この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

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 生きたダンジョン、その正体は、かつてその地で鉱石を収集するために重労働させられた者達の怨念に満ちた場所だった。
 そして、ダンジョンの中で待ち受ける血塗られた鎧を身に纏ったアンデッド達がダンと舞に襲いかかる。
 ダンは、アルケミスドライバーを通じて『ギガバハム』、『クロアナ』の力を解き放ち、応戦する。
ーー無限の暗闇で怨念に挑む龍戦士
その(あざな)は、超高等錬金戦士ウインド

錬金見聞録 第9章:「ウインド」にて一部抜粋


エリスの胸はパッド入りぃぃぃ!!!

 猛吹雪が白い世界を包み込んでいる。視界も良いとは言えないし、雪による影響で一歩進むだけでも一苦労である。そんな中でも5つの影は、何処へと消えた同胞を探し彷徨い続けていた。

 

「錬太郎〜どこだ〜?」

 

「いるんですか〜、返事してくださ〜い!」

 

「こっちは怪物倒し終えたわよ〜」

 

「おーーーい!」

 

「錬太郎さ〜ん」

 

 カズマ達の声が雪山に響いては、瞬時にかき消されていく。捜索してから、どれくらいの時間が経ったのだろうか。皆で協力して雪を掻き分けて進んでも、未だに錬太郎の足取りを掴むことができていない。早くしなければカズマ達はおろか、おそらく錬太郎も凍えてしまうだろう。

 

「全然見当らねぇ…ダクネス、そっちはどうだ?」

 

「駄目だカズマ…私の方にもそれらしき痕跡はない…アクア、錬太郎のケミーライザーに連絡は届いたか?」

 

「全然ダメ、繋がらないわ…まさか、やられたなんてこと…」

 

「何を言っているんですかアクア!レンタロウが負けるなんて、あるわけないじゃないですか!」

 

「そうですよ…錬太郎さんは…錬太郎さんは…」

 

 アクアがぽつりと漏らした懸念を、めぐみんとゆんゆんは否定する。しかし、その可能性も無きにしも非ずと僅かに感じていたのか、ゆんゆんの声は、途中から小さくなってしまった。 

 ふと、視線を上の方へと移すカズマ。すると吹雪の中で眩く光り輝く何かを見つける。

 

「なんだ…アレ⁉︎」

 

「あれは…もしかしてザ・サンじゃないですか⁉︎」

 

 めぐみんの証言に皆彼女へ視線を寄せる。ザ・サンは今回、錬太郎の方に同行していた。つまり、錬太郎の居場所への手がかりになり得るのだ。

 

「本当なのめぐみん⁉︎ということはあそこに錬太郎さんがいるかもしれないの⁉︎」

 

「落ち着いてくださいゆんゆん、ザ・サンとは何度か力を合わせて爆裂魔法を放っているのである程度面識があるんですよ。あの光の輝き…彼以外に誰があり得ましょうか!」

 

「よし!じゃあ、あの光の方に向かうぞ!」

 

 カズマ達は、ザ・サンと思われるものを目印に進んでいく。

そして一箇所だけ、雪が異常に降り積もっている場所を見つけた。まるで何かを覆っているように見えるため、一同は首を傾げる。

 

「なんであそこだけ雪がかなり積もっているんだ?」

 

「わかりませんね…取り敢えず確かめにいきましょう」

 

 積雪している場所へと、足を進めるカズマ達。目標へと辿り着き、すぐさま積もっていた雪を払い除ける。

 そして、雪の中から現れたものに一行は絶句する。

 

腹に大穴の空いている黒いローブを纏った黒髪の少年が、血によって赤く染まった雪の上で横たわっている。

 

 

 そう、無惨に変わり果てた百瀬錬太郎の姿がそこにあったのだ。

 

 

「おい…嘘だろ…」

 

「そんな…馬鹿な…」

 

「…え…なんで…れん…たろ…さん」

 

 カズマとダクネスは、震える声でなんとか言葉を紡ぐ。

そしてゆんゆんは、力なく地べたに座り込んでしまった。到底現実を受け入れることが出来ないようで、目尻には今にも溢れ出さんばかりの涙を溜めている。

 

「アクア!リザレクションを!今ならレンタロウはまだ戻って来れるかもしれないじゃないですか!」

 

「…!そうね、めぐみん。さぁ、錬太郎戻ってきなさい!『リザレクション』!!!」

 

 めぐみんの言葉を受けて、ハッとしたアクアは錬太郎の身体に寄り添って蘇生魔法であるリザレクションを発動させる。

しかし…

 

「あれ?なんで⁉︎リザレクションが効かない⁉︎」

 

「どうしたんだよアクア!普通ならその魔法で生き返るんだろ?」

 

「そうなんだけど…錬太郎の意識が戻らないのよ…」

 

 なんとアクアのリザレクションを持ってしても錬太郎の瞼が上がることはなかった。もう救済は絶望的。その事実が、一同へ重苦しい空気を運ぶ。

 

「嫌…こんな…こんな形でお別れなんて…嫌だよう…」

 

 ゆんゆんは己の胸中に秘めた負の感情を曝け出す。一度溢れ出したら止めることはできない。その様子を表すかのように彼女の頬を何筋もの涙が伝う。

そしてーー

 

「錬太郎さぁぁぁぁぁぁん!!!!」

 

大切な友達の一人を失ったことを嘆くゆんゆんの慟哭が、雪山一帯に轟くのだった。

 

 

 

 

「…ん、ここは」

 

 瞼を刺激する光の感覚に、錬太郎は目を覚ます。身体を起こして首を回してみると、視界一面に真っ白な景色が広がっていた。しかし断じて雪景色ではない、真っ白な部屋ともいうべきだろうか。錬太郎は非常に困惑する。先程まで極寒の雪の地に全身を預けていた筈なのに、今は見ず知らずの場所にいるのだから当然だ。

 

「百瀬錬太郎さん…」

 

 やけに透き通った声が、錬太郎の鼓膜を揺らす。声のする方に視線を移すと、そこには青い色の修道服のようなものに身を包んだ銀髪の女性が椅子に座っていた。

 

「エ…エリス様…⁉︎」

 

 錬太郎は目の前の女性の名を呼ぶ。そう、錬太郎の目の前にいるのは彼の世界において国教となっているエリス教の御神体、幸運を司る女神『エリス』なのだ。

 エリスは悲しみを帯びた瞳で錬太郎を見つめると、彼に対して残酷な事実を告げる。

 

「残念ですが…貴方はお亡くなりになりました」

 

「⁉︎…僕が…死ん…だ…」

 

 エリスから伝えられた内容に酷く動揺する錬太郎。刹那、突然の頭痛に錬太郎は頭を抑える。そして直前の記憶が鮮明に蘇っていく。

 戦闘を終えて冬将軍を見送った後、仲間達の所へ帰ろうとしたあの時。完全に気を抜いてしまっていたその隙を突かれて自身の腹をソラトスの変身するドレッドに貫かれたのだ。 

慌てて腹部へ視線を移すと、もう穴は空いていない。

 錬太郎は漸く自身が死んでしまったという事実を把握すると同時にとてつもない虚無感に襲われた。

 やがて光を失ったその瞳から湯水のように涙が溢れ出し、ついには声をあげて泣き出した。

 

「う…うぅ…ああああ…ごめん、ごめん皆…僕は…僕は…」

 

 目の前にいるエリスを気にすることなく、幼い子供のように大声でわんわんと泣き続ける錬太郎。悔しさ、悲しみを孕んだ叫換が、部屋の中で反射して轟き、木霊する。

 

「いいんですよ、錬太郎さん…今は思いっきり泣いていいんですよ…」

 

 エリスは椅子から立ち上がると、錬太郎の方へと歩み寄り、彼の頭を撫でる。

 その慈愛の籠った慰めにより、錬太郎は一層声を大にして泣き続けた。

 

 

 

 

「…ありがとうございます、もう大丈夫です…ごめんなさい、みっともないところを見せてしまって…」

 

「いえいえ、お気になさらず」

 

 かなり長い時間泣き続けた錬太郎は、漸く落ち着きを取り戻すと、エリスに慰めてもらった御礼を述べ、エリスも錬太郎に笑みを見せる。

そしてエリスは真剣な顔つきに戻ると、錬太郎に向けて話を始める。

 

「ロードについては、私の方でも調査をしておりました。彼は本来、カズマさんや舞さんと同じく転生者として、この世界の魔王を討伐するために送り込まれたのですが…。

そして彼の目的は、かつて始まりの錬金術師達に封印された破壊神カタストロフを復活させることらしいです。

いずれは貴方達の持っているケミーカードも、破壊神復活の生贄として狙ってくる可能性もあります」

 

「そうですか…」

 

錬太郎はエリスからの話を一通り聞いたあと、下を向いて考え込む。そして再び顔をあげると、真っ直ぐにエリスの瞳を見据えた。

 

「エリス様、下界にクリスさんとしてやって来てくれる時だけでいいです!カズマ達のケミー探しの手伝いをしてあげてくれませんか?女神である貴方にこんなお願いをするなんて図々しいかもしれませんが…僕がいなくなったあとのみんなをどうか…どうか…」

 

 必死な様子でエリスに頭を下げて懇願する錬太郎。出会ってまだ少しの時間しか共にしていなかったが、それでもカズマ達は錬太郎にとって、掛け替えのない大切な存在になっていたのだ。

そしてエリスもそのことは天界から見てわかっていたため、錬太郎の申し出を、優しい笑みを浮かべてこっくりと頷く。

 

「もちろんです。貴方の想いは、決して無駄にはしません。できる範囲でですが、私もカズマさん達に協力しますよ。」

 

「……ッッッ⁉︎ありがとうございます!!!」

 

 顔を上げた錬太郎は、エリスの回答に涙をほろほろと流し、笑顔を浮かべる。そして感謝の意をこめて再び深く頭を下げた。

 

「では、そろそろ時間です。次の人生では、貴方が1人苦しむことなく、平和で幸せな生活が送れるように…」

 

 女神エリスの元へと誘われた魂は、天国へ送還、もしくは赤子から再びやり直すことになる。その段取りのためか、エリスは錬太郎へと右手を伸ばす。

 後悔がないといえば嘘になる。でも、大丈夫だ。カズマ達なら…自分がいなくなったとしても、立ち上がっていけるだろう。錬太郎も自身の運命を受け入れ、瞳を閉じる。もう少しでエリスの手が錬太郎に触れる

 

ーーその時だった。

 

『ザ、サーーーーーーーン!』

 

 何処からともなく聞こえてきた声に、2人は驚き、辺りを見回す。今この場には錬太郎とエリスしかいない。そのため、2人以外の声が聞こえてくるなどまずありえないのだ。しかしながら、その声に錬太郎は聞き覚えがあった。

 めぐみんの爆裂魔法強化に何度も手を貸し、自身と長い間、共に旅をしてきたケミーの一体。

 

「ザ・サン…ザ・サンなのか…」

 

 驚愕したままに、声の主と思われる者の名を呼ぶ錬太郎。

 

その刹那、不思議なことがおこった。

 

錬太郎の周囲を眩い炎が包み込み、やがて彼の方へと迫ってきたのだ。

 

「え?え?え?何コレ⁉︎エリス様!これが転生の手続きなんですか⁉︎」

 

「ち、違いますよ!こんなの私も初めてで…あれ?錬太郎さんの魂の反応がどんどん小さくなってる…まさか、元の身体の場所に戻ろうとしているんですか⁉︎」

 

 想定外の自体にエリスも慌てふためいている。しかし錬太郎は彼女がおたおたしていることなど気にも留めていなかった。最後の方でエリスが言った元の身体に魂が戻ろうとしている…それ即ち、生き返ることができるかもしれないということしか、頭になかったのだ。

 錬太郎は希望に溢れた瞳を輝かせながらエリスに別れの言葉を述べる。

 

「よくわかりませんがこのまま行ってきます、エリス様!短い間でしたが、ありがとうございました!」

 

「いやちょっと待ってください!生き返っていいなんて一言も言ってませんよ⁉︎それに仮に生き返るとしても後ろの門から出ていってくれないと…ってああ〜⁉︎錬太郎さんいかないで〜!」

 

 エリスの願いをよそに、やがて炎は錬太郎を包み込んで消えてしまった。その場に残されたのはエリスただ1人。突然のイレギュラーを前に、彼女は完全に放心状態である。

 刹那、奥の方から足音が聞こえてきた。

そして、赤毛ロングヘアーの羽衣を纏った1人の女性が現れ、エリスの肩に手を置いた。

 

「エ〜リ〜ス〜ちゃ〜ん、これはどういうことかしら?」

 

「ひぇ、あ、アポロス先輩…あの、これは…その…」

 

 アポロスと呼ばれた女性は腕を組み、威厳溢れる様子で、エリスを見下ろす。畏怖の念を抱いているのか、振り向いたエリスはアポロスを前に少しばかり震えている。

アポロスは、はぁ〜っとため息を吐くと口火を切って話し始める。

 

「まったく、死んでもいない人間をここに連れてきてしまうなんて…貴方、意外とせっかちさんなのね…」

 

「え⁉︎錬太郎さん死んでなかったんですか⁉︎」

 

さらりとアポロスの言ったことに対して、目を丸くして驚くエリス。アポロスは軽くうなづいた後、続きを説明する。

 

「実はね、錬太郎くんは仲間のケミーの1体の力によって、生と死の狭間の生寄りの状態、いわば仮死状態だったのよ。そして、凄腕アークプリーストの魔法によって完全に回復して、魂が肉体に戻されたってこと。」

 

「は、はぁ…まだ少しわかりませんが、私は錬太郎さんを生きたままここに連れてきてしまったということなんですね…」

 

「ええ…でもこればっかりは仕方ないわよ。だって初見じゃ絶対死んでるって思いますもの」

 

 エリスはアポロスの説明を聞いてほっと胸を撫で下ろす。危うく生きた者の魂を天国や転生へ導いてしまうという大失態を起こしかねなかったのだから。そして錬太郎が、またカズマ達の元へ戻れたことに対しても心底嬉しく思っていた。

が、次にアポロスに言われたことに、現実はそう甘くないということを思い知らされる。

 

「ところで、錬太郎くんは蘇生する際に必ず通るはずの門をすっぽかして復活したらしいじゃない?いくら仮死状態の魂としても、守らないといけないルールが定められるのはわかるわよね?」

 

「へ⁉︎いや…でも…」

 

「上司の神々達もエリスは何をやっているんだって当惑や激怒していたわ。そして私は貴方にこれを渡すように頼まれたの」

 

 アポロスはエリスに沢山の紙の束を手渡す。それは錬太郎が、正規ルート以外で復活したことに対して詳細報告をするための始末書だった。

 

「え、ええ〜!こ、こんな量やれっていうんですか⁉︎む、無理ですよ!」

 

「残念だけど今日中に纏めて報告するようにって伝言も貰ってるわ、まぁ頑張って!それじゃ私ルナティックちゃんとご飯食べてくるから、お疲れ様〜」

 

「ま、待ってください!少しは協力して…アポロスせんぱ〜い!!」

 

 エリスはアポロスを呼び止めるが、聞き入られることはなく、彼女の助けを求める声だけが虚しく響くのだった。

 

 

 

 

「……う…た…う…錬太郎!」

 

「……ッハ!僕はっ!」

 

 錬太郎は、自身の名を呼ぶ声に導かれるように意識を覚醒し、その身を勢いよく起こした。しかし…

 

「いっっっっダァァ!おい錬太郎、意識戻ったのはいいが回復早々思いっきり起き上がるやつがあるか⁉︎あとめっちゃ硬いなお前の頭!ダクネス(ウチのドM騎士)の硬さと遜色ねぇんじゃないの⁉︎」

 

「おいカズマ!私はそんなに硬い女じゃないぞ!」

 

 声の正体、錬太郎の様子を心配していて覗き込んでいたカズマと額をぶつけてしまった。錬太郎の石頭に、カズマは額を抑えて、涙目になりながら苦言を呈する。

そして硬さに関する話題に対してどこか不満気な様子のダクネス。意外な一面もあるもんである。

 対する錬太郎は、狐に摘まれたような様子で辺りを見回している。吹雪は止んでいるようだが、皆で雪精討伐の依頼で来たあの雪山だ。そして自分の周りにはカズマとダクネスはもちろんのこと、アクアにめぐみん、そしてゆんゆんもいた。

 皆がいる。つまり戻ってくることができたのだ。また皆とともに冒険を続けることができる

…安心して気が抜けたのか、錬太郎は今まで見せたことのないとても柔和な顔になって安堵のため息を溢す。

 

「ハァ〜、よかった…ってわぁぁ⁉︎」

 

 突然、錬太郎にゆんゆんが抱きついてきた。その華奢な体つきからは、想像もつかないような力で錬太郎の体を抱きしめる。流石の錬太郎も少々苦しく感じたので、ゆんゆんの背中を叩いて力を緩めるよう頼んだ。

 

「ゆ…ゆんゆん、ちょっときついから力を弱め「よかった…」…え?」

 

「よかった、目が覚めて…よかったよぉ…」

 

 震える声で言葉を紡ぐゆんゆん。ふと、錬太郎は自身の肩が濡れていることに気がつく。涙だ、ゆんゆんの流した大量の涙がシミとなり、服に滲んでいた。

 

「貴方が倒れていたのを見て、ゆんゆんが一番心配していたのです。今は…この子が満足してあげるまでそのままでいてあげてください。」

 

「わかったよ、めぐみん。ごめんねゆんゆん、不安にさせちゃって…」

 

 錬太郎は、エリスにしてもらったように心をこめてゆんゆんの頭を撫でて、そして背中をさする。その様子を、居合わせた一同は微笑ましく思いながら眺めていたのだった。

 

 

 

 

「それにしてもあんたすごいわね…ケミーのお陰とはいえ、お腹に大穴空いていても生きてたなんて…」

 

「へ⁉︎僕死んでなかったの?エリス様に召されたから死んだのかと…」

 

 アクアが唐突に告げた事実に錬太郎は耳を疑う。それは他の者達も同様で、皆目を丸くしてアクアの方を見ている。

そんな皆をよそに、アクアは落ち着いた口調で説明を始める。

 

「ザ・サンの能力らしいわよ。彼の体から湧き上がる無限のエネルギーを利用して、錬太郎の消えかけていた魂を一時的に肉体に留めていたのよ。だからリザレクションじゃ効果がなくてヒールを使う必要があったのよ。

でも、その時の錬太郎は傍から見ると死んでるようにしか見えないから、あの上底パッド女神は間違って連れてきたんでしょうね…」

 

「そうなんだ…やっぱり女神といえども完全無欠ってわけではないんだね…」

 

「錬太郎、そんなの今更だろ?ここに色んな意味で駄目な女神がいるんだしよ」

 

「はぁ〜?どういうことよカズマ!私は完璧で究極の女神様よ!清く美しい心で未来を照らすこの私にそんな口きくなんてマジありえないんですけど⁉︎謝って!今すぐに!」

 

 売り言葉に買い言葉とはまさにこの事か…いつものようにカズマが焚き付け、それに食いつくアクア。もはやお家芸である。仲間が急死に一生を得たばかりのこの状態でも変わらぬ2人の様子に、錬太郎は頬をポリポリと掻いて、呆れながらも穏やかな笑みを浮かべた。

 

「そういえばさアクア、さっき言ってた上底パッドってどういうこと?」

 

「ん、アンタ知らないの?エリスは胸にパッド入れてるのよ。アクシズ教教義にも記されているわ」

 

「ふーん…」

 

 錬太郎は、アクアからの回答を聞いて腕を組んで何やら考え込む。そしてその直後、とんでもないことを言い出した。

 

「今度会う機会があったら本当にそうなのか聞いてみようかな…」

 

「おい錬太郎やめておけ!」

 

「流石にデリカシーがなさすぎですよ!」

 

 錬太郎の思いつきにカズマとめぐみんが即座に反対意見を出す。錬太郎は別に下心があるわけではない。純粋に疑問に感じたが故に尋ねてみようと思ったのだが、流石にこれは良くない。それは鬼畜だの、変態だのと時々仲間達からも呼ばれるカズマさんでさえ弁えているラインだ。

 錬太郎は渋々2人の意見を汲んだが、まだどこか諦められてない様子であった。また時同じくして…

 

「…んむぅ」

 

 嫉妬なのか、はたまたまた別の感情からなのか、未だに錬太郎に抱きついているゆんゆんは、手の力を僅かに強めたのだった。

 

「まぁ何はともあれ、錬太郎も無事戻ってきて良かったよ!ザ・サンは陰のMVPだな!」

 

「うん、でもザ・サンにはこんな能力はなかった気がするんだけど…一体いつ覚えたの?」

 

『ザ・サーン』

 

 ザ・サンのカードを取り出して、錬太郎は尋ねる。その問いにザ・サンは答えてくれたのだが、その答えは…

 

「え⁉︎ギリギリまで尽力して、ギリギリまで粘ったら、うんぬんかんぬんあってノリと勢いで出来た⁉︎そんなご都合展開があるの⁉︎」

 

 なんとザ・サンがその場の雰囲気で取得したものらしい。あまりにも斜め上の解答に思わず呆けた顔になってしまった錬太郎。ケミーには無限の可能性があると信じていたが、まさかノリと勢いでなんとかなってしまうとは思いもしていなかった。

 続けて、ザ・サンはとあることを錬太郎達に伝える。

 

『サーン、サーン!』

 

「ん?えっと、さっきまで俺が高エネルギーを放出しすぎたのと、激しい戦闘の影響で雪崩が発生しかけてるって…そうかぁ、雪崩かぁ…

っておい〜!雪崩来るの⁉︎」

 

「「「「えええええ⁉︎⁉︎⁉︎」」」」

 

 ザ・ザンからの言伝に、ダクネス以外の5人は驚きの声をあげる。

刹那、後ろ側から轟音が響くとともに、崩れ落ちた雪の塊が迫っていた。

 

「かずましゃあん⁉︎れんたろしゃあん⁉︎あだじまだ死にたくないわよぉ!」

 

「おおお落ち着けアクア!なんとかして逃げ切る方法はある筈だ、なぁ、めぐみん!」

 

「こんなときに他人に振るのですかこの男は!ハッ!ゆんゆん、貴方テレポート習得してましたよね⁉︎それでアクセルまでひとっ飛びでしょう?」

 

「あるけど上級魔法使ったせいで、今は魔力が足りないわよ!」

 

「大丈夫、ワープテラがいる!皆集まって!」

 

「おおっ!でかしたぞ錬太郎!」

 

 錬太郎は空高くワープテラのカードを掲げて、彼を中心としてカズマ達4人は駆け寄る。

 しかし1人足りない。ダクネスが、カズマパーティー屈指のタンクがまだ来ていなかった。彼女は迫り来る雪崩をその碧き瞳に捉え、ソワソワとしている。

 

「おいダクネス、お前もこっちに来い!」

 

「か…カズマ、この雪崩…とんでもない速さで来ている。ああ…この雪に自分の体が押しつぶされると思うと…ぬはぁん!」

 

 こんな時でも自身の欲望に忠実なダクネス。そんな彼女の言動に、ついにカズマと錬太郎は痺れを切らした。

 

「おい、ふざけたこと言ってんじゃねぇ!こちとら命がかかってんだぞ!」

 

「偶には行間を読んでくれよォォォォォォ!」

 

 錬太郎はジャングルジャンのケミーカードを取り出すと、その能力で蔦を出現させてダクネスを捕縛し、強制的に自分達のいる方へと引き寄せる。その直後、ワープテラの出現させたゲートに6人は吸い込まれ、雪山を後にしたのだった。

 

 ちなみにダクネス曰く、雪崩をその身に受けることができなかったのは残念だったが、この時のカズマと錬太郎の連携は最高だったとのこと。

 

 

 

 

 ワープテラの能力で、なんとかギルドへと帰還した一同は、今回のクエストの報酬を得ていた。カズマが4匹、めぐみんが9匹、ゆんゆんと錬太郎が共に15匹雪精を討伐していたので、計四百三十万エリスの報酬となった。アクアがガラス瓶に入れていた雪精は、雪崩から逃げる際に置いてきてしまったらしい。

 それなりの額を稼げはしたのだが、ドレッドやマルガムとの戦闘があったことを加味すると、少々割に合わないかもしれないとカズマは感じた。

 

「と、いうわけで、今のままの俺たちではこれから戦闘になる際に手を焼くだろう…そこで話し合いをするわけだが…」

 

 ギルドの席に各々座り、カズマを中心に雪山での反省会を行う一同。

それぞれが自身の反省点や課題を述べる中、アクアと錬太郎の2人は居眠りをしていた。アクアは只、退屈故に爆睡しているのだが、錬太郎は戦闘や精神的面において疲労困憊状態だったので、アクア程ではないが、船を漕いでしまっている。

 

「ドレッドがめちゃくちゃ強すぎる件だが…錬太郎、お前はどう思う?」

 

 カズマから振られた質問で漸く目を覚ました錬太郎。先程まで寝ぼけていたが故に、少しばかり狼狽するものの、淡々とした様子で話し始めた。

 

「僕は…僕はこう思う。きっと僕のミスだったんだ…ケミー達は力を貸してくれているのに、その想いに十二分に応えてあげることが出来ていなかった…つまり何が言いたいのかというと、今後の課題は、ケミー達の心に寄り添い、最大限に力を引き出してあげるということだ!」

 

 錬太郎の解答に皆ぽかんとした表情になる。確かにいい事は言っていた。だが、カズマが尋ねたことからは主旨が大分ずれてしまっている。

 

「いや…その心意気は凄く良いと思うんだけど、俺の質問はちゃんと聞いてたか?」

 

 カズマの問いに錬太郎はフッと口元を緩め、答えた。

 

 

「すみません…全然聞いてませんでした…」

 

 

 

 

 

 

 




不思議なこと、ノリと勢い、ドン○ラのうんぬんかんぬんに、ジェ○ミーが多用する行間など、特撮ネタのオンパレードになってしまいましたね…
錬太郎、なんとか生還、というか死んでなかった。
そして始末書を増やされるエリス様…不憫。
あとさらっとロードの正体がカズマやみたらし…ミツルギと同じ転生者と明かされましたね。一体どんな特典を持っているのか…
ちなみにザ・サンの能力ですが、フューチャーデイブレイクにて、未来のりんねがザ・サンに意識を移した描写を参考に私が勝手に妄想したものです。
とはいえ、この能力はザ・サンにも負担がかなりかかる+アクアレベルのプリーストなしでは意味を成さないため、何度も使用されることはありません。
オリ女神のアポロスについてですが、自分の中ではアクアの同期みたいなイメージです。モチーフは太陽神アポローンと天照大神です。

後半シリアス薄めるために甘酸っぱい感じやギャグっぽい感じにしたつもりですが、シリアスが未だ濃いような…ちょいちょいシリアス緩衝材は入れていかなきゃ…

それではまた次回

「前門のゆんゆんと後門のクリスとエックスレックス」
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