変だという話をしているのに呑気そうに家の購入のことを考える錬太郎にカズマは呆れながら尋ねる。

そんなカズマに錬太郎は淡々とした様子で言葉を発する。

 

「実は一軒だけ当てがあってさ、ほら、エミちゃん達が住んでた家。もう引越しちゃったみたいだから利用者がいないし、クロっちとの貯金を使ってってことで…」

 

「何⁉︎錬太郎マジかそれ!」

 

「やりましたね!これで寒さに困ることもありませんし、前よりも快適な暮らしをすることができるではありませんか!」

 

「それでそれで!いつ私たちの夢のマイホームは手に入るのかしら?」

 

 話を聞いたカズマとめぐみん、そしてアクアが目を輝かせながら、机から身を乗り出して錬太郎に迫る。3人の食いつきように錬太郎はアワアワとしながら話を続ける。

 

「で、でもでも!まだお金は貯まった訳じゃないし、なんかエミちゃんのご家族は手続きしなくて退去したらしいから、不動産屋さん曰くちょっと時間がかかるって…」

 

 錬太郎が話し終えると、3人はわかりやすく意気消沈して各々の椅子に力なく座り込む。3人の様子に言っちゃいけなかったかな…と錬太郎もバツが悪そうな顔をしてしまう。

 

「取り敢えず、私達でも受けられるクエストを探しに行くぞ。錬太郎が見つけてくれた物件も金がなければ住むことはできないからな」

 

「そうですね!皆さん、いきましょう!」

 

 重々しくなっていた空気がダクネスの鶴の一声によって破られる。その上申に賛成したゆんゆんは、ダクネスと共に掲示板へと向かう。

 

「僕たちも行こうか」

 

「ああ」

 

「ええ」

 

「そうしますか」

 

残された4人も2人の後に続き、椅子から立ち上がり、酒場の席を後にした。

 

 

 

 

「う〜ん、やっぱ碌なクエストがないな…」

 

 掲示板に並べられる依頼を目に通したカズマが、額に手を当てている。やはり自分達が安心して受けられるクエストの目処が立たない。報酬はどれもそれなりにいいものばかりだから困ったものである。

 そんな頭を悩ませるカズマに、パーティーメンバー達は自身らが見つけた依頼について進言する。

 

「カズマ、カズマ!これなんてどうですか?白狼の群れの討伐です!報酬も百万エリスです!我が爆裂魔法でこの大群を一掃させてやりますよ!」

 

「却下、そいつら大型犬より大きくて速いんだろ?俺たちすぐにやられちまうよ…」

 

「カズマ!ならばこれはどうだ?冬眠から覚めてしまった一撃熊!討伐なら二百万エリス、追い払うだけでも五十万エリスだ!ああ…その一撃を是非ともこの身に…」

 

「却下!なんだよ、物騒な名前のモンスター!首を撫でられただけで即死しそうじゃねぇか!」

 

 めぐみんとダクネスが持ってきた依頼を容赦なく一蹴するカズマ。やはり面倒なクエストは避けたいようだ。

 

「まぁ、白狼の討伐はクロっちが助太刀に向かってるし、一撃熊ならみんなで協力すれば倒せると思うし僕はいいと思うけど…」

 

「錬太郎、そうは言うけどさぁ…ん?これなんだ?起動要塞デストロイヤー接近中に付き進路予測の為の偵察募集…デストロイヤー?」

 

 聞き慣れない単語に首を傾げるカズマ。そんな彼にゆんゆんとめぐみんがデストロイヤーについて説明する。

 

「デストロイヤーは大きくて高速移動する要塞のことです」

 

「ワシャワシャ動くので、子供達に人気のあるヤツなのです」

 

「うーん、わからん!じゃあこれもなしで…あ、これなんてどうだ?雪精の討伐…特徴からしてそんな強そうに見えないけど…1匹報酬十万エリスだってよ!」

 

 カズマが新しいクエストの張り紙を見つける。そのクエスト詳細を確認するため、皆カズマの元へと寄った。

 

「雪精はとても弱いモンスターですよ。雪原に生息し、1匹討伐する毎に春の訪れが早まると言われています。ただ…」

 

「このクエスト受けるの?じゃあちょっと準備してくるわねー!」

 

 

 めぐみんがどこか不安を色を滲ませた声で何かを伝えようとしたが、アクアが意気揚々と割って入ってきたため続きは語られることはなく、めぐみんもアクアと同様にその場を後にした。

 

そして他のメンバーも…

 

「雪精か…」

 

「大丈夫だよね…たくさん討伐しなきゃいいだけだし…ちょっと可愛いらしいから心が痛むけど…」

 

 ダクネスは頬を上気させ、ゆんゆんも何かを懸念している様子である。

特に強い相手と対峙し、蹂躙されることに高揚するダクネスが乗り気なのがカズマには引っかかっていた。

雪精は、話に聞く限りは弱いモンスターであると思われる。それなのにダクネスがこのクエストに反対しないのには何か裏がある、そう思えて仕方なかった。

 

「(取り敢えず、今は金だ!いざという時には錬太郎やケミー達もいるからな…)」

 

 カズマは意を決して、掲示板に張られていた雪精討伐の依頼用紙を剥がした。

 

 

 

 

 一同は冬服へと着替えると、ワープテラの能力を使って一瞬のうちに目的地へと到着する。各々、討伐のために武器や杖を持って散らばっていったが、錬太郎だけは暫くの間、その場に佇んでいた。目に映る景色に心を奪われたのだ。

 降り積もった雪は、陽の光を僅かに受けて銀色に輝いており、陰となった部分は黒金を帯びていて、まるで一種の芸術作品のようである。

 

「雪がこんなにも美しく見えるときがあるなんて…知らなかったなぁ。それに雪精は本当に可愛いんだね…」

 

 雪精は白くてフワフワした、手のひらサイズほどの丸い塊の存在で、本当に無害そうな存在であった。

 彼らを討伐しただけで数十万エリスは簡単に稼げそうなのにも関わらず、何故参加する冒険者がいないのか、益々不思議に思えてくる。

しかし、ここにいる冒険者のうち2人は、それよりも気になるものがあった。

 

「ねぇアクア、その格好はどうしたの?」

 

「錬太郎も思うところがあるよな?なんで冬場に夏休み気分の子供の様な格好をしているんだか」

 

 錬太郎とカズマは、現在のアクアの服装について言及する。今のアクアは防寒用のコートは着ているものの、その他にもいくつか小さな瓶を抱えて、さらに虫取り網を備えている。

 そんな2人をアクアは頭の悪い子を見るような目で見返す。

 

「わかってないわね〜2人とも。この網で雪精を捕まえて瓶の中に入れるのよ。それで、飲み物と一緒に箱に入れておけば、いつだってキンキンの冷たいネロイドが飲めるってわけ、つまり冷蔵庫を作ろうってことよ!」

 

 成程、アクアもアクアで考えていたようだ。しかし雪精は冬のモンスター故、夏になってしまったらもう冷蔵庫としては機能しないのではないか…と錬太郎は思ったが、アクア相手にその発言は野暮だと感じたので、言わないことにした。

 

「じゃあ討伐に移るか…この剣の力、まだ完全に試してはいなかったからね」

 

 錬太郎はUFO-Xより渡された剣を取り出し、ケミーカードを1枚装填する。刹那、刀身が炎を帯び、そのまま錬太郎は、雪精達の元へと駆け出す。

 

『バーニングネロ!ストラッシュ!』

 

 プラントケミーのレベルナンバー2、バーニングネロによる炎を纏った斬撃は、雪精相手にはとても相性が良く、一瞬の内に15匹溶解させた。

 

「すげぇなその剣…ケミーの力を引き出して攻撃とかまさにチートじゃねぇか」

 

「うん、エクスガッチャリバーはとても扱いやすいよ!」

 

「そうか…ん?エクスガッチャリバー?」

 

「うん、エクスガッチャリバー」

 

「へ?」

 

「うん?」

 

 カズマは錬太郎のエクスガッチャリバー呼びに思わず二度聞き返す。まさか、あの剣の名前だろうか、だとしたらそのネーミングセンスはどうなんだと思わざるを得なかった。

 

「まさか、それの名前なのか…?」

 

「そうだけど…」

 

「もっと他になかったのかよ…」

 

やはり剣の名前だったようだ。そんなのよりもっとかっこいい名前など幾らでもあるだろうに…とカズマは呆れの混じったため息を溢す。錬太郎はカズマのこの態度にムっとしてしまい、少し声を荒げて抗議した。

 

「おい、僕のネーミングセンスに文句があるなら聞こうじゃないか!」

 

 

 

 

「レンタロウの剣さばき、流石ですね。私も負けてられません!爆裂魔法で一気に吹き飛ばしてやります!」

 

「あまり激しくしないでよねめぐみん!」

 

「わかってますよゆんゆん…『エクスプロージョン』ッッッ!」

 

 めぐみんが爆裂魔法を放ち、雪原をその強大な一撃で焼き尽くす。魔法による轟音が響き渡った後、めぐみんはその身を雪に覆われた地面へ投げ出した。

 

「むぅぅ、8匹ですか…レベルは1上がりましたがレンタロウには負けてしまいましたね…悔しいです…」

 

 討伐数で錬太郎に及ばなかったことを口惜しく思うめぐみん。レベルアップこそしたものの、1日1回しか放つことのできない爆裂魔法でこの数は思うところがあるのだろう。

 

「お前ら早いな…俺なんてまだ4匹だぞ…あ、錬太郎。さっきケミー見つけたから捕まえておいたぞ」

 

「ああ、ありがとう…って、ファンタスティックケミーの『ヴァンフェンリル』じゃん!カズマ本当に運がいいんだね…」

 

 錬太郎はカズマから手渡されたケミーカードを見て驚嘆する。前回インフェニックスというファンタスティック属性のケミーを入手したばかりなのに、今回も、とは…あまりの運の良さに錬太郎も開いた口がしばらくは塞がらなかった。

 

「錬太郎さん、私も2匹見つけました」

 

 ゆんゆんもケミーを捕獲したらしく、錬太郎の元へやってきて見せてくれた。ゆんゆんが捕まえたのは、エンシェント属性のレベルナンバー9、氷を操る『ブリザンモス』とオカルト属性のレベルナンバー1、妖精を模した姿の『ケアリー』で、この場所にはぴったりのケミー達であった。

 

「ゆんゆんもありがとう…」

 

「えへへ……どうかしましたか錬太郎さん?」

 

 錬太郎はカードを受け取ると、ゆんゆんの方をジッと見つめて固まる。ゆんゆんも錬太郎に見つめられっぱなしで、少しばかり赤面してしまっている。

 

「あの…錬太郎さん、ずっと見つめられるのは…は、恥ずかしいです…」

 

 刹那、錬太郎が右手を伸ばし、ゆんゆんの頭に触れる。急な接触に思わずゆんゆんはひゃ⁉︎と声を上げた。

 

「ああ、ごめん。頭に雪が積もってたからさ…」

 

「へ⁉︎あ、ああ!ありがとうこざいましゅ…」

 

 自分の頭の雪を払ってくれたことを感謝しつつも、やはり恥じらいがあったのか、ゆんゆんは少しばかり縮こまってしまった。錬太郎もそんなゆんゆんを前にオロオロとしている。

 

「ケッ、いちゃつきやがって…」

 

 カズマは2人の様子に忌々とした視線を向ける。

そんな中…

 

「来たぞ!」

 

 ダクネスがどこか嬉々とした様子で剣を構える。突如、その先の空間が歪み、真っ白な鎧武者が現れた。

 

「出てきちゃった、どうしようどうしよう」

 

「ま、まずいのです!死んだフリ死んだフリ」

 

 鎧武者を見るや否や、ゆんゆんは慌てふためいた様子になり、めぐみんも必死で死んだフリをしてやり過ごそうとしている。そんな2人をよそに、アクアがカズマに説明を始める。

 

「カズマ、どうしてこんなにもおいしいクエストがあるのに、冒険者達は受けようとしないのか、その理由を教えるわね。雪精達を倒しすぎると、その主にして冬の風物詩である、冬将軍が到来するからよ!」

 

「ふざけんなよぉぉ!」

 

 アクアの解説を聞いたカズマの口から怒りの滲んだ声が放たれる。

冬将軍は腰の鞘から刀を抜き取ると、近くにいたダクネスに向かってその刃を振るう。ダクネスは咄嗟に自身の持っていた大剣で防ぐものの、鈍い音を立てて、大剣は真っ二つにされてしまった。

 

「ああっ⁉︎私の剣が!」

 

ダクネスの剣は決して軟いものではない。この街の駆け出しの冒険者達のものに比べると、かなりいい剣の部類に入る。それが一撃にして粉砕されるとは、冬将軍の技量の高さたるや。

そして次の一撃でダクネスの命を奪わんと再び刀を構える冬将軍。

 

「まずい!」

 

 錬太郎はガッチャードライバーを装着して、2枚のカードを装填して変身する。

 

『スケボーズ!』『アッパレブシドー!』

 

「変身!」

 

『ガッチャーーンコ!アッパレスケボー!』

 

 ガッチャードはアッパレスケボーの姿となり、一瞬にしてダクネスと冬将軍の間合いに入り、冬将軍の刀をエクスガッチャリバーで受け止めた。

 

「何をするんだ錬太郎!冬将軍の一撃をこの身に受ける絶好の機会だったというのに!」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!カズマ、ダクネスをお願い!」

 

「わかった。おい、いくぞ!変態マゾ聖騎士(クルセイダー)!」

 

「はぁん!焦らしプレイに加えて言葉責めとは…錬太郎にカズマ、見事な連携だぞ」

 

「だぁぁ!うるせえ!錬太郎じゃあ頼むぞ」

 

 ダクネスを引きずって後退するカズマを見届けると、ガッチャードは冬将軍を見据えて臨戦体勢に入る。それは冬将軍も同様で、カズマ達のことは眼中になく、青く輝くその瞳には眼前のガッチャードだけを捉えている。

 

「冬将軍は国から2億エリスもの高額賞金をかけられている特別指定モンスターよ、普通なら土下座して見逃してもらうところだけど…うちには何でもありの錬金術師がいるわ!これで2億が私のものに…」

 

「お前はこんな時でも金のことかよ…まぁ、俺もこの対決は気になるけどな」

 

 固唾を飲んでカズマはガッチャードと冬将軍の方を眺める。雪降り積もる地に相対する赤備えの武者と純白の武者。戦いが幕開けることを告げるようにほんの少しばかり吹雪が強くなる。

 ガッチャードと冬将軍、双方ともに武器の柄を握り締めており、いつでも斬り合いはできる模様。お互いがお互いの出方を伺っている…その時

 

ガッチャードの左腕のホルダーから3体のケミーが飛び出した。先程カズマ達が捕まえた3体である。現れたケミー達は冬将軍に何かを話しかける。

 

『ブリザンモース!』

 

『ケアケア!』

 

『ヴァンフェン!』

 

 ケミー達の話を聞き終えると、冬将軍は刀を鞘へとしまった。同時にガッチャードも敵対心が無くなったことを悟り、戦闘体勢を解く。

 

「どうなったんだ?」

 

 状況が読み込めないカズマがガッチャードに尋ねる。

 

「ケミー達に免じて今回は見逃してあげるって。それに冬将軍は、この山の守り人だから、討伐するのはよくないと思うんだ。」

 

「そうか…」

 

「あと、捕まえた雪精達は放してあげよう、冬将軍の厚意に対しても…」

 

ガッチャードの話を聞いて、一同の視線がアクアに集まる。しかしアクアは雪精達の入った瓶を宝物のように抱えて反論する。

 

「いいじゃないの、見逃してくれるんだから!それに2億も手に入らないっていうのに冷蔵庫とキンキンのシュワシュワまで手放せっていうの?嫌よ!絶対に嫌!」

 

「お前なぁ…」

 

 アクアの我儘っぷりにカズマは溜息を溢す。ここまでだとむしろ清々しいまであるが。

 

「見つけたぞ…坊主…」

 

 何処からか低く、威圧感のある声が響く。やがて声の主はその姿を現しガッチャード達の前に立ちはだかる。

 

「誰ですか、あの人は?」

 

「気をつけて皆、アイツはロード率いる悪い錬金術師の1人、ソラトスだ…」

 

「おいおい、冬将軍の次は錬金術師かよ…」

 

 一難去ってまた一難。どうして自分達のパーティーは厄介事に巻き込まれっぱなしなのかとカズマは天を仰ぐ。

 そんなことなど気にしない様子で、ソラトスはドレッドライバーを腰に装着し、レプリケミーカードを取り出す。

 

「もう前回のようにはいかんぞ…あのお方から賜ったこの力で、潰す」

 

 ソラトスはレプリケミーカードを、ドレッドライバーのヴェヴェルセッターにスラッシュリードし、後方のスロットへと装填する。

 

『スチームライナー…』

 

踏切の警告のような待機音の流れる中、レバーであるネクベトヴォークを展開し、ソラトスは荒々しい声で叫んだ。

 

「変身!」

 

 刹那、ベルトからレプリスチームライナーが飛び出し、黒い骨のようなものがソラトスを包み込み、その姿を変貌させる。

 

『ドレッド・零式』

 

あらゆる命を蹂躙し、絶望へと誘う暗黒の破壊者

ーー仮面ライダードレッド零式がその姿を現す。

 

「ほほぉ、同じ姿でもカズマさんのに比べて逞しいわね…」

 

「はっ倒すぞ駄女神!でも、今はそんなこと言ってる場合じゃないな…」

 

「うん…ハガネ兄さんじゃないけど笑えないジョークだよ…」

 

 奇跡的に穏便に解決すると思われた雪山での激突は、1人の破壊者の乱入によって呆気なく激戦の予感へと引きずり戻された。

 ガッチャードとドレッド、アクセルの街以来の両者の対戦の火蓋が再び切って落とされようとしていた。




ブリザンモスとケアリー、ヴァンフェンリルのお陰で冬将軍との戦闘は回避されました。しかし、まさかのソラトス再登場、そしてドレッドへ変身!
冬将軍と思わぬ形で共闘することになりましたが、この先どうなりますやら…
またしてもファンタスティックケミーをガッチャした佐藤和真さん(16)

もう彼がいればファンタスティックやコズミック簡単にコンプできるのでは…
それではまた次回

次回予告
「呉越同舟と同族殺しの真実」
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