この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

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デイブレイク、初陣です


絶望の夜明け/希望は過去に

「お前だけは…泣いて謝ったって絶対に許さない…」

 

 怒りに燃える闘志を胸に秘め、暁の錬金戦士、ガッチャードデイブレクはその青碧の複眼でただ一人の対敵を捉える。 

 相対するは暗黒のネガマスクが一柱、ジャンヌが変身せしドレッド壱式。暁の戦士の威圧に若干押されるものの、すぐに気を取り持ち、レイピア型の武装であるブラッディーUCを両手で握り締める。

 静寂の中、互いの出方を窺う両者。

次の瞬間、双方武器を構え、同時に地面を蹴って雄叫びを上げながら肉薄する。

 

「ウオオオオオオオオオオ!!!!」

 

「ハァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 エクスガッチャリバー、ブラッディーUCが幾度となく交わり、その都度火花を散らす。瞬きする間に鈍い金属音が何度も響きわたり、同時に場の空気を強く振動させる。先程圧倒されていたのが嘘かのようにガッチャードデイブレイクはドレッド壱式の剣撃に喰らい付いている。ドレッドも相手の急激な戦闘力の上昇に対して、態度に出してこそいないが、内心驚いていた。

 

 一歩として退かない両者。途方もなく感じられた打ち合いは、暁の戦士が競り勝った。

 

「デヤァァァァ!」

 

「グッ⁉︎」

 

 一瞬ドレッドが生んだ隙。ブラッディーUCで一時だけ受けの姿勢を取ったのだ。しかし僅かな瞬間でも、ガッチャードデイブレイクが猛攻を仕掛けるには十分過ぎる程である。縦横無尽に繰り出される荒々しい斬撃は、予測不能の軌跡で容赦なくドレッドを襲い、装甲に傷を付けていく。

 ドレッド壱式の装甲は決して軟いものではない。零式時代から引き継がれている強固な骨格と超耐圧構造を持つ『ライダゴレム』に、右半身に武装された壱式専用の『モノケウロ』によって攻撃を受け流せるようにもなっている。

 にも関わらずである。この暁の戦士、そんな耐性知らぬとばかりにドレッドの防御網をいとも簡単に貫通し、大ダメージを与えてきている。

 

「(普通に攻めては勝機なしと見た…)」

 

 ジャンヌの勘が告げている。正攻法で立ち回ることは不可であると。となると、対抗できるのはレプリケミーの力を抽出して放つ特殊攻撃である。

 そんなドレッドの思惑などいざ知らず、ガッチャードデイブレイクはこの一撃で決着をつけるとエクスガッチャリバーに特大のエネルギーを纏わせた横一閃を放つ。

 

「クッ…危なかった…だがこれで…」

 

「⁉︎⁉︎⁉︎」

 

 間一髪、その言葉が状況を説明するには適切であろう。結論から言うとガッチャードの斬撃はドレッドに命中せず、空を切った。ドレッドは刃が迫る直前、咄嗟に体を反って攻撃を回避したのだ。敵ながら、舌を巻くほどの反射神経である。

 その一瞬、ドレッドは自身のベルトに4枚のレプリケミーカードをスラッシュリードし、コンススティラーに次々と装填していく。

 

『ツッパリヘビー…ドレイン…』

 

『ジャマタノオロチ…ドレイン…』

 

『ギガバハム…ドレイン…』

 

『バグレシア…ドレイン…』

 

 全てのカードを読み込み終えると、ネクベトヴォークを操作して、ドレッドは秘めた力を解き放つ。

 

『ブラッドサクリファイス…』

 

 刹那、黒く禍々しいエネルギーがドレッドを包み込み、その中心に竜巻が発生する。

 

「一旦離れないとまずいか…」

 

 ガッチャードは冷静に分析し、倒れていたえみりんと、レプリディープマリナーの力で捕縛されていたところを助けたカズマを両脇に抱え込んで、距離を取る。

空気が竜巻の元へと集まっており、ただならぬ威圧感を発しているとガッチャードは感じていた。ここからは、第2ラウンドなのだと…

 

 程なくして竜巻が退き去り、ドレッドの姿が露わになる。

 

見上げる程の巨体は勿論、下半身が巨大なラフレシアの花と化していて、さらにその花の下から無数の竜と蛇を模した首が現れているという、なんとも禍々しく怪物のような形態となっていた。

 

「ハハハハハハハハ!これで貴様らに勝利は万に一つもないわ!!!」

 

「おい錬太郎…なんだよアレ…」

 

「笑えないね…冗談抜きで…」

 

 高揚し、高笑いをあげるドレッド。下半身の首達は、その口腔から青白い光線を放ち、ガッチャード達を襲う。

 

「…ッ!」

 

 手慣れた身のこなしでなんとか攻撃を掻い潜るガッチャード。しかし両脇に二人抱えているのもあって、機動力はとてもいいとは言えず、回避速度も徐々に落ち始めていた。対するドレッドの攻撃の速度、勢いは上昇し、一瞬の油断や躊躇も許しはせず、追加で下半身を覆っている花の花弁も撒き散らす。

ガッチャードはその花弁を目の前にして、本能的に悟った。これは触れれば爆発すると。そのことを念頭に置きながら、両脇のカズマ、えみりんのことを考慮して回避するのだから小回りも効きづらくなってくるのは、必然的、至極当然。

 

「バカめ!遠距離だけの攻撃を警戒しおって!」

 

 ドレッドは蛇の首を伸ばしてガッチャード達に迫る。光線や花弁に気を取られていたため予想外の攻撃にガッチャードは当惑する。このままでは攻撃の直撃は免れない。

 

「(どうする?2人を放り投げて迎撃するのは論外だ。となると、2人を庇うようにして僕が盾になるしか…やってやる!それしか方法はない)」

 

 もののコンマ数秒の内に考えを纏め、覚悟を決めるガッチャード。すぐさま前に出て両手を広げ、カズマとえみりんを守る壁となるべく仁王立ちとなる。

 既に目前まで迫り来る龍頭。その瞳に捉えるは獲物である三者。仕留めたり、とばかりに鋭い牙を備えた大きな口を開ける。

 

 

 その刹那、龍頭は吹き飛ばされた。大きな魔法陣より展開され、鼓膜をつんざくほどの轟音を響かせる爆発とともに。

 

「な、何だと⁉︎」

 

「これは…」

 

この事態にはドレッド、並びにガッチャードとカズマも驚愕の表情になる。ただ、カズマだけは先程の爆発に既視感を覚えた。パーティーメンバーの一人である爆裂狂の日課で何度も目の当たりにしてきた、人類が行える中で最も威力のある攻撃手段でありネタ魔法でもある…

 

「爆裂魔法…⁉︎」

 

 しかしこの場に爆裂魔法を放てる者などいない。可能性のあるえみりんも今は気絶したまま。その後再び爆裂魔法が発生し、戦場を振動させる。しかも今度は二方向からドレッドを襲った。

 

「鬱陶しい爆裂魔法め…どこだ…誰の仕業だ!」

 

 ドレッドは正体不明の攻撃に痺れを切らし、ガッチャード達そっちのけで暴れ回る。

 

「今のうちに…」

 

 ガッチャードはカズマとえみりんを連れて、一旦その場を後にして安全な場所へと移る。そしてえみりんをカズマに任せることにした。

 

「じゃあカズマ、行ってくる。えみりんをお願いね」

 

「ああ。錬太郎、あとこれを…」

 

 ガッチャードはカズマから武器を2つ手渡される。1つはカズマも使っていた銃、そしてもう1つは、上下に引き伸ばした矢印に似せた弓型の武器だった。

 

「えみりんのことは任せとけ、絶対に戻ってこいよ」

 

「ああ…」

 

 託された武器を両手に、ガッチャードは再び戦場へと舞い戻ったのだった。

 

 

 

 

 

「ええい、どこだ⁉︎何処から攻撃を仕掛けている⁉︎」

 

 今尚爆裂魔法による攻撃を行っている者を見つけることの出来ていないドレッドは怒りを剥き出しにして暴れ回っていた。巨体故に当てやすい的なのか、爆裂魔法が放たれてはドレッドを容赦なく襲っていた。

 

「よし、反撃開始だ…」

 

 ガッチャードデイブレイクが戦地へ戻ってくると、時間稼ぎは終えたとばかりに爆裂魔法は収まった。

 

「ハァハァ、漸く終わったか…ん、ガッチャード…丁度いい…今私は頗る機嫌が悪い!憂さ晴らしに付き合ってもらうぞォォォォォォ!」

 

八つ当たりとばかりに龍頭を使役し、ガッチャードへ攻撃を仕掛けるドレッド。

対するガッチャードは落ち着いた様子で、右手に持つ弓型の武器、「ガッチャートルネード」を地面へと突き刺す。

そして左腕の「ガッチャードローホルダー」を展開し、98枚もの赤いケミーカードである「デイブレクケミーカード」を空中で羅列させる。

その中から「デイブレクアッパレブシドー」、「デイブレイクバレットバーン」の2枚を選択すると、デイブレイクアッパレブシドーをガッチャートルネードへ、デイブレイクバレットバーンをカズマも使っていた「ガッチャージガン」へ装填し、迎撃体勢に入った。

 

『バレットバーン!』

 

『ケミーセット!』

 

 カードを装填した瞬間、ドレッドの龍頭から光線が放たれる。ガッチャードは地面からガッチャートルネードを引き抜いて、余裕そうに光線を弾いた。

これだけでは終わらないと、龍頭はガッチャード目掛けて激突を繰り出す。しかし…

 

『ガッチャージバスター!』

 

これも臆することなくガッチャージガンで乱射して牽制するガッチャード。なんとかして銃弾を掻い潜り突進する龍頭だが、華麗なバックステップでガッチャードは回避する。そして…

 

「ハァァァァァァァ!」

 

瞬きする間に、デイブレイクケミーによって研ぎ澄まされたガッチャートルネードの刃で龍頭を斬り落とす。余りの威力の高さに、切断された頭は爆散して灰燼に帰す。その後も次々と龍頭を対処していき、残るは一本のみとなった。

 

「これで最後だ!」

 

 構えられたガッチャートルネードから、最後の龍頭を標的に、強力な赤い一閃が猛々しい声と共に放たれた。

 

『ケミースラッシュ!』

 

「ウオリャアアアァァァァ!!!」

 

 遂に全て龍頭が撃墜され、残るは丸裸となったドレッドだけだ。

 

「チェックメイトだ…」

 

 ガッチャードはベルトのレバーを操作して必殺体勢に入る。その刹那、姿を火の玉へと変え、電光石火の如き速さでドレッドの背後ヘと回る。

そして空中で再び人型に戻ると、ドレッドへ狙いを定めて右足を突き出し、蹴りの姿勢となってそのまま一気に迫った。

 

『スチームホッパー!フィーバー!』

 

「ハァァァァァァァ!!!!」

 

 光速に匹敵するスピードで、須臾にしてドレッドを蹴り貫く。あまりにも一瞬の出来事にドレッドも自身が攻撃を受けたことを把握出来ていなかった。しかし後から全身を刺激する痛みによって、漸く自身の敗北に気づいた。

 

「バカ…な…この私…が…ァァァァァァァァ!!!」

 

負け惜しみとも取れる言葉を放ちながら、威力の高さ故に発生した衝撃波と共に、爆発四散したのだった。

 

 戦闘が終わり、ガッチャードは変身解除して錬太郎の姿へと戻る。すると、彼の健闘を讃えるかのように赤と緑、二匹の蝶がやって来た。

 

「ん?君達は…」

 

 錬太郎が右人差し指を出すと、蝶達は休憩とばかりにその指にとまる。

何故だろうか…先程自分達を守ってくれた爆裂魔法…直感ではあるが、この2匹が放ってくれたのでは、とあり得もしない考えが錬太郎の脳内を巡る。でも、もしかしたら本当に…

 

「あ、そうだった!カズマとえみりんの所に行かなきゃ!」

 

 錬太郎は思い出したとばかりに駆け出し、その場を後にする。

二匹の蝶は、また並んで仲良く羽ばたき、何処へと姿を消したのだった。

 

 

 

「おーい、カズマ。終わったよ…ってえ⁉︎どうしたの⁉︎そんな顔腫らして⁉︎」

 

 

「よ、よう錬太郎…じ、実はな…」

 

「全く!眠っている私を襲おうとするなんて!流石は鬼畜と名高いサトウカズマさんですね!」

 

「だぁァァァァ!違う、誤解だァァァァ!」

 

 えみりんは腕を組んで大層ご立腹とばかりに愚痴を溢す。そして最後に…

 

「師匠からこれを戯れとしていたと聞く限り、母も相当感覚麻痺してたんでしょうね…」

 

誰にも聞こえない声で、そう綴ったのだった。

 

 

 

 

 戦闘が終わり、3人は地下施設へと戻り、食糧や回復用ポーションを持ち帰った。地下にいた人々は、帰還を奇跡とばかりに皆泣いて喜んだ。その後、皆で食卓を囲み、食事を楽しんだ後、各自入浴して就寝となった。

ただ…

 

「う〜ん、眠れないや…」

 

 錬太郎は、いつもに比べて中々寝付けず、気まぐれで広間の方へと向かった。

 

「あれ?えみりん」

 

「ふぇ⁉︎ししょ…いえ、レンタロウさんでしたか…」

 

広間のテーブルにえみりんがいた。どうやら彼女も寝付けなかったようだ。テーブルには資料や実験器具が散乱しており、夜遅くにも関わらず作業をしていたのだろう。

 錬太郎はキッチンへ向かうと、紅茶を二つ淹れ、労いの意を込めて一つえみりんへ送った。

 

「はい、お仕事お疲れ様」

 

「ありがとうございます、すみませんわざわざ…今日も助けられてしまいましたし、ずっと迷惑かけて…」

 

「迷惑なんかじゃないよ。これが僕の性分だし…」

 

 えみりんと対面式にテーブルに座る錬太郎。他愛もない会話をして、紅茶を口へ運ぶ二人。そして一口飲んだ後、ほうっと息を吐く音が重なる。二人は思わず顔を見合わせ、その後くすくすと笑い合った。

 

「なんだか、貴方といると師匠と過ごした日々を思い出します」

 

「お師匠さん?」

 

「ええ、師匠も貴方のように他者に手を差し伸べて、救える者は全て救おうと努力してました。父母がいなくなった後も私の面倒をずっと見てくださったり、ケミー達との絆を大切にしたりと尊敬するところを上げればキリがありません…そんな師匠の、いえ、父母の背中も私には荷が重いのかもしれません…今朝だって、ホッパー1に八つ当たりしてしまいましたし…」

 

 えみりんは自身の右人差し指のアルケミストリングを見つめて呟き、やがて俯く。自分自身に不甲斐なさを感じているのか、その瞳は悔しさと怒りの色をしていた。そんなえみりんに錬太郎は告げる。

 

「君も…重いものを背負ったんだね…でも、わかっているんだったら後は行動するだけだ!今の自分が嫌なら、その自分に打ち勝とうとする心、そして行動が出来れば変わることはきっとできるさ。最初は絶対に辛く、苦しい…それでも覚悟を決めて、進まなきゃいけないんだ。覚悟を決めたその先に、希望があるんだよ!」

 

 錬太郎の言葉にえみりんは顔を上げる。嗚呼、そうだ。この人はそういう人だ。何度折れそうになっても今を必死に生きる人々のために人生を捧げ駆け抜けてきた…紛れもない、時代が違えど彼は自分の師匠なのだと…

 

「やっぱり、昔から師匠は師匠だったんですね…」

 

「ん、何?」

 

「いえ、ちょっとした独り言です…それと、隣失礼しますね」

 

えみりんは錬太郎の右隣へと席を移動する。そして、自身の右手を錬太郎の左手の上に重ねた。

 

「え⁉︎ちょっと流石にこれは…」

 

「お願いです…少しだけこのままでいさせてください…」

 

「…わかった」

 

 錬太郎も年頃の男の子。歳の近い女の子の手を触れるなどそれなりに理性が削られる。しかしながら、自身の手に触れるえみりんの顔がどこか幸せそうに見えたので、少しくらいは…と甘んじて許諾することにした。

 

 どれくらいの時間が経ったのだろうか、少しと言いつつ、未だ手は重ねられたまま。手をどかしてくれと言うのはあまりに無神経である。どうしようかと悩んだ末、普通の会話を切り出してその後うまい感じに手を退かして貰おう、そう錬太郎は思いついた。

 

「あ、あのさぁ、えみりん。少し聞きたいんだけど、赤いケミー達は君が錬成して生み出したの?あとドレッドが量産化してたのは悪い錬金術師達…って違う!なんで暗い話題をするんだ!ごめんね…えみりん…えみりん?」

 

 会話の切り出し方が本当に下手くそな錬太郎。自分自身も気づいたのか頭を抱える。重い話題になってしまったことをえみりんに謝罪するが、不思議なことに彼女の返答はない。それもそのはず。

 

「すぅ…すぅ…」

 

 可愛らしい寝息をたてながらすっかり眠ってしまっていたのだ。幸せそうな寝顔は何処か錬太郎を安心させ、先程勝手に気まずくなっていたことも忘れさせるほどだった。

 

 錬太郎は一旦その場を離れると、自身のローブを持ってきてえみりんに被せる。そして頭を撫でて言った。

 

「おやすみ、えみりん」

 

 その後、錬太郎もえみりんを見守りながらその場で寝落ちしてしまうのだった。

 

 

 

 

「おいカズマ、錬太郎!ギルドの入り口で何で寝てんだ?」

 

 男性の声が眠っているカズマと錬太郎の鼓膜を揺らす。声からしてダストだろう。2人は揃って伸びをして重い瞼を擦る。辺りを見回すと、えみりんと出会った荒廃した土地ではない。馴染みのあるいつものアクセルの街だった。

 

「あ〜、戻ってきたってことでいいのか?」

 

「多分そうだろうね、ウィズさんが一日頑張れって言ってたから魔道具の効き目が切れたんだろうね。じゃあ先ずは、ゆんゆん達に帰還を知らせないとね、きっと皆心配してるだろうから」

 

 錬太郎は自身のケミーライザーを操作してメッセージを送る。その後、ギルドに集合したのだが、アクアとめぐみん、ダクネスはカズマの元に集まって帰還を祝福し、ゆんゆんは目に涙を溜めながら錬太郎に飛びついたのだった。

 

 

 

 

 

未来の世界

 地下施設にて、えみりんは一人、机の上に大量の資料本を積み上げて一冊一冊読み漁っていた。何時間もずっとこの作業に徹していたのか、目元には隈ができており、何度か船を漕ぐこともあったが、なんとか気を取り持っていた。

そして…

 

「そうか…これが運命の日、全てが狂い出した瞬間…」

 

 えみりんは小さな手に収まった分厚い本をパタンと音を立てて閉じる。その後地上に出てはデイブレクスマホーンを顕現させ、いくつかメモを記した後、再びカードへと戻した。

 

「師匠達は過去からこの時代に来た…私もタイムロードの力を借りれば時を超えて移動することが出来る…ですが…」

 

 えみりんは左腕のホルダーからデイブレイクタイムロードの封印されたカードを取り出す。タイムロードの時間移動は確かに過去へと飛ぶことは出来るものの、例え過去を変えたとしても新たな時間軸を生み出すだけで、未来に影響を及ぼすことはない。そのことはえみりんも知っていた。そんな中、デイブレイクタイムロードは彼女がやろうとしていることについて大体の察しがついていた。そのあまりにも大胆すぎる作戦に思わず不安の声を漏らす。

 

『タイムロード…』

 

「取り戻すことが出来ないなら…失わないようにすればいいんです、そのためなら…悪魔とだって手を組んでやりますよ!だから、待っていてください…みんな」

 

 独り言を終え、顔を上がるえみりん。その瞳は昨日よりも決意や信念の籠った力強いものだった。

 

その様子を遠くから眺める緑の蝶と赤の蝶がいたそうな…

 

 暫くしてデイブレクワープテラの力を使って、えみりんはとある場所へとやって来た。年季の入ったボロボロでつたの生い茂った小屋のような場所であったが、それはウィズの魔道具店だった。

 取っ手に手をかけて扉を開く。昔よりも錆びてしまった鈴が少しばかり重やかな音を響かせて来客の到来を店主へと告げる。

 奥からやって来たウィズは、少々警戒していたようだったが、相手がえみりんだと分かると直ぐに穏やかに迎い入れた。

 

「いらっしゃいませ、えみりんさん。今日はどのようなご用件で?」

 

 ウィズが前と違ってショートヘアにしているためか、一瞬えみりんも誰だかわからず戸惑った様子だったが、直ぐに気を取り直してウィズに話をする。

 

「ウィズさん、バニルさんと一緒に案内して欲しい場所があるのですが…」

 

 

 

 

 

一方その頃、天界では…

 

「エリスちゃ〜ん、なんか時空に一瞬歪みが生まれたみたいだからその報告書お願いね、じゃあ私アテナちゃん、アフロディテちゃん、ティアマトちゃんと焼肉パーティー行ってくるから〜」

 

「ええっ⁉︎また報告書ですか⁉︎ちょっとは手伝ってくださいよアポロスせんぱ〜い!」




取り敢えず未来編:序、完結。
えみりんの正体、もうお気づきかと思いますが、16話にて登場したエミが成長した姿です。
なんか後半錬太郎と甘酸っぱい感じになっていましたが、あくまで親愛に近いものであり、えみりんに恋愛感情は今のところありません
未来世界において長い間えみりんの面倒見てたの錬太郎ですからね
再登場についてですが、意外と早かったり遅かったり…悩ましいところです。
えみりんの言う運命の日とはいつなのやら…
最後に仮面大佐様の白狐の世界の女神様達の名前も出ましたが…そこはまたお楽しみということで…

次回は幽霊屋敷編です

次回予告
「窓なぁい!扉もなぁい!秘密の幕開け」

えみりんというか、未来編の状況はここじゃ収まりきらないので活動報告のところで詳細は記しておきました

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=320175&uid=466601

えみりんの再登場は…

  • 早くていい
  • 運命の日までお預け
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