この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを! 作:山田プロキオン
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今日も天界は平和だ。住人の一人であり、水の女神であるアクアに負けず劣らずの自由奔放っぷりを見せる太陽の女神のアポロスは、仕事を終えると自身の能力で並行世界の天界へ通じるゲートを作り出し、アテナ、アフロディテ、ティアマトといった女神達を召集し、焼肉パーティーを楽しんだのだった。
「ふぅ〜、食った食った〜」
女神としての気品など一切感じられないような言葉遣いで、腹をさすりながら満足気に帰路につくアポロス。ふと立ち寄った天界にある神殿の椅子に誰かが腰掛けているのを見つけた。
銀髪碧眼の容姿に、白い服で全身を包んでいる少年。否、少年と呼ぶには貫禄ある顔つきで、見た目の割に数多の修羅場を駆け抜けてきたかのように見える。
アポロスはどうやら彼とは面識があるようで、少しばかりちょっかいをかけてやろうと考えた。
「あー…来てたんだ、よし!声かけちゃお」
抜き足、差し足、忍び足。気づかれないようこっそりと近づくアポロス。そして少年の真後ろに迫り肩を叩こうと手を伸ばしたのだが…
「何か用?アポロス」
突然少年は声を掛ける。アポロスは驚きで体を震わせた後、恐る恐る尋ねた。
「えっと〜、いつから気づいてたの?」
「お前が神殿近くにやってきた時」
「最初からバレてたんじゃないか⁉︎」
アポロスは、顔を真っ赤にして地団駄を踏む。その様子を見て、少年は頬を緩ませて笑いながら言った。
「俺を化かそうなんざ…2万年早いぜ?」
少年は右手で狐を作ってアポロスへ見せる。対するアポロスは悔しそうな色のじっとりとした瞳で少年を見据えていた。
「てゆ〜か、アテナちゃんが来たのに何で君は来なかったのさ?もしかして他に気がある人がいるとか?愛しい彼女さんを野放しにしておくなんて、隅におけないなぁ〜」
しかし、流石アクアに並ぶ自由奔放な女神アポロス。すぐに調子を戻してフランクな感じで再び少年に話しかける。少年はほんのり顔を紅くして答える。
「…まぁ。ていうかゆんゆんとリアも愛することにしたのはトウカ…アテナも承知の上だったんだぞ…」
「たっはぁ〜、モテる男は辛いねぇ〜!!」
少年の返答にわざとらしく大きな声で揶揄い、少年の背中をバシバシと叩くアポロス。その時神殿には2人しかいなかったから良かったものの、もし誰かがこの場にいて、会話を聞かれでもしたら、少年は羞恥のあまり身悶えしていたことだろう。
「まぁ、それは置いといて…」
「おい、俺に恥ずかしい思いさせといて話題転換か?」
「君が来るなんて珍しい、こちらの天界に何かを伝えにきたんだろう?」
お調子者のような様子から一変。真剣な顔つきになってアポロスは尋ねる。対する少年も、淡々として話し始める。
「ああ、最近こちらの世界で、一瞬だけど時空に大きな歪みが生まれたような気がしてさ…」
「ん?それならエリスちゃんに始末書やらせて解決したけど?」
「なんだか軽いな…気配から地獄の公爵レベルの悪魔が関与している可能性があるんだが…」
「えー、悪魔関わってんの?やーだ、絶対めんどくさーい」
少年の報告が自身の事務にこれから影響を及ぼすと感じ、駄々をこねるアポロス。先程の真面目そうな様子はどうしたのやら…。これには少年も呆れた様子だった。
「とはいえ、仮にも女神なんだから頭に入れとけよ。手遅れにならないよう忠告してやったんだから」
「むぅ、わかったわよ。なんとかするわ…あ、せっかくだから君も手伝って…」
「ごめん、別の世界で用事があるから…そっちの世界のガッチャード達のことは任せたぞ」
少年はアポロスの提案を最後まで聞かずに遮り、ワープホールを作り出すと、その中へ消えてしまった。
1人残されたアポロスは不満そうに愚痴を溢す。
「まったく、手伝ってくれてもいいのに…
でもいいわね〜、あのアテナちゃんが首ったけなんて。
恋って女神も変えちゃうのね〜、私も少し君のことが気になっちゃったかも…
「悪くないわ!女神たるこの私が住むのに相応しい屋敷だわ!」
錬太郎とカズマが戻ってきて数日後、現在彼等はとある屋敷にやって来ていた。その屋敷は悪霊が住み着いていると言われており、当初は死者の声を聞くことの出来るウィズが除霊を引き受けようとしていたものの、除霊したら悪評が消えるまで屋敷を利用してもいいとの話を聞き、アクアがやることにしたらしい。
「そうだ二人とも、あの魔道具は曰く付きで、任意の場所にいけないだけでなく、時や次元をも超えることがあるみたいでね、ウィズも取り下げるべきかどうか悩んでたみたいよ」
「いやそんな商品すぐに取り下げろよ!ウィズって意外とポンコツなのか?」
「被験者が僕たちで、かつあの世界で出会ったのがえみりんだったからよかったものの、あれが世に出回ったら苦情が殺到してウィズさんのお店潰れてただろうね…」
アクアによる魔道具の説明に、カズマは声を荒げて突っ込み、錬太郎も腕を組んでうんうんと頷いた。
「ところでさっき出てきたえみりんとは誰なのですか?名前からして我々と同じ紅魔族だと思うのですが…」
「私も気になります!」
会話の途中で出てきたえみりんの名に関心を惹かれるめぐみんとゆんゆん。そしてめぐみんは紅魔族の中でも天才と自他共に称すだけあったか、名前だけでえみりんを紅魔族と見抜いていた。
「まぁ〜、なんだ?どっかの一発屋と違って沢山魔法や錬金術を使えるみたいだったし、老若男女問わず優しく接していたし、紅魔族にしては皆が思い描く本物の魔法使いだったぞ?」
「おい、偽物がいるような言い振りだが、誰のことか話してもらおうじゃないか!」
カズマの発言が気に障り、短気なめぐみんは食ってかかる。そんないつも通りの2人はよそに、錬太郎はゆんゆんにえみりんについて尋ねた。
「ゆんゆんは心当たりない?見た目からして君やめぐみんと同年代っぽかったけど…」
「いえ、ないですね…レッドプリズンにも在校生としてそんな子はいませんでしたし…」
ゆんゆんはえみりんについて知らないようだ。もっとも、紅魔の里で半ば孤立気味だった彼女に里の住人情報について尋ねるのは酷ではないかと思われるが、そこは次期族長を目指す者。里の人達についてはある程度把握しているので問題はない。
そのゆんゆんでさえ目星が付かない以上、えみりんと紅魔の里との繋がりは希薄。めぐみんも反応からしてえみりんの知人ではないため、問い合わせるのは不毛だ。となると、自分で憶測を立てるしかない。
「(えみりんは紅魔族特有の紅い瞳ではなかった、つまり純粋な紅魔族ではなく、混血、要はハーフやクォーターなのか…そうなれば親の教育方針で紅魔の里を敢えて訪れていない可能性も十分にある…それに…)」
錬太郎は先程アクアの口から告げられたあの魔道具の性能を思い返す。
「(あの水晶は次元や時を超越すると言われていた…なら、えみりんはこの時代の人間ではない、これでもめぐみんやゆんゆんが知らないのも辻褄が合う。もしそうだとしたら、えみりんがいたのは未来か?ドレッドの量産やネガマスクの存在を考慮に入れるとほぼ確定だ…でもそうなると…)」
錬太郎の脳内にとある予想が過ぎる。出会したネガマスクがダクネスそっくりだったこと、赤いケミー達が未来での自身のケミー達の姿と仮定して、未来の自分があの場にいなかったこと、レジスタンスの中に自身の知人の冒険者が誰一人としていなかったことを考慮すると、カズマ達やミツルギにダスト達そして自分は…
「フンヌァァァァ!」
刹那、突然何かを叩く大きな音と、錬太郎の雄叫びが響き渡り、驚いたその場の一同の視線が錬太郎に集まる。
「ど、どうしたんだ錬太郎?自分で自分をビンタするなんてダクネスの影響を受けたのか?」
「おい、どうしてそこで私の名が出てくるのだ⁉︎」
特に一驚したカズマが錬太郎に尋ねる。注目を集めた錬太郎の頬には、ヒリヒリという擬音も聞こえてきそうなくらい、くっきりと紅葉が咲いていた。
「いや、何でもない…」
心配する様子のカズマに普段より冷静に返す錬太郎。内心自分が辿り着いた最悪の予見に動揺しているものの、なんとか平常を保っているように振る舞うことができた。
「(たとえそれが定まった未来だとしても、絶対に覆してやる!)」
「除霊の件だが、果たして大丈夫なのか?聞くところによると、この屋敷には、祓っても祓ってもすぐに新たな霊が住み着くらしいのだが…」
「おいおい、霊に好かれるってどんな事故物件だよ…」
ダクネスからの見聞に思わずカズマが不安の声を漏らす。そんなカズマを安心させるためか、クロっちが事前収集した情報を教えてくれた。
『大丈夫だよ、ここ最近の事故物件を[風林火山不動産]に勤める知り合いの建築技師、スターサンシャイン赤石さんに尋ねたけど、めちゃくちゃ大きな荒くれ者が住んでたくらいらしいし…ちなみにここじゃないよ』
「なんなんだよその物件⁉︎それはそうとクロっち、その姿はどうしたんだ?イメチェン…というより顔も変わってるよな⁉︎」
色々突っ込みどころ満載な事故物件にやや引き気味のカズマ。そしてクロっちの姿がいつもの紫髪の星を宿した瞳の少女から変わっていることを指摘する。
クロっちは自身の魔法で人間の姿に擬態することができるのだが、今は身軽そうな服装の上に白と紫で彩られたローブを羽織っている、長い黒髪にエメラルドグリーンの瞳、アクアやダクネス、ゆんゆんに匹敵する果実を胸に備えた容姿の美少女となっている。
その姿は完全に別の異世界の主人公、ア○ナ・ク○ーバーである。
つまりクロっちは星○アイからア○ナ・ク○ーバーに転醒し、アイドル兼大魔法使いから受付嬢兼処刑人にジョブチェンジしたのである。
『ああこれ?偶には気分転換で擬態を変えてみるのもいいと思ってね。これで大きなハンマー振り回して戦っても違和感ないでしょ?』
「クロっち、君…あれだけ大魔法使いって言ってたのに…ハンマー使い出したら魔法の意味ないじゃん…」
クロっちの新たな姿と意気込みに少々錬太郎も当惑気味。
一方、ここまでそんなに口を開いていないアクアはというと、両手を前に突き出して意識を集中させ、霊視を行っていた。
「見える…見えるわ!この屋敷に住み着いている霊は、貴族とメイドの隠し子の女の子、アンナ=フィランテ=エステロイド。ずっと幽閉されてたみたいで父は病死、母は行方知れず…そして彼女自身も父親と同じ病気でそのまま…でも安心して、この子は悪い霊じゃないわ!でもちょいと大人ぶった事が好きみたいね。お供え物は甘いお酒とかがいいかしら。あとは…」
霊視から明らかになった情報をぶつぶつと言うアクア。彼女は至って真剣なのだが、傍から見ればどうもインチキ霊能力者のようで胡散臭い。なんだか長くなりそうだと感じたのか、次第にアクアの話を聞き流し、皆屋敷に入って各自部屋割りや、掃除に取り掛かった。
因みに一人取り残されたことに気づいたアクアは、案の定大きな声で喚いた。
「なんで誰も信じてくれないのよぉぉぉぉ!!!!」
屋敷には各部屋にある程度家具が残っており、どの部屋でも大した不自由もないとされたためか、各自気に入った部屋を決めると、それぞれの荷物を置き、掃除に移る。
多人数での作業故か掃除も意外と早く終了し、やることもないので夜になるまで各自部屋で自由時間となった。
「ふ〜む、過去に遡ってお父さんとお母さんに会えたのか…そしてここからどうなるのか…」
錬太郎はゆんゆんとボードゲームをしようと約束し、彼女の準備が済むまで自室で小説の原稿を読んでいた。勿論あるえから送られてきたものだ。錬太郎が未来へ飛ばされている間に、新たに一作書き上げたとのことなので、その執筆速度には錬太郎も驚嘆した。
「気になるところで終わっちゃったな…」
原稿を読み終えて持ってきた鞄の中にしまうと、錬太郎はベッドにその身を投げ出し、物思いに耽る。考えてみれば宿以外で寝泊まりするのは本当に久しぶりだ。
「(2年振りかな…錬金事変の後に王都に滞在していた頃は、ロロ叔父さんの元でお世話になってたっけ…でも、ロロ叔父さんは…)」
錬太郎は苦虫を噛み潰したような表情で天井を睨みつける。脳と目の錯覚で一瞬だけ天井に残るシミがロードの顔のように見えたためか、額に青筋も浮き出た。
そんな時、部屋の扉が開いて、ボードゲームを脇に抱えたゆんゆんがやって来た。
「錬太郎さん、お待たせしました…って、ごめんなさい!今お休み中でしたか⁉︎」
「へ⁉︎あ、いやいや!待ってて暇だったものだから…さ、さぁボードゲームやろう!」
錬太郎は慌てて部屋を去ろうとするゆんゆんを呼び止めると、この前と同じチェスを始める。前回教えてもらってから、ルールや攻め手について大体把握した錬太郎だったが、対敵するゆんゆんは知力の優れた紅魔族。途中まで錬太郎が互角や優勢になる展開はあったものの、結局5試合中全て負けてしまった。
その後、チェスを終えてリビングに集まると、皆で夕食を食べることになった。今回は錬太郎が台所に向かい、皆の分の料理を作ったのだが…
「お待たせ、僕特製『ガッチャオムライス』だよ」
「錬太郎…色々言いたいことはあるんだが…」
「ええ…その…色が…」
カズマとめぐみんは気まずそうに料理の見た目の感想を溢す。クロっち以外の他のメンバーも顔を引き攣らせている。
出された料理は確かにオムライスなのだが、卵の色が何故か水色になっており、食欲を唆られるかと言えば、全然そうではなく寧ろ反対に失せてきてしまう。
1人を除いて…
『パクパク!パクパク!うん、うん!これこれ!錬太郎の味だ、久しぶりだけど美味し〜』
他の皆がスプーンを進めるのを躊躇う中、クロっちは忙しなくオムライスを口に運び、あっという間に完食してしまった。
その様子に大きく目を見開いてクロっちへ視線を集める一同。あまりにも美味しそうに食べるものだから、半信半疑でありながらも、カズマ達はスプーンで掬って一口運んだ。そのお味は…
「なんだこれ⁉︎色合いは兎も角、甘味のあとにふわっと卵の柔らかが来る感じ…」
「女神の私からしても味は高得点だわ!見た目はダメダメだけど」
「とても美味だな…私も見習わなくては!」
「文句なしの食感なのです…おかわりいいでしょうか⁉︎」
「めぐみんずるい!錬太郎さん、私にもお願いします!」
どうやら皆の舌に合ったようだ。錬太郎は余分に作っていたのでおかわりする分には全然問題はなかったのだが、見た目に関して色々言われたことは根に持っていた。何せ一番工夫を凝らしたのだから。
夕食を終えて数分後、錬太郎は皿洗いをするために台所へ赴いていた。因みに皿洗いを巡る勝負で負けたゆんゆんも一緒だ。その際ゆんゆんがめぐみんにドヤ顔で煽られて泣いてしまったため、慰めるのに錬太郎は少々苦労したそうな。
「それにしても意外でした、錬太郎さんが料理も上手だったなんて」
「アルケミアの錬金アカデミーの家庭科の授業で、三賢人によって齎された異界の料理の実習をよくやってたからね。あと異界の文字の「漢字」とか「カタカナ」とか「日本語」とかも勉強してたな〜」
「そうなんですか…あ、あの…もっと錬太郎さんの学生時代の話も…き、聞けたらでいいので!その…」
次第に声を小さくさせてモジモジとしてしまうゆんゆん。その姿はどこか小動物を連想させとても愛くるしい。ぼっち気質の彼女なりに勇気を出して聞いてくれたのだろう。そんなゆんゆんに錬太郎は笑みを見せて言った。
「うん!じゃあ、時間がある時にいっぱい話そう!」
皿洗いを終えると、錬太郎とゆんゆんは各自部屋に戻り、就寝の準備に入った。
「枕、よし!掛け布団、よし!パジャマもよし!ついでにナイトキャップ、安眠マスクよし!寝よう!」
寝る支度を整えた錬太郎はベッドに体を預けて布団を被る。パンダの刺繍が施されたナイトキャップを被り安眠マスクも装備して、いつでも意識を手放す準備はOKだ。
しかしながら、屋敷1日目の夜というのもあって無意識のうちに脳のアドレナリンが溢れており、中々眠れない。仕方ないため、錬太郎は羊を数えることにしたのだが…
「羊が一匹、羊が二匹…」
「うわぁぁぁぁぁん!」
「何だ⁉︎三匹目まだ数えてないのに!!」
アクアの悲鳴が屋敷中に響き渡り、何事か、と錬太郎はベッドから体を起こした。リッチーでさえ圧倒する彼女が霊に苦戦するとは到底思えない。となると、より厄介な存在がいるのか…とにかくアクアの身が心配のため、ガッチャードライバーとドローホルダー、アルケミストリングを持ち出して、錬太郎はアクアの部屋へと向かった。
「アクア、無事⁉︎…って、どういう状況これ?」
アクアの部屋には先にやってきたのかカズマもおり、そのカズマはどこか呆れた様子で、空の酒瓶を宝物のように抱えながら地面に座り込んでシクシクと泣くアクアを眺めていた。
「ああ、錬太郎か。アクアの酒が誰かに飲み干されたってだけだ」
「そうなんだ…なんか焦って損したな〜」
「な〜、くだらないだろ?」
アクアの喚いた理由が案外しょうもないと感じ、錬太郎も愚痴を溢す。ドライすぎる男子2人の反応に、アクアは鋭い目つきで睨みを効かせ、大きな声で反論する。
「何よ、二人揃って!私にとってこのお酒は楽しみだったのよ⁉︎毎日ちょっとずつ味わって飲むつもりだったのに…この怒り、屋敷の悪霊どもにぶつけてやるわ!このアクア様の手で成仏させてやるわよ!」
そう言い終えると、アクアは立ち上がって勢いよく駆け出した。遠くから浄化魔法の呪文を唱えている様子から張り切ってやってくれているのだろう。
「カズマに錬太郎、アクアはどうしてああなったのだ?」
「物凄い勢いでターンアンデッドしてましたけど…」
『う〜ん…眠いよう』
アクアの泣き声を聞いて、遅れながらもゆんゆんを除く3人もやって来た。カズマと錬太郎が事情を説明し、アクア以外問題は特になしとのことで解散し、各自其々の部屋へと戻るのだった。
錬太郎とクロっちは途中まで部屋への方角が同じなので、それまで一緒に歩きながら会話をしていた。
「クロっちのパジャマ、なんかドレスっぽいね」
『うん!これお気に入りなんだ、錬太郎も歳不相応な可愛いデザインのナイトキャップ被ってて可愛いね!』
「…可愛い言うな」
『ウィ〜ヒッヒッヒッ!頬膨らませても可愛いもんは可愛いんだも〜ん!』
揶揄ってくるクロっちに対し、錬太郎はジットリとした瞳を向ける。まぁ、それでもクロっちはどこ吹く風なのであるが。
「全く…ん?わっ⁉︎」
『ウィ?錬太郎どうしたの…ってヒャ⁉︎』
突然、錬太郎とクロっちの足を白い糸のようなものが捕縛し、一瞬にして宙へ吊り下げられた。そして…
『『『『キキーーーーーーー!!!!』』』』
「『のわーーーーー⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」』
今度は大量のコウモリの群れが暗闇の中から現れて、無防備な状態の2人に一斉に襲いかかる。さらに…
『ベロベロベロベロ…』
「『どっひぇ〜〜〜〜!!!!」』
一つ目の傘お化けのような怪物も現れ、不気味な声を上げながら錬太郎とクロっちを驚かす。
連続して心の臓を刺激する事態には流石の2人も気息奄奄で、肩でなんとか息をするので精一杯だった。
『ハァハァ、ま、まさかこんなに驚かしてくるなんて…』
「…確かに…心臓がいくらあっても足りな…あの〜、クロっち…」
『ん…?どうしたの、顔赤くして…』
「いや…あの、足を糸で捕まれて宙吊りだから当たり前だけど…スカートがめくれて…その…パンツが…」
そう、物理法則の都合上、吊る下げられているクロっちはパジャマのスカートが捲れてしまい、履いているパンツが丸見え、謂わゆるパンモロ状態になっていたのだ。因みに色はパープルである。
これにはいつも余裕そうな態度を崩さないクロっちも、羞恥のあまり顔を赤面させ、声にならない悲鳴を上げた。
『〜〜〜〜〜ッッッッッッ!!!なんで早く教えてくれなかったのさ!錬太郎の馬鹿!変態!助平!錬金術師!ガッチャード!』
「なんか八つ当たりしてない⁉︎あと最後二つは悪口じゃないでしょ⁉︎」
取り乱したクロっちは瞬間の内に頭に浮かんだ言葉を口にして錬太郎を罵倒する。そんなクロっちからの理不尽に、錬太郎もどうしていいのかわからないでいる様子だった。そんな時、奥から誰かがやって来た。
「皆待って…あ、錬太郎さん、クロっちさん!」
「『あ、ゆんゆん!!」』
「じゃあゆんゆんがこの3体を見つけたってこと?」
錬太郎はキャッチュラ、ヤミバット、ベロソルの3体を指差して、ゆんゆんに尋ねた。
「はい、アクアさんの声が聞こえて目が覚めて、向かおうと思ったのですが、この子達がどうしても遊びたいって…その、これから友達になる以上断りづらくて…」
『成程ね…ていうか、なんで僕たちは襲われちゃったのさ…』
パンツのことを未だ怒っているクロっちが口を尖らせてゆんゆんに尋ねる。そんなクロっちに申し訳なさそうにゆんゆんは
「その…悪霊と間違えてしまったらしくて…ごめんなさい!私がしっかりしてれば…」
「いや、ゆんゆんが謝ることじゃないよ。ケミー達はゆんゆんを守ろうとしてくれただけだろうしさ、取り敢えず部屋に戻って寝よう?」
まだ夜が始まったばかりなのにも関わらず、色々あったがなんとか新たにケミーを3体獲得した錬太郎達。今度こそ安眠につけるだろうと、3人で部屋に向かっていたのだが…
『ねぇ、ここの通路通らなかった?』
「私もそう思います、なんだか同じ場所をぐるぐるしてる感じで…」
なんとなくではあるが、クロっちとゆんゆんは違和感を抱き始めていた。錬太郎も口には出してはいないが、また何か起こるのでは…と懸念している。一体いつになったら
「ん、こんな部屋、あったっけ?」
歩いている最中、錬太郎はとある部屋を見つける。奥行きはあるが、家具も何もない、ただぽっかりと空いた穴のような部屋。入り口とされる場所に扉はなく、常に開放状態で、興味を惹かれた錬太郎はその部屋へと歩みを進めた。
『ちょ、錬太郎!もう、仕方ないな〜』
「ああ、クロっちさん私もいきます!」
錬太郎を追って2人も謎の部屋の中へと入った。真っ暗であるため視界は良くなく、空気もどこか張り詰めていて冷たい。なんとも不気味なその様は、3人に不安の影を落とす。
「おかしい…こんな部屋掃除してるときにはなかったはず…」
「うう〜っ、ちょっと怖いので一旦出ましょう錬太郎さん…」
「…そうだね、ここは引き返そうか」
ゆんゆんが震えながら錬太郎の服を掴んで訴えてくる。紅魔族の特性なのか、恐怖による興奮で紅い瞳が光っている。ライトみたいだなと一瞬頭に過った失礼な感想を振り払うと、錬太郎はゆんゆんの手を引き、先程の入り口に向かうが…
「え…なくなってる⁉︎」
いつの間にか出入り口が消失していた。
予想外の事態に、錬太郎も動揺のあまり顔を僅かに青くさせ、ゆんゆんは愕然としながら震える手で、錬太郎の服を先程より強く握りしめた。
一方クロっちも何故かプルプルと震えており、気になった錬太郎は声をかける。
「ど、どうしたのクロっち…」
『錬太郎、この部屋!窓ないよ!』
「へ…?」
クロっちからの返答に錬太郎は間抜けな声を漏らす。今それよりもこの部屋について他にもっと言及するべきことはあると思うのだが。
そんな錬太郎などお構いなしにクロっちはケミーライザーを取り出すと、手なれた様子で操作し始める。
「な、何やってるの?」
『この物件やっぱりおかしいよ!これは赤石さん案件だ!』
「ちょ、ダメダメ!こんな時間に連絡しちゃ!」
『赤石さぁぁぁん!赤石!窓!ねぇぞォォォォォォ!』
「キャラが崩壊してるよクロっちぃぃぃぃ!」
「お、落ち着いてくださいクロっちさぁん!」
錬太郎とゆんゆんが壊れ気味のクロっちを止めにかかる。謎の部屋に閉じ込められてしまった彼らは無事脱出できるのか、まずは…
次の話まで続く
遅くなりました…申し訳ございません…
というわけで、もう旬の過ぎたかもしれないネタでしたが、変な家パロディでした。
赤石…風林火山…ウッ!頭が…
もうすぐギルます始まるのでちょいと中の人ネタでクロっちの衣替え(擬態替え?)
転醒の字は、私がバトスピ好きだから敢えてこの表現にしたので、誤字ではありません
冒頭でアポロスと会話していたのは仮面大佐様の世界の狐の戦士…⁉︎
色がアレなオムライスとロロ叔父さんについて色々ありますが、
長くなりそうなのでまた次回で
今度はもっと速く投稿したい…
次回予告
「迷宮を抜け出す最強魔法(物理)」
えみりんの再登場は…
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早くていい
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運命の日までお預け