この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

25 / 89
このすば世界において、ウィズさんの仕入れた魔道具ほどご都合主義展開の辻褄合わせに便利なものはないと思ってます。


ロストワールド/我が名はえみりん

 世界とは無数に存在し、人はそれを並行世界、もしくはマルチバースと呼ぶ。

 例えば、サトウカズマがアクアからの弄りに怒ることなく転生特典を得た世界、始まりの錬金術師達が異世界に訪れることはなく、錬金術やケミー、そして百瀬錬太郎も存在しなかった世界、転生者であるにも関わらず、破壊の限りを尽くしたロードによって蹂躙されてしまった世界、カズマやその仲間達が転生者達と共に仮面ライダーの力を得た世界など様々だ。

 しかし、何故ここまで数多の世界が生まれてしまうのか。それは、可能性による分岐。

 世界とは、たった1人の人間の選択したかもしれない可能性によって、時間という枠組みの中で、無数に分岐してしまう特異な性質を持っている。

 

では仮に、時間を遡って過去を変え、無理矢理新たな可能性を生み出すとなると、その先に待っているものとは…

 

 

 

 

『成程…確かにこれは妙だね…』

 

「そうでしょ、クロっち」

 

 錬金術師、百瀬錬太郎は現在、泊まっている宿の一室でクロっちと例の写真について話している。エミの家で見つけた、自分達が写っているあの写真だ。

 錬太郎から手渡されたその写真を手に、怪訝そうな顔をしてじっくり眺めているクロっち。暫くして、クロっちは念じるように瞳を閉じて、写真に右手を翳し何やら解析を始める。解析を終えて瞳を開くと、神妙な顔つきで錬太郎に結果を伝える。

 

『時間だよ…この写真、時間の流れが現在(いま)と違う…』

 

「?どういうこと…?」

 

 クロっちの言っていることが分からず首を傾げる錬太郎。錬太郎にも理解できるように、クロっちは詳細を語り始めた。

 

『結論から言うと、この写真はこの時代のものじゃない。さっきの魔法を使って、物質に残留する時間の流れを調べて見たけど、波数がどうも今年と合わない。計算からして、15年程先の未来のものだってわかったんだ。』

 

「エミちゃん達は未来人⁉︎でも…そんな時空を超える手段なんてあるものなのかな…」

 

『もしかしたら異界人の技術か、或いはあの子の力か…』

 

「あの子…?」

 

『アーティファクトケミーのレベルナンバー7、タイムロードだよ。時空を超えるのは勿論、過去や未来についてもある程度見通せる能力を持っているんだ。』

 

「じゃあ!タイムロードに会って話をすれば、どのみちこの写真の詳細もわかるってことだよね!」

 

 錬太郎は身を乗り出して、クロっちに迫る。興奮しているのか目は大きく開かれていて、どこか鼻息も少し荒い。

 

『れ、錬太郎落ち着いて…確かにそうかもだけど、まだタイムロードの居場所は掴めてないから…』

 

「あ、そっか。ごめん…」

 

 錬太郎はクロっちに窘められ、冷静さを取り戻す。クロっちはほっと息を吐くと、写真を包み紙の中に丁寧に仕舞い、

 

『まぁ、錬太郎はケミー探しに集中しなよ。こういう裏方作業は僕に任せて!』

 

 自分の胸をドンと叩いて頼もしげな表情で言ってみせた。そんなクロっちに錬太郎は笑みを見せ

 

「ああ、宜しく!」

 

 写真の件について任せることにしたのだった。

 

『そういえば錬太郎、紅魔の里から手紙が来てたよ』

 

「え〜と、どれどれ…あ!あるえからだ!また新しい小説かな」

 

 錬太郎はクロっちから手渡された封筒を開けて中身を確認する。以前から小説を通じて文通をしている紅魔族の少女、あるえから宛てられたものだった。

 中に封入されていた複数枚の紙を取り出して、そこに羅列されている文字を左から右へと、指でなぞって追っていく。紅魔族的感性故の独特の文体ではあるものの、それがより一層あるえの物語に深みを出しているように錬太郎は感じる。だからこそ面白いと思えたのだろうが…

そして、もう1枚目を読み終えてしまったようだ。

 

『今回はどんな話〜?』

 

「なんか未来からやってきた1人の少女が家族を救う為に奔走する的なお話だよ」

 

『タイムトラベルものか…なんかタイムリーな気がするけど今回も面白そうだね〜、後で僕も読ませてよ』

 

「りょうか〜い」

 

 クロっちと他愛もない会話をしながらあるえの小説を読み進める錬太郎。そんな時、錬太郎のケミーライザーにメールが送られてきた。確認するとカズマかららしく、自身専用の武器などを買うためにウィズの魔道具店に行くらしいのだが、同行するアクアが暴走しないか一緒に見張っていて欲しいとのこと。

 今日は特に予定もなく、ケミー探しも休みにしているため、錬太郎はカズマの誘いを受けることにした。

 

「じゃあ行くか、クロっちは留守番お願いね」

 

『ウィ!いってらっしゃ〜い』

 

 クロっちに見送られると、錬太郎は久しぶりにゴルドダッシュのカードを手に取り、呼び出した。

 

「今日は君と一緒に出かけたい気分だからね、いくよゴルドダッシュ!」

 

『ダーッシュ!』

 

 錬太郎はアクセルを吹かせながらゴルドダッシュを走行させ、カズマ達の待つギルドへと向かったのだった。

 

 

 

 

 ギルドにてカズマ達と合流した錬太郎は、ウィズの魔道具店へと向かっていた。移動手段を提供してくれるワープテラは日頃の疲れを癒すべく、アクマノカリスと共にあの秘湯へ訪れていて不在のため、一行は徒歩で目的地を目指す。

 

「そういえばダクネス達はついてこないの?」

 

「ああ、ダクネスは手頃なクエストがないか探してもらってて、めぐみんはゆんゆんと一緒にどっかいった。あ、話していたら着いたみたいだな。」

 

 話をしているとウィズが経営している店へと辿り着いた。

カズマは歩みを止めてアクアと錬太郎の方を向くと、特にアクアに対して厳しく注意喚起する。

 

「おいアクア、ウィズがリッチーだからって、絶対に暴れるんじゃねぇぞ。浄化魔法なんざ言語道断だ!錬太郎もしっかりアクアの監視を頼む」

 

「わかったよ」

 

「ちょっと2人とも何言ってるのよ!2人から私はどう映ってるのよ⁉︎私そんな乱暴者じゃないわよ、女神よ⁉︎皆から崇められてる女神様なのよ⁉︎」

 

 2人からのあんまりな言い様と扱いに喚き散らしながら文句を垂れ流すアクア。そんないつも通りの彼女の様子など気にも留めず、カズマは店のドアに手をかけて、開ける。

 カランカランとドアに備え付けられた鈴の音が軽やかに鳴り渡り、来客の到来を店主へと伝えた。

 

「いらっしゃ…ああああ⁉︎⁉︎」

 

「来てやったわよクソリッチー!魔道具店なんか営業して!私は馬小屋生活だってのに生意気よ!女神アクア様の名の下にこんな店潰してやる…いだっ⁉︎」

 

「やめとけ、ここに入る前に注意したってのにお前は…」

 

 あれほどカズマに釘を刺されたというのに、案の定ウィズに対して敵意剥き出しで迫るアクア。

カズマはため息をついて、面倒事になる前にアクアに拳骨を喰らわせて静止させる。そしてびくびくしているウィズの方に向き直ると、錬太郎と共に挨拶をした。

 

「よう、ウィズ。久しぶりだな。」

 

「ご無沙汰してます、今日は宜しくお願いします。」

 

 

 

 

 

 

 

「ふん、客にお茶の一つも出さないのかしら?このお店」

 

「す、すみません!今すぐ持って来ますので!」

 

「ウィズさん持ってこなくていいですよ!」

 

「錬太郎の言う通りだ、ていうか客にお茶持ってくる魔道具店なんてどこにあるんだよ!」

 

 少しばかり大人しくなったもののウィズのことが気に入らないため、陰湿なイビリをするアクア。お人好しのウィズは素直に言うことを聞こうとするため、錬太郎とカズマが止める。

 カズマは魔道具店に来るのは初めてらしく、興味津々な様子で店の中を眺めていた。ふと、棚に置かれていた小さなポーションの瓶に手をかけると…

 

「あ、それは強い衝撃を与えると爆発するので気をつけてくださいね」

 

「わっ!マジか…」

 

 カズマは瓶を戻すと、今度は隣の方にあった別の瓶を手に取った。

 

「それはフタを開けると爆発しますので…」

 

 再び瓶を戻すカズマ。その後も並んでいる瓶を手にとって尋ねたのだが…

 

「これは?」

 

「そちらは水に触れると爆発します」

 

「こ、これは…」

 

「温めますと爆発を…」

 

「……、この店には爆発物しかねーのかよ!」

 

「ち、違います!そこは爆発シリーズのポーションが並んである棚なんです!」

 

「おっと、違う違う…俺は爆発アイテムを買いに来たんじゃない。なあウィズ、俺でも扱える武器とか売ってないか?もしくは、リッチーのスキルとかよければ教えて欲しいんだが…」

 

「ブフッ!」

 

「おい〜、僕にかかったんだけど!」

 

 カズマの言葉に、先程まで優雅にお茶を飲んでいたアクアが思いきり吹き出す。そしてそのお茶は見事に錬太郎の顔面にぶっかかった。

 

「けほ、けほ、何言ってるのよカズマ!リッチーのスキルなんて正気⁉︎薄暗くてジメジメしたところが大好きなナメクジの親戚みたいな奴のスキルなんて覚えて何になるのよ!」

 

「ひ、酷い!」

 

 アクアからのあんまりな言いようにウィズは思わず涙ぐんでしまう。そんなアクアからウィズを庇うように錬太郎が前に立ち、話し始める。

 

「確かにアクアからしたら許しがたいのかもしれないけど、基本は覚えられないリッチーのスキルが取得できるのは冒険者のカズマにとっては大きなアドバンテージだし、いつかそのスキルが危機を救うこともあるだろうから、ここは妥協して欲しいんだ」

 

「むう…、女神としては従者その1と2がリッチーの協力を仰ぐなんて見過ごせないけど…仕方ないわね…」

 

 アクアは苦言をこぼしながらも、カズマがスキルを得るのに納得してくれたようだ。一方でウィズは、びくびくとしながら気になっていたことを尋ねた。

 

「あの…先程から女神って聞こえたんですけど…強力な浄化魔法のことも考えると、アクアさんは本当に女神なんですか?」

 

「その通りよ!私はアクシズ教の御神体、アクア様よ。控えなさい!」

 

「ヒィィィ!」

 

 ウィズは血相を変えて錬太郎とカズマの後ろに隠れ、アクアから距離を置く。

 

「そんなに怯えなくてもいいだろ、ウィズ。確かに女神とアンデッドって相性は最悪だとは思うけど…」

 

酷く怯える様子のウィズを宥めるカズマだったが…

 

「い、いえ…その…アクシズ教徒は頭のおかしい人達が多く、関わらない方がいいというのが世間でも常識ですので…その、元締めともなりますと…」

 

「なんですってぇぇぇ⁉︎」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 ウィズからのアクシズ教徒に対する低評価に憤慨するアクア。しかし空気を読めない者が火に油を注ぐ。

 

「おかしいのは間違ってないでしょ。アクシズ教徒間で挨拶は『パンツ丸見え』なんだから」

 

「マジかよ錬太郎。アクア、お前の宗教ダメじゃねぇか、元締めが駄女神だから当たり前っちゃ当たり前か…」

 

「かっちーん!もう怒ったわ、ていうか錬太郎!そのデマ広めた奴について洗いざらい話しなさい!ゴッドブローで成敗してやるわ!」

 

「お、お店で暴れないでください〜」

 

 

 

 

 その後なんとかしてアクアの気を鎮め、リッチーのスキル取得の準備に取り掛かる。今回取得するのは、体力や魔力を吸い取る『ドレインタッチ』。ウィズ曰く、リッチーのスキルには相手がいないと使えない物ばかりらしい。

 

「じゃあ僕で試してください。アクアの魔力を吸ったら浄化してしまうかもしれないので…」

 

「わかりました、では…失礼します。」

 

 錬太郎は両手を差し出し、その両手をウィズが触れる。直後、妙な脱力感を錬太郎は覚えた。自身の中にあるエネルギーであろうか、それがウィズの方へと流れているように感じるのだ。

 

「どう、カズマ。カードに出てきた?」

 

「おう、出てきたぞ!もう大丈夫だ」

 

 カズマの合図と共に手を離そうとする錬太郎。その時だった。

 

『ザ、サーーーーン』

 

 どこか聞き覚えのある声が響き渡り、錬太郎の左腕のホルダーからもの凄い量のエネルギーが溢れ出し、錬太郎の全身を駆け巡る。そして間接的に錬太郎に触れていたウィズにも流れていき…

 

「え?え?え?なんですかこれ⁉︎吸いきれな…ほえええええええ!」

 

 容量以上のエネルギーに全身を包まれ、黒焦げになったウィズは、そのまま床に倒れてしまったのだった。

 

「ウィズーーー!」

 

「ウィズさぁぁぁぁぁぁん!」

 

 

 

 

「お花畑が…ベルディアさんが手を振ってました…」

 

 先ほどの件で瀕死になってしまったウィズだが、カズマが覚えたてのドレインタッチで錬太郎から適量の魔力を吸い取ってウィズに与えたことで事なきを得た。

 

 先程のエネルギーの正体はザ・サンである。錬太郎から急に体力が吸われていることを危うく思い、慌てて自身のエネルギーを分けてあげたらしい。純粋すぎるケミー故の行動だったのだろう。

それにしてもリッチーであるウィズさえも吸いきれないエネルギー量とは…

 

「ごめんなさいウィズさん…お詫びに何か僕も商品を購入しますので…

あ、この赤い水晶なんていいかもですね」

 

「お、綺麗だな、ウィズこれは何なんだ?」

 

 錬太郎が見つけた赤い水晶に、カズマも興味惹かれたのか、近寄って確認する。しかしウィズは顔を真っ青にして…

 

「そ、それは…」

 

 ウィズが何かを言いかけたその瞬間、錬太郎とカズマの足下に魔法陣のようなものが展開され、眩い光を発しながら2人を包み込む。

 

「おい錬太郎、これって…」

 

「まさか…」

 

「「テレポートもの⁉︎」」

 

 光は完全に2人を捕えると、何処かへと消えてしまった。

最後にウィズが「1日、1日頑張って生き延びて下さ〜い」と言い残したのが聞こえた。

 

 

 

 

「あれ…ここは」

 

「なんだ…酷い有様だな…」

 

 錬太郎とカズマがやって来た場所。そこは瓦礫まみれで、彼方此方から火が上がっている戦場のようであった。

 

「取り敢えず情報収集しよう、ウィズさん曰く1日持ち堪えれば戻れるらしいから…」

 

「おう、そうだな…」

 

 錬太郎とカズマは辺りを散策し始める。しかしながら人など誰も居らず、情報を集めようにも集めることなど出来ない。

 

「クソ〜、人っこ一人いないのかよ…これじゃここが何処かわかんないぞ…」

 

「う〜ん…あ、あそこに誰かいる⁉︎」

 

 錬太郎が指差した方にカズマも視線を向ける。そこには地面に座り込んで泣いている少女がいた。2人は急いで少女のもとへと駆け寄った。

 

「大丈夫かい?」

 

「ひぐっ…ぐすっ…はっ⁉︎す、すみません…お見苦しい姿を見せてしまいまして…」

 

 カズマの声に少女はゆっくりと立ち上がる。トンガリ帽子に長い黒髪、緑色のローブを羽織っていて、茶色の瞳は宝石のように輝いていた。少しばかり特徴に違いがあるが、彼女はまるで…

 

「(めぐみんみたいな子だな…)」

 

 カズマは心の中でそう思ったのだった。

 

「あのさ、俺たちここには初めて来た者でさ。色々教えて欲しいんだ。俺は佐藤和真。で、あっちが百瀬錬太郎。」

 

 カズマは少女に自身と錬太郎について紹介をする。少女は驚いた様子で目を見開く。そして小さな声で細々と言葉を紡いだ。

 

「パパと…師匠…⁉︎」

 

「ん?どうかしたか?」

 

「あ、いえ!カズマさんとレンタロウさんですね…私はサトウエ…」

 

 少女は途中まで言いかけると、咳払いをし、洗練された動きを決めながら高らかに名乗りをあげた。

 

 

 

「我が名はえみりん!紅魔族随一の上級魔法の使い手にして、紅蓮の錬金術師なり!」




今回も内容詰め込みすぎましたね…
13話より仄めかされていた錬太郎と文通していた少女はあるえでした。
実は序盤の紅魔族の名乗りに、錬太郎がある程度耐性があったのも、本編以前に紅魔の里に一度訪れていたからだったりします。
(6話での舞との手紙のやり取りでその件に触れてます)
もちろんゆんゆんとめぐみんは錬太郎とあるえの関係を知らないので、明らかになった後はどうなるのか…
アスラの嘘、アクシズ間の挨拶はパンツ丸見えを未だ錬太郎は信じてます
ザ・サンがネタキャラみたいに…どうしてこうなった
そしてウィズの仕入れた魔道具のせいで、謎の世界に飛ばされてしまった錬太郎とカズマ。

そこで出会った紅魔族の少女、紅蓮の錬金術師えみりんとは…
それはまた次回で…

次回予告
「Day Break〜暁のガッチャード〜」

えみりんの再登場は…

  • 早くていい
  • 運命の日までお預け
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。