この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを! 作:山田プロキオン
選択肢は二つ…絶望に甘んじるか、暁に染まるかだ…
錬金見聞録:未来ノ章『絶望から見出された希望』より一部抜粋
ウィズの魔道具によって見知らぬ世界へと飛ばされてしまった錬太郎とカズマ。散策の道中で出会っためぐみんそっくりの紅魔族の少女、えみりんと出会い、今は彼女が隠れ家にしているシェルターなるものに案内して貰っている。
「ここです」
えみりんが歩みを止めると、地面に一箇所だけバリケードを何重にも張り巡らされた場所に着いた。続いてえみりんは右手を前へと突き出して、念じるように瞳を閉じて錬金術の詠唱を行う。
「『下にあるものは上にあるもののごとく 上にあるものは下にあるもののごとく ただ一つたる 奇跡をなさん』」
刹那、一瞬にしてバリケードの封鎖が一時的に解かれ、落とし穴のような隠し通路が露わになった。
「さあ、ついてきてください」
そう言うとえみりんは穴の中へと飛び込む。カズマも彼女の後に続こうとしたが、連れの錬太郎が一向に来ないため、気になって後ろを振り返る。その錬太郎は何処か考え込むように下を向いていたため、カズマは彼に近寄って尋ねた。
「どうしたんだ錬太郎?俺たちもシェルターに向かおうぜ?」
「いや…えみりんって子…何処かで会ったような気がしてさ…」
「ん、そうか?俺はなんかめぐみんに似てるからそのせいだと思うんだが…」
カズマが錬太郎の既視感に対して自論を述べるが、錬太郎は首を左右に振って否定する。
「ううん、似ているって感覚じゃなくて…どこか昔出会った子と大きくなってまた再会したみたいな感じに近いというか…」
「う〜ん…まぁ今はいいだろ。えみりんを待たせておくのも悪いだろうからな」
「…そうだね」
錬太郎は未だ自身の中で渦巻く悶々としたものをそっと胸の内にしまい、カズマとともに隠し通路の中へと飛び込んだ。
重力に従うように下の方へと引き寄せられ、やがて地面へと着地する。
「よっ…と、うん?なんだこの地面⁉︎」
「なんだかトランポリンみたいな感じだね」
地面はえみりんの錬金術によるものか、液状かつ弾性を持ったものになっており、落下も安全にこなせるよう工夫が施されていた。そしてその先には辺りが岩で構成された細長い通路が続いており、奥の方には扉が備え付けられてある。恐らくそこでえみりんは待っているのだろう。
カズマと錬太郎は通路に沿って歩き、やがて扉の所へと辿り着き、その取手に手をかけて開扉した。
「すげぇ、秘密基地みたいだ…」
「空間錬成の応用か…」
2人の視界にはとても地下空間とは思えないような光景が広がっていた。
大きな机の上に無数に並べられたフラスコやビーカー、試験管をはじめとした実験器具のほか、量産された太い矢印の形を模した銃型の武器、上下に引き伸ばした矢印に似せた弓型の武器が壁にかけられており、さらに奥の方では大量のベッドで横たわる怪我人達を手当しているプリーストと思われる人達の姿があった。
「ようこそ、私達のアジトへ。ここでは生き残っている冒険者達や聖職者達、子供達を匿っていて、破壊活動を続ける者達に対抗するための拠点となっています。」
プリースト達と共に怪我人の様子を診ていたえみりんは、カズマと錬太郎が来たことを確認すると、2人のもとへ歩み寄り、地下施設の説明を始める。
食事用の場所や研究用スペース、風呂にトイレ、就寝場所など、地下とはいえかなり細かく部屋が分けられており、その充実っぷりに錬太郎とカズマは感嘆し、瞳を輝かせていた。
2人が興味津々に施設を見渡す一方、えみりんの方に1人の少年がやってきて、剣を手に持ち尋ね始めた。
「エミさん、この剣が刃こぼれしちゃって…直してもらっていいですか?」
「ええ、お安い御用ですよ」
少年から剣を貰い受けると、えみりんは鍛治スキルを用いて即座に剣の刃こぼれを修繕していく。
そして…
「『万物はこれなる一者の改造として生まれうく』」
錬金術の呪文を詠唱し、刀身の材質を特殊なものへと変換させた。
「はい、これで直りましたし、強度も倍にしたので、前より長持ちすると思いますよ」
「ありがとうございました、これで次の戦いも頑張れます!」
「ええ…どういたしまして…」
少年は笑顔で礼を言うと、支度をするためかその場を後にする。えみりんはその背中をどこか悲しみを帯びた瞳をしながら見送り、俯いてしまった。
「錬金術、とても高度だね」
えみりんは我に帰り、声がした方を振り返る。先程の錬成を錬太郎も見ていたらしく、えみりんの技量の高さに感服している様子だった。
ちなみにカズマは施設の子供達に囲まれて、その相手をしている。子供達と触れ合うカズマは、いつものように『しょうがないなぁ』と言いつつも、満更でもない様子だった。
錬太郎からの賞賛を、えみりん受け取らずに頭を左右に振る。
「いえ、私の錬金術なんて師匠には遠く及びません。この地下施設は師匠が錬成したものですし、さっきの鍛治スキルも、冒険者だった父のスキルを参照にして取得したものですから…」
「…お師匠さんとお父様?」
「はい…父は最弱職の冒険者ながら多彩なスキルを持ち合わせて状況に適応していましたし、師匠は錬金術師として誇り高く戦い続けました…ですが…」
えみりんはそこまで言うと続きは語らず、顔を顰めて自身の右人差し指のアルケミストリングをその瞳に捉える。
その目には後悔、悲しみ、怒りといった数多の負の感情が宿っており、錬太郎もこれ以上聞くのは野暮だと感じ、追及はしなかった。
2人の間に沈黙が訪れる。なんと気まずく、居心地の悪いことか。
そんな時、陰気臭い空気を壊すかのように、錬太郎の左肩に何かが飛び乗った。
「わっ、何だ⁉︎」
慌てて左肩のものを両手で捉えて胸のところまで持ってくると、その正体を確認する。
6本の脚に立派な触覚、額に刻まれた矢印に飛蝗のような容姿…
体色こそ炎のような真っ赤になっているものの、それは錬太郎がよく知る歴戦を共にした相棒と瓜二つだった。
『ホッパ〜!』
「ホッパー1⁉︎ホッパー1なのか⁉︎」
「あ〜、錬太郎すまん。子供達と一緒にソイツと遊んでたんだが、急にお前の方に行っちゃってさ…」
「そうなんだ…さぁ、子供達の方へ…」
『ホッパ、ホッパホー』
子供達のもとを一旦離れたカズマがやって来る。何故ホッパー1と瓜二つのケミーが存在するのか疑問を覚えつつも、錬太郎はカズマと共に子供達の所へと戻るよう赤いホッパー1に促す。しかしホッパー1は錬太郎から離れず、腕の中でモゾモゾと嬉しそうに体を動かす。どこか甘えるような仕草に錬太郎はくすぐったく感じながらも、優しく受け入れた。
しかし…
「うるさいですよ、静かにしてください…」
冷たく低い声が施設一帯に轟く。その声の主はえみりんで、錬太郎とカズマは驚いて彼女へ視線を向ける。それは施設にいた他の者達も例外ではない。まるでこのようなえみりんは初めて見たかのように皆目を丸くしていた。
そしてえみりんはブランクカードを取り出した。刹那、赤いホッパー1はカードの中へと吸い寄せられていく。
『ホッパ…パーーーー!』
抵抗虚しく、封印されてしまったホッパー1は、カードの中で力なく項垂れて落ち込んでいた。
そんなホッパー1の様子を気にすることなく左手のホルダーにカードを仕舞うと、えみりんは実験器具を手に取り、作業を始める。
「ねぇ、何でそんなことするの?ケミーは仲間、僕たちと同じ命ある存在だ。ちょっとはしゃいだくらいであんな扱いは…」
錬太郎はケミーに対する態度に思うところがあったのか、えみりんに声をかけた。対するえみりんは、錬太郎に鋭い視線を向けながら口火を切る。
「そんな甘いこと…言ってられる状況じゃないんですよ…その甘さのせいで貴方はあの日を最後に…私だって本当はこんなこと…」
言葉を紡ぐうちに作業する手を止め、遂には涙声になって俯いてしまうえみりん。最後の方は本当に小さい声だったため聞き取れた者はいなかった。
そんな彼女の様子に錬太郎は当惑したが、一つだけ確信を持った。
えみりんも自身と同じく、簡単に言葉で形容出来ないほど辛く、苦しい境遇でずっと生きてきたということ。
かけてあげる言葉が見つからない。またしても暗く重い空気が場を支配する。
「あの…えみりんさん、お話しても宜しいでしょうか…」
プリースト一人の鶴の一声によって漸く破られた静寂。えみりんはプリーストの方を向くと話に耳を傾ける。
「あ、はい。なんでしょうか…」
「実は食糧と回復用ポーションが不足してきておりまして…倉庫に取りに行こうにもドレッド達が大量にいますから迂闊に動くことができないので…その…」
えみりんは、プリーストの話の意図を汲み取った。どうにかして供給を保たねばならないということだろう。えみりんは優しく微笑みかけてプリーストへ伝える。
「わかりました、では私の分でやり繰りしましょう」
えみりんからの言葉にプリーストも花のように笑顔を咲かせる。しかし錬太郎はその会話を聞いてどこか不服そうにしていた。そして2人の間に入ると、一つ進言する。
「倉庫の場所は何処ですか?僕が取りに行きます」
錬太郎からの提案にプリーストとえみりんは喫驚した様子を見せる。
「え…地上に出て真っ直ぐ行ったところを左に曲がればありますけれど…そんな無謀ですよ」
「そうです!私の分でやり繰りすることにしたのですから、貴方が危険を冒す必要は「それじゃ駄目だ!」…へ?」
えみりんの弁明を遮り口を挟む錬太郎。呆けてしまったえみりんをよそに錬太郎は続ける。
「えみりんが妥協するってことは、諦めるのと一緒だ。その姿をこの場にいる人達に晒すということは、絶望を見せつけているようなもの…そうなったら、皆生きる未来を断念してしまいかねない…」
一度区切ると錬太郎はかつて味わった地獄のような日々を思い返す。
ロードにより自分と同じ苦しく、辛い境遇を強いられ、やがて命を落とした人々を目にしてきた、無力感しかなかったあの日々を…
「簡単じゃないことくらいわかってる…それでも、出来ることはやらなきゃ、だから行く!」
「あ、錬太郎!おい!」
錬太郎はカズマの呼び止めも聞かずに地上へと向かう。その背中を見送りながらカズマは後頭部を数回掻き、お決まりの口癖を漏らす。
「全く…しょうがねぇ奴だな〜。アイツ一人じゃ心配だし、俺も行くか…」
駆け出して行った錬太郎の後を追うことにするカズマ。子供達から離れ、錬太郎の通った道に沿って合流しようとするが…
「待ってください!私も行きます!」
えみりんが少しばかり大きな声でカズマを呼び止める。そして壁に架けられた矢印状の銃を一つ取ると、カズマヘ差し出した。
「来客の貴方方を守るのはここへ招いた私の義務です。危険に飛び込む様を見てみぬふりなど出来ません。ご同行させて頂きます。」
「わかった、そんじゃいくか!」
カズマの声を合図に、2人も地上へと向かって足を前へと進めたのだった。
その頃、プリーストに言われた通りのルートで、錬太郎は倉庫へと辿り着いた。
「あった…よし、これでなんとかなるな…」
錬太郎は倉庫へ近づき、扉の方へ手を伸ばす。
…その時だった。辺りから何かが接近しているのを感じ取った。それは自身へと向けられた、明確な殺気と敵意。
やがてその発生源となる者達が姿を現す。
列を組んで軍隊のように規則正しく足を動かして進軍し、黒い鎧に身を包み、銃を備えている。顔周りの鎧に関しては、何度か交戦したドレッド零式と完全に同一だ。
「ドレッド軍団か…でもなんで量産化してるんだ…とにかく今はそんなこと言ってる場合じゃないな!」
錬太郎はガッチャードライバーを腰に装着し、2枚のカードを取り出して装填する。
『バーニングネロ!』『ゴリラセンセイ!』
「変身!」
『ガッチャーーンコ!バーニングゴリラ!』
勇ましい声を轟かせる錬太郎を紅蓮の光が包み込み、その姿を戦士へと変え、やがて顕現させる。
熱い闘志を胸に宿し、真紅の拳を巨悪に振るう武闘派錬金戦士
ーー仮面ライダーガッチャード バーニングゴリラ
「さぁ、一気に行くぜ!」
ガッチャードは地面を蹴ってドレッド軍団目掛けて駆け出す。
普段よりも軽装備な脚部は、防御性能こそ低下しているものの、身軽なフットワークを可能にする。そのため、ドレッド軍団の銃乱射を踊りの舞子のようにひらひらと躱していき、徐々に肉薄していく。
「熱々をかますぜ!」
両腕に備えられた『ドラミングバーナー』で胸部を激しく叩くドラミングを行い、両拳が炎に染まる。
「くらえ、『
ガッチャードは弧を描くように、風を切って爆熱化した拳をドレッド軍団達へ叩きつけていく。止まることを知らず、勢いのままに繰り出される連撃になす術もなく、薙ぎ倒されていくドレッド軍団。
しかし、彼らもやられっぱなしで終わることはない。
新たにやって来た軍団は、先程のことを踏まえて一瞬のうちにガッチャードの周りを囲いんで、全方向から銃を向ける。
ガッチャードの視界は黒一色に染まり、無数の赤い目は自身を捕えて離さない。まさに袋の鼠…
「ちょっと不味いかな…」
仮面の下で、額に冷や汗をかく錬太郎。どうにかしてこの状況を脱しなければ確実に蜂の巣にされ、絶体絶命は免れない。ドレッド軍団の指がやがて、銃の引き金へとかけられる
「『狙撃』!!!」
前に何処からか無数の弾丸が飛ばされてきて、ドレッド軍団達を次々に撃ち抜いていった。ガッチャードが弾丸が飛んできた方向に目を向けるとそこには…
「よう錬太郎、どうだ?この前取得した狙撃スキルだ。幸運値も相まって上手くいったぜ!」
銃と思われる武器を手に持ったカズマと、赤いエクスガッチャリバーを持ったえみりんがいた。
カズマの用いた狙撃スキルは、使用者の幸運値に基づいて命中率が変動するため高い幸運値を誇る、そして初使用の武器も器用に使いこなすことのできるカズマとは相性がかなり良いのだ。
「ではこれを、カズマさんは向こう側のドレッド軍団をお願いします。私は反対側を対処するので…」
「おう、サンキューな」
カズマはえみりんから4枚の赤いカードを受け取ると、指定された方角に蔓延るドレッド軍団の所へと向かう。
「えっと…こうやるのか…」
カズマは渡されたカードを矢印形状の銃に備え付けられたカードスキャンエリアへ次々と読み込ませ、装填させていく。
『バレットバーン!』
『バンバンブー!』
『マケンタウロス!』
『インフェニックス!』
カードの力を解き放ち、銃口へエネルギーが集まっていく。カズマは自身のスキルを発動させて狙いを定めると、ドレッド軍団へ向けて引き金を引く。
「『狙撃』!!!」
『ガガガガッチャージバスター!!!』
放たれた弾丸は鳥のように変化し、流麗な軌道をしながらドレッド軍団へと迫り、その身を焼き尽くすように穿ち抜く。途中、何体か器用に回避する者もいたが、カズマの銃弾は一度狙った獲物は逃さない。
弾道を制御して途中で軌跡を変化させ、取り零したドレッド達を一網打尽にする。
「よし、片付いたな!」
カズマの付近にいたドレッド達は一掃され、その様子にえみりんは安堵のため息を漏らす。そして気を取り直すと目の前の敵を見据えた。
「あちらは大丈夫なようですね。さて、私も全力でいくとしますか…」
右手に赤いエクスガッチャリバー、左手に杖を手に持ち、えみりんは戦闘体勢へ移る。
ドレッド軍団の銃乱射を華麗に躱し、時に斬撃によって無効化しながら、杖を構えて魔法による攻撃を放つ。
「『ファイアーボール』!!!」
放たれた火球はえみりんを取り囲むように出現し、何発か銃弾を防いだ後、ドレッド達に照準を定めて踊り舞う。火球をその身に受け、ドレッド達は、全身を焼き尽くされ、もがき苦しみながら次々に倒れ伏していく。敵の数が減っていって尚、えみりんは攻撃の手を緩めることはない。
「次はこれです!」
赤いエクスガッチャリバーに1枚の真紅のケミーカードを装填し、八双の構えをとって、一閃を繰り出す。
『ザ・サン!ストラッシュ!』
太陽の表面温度と同等の光刃を顕現させると、ドレッド軍団めがけて一瞬のうちに乱射する。瞬く間に光刃がドレッド達の肉体を貫き、威力に耐えられなかったドレッド達は爆発四散するのだった。
「ほえ〜、凄いや…」
カズマとえみりん、2人の無双っぷりに感嘆するガッチャード。自身のスキルとケミー達の力を合わせて剣が峰に立たされた状況を覆すとは…
「さぁ、倉庫の物品を回収して戻りましょう」
えみりんの声を合図に、3人は今度こそ倉庫に向かう。しかし一難去ってまた一難という言葉の通り、このままで終わるドレッド軍団ではなかった。
「ほう…まさかドレットルーパー隊がいとも簡単に倒されるとはな…」
3人は声のした背後を振り返る。そこには黄色のローブに身を包み、能面のような感情の読み取ることの出来ない仮面をつけた者が1人。声の高さから推測するに女性だろう。
「ローブに仮面…ということは、アンタはネガマスクか?」
「いかにも、私は暗黒のネガマスクが1人…その名をジャンヌ」
ガッチャードの問いに淡々とした様子で答えるジャンヌと名乗るネガマスク。そして仮面を外してその面様が露わになる。
ローブのフードから所々見える金髪、そしてサファイアを彷彿とさせる碧眼。口調こそ若干違えど、そこにいたのはカズマも錬太郎もよく知る女性である…
「嘘だろ…ダクネスが…」
「どうして…」
予想外の正体にカズマとガッチャードは動揺を隠せない。困惑する2人を気にも留めず、ジャンヌはドレッドライバーを取り出して腰に装着すると2枚のレプリケミーカードを取り出し、ヴェヴェルセッターにスラッシュリードした後に、後方のスロットへと装填する。
『スチームライナー…』
『ユニコン…』
不気味な待機音が鼓膜を揺らす中、レバーであるネクベトヴォークを展開し、ジャンヌは右手で右目を隠しながら低い声で呟く。
「変身…」
刹那、ドレッドライバーからレプリスチームライナーとレプリユニコンが飛び出す。黒い霧のようなものに染まった骨がレプリユニコンを強制的に鎧の形に変えて全身に纏わりつき、姿が変わる。
純白の一角獣の鎧を右半身に武装した美しくも禍々しい破壊者
ーー仮面ライダードレッド壱式の誕生である。
「なんだかさっきまでの奴とは違った感じだな…」
「うん…背中がゾワゾワしてきたよ…」
今までの相手よりも群を抜いて強い。そう本能的に告げている。ジャンヌのドレッドは堂々と立ち、威厳すら感じる。その姿が余計に戦慄を誘うのだが、ガッチャードは思い切って脚を前に出し、直様必殺技を放つ。
『バーニングゴリラ!フィーバー!』
「先手必勝だ!極限胸熱拳!」
ガッチャードは数万度にもなる熱を拳へ纏わせて、ドレッドへ向かって打ち込む。その威力に衝撃波が発生し、場の空気を強く揺らす。
が…
「効かぬな…」
ドレッドは変わらず堂々とした様子でたちずさんでいる。そしてネクベトヴォークを操作して、お返しとばかりに反撃の必殺技を放った。
『ドレッドブレイキング…』
レイピア型の武器であるブラッディーUCを力強く振るい、一瞬にしてガッチャードを吹き飛ばす。強靭な腕力から繰り出されたその斬撃にガッチャードは遠くまで飛ばされて、地面に強く衝突した。
「錬太郎!クソッ!」
友の身を案じ、銃を構えて攻撃へと移るカズマ。しかし…
「させぬ…」
『ディープマリナー…ドレイン』
ドレッドはレプリディープマリナーの力を絞り出し、カズマの足元を沼のように変えて捕縛する。
「なっ、テメェ!」
「貴様は最後に取っておく…先ずはあの小娘からだ…」
ドレッドはえみりんをその複眼で捉えると、瞬く間に接近し、その華奢な身体へ拳を打ち込む。
「うっ…」
「この程度か…興醒めだ…」
打撃に苦しむえみりんを大層つまらなそうに一瞥すると、ドレッドは彼女を地面へと叩きつけ、その後足で踏みつける。肺を圧迫され、えみりんは苦しみ、咳き込む。
「大したことないな…貴様の父母や師はそこそこ骨があったが…よもや後継者がこんな虫けらだとは…その程度の技量で我々に歯向かうなど甚だ図々しい」
容赦のない言葉の刃。それはえみりんの心を深く抉るには十分だった。いなくなった皆の分まで頑張ってきた…その日々を無駄と一蹴されるなど齢13ほどの少女には耐え難いことだった。
「パパ…ママ…師匠…ごめんなさい…やっぱり私じゃ…」
一筋の涙を流し、掠れゆく声で謝罪しながらやがてえみりんは意識を手放す。
ドレッドは彼女目掛けてブラッディーUCを逆手持ちしてその針のように鋭利な刃を向ける。
そして彼女を刺し貫かんと勢いよくレイピアを振り下ろした…
「な、何だと…」
レイピアがえみりんを貫くことはなかった。ギリギリの所で駆けつけた錬太郎がエクスガッチャリバーでブラッディーUCを弾いたのだ。
さらに錬太郎は回し蹴りを繰り出してドレッドを後退させる。
「おのれ…まずは貴様からあの世に送ってやる…」
『ドレッドブレイキング…』
ネクベトヴォークを展開し、再度必殺技を放つドレッド。しかしこの攻撃も防がれる。
赤いケミーカード達が、えみりんのホルダーに収まっていたケミー達が錬太郎を守護したのだ。
錬太郎は漸く面を上げると、一言、怒りを滲ませた声色で告げる。
「許さない…」
刹那、辺りの空気が一瞬にして張り詰め、錬太郎を中心に引き寄せられていく。そして空気とともに赤いケミーカードも錬太郎のガッチャードライバーへと吸い寄せられていき、1枚、2枚、そして遂に100枚と取り込まれ、眩い光とともにベルトの色が変化した。
橙色の部位が紅に、そして正面に装飾された二対の黄色の矢印は金色へと染まっている。
光の消えた瞳でドレッドを捉える錬太郎は、徐に2枚のカードを取り出してベルトへと装填する。
『ホッパー1!』
『スチームライナー!』
両手で円を描いた後に両手を重ね、その手を反転させると、矢印の先端を形作って正面に突き出し、その後ベルトのレバーを操作した。
「変身…」
『ガッチャーーンコ!スチームホッパー!』
暁の炎が錬太郎の全身を包み込み、その姿を変化させていく。その姿はガッチャード スチームホッパーと遜色ないが、色が群青から暁へと変わっていた。
「な、なんだその姿は⁉︎」
見たこともないガッチャードの姿にドレッドは狼狽する。ガッチャードはその問いに答えはせず、無言でエクスガッチャリバーの斬撃を飛ばし、ドレッドへと命中させた。
「なっ⁉︎…ぐっ…貴様!」
その一撃は、ドレッドに膝をつかせた。身を焼き尽くすような炎の如き斬撃はさしものドレッドであっても完全に無効化することは出来なかった。
「えみりんは…命をかけて皆の盾となって戦ってきた…そんな彼女を虫けらだと?…お前だけは…お前だけは泣いて謝ったって絶対に許さない!」
絶望の未来に一筋の光を照らす戦士
ーーガッチャードデイブレイクは1人の少女と彼女の背負う全てをかけて、ドレッドへ刃を向けるのだった。
お久しぶりです、山田です。
風邪と怪我で死にかけてました…
今回は未来世界での錬太郎、カズマ、えみりんとの絡みを描きました。
食糧、回復用ポーション不足の際のやり取りは、錬太郎の今までの人生経験に基づくものです。
彼も旅の中で、ロードによって苦しい生活を余儀なくされた人々を知っており、その人達の死も幾度となく目の当たりにしてきたからこそ、あのような発言をしたわけです。
敵の方からはララティーナ嬢そっくりのネガマスク、ジャンヌが登場
名前の由来はジャンヌ・ダルクから
そして、まさかまさかのデイブレイク参戦!
タイトルで察した方もいると思いますが、誰が変身するかまでは予測できなかったのではないでしょうか?
因みに今回のデイブレイクは未来のケミー達と錬太郎による一時的な奇跡みたいなものなので、現代に帰ったらまた元のガッチャードに戻ります。
本格的な戦闘はまた次回で
未来時空の設定についての質問等ございましたら、ネタバレにならない範囲でこちらの方でお答えします。↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=319965&uid=466601
えみりんの再登場は…
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早くていい
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運命の日までお預け