この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

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自分の文章力のなさに泣きたくなります



転生者との邂逅と錬金術

 錬太郎を中心とした3人は討伐したジャイアントトードの移送サービスの申請とクエスト完了の報告のため、ギルドへと戻った。

 受付では担当をしているルナが温かく迎入れてくれた。

 

「はい、依頼完了を確認しました。それにしても皆さん凄いですね!3人でこれほどの数のジャイアントトードを討伐してしまうなんて!」

 

 冒険者カードを見たルナは驚きのあまり、大きな声をあげた。

 しかしそのあとは手馴れた様子でカウンターに置いてあった箱を操作して手続きを済ませてから、カウンターの上に札束を置き、硬貨を積み上げた。

 

「こちらが今回の報酬になります」

 

 3人はルナから渡された報酬の額を確認する。今回3人で討伐したジャイアントトードの数は15匹だったため、カエル1匹あたりの引き取り価格5000エリス×15と、クエスト達成報酬の10万エリスを合わせて17万5000エリスの報酬となった。

 報酬は3人で均等に分け合うこととなり、1人およそ5万8000エリスの配分となった。

 

「それじゃあ報酬も受け取ったし、僕は大衆浴場に行ってきてもいいかな?汗流したいし…」

 

『了解!ゆんゆん、あっちの席に座ってお話しようよ!』

 

「え、いいんですか⁉︎も、もちろん喜んで!」

 

 報酬の配分も終わり、錬太郎は浴場へ向かい、クロっちとゆんゆんは一緒におしゃべりをすることになった。

 ゆんゆんはクロっちと話ができることをとても嬉しそうにしていた。

 

 浴場を目指していると、近くの席で何やら暗い顔をしている人物を錬太郎は発見した。

 よく見てみると、その服装から先程の爆裂魔法の一件で話を伺った少年であることがわかった。

 何故そこまで暗然としているのか気になったので、話を聞いてみることにした。

 とはいえ何もなしに話かけるのもいかがなものかと思った錬太郎は、酒場のカウンターで水を受け取ってから少年の元へと向かった。

 

 

 

 

 少年、佐藤和真は頭を抱えていた。彼はこの世界とは別の世界からやって来た所謂『転生者』なのだが、この世界にやってきてから碌なことがないのだ。

 先程も金髪碧眼が特徴の美しい女騎士に声をかけられ、自身のパーティに入れて欲しいと頼まれた。

ここだけを聞くと嬉しさのあまり舞い上がってしまいたくなるようなイベントだったが、問題はここからだった。

 彼女はとても不器用で攻撃がまるで当たらないらしい。さらに盾がわりとして使って欲しいなど、性能だけでなく中身までダメなタイプだと悟った。

 現在、2人も問題児を抱えているのにもう1人増えると思うと気が遠くなってしまう。

 考えてるだけでも疲れてきたため、カズマは額に手を当て、ハァ〜っとため息をこぼす。

 その時、彼の目の前に水の入ったコップが置かれた。誰がと思ってカズマが頭を上げると、先のジャイアントトードの一件で少しばかり話をした少年がいた。

 

「あ、あんた」

 

「疲れてるみたいだったから水持ってきたよ。あの…馴れ馴れしいと思うけど、僕でよかったら話を聞かせてくれないかな?」

 

 

 

 

「あはは…それは災難だったね…」

 

「そうなんだよ、見た目はいいのになんで中身があんなんだか…」

 

カズマは女騎士との一件を錬太郎に話した。錬太郎は苦笑いを浮かべながらも、カズマの話を聞いてあげた。

 

「それによぉ、あのロリっ娘と口論になったときにあいつが粘液塗れだったこともあって、道行く人たちに変な目で見られてもう大変でよぉ…」

 

「うわぁ…ご愁傷様…」

 

 錬太郎が思った以上にカズマの愚痴は長く続いた。錬太郎はカズマの言い分一つ一つに相槌を打った。

 カズマもカズマで、自分の溜め込んでいた不満を聞いてくれることが嬉しかったのか、途中から愚痴も減り、気づけば2人で世間話をしていた。

 

「あ〜、色々吐き出してスッキリしたわ。ありがとな、俺の愚痴に付き合ってくれて。」

 

「ううん、僕がやりたくてやっただけのことだし…」

 

「それでもだ。よし!気分良くなったし、大衆浴場に行くとするか」

 

「浴場…あ!」

 

錬太郎は自分が風呂に入ろうとしていたことを思い出した。

 

 

 

 

「あー………生き返るわー……」

 

「同感だよー………」

 

結局あの後2人で大衆浴場へと向かった。2人揃って熱い湯船に浸かって日々の疲れを癒した。

 

「そういえば自己紹介がまだだったな。俺はカズマ。佐藤和真だ。」

 

「カズマっていうんだ…僕は百瀬錬太郎、宜しくね」

 

錬太郎の名前を聞いたカズマは一瞬固まり、そしてその後食いつくように錬太郎に聞いてきた。

 

「錬太郎って…お前転生者だったのか⁉︎お前も日本から来たのか?」

 

「テンセイ…?ニホン…?」

 

「あれ、違ったのか?名前からしてそうだと思ったんだが…」

 

 錬太郎はカズマの言ったことが一部理解できなかった。輪廻転生など、彼が知る錬金術を持ってしても証明できない原理であり、この世界の御伽話でよく聞く程度の空想上の理論であるとしか考えてなかった。

 しかしニホンという単語だけは何処か聞き覚えがあった。それがなんだったのか思い出すため、必死に自分の脳みそを回転させる。

 そして思い出したためかパンと手を叩くとカズマの方を向いて答えた。

 

「思い出した!ニホンって母さんの故郷の名前だ!」

 

「母さん⁉︎ってことはお前はこの世界の人間と日本人のハーフなのか⁉︎」

 

錬太郎からの衝撃のカミングアウトに驚きながらもカズマは尋ねた。

 

「えっと…そう、なるのかな?」

 

「ちなみに母親は冒険者なのか…?」

 

「うん、だったよ…今は色々あって引退してるけど…」

 

錬太郎は暗愁のこもった瞳で、残念そうな、寂しそうな声色で告げた。

錬太郎の話を聞いてカズマもどこかバツが悪そうな顔になってしまう。

 

「そうなのか…」

 

「うん…」

 

 そこから先、両者の間には沈黙が続いた。やはり先程の錬太郎の母親の件でどことなく気まずい空気が流れる。お互い熱い湯船に浸かっているはずだが、何故か水底の床のひんやりとした感じが先程よりも体に伝わってきていた。

 

「ニホンってさ、どんなところなの?」

 

 終わりがないかと思われた静寂を破るかのように錬太郎はカズマに質問をした。カズマもいきなり錬太郎が質問をしてきたことに当惑しつつも、ほんの少し間を置いてから話し始める。

 

「えっと…日本、というか俺が元いた世界はここよりも科学が発展していてさ、便利なものが沢山あるんだ。例えば写真を撮ったり、音楽を聴けたり、色々情報を調べることができたりするスマホや、長い距離を楽々移動することができる車や電車があるな」

 

「ふ〜ん…」

 

 カズマは自身の元いた世界について意気揚々として語ったが、錬太郎は自身にとって、そこまで意外性がある返答ではなかったため、素っ気ない反応をしてしまった。

 

「あれ?やけに反応薄いな…普通はもっと驚くと思ったんだけどなぁ…」

 

「いや…確かに凄いんだけど、ケミー達の中に似た特性を持った子たちがいるからあんまり、ね」

 

「ん?ケミーってなんだ?」

 

 カズマは錬太郎に聞き直した。この世界において必要と踏んだ用語はそれなりに覚えているのだが、錬太郎の言った『ケミー』という聞き覚えのない言葉が気になった。

 

「ケミーっていうのは…長くなるから風呂上がってから話さない?僕、のぼせてきちゃった…」

 

「ああ…俺もちょっとのぼせてきたかも…」

 

2人は、熱った体を引きづりながら浴場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 風呂から上がって各々着替えたあとは一緒にギルドに向かうことにした。

 帰る途中でも2人は会話を楽しんでいた。ケミーについては食事する時に色々と話すことにしため、今はカズマの転生のことについて話をしている。錬太郎も少年。転生という言葉には心が踊るのだ。

 

 カズマ曰く、ニホンで若くして死んだ人々は、女神によって魂を誘われると肉体と記憶はそのままにして異世界に送られることがあるという。さらに何か好きなものを持っていけるという特典までついてくるらしい。

 

「そうか、母さんは冒険者だった頃かなり活躍したとは聞いてたけど、好きなもの持っていけるんだったらそりゃ強いよね…」

 

「ああ。本来ならお前の母さんみたいな異世界ライフが普通なんだろうけどな…クソ!あの駄女神め!」

 

「駄女神?」

 

「ああ…こっちの話だ、気にしないでくれ」

 

 話し終えると、カズマはまた疲れたような顔をする。恐らくだが『駄女神』と呼んでいる何かにとても苦労させられているようだ。

 カズマの様子を見かねたのか、錬太郎は歩くのを止めると、カズマの肩に手を置いて

 

「カズマ、また困った時は相談してよ。僕はいつでも力になるから。」

 

光の宿った慈しみの篭った瞳で、彼を見据えて言った。

カズマは錬太郎の言葉に胸がじいんと熱くなったのか、目元を抑えて天を仰いだ。

 

「お前…ホントいい奴だなぁ…出会ってそんな経ってない俺にこんな優しくしてくれるなんて…お前に会えて良かったよ!」

 

「気にしないでよ、昔からそうしてきたから。」

 

「ん?昔から?」

 

喜びの涙を引っ込めたカズマが錬太郎に問いた。

 

「困ってる人を見たらほっとけないというか、『なんかしなくちゃ』って思うよりも先に体が動いちゃうんだ…」

 

 カズマは錬太郎の言ったことに目を見開く。正直お人好しな男だとは今までの会話を通じてなんとなくは分かってはいたものの、自分と関係のない人物に、今日の自身に対してのようにいつも接しているということに驚いた。

 

「でも誤解されることだってあるんじゃないか?お前みたいな人をあまり受け付けないやつもいるだろうし…」

 

「もちろんあるよ。それで怒られることもあるけど…でも、いいんだ。

ほっとけないと思ったことは嘘じゃないから。」

 

そう言って笑みを浮かべた錬太郎は酷く輝いて見えると同時にほんの少しだけ陰りを帯びているようにも見えた。

 

「あ、着いたよ。クロっちとゆんゆんは…誰かと話してる?」

 

「ああ…俺のパーティメンバーだ」

 

錬太郎の仲間であるクロっちとゆんゆんは、カズマのパーティメンバーと何故かわちゃわちゃしていた。

 

 

 

 

 話を聞くと、大衆浴場から戻ってきためぐみん達を見つけるや否や、ゆんゆんはめぐみんに勝負を挑んだらしい。しかしめぐみんがのらりくらりとゆんゆんの言葉をかわし、結局喧嘩になってしまっていたようだ。

 カズマと錬太郎が間に入ったため、両者の喧嘩は収まったものの、まだゆんゆんは勝負してもらうことを諦めきれていない様子だった。

 その後、カズマと錬太郎の提案で全員酒場の隅の方にあった席に移動して、共に夕食を食べることになった。 

 

「お待たせしました〜。シュワシュワ2つとオレンジジュースが4つでーす。ごゆっくり〜」

 

 担当の職員の人がカズマと青髪の女性が頼んだシュワシュワの入ったジョッキ2つと、残りのメンバーのオレンジジュースの入ったカップ4つをお盆に乗せて持ち運び、テーブルの上に手際よく置いてくれた。続けて各々が頼んだ料理がテーブルに並んだ。めぐみんはオレンジジュースは子供扱いされていると感じたらしく頬を膨らませて抗議していた。

 

とはいえ6人揃っての会食はそれなりに盛り上がった。

特に

 

「うん、これ美味しいね」

 

『錬太郎錬太郎、これおかわりしよう!』

 

「いいね!」

 

「…あいつら…胃袋どうなってるんだ…」

 

 錬太郎とクロっちの豪食っぷりはカズマ達4人を驚かせた他、近くの冒険者達の視線を釘付けにしたのだった。

 その後、程よく落ち着いた頃を見計らったクロっちが口火を切った。

 

『それじゃお互いのことを知るために自己紹介でもしようか!』

 

「え〜っと、じゃあ俺から。佐藤和真。冒険者をやってる。カズマでいいよ」

 

 カズマの自己紹介は地味ではあるものの、簡潔にまとめられていた。恐らく彼はパーティーの中ではまともな方なのだろう。

 

「では次は私が!」

 

 めぐみんは勢いよく立ち上がり、洗練された動きをしながら名乗りをあげた。

 

「我が名はめぐみん!紅魔族随一の魔法の使い手!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者!」

 

 めぐみんが名乗り終えると辺りはシーンと静まり返った。カズマとゆんゆんは顔を真っ赤にして俯いてしまっていた。ゆんゆんの時とは違い、羞恥心とはなんぞや、とでも言いたげな自信満々の名乗りは流石の錬太郎とクロっちも周章狼狽とまではいかないにせよ、それなりに困惑していた。

 

「こういう感じの名乗りはそれなりに見慣れていると思ったけど、いざまた目にすると…ねぇ、クロっち」

 

『これこそ紅魔族だよね〜。まぁここまで堂々とやられると、こっちが恥ずかしくなってくるな〜。めぐみんの声はどこか僕に似てる気がするから余計にね…』

 

「おい、私の名乗りに文句があるから聞こうじゃないか!」

 

「よせ、これが普通の反応だ!」

 

 2人の反応が気に食わなかったのか、食ってかかろうとしためぐみんを慌ててカズマが抑えた。

 

「そういえば貴方、紅魔族について知っているような口振だったわね」

 

青髪の女性がクロっちに訊ねると、クロっちは

 

『僕は大魔法使いだよ?そんじょそこらの知識は大抵頭の中にあるよ〜。

 

【紅魔族】:紅魔の里に住んでいる人々のことを指し、生まれながらにして高い魔力と知力を誇る。感情が昂ると光る紅い瞳が特徴で、将来的には大部分がアークウィザードの職に就く…簡単に纏めるとこんな感じかな?』

 

聞かれてもいないのに紅魔族についてペラペラと語り始めた。

 

「フッ、我々紅魔族も随分名が知れ渡ったようですね…」

 

「なんか説明されると恥ずかしいな…」

 

 クロっちの解説にめぐみんは得意気に、ゆんゆんは恥ずかしそうにしていた。

 

『あと補足しておくと【バーコード】と呼ばれる刺青が入っていて…』

 

「ああああ!クロっちさん!それ以上はやめてください〜!」

 

 クロっちが続けようとした解説をゆんゆんが顔を真っ赤にしながら慌てて止めた。どうにも気になるような情報だったが、とても恥ずかしい思いをするほど聞かれたくないことなのだろうと察したため、誰もそれ以上は追求しなかった。

 

「じゃあ次は私ね!」

 

今度は青髪の少女が立ち上がった。シュワシュワを飲んだ影響で若干酔っ払っているのか、ほんのり紅い顔をしながら少々大きな声を響かせた。

 

「私の名前はアクア!アクシズ教の御神体にして、水の女神よ!」

 

『女神?』

 

「…を自称してる可哀想な奴なんだ。そっとしておいてあげてくれ…」

 

「何よカズマ!私は正真正銘水の女神様よ!自称は訂正して!」

 

クロっちが女神という言葉に首を傾げると、カズマがそれは自称であると補足を添えた。その補足にアクアは怒り、カズマに訂正を求めた。

 

『ねぇ、僕が言うのもあれだと思うけど頭大丈夫?病院行った方がいいんじゃない?』

 

「何よ貴方まで!そんな生温かい目で見ないで!私は本当に女神なのよ!」

 

クロっちからの辛辣な言葉にアクアはさらに喚き散らした。そんな2人を他所に、錬太郎はカズマにだけ聞こえるようにヒソヒソと尋ねる。

 

「…カズマ、もしかしてさっき言ってた駄女神ってこの人のこと?」

 

「ああ、そうだ。そして俺をこの世界に案内した女神だ。多分お前の母さんをこの世界に連れてきたのもあいつだと思う。」

 

「でも、案内役の彼女がどうしてここにいるの?」

 

「それは…俺が連れてきたんだ。転生する時の特典としてな…色々弄られて腹が立ったからこうして連れてきたんだが…全く持って役に立たねぇ…」

 

「ああ…成程。ていうかあのアクシズ教の女神なのね…」

 

錬太郎が不請顔をして言った。

 

「ん?どうしたんだ?」

 

「いや、母さんがアクシズ教徒はやばい人達の集まりだから気をつけろって口酸っぱく忠告してたから…」

 

「なんですって〜!!」

 

錬太郎の発言が聞こえていたため、アクアは烈火の如く激怒する。

 

「私の可愛い信者達を馬鹿にしたわね!今に災厄が降りかかるわよ!絶対に逃れられないくらいデカいのが!」

 

「やめろ!仮にも女神ならそんな災厄なんて物騒な言葉使うな!」

 

「うるさいわねヒキニート!とにかくアイツを一発殴らせなさい!」

 

「誰がヒキニートだ!このアル中駄女神!」

 

 錬太郎の発言を引き金にアクアとカズマの口論が発生した。そして次第にヒートアップしていき、暫く続いた。めぐみん、ゆんゆん、クロっちの視線はこの口論の原因である錬太郎へ向けられたが、彼は気まずそうに視線をそらす。

 錬太郎はアクアのいる前で二度とアクシズ教の話はしないと心に誓った。

 

 

 

 

 カズマとアクアの口論が終わり、漸く錬太郎達の番になった。ちなみにアクアはシュワシュワの影響で酔いが回って寝てしまった。

 

『それじゃ僕達の番だね。僕はクロっち、アークウィザードをしているよ。宜しくね〜』

 

こちらもカズマ同様簡素であるものの、丁寧に纏まった自己紹介だった。

 

「えっと…次は私ですね…スゥ〜、よし!」

 

立ち上がったゆんゆんは深呼吸をすると、恥じらいながら

 

「我が名はゆんゆん!アークウィザードにして中級魔法を操る者!やがては紅魔族の長となる者!」

 

めぐみんと同じく例の名乗りをやってみせた。やはり紅魔族特有の名乗りのせいなのか、辺りは静まり返ってしまった。

 

「うう〜ッッ…」

 

 ゆんゆんは余りの羞恥に椅子に座り込むと両手が顔を覆い尽くしてしまい、震えている。そんなゆんゆんを見て、小動物みたいだなと錬太郎は慰めながら思った。

 

「最後は僕だね。百瀬錬太郎。アルケミア出身で、職業は錬金術師、宜しく」

 

「あなたアルケミア出身の錬金術師なんですか?」

 

錬太郎の自己紹介にめぐみんは訝し気な感じで尋ねる。

 

「なんだめぐみん、錬金術師ってそんな珍しい職業なのか?」

 

「カズマは知らないのですか。2年前の錬金事変以降、成り手が殆どいなくなった職業ですよ。」

 

「すまん、錬金事変ってなんだ?」

 

「錬金事変とは沢山の錬金術師達及び彼らの拠点とする地、アルケミアが内輪揉めで殆ど滅んだ出来事なのです。生き残った錬金術師達は国家指名手配されるほどの悪行を繰り返しているので、それ以来錬金術師の印象は悪いのですよ」

 

めぐみんの説明が思った以上にやたらと壮大なものだったので、カズマは本当なのか?という意を含んだ視線を錬太郎に向けた。

 

「僕が錬金術師なのは本当だよ…ほら、コレ…」

 

錬太郎は自身の冒険者カードを取り出して、クロっちとアクアを除く3人に見せた。

 

「ほうほう、確かに錬金術師ですね…」

 

「それにステータスも高いですね…あ、幸運はそこまでですが…」

 

「すげ〜なぁ、高数値羨ましいぜ…」

 

錬太郎の冒険者カードに各々が反応する中、

 

「内輪揉めか…確かに世間からはそう見えたのか…」

 

錬太郎は誰にも聞こえないくらいの声でそう言うと、唇を噛み締めた。

 

 

 

 

「そういえば、風呂場で言ってたケミーについてなんだが…」

 

 カズマはずっと気になっていたことを錬太郎に問う。そもそもこれがカズマにとって本題である。錬太郎の関心を自身が元いた世界の技術以上に惹きつけているものと思われるその存在について内心ワクワクしている。

 

「その前にまずは錬金術について説明しなくちゃね」

 

錬太郎は真剣な顔つきになって説明を始めた。

 

「錬金術は100年以上前に異界からやって来た3人の賢人達によってもたらされた技術。

それは金属や鉱石に留まらず、人間の肉体や魂をも精錬し完全な存在を錬成することだって理論上可能な秘術でもある。

簡単に言うと、無から有を、死から生を生み出すって感じかな。

そして賢人達はそれぞれ自身の得意分野の万物の錬成、空間の錬成、多重錬成の定理を定めたんだ。取り敢えず、今から見せるね」

 

錬太郎は椅子から立ち上がると、自身の人差し指に青い矢印の装飾が施された指輪の『アルケミストリング』を装着し、座っていた椅子の前に立つと、

 

「『下にあるものは上にあるもののごとく 上にあるものは下にあるもののごとく ただ一つたる 奇跡をなさん』」

 

錬金術の呪文を詠唱した。刹那、錬太郎が座っていた椅子が宙に舞い上がり、左右に揺れた。

 

「おお、すげぇ!」

 

「これが錬金術ですか…それにしてもその呪文、紅魔族の琴線を刺激しますね…でも、これだけですか?」

 

「勿論これだけじゃないよ。じゃあ次は…」

 

錬太郎は一度深呼吸をしたのち、再び手を掲げて詠唱を始めた。

 

「『偽りなき真ニテ げに真なり』」

 

詠唱を終えると、錬太郎を中心とした空間が歪み、次第に錬太郎も姿を消した。

 

「今度は消えた⁉︎これが空間の錬成ってやつか⁉︎」

 

「す、すごい…」

 

「これは驚きましたね。それとやはりと言うべきか、詠唱の一言一句にそそられますね…」

 

錬太郎がしてみせた空間の錬成に3人は感嘆の声を漏らす。暫くして錬太郎が再び現れると、

 

「そしてこれが1番よく使うやつかな…

 

 

『万物はこれなる一者の改造として生まれうく』」

 

錬太郎の呪文に呼応して、彼の使用していたコップに入っていたオレンジジュースが空中に浮かび、金の延棒に形を変えた。

 

「「「おおお!!!」」」

 

目の前で錬成された金に3人は目を輝かす。めぐみんとゆんゆんは紅魔族特有の紅い瞳を光らせているため、本当に輝いているのだが。

 

「とまあ、こんな感じかな。そしてこのような錬金術を行使する中で稀に生命に近い存在を生み出すことがある。それがケミーだ。」

 

錬太郎は左腕のホルダーから一枚カードを取り出すと、中からホッパー1が飛び出した。

 

『ホッパー!』

 

「おお、びっくりした!」

 

「これがケミー…確かに生き物みたいです…」

 

カズマは飛び出しできたホッパー1に驚き、めぐみんはホッパー1をまじまじと眺める。ホッパー1は2人を見て首を傾げていた。

 

「僕は錬金事変によって世界中に散らばったケミー達を探す旅をしている。ケミーは一体一体に世界を揺るがすほどの力を秘めてるから、野放しにしておくとあぶないからね。」

 

「そうなんですね…ケミー達ってそんなにすごい存在なんですね」  

 

錬太郎の話を聞きながらゆんゆんは自身の元にいるプラントケミー達と戯れていた。

 

「そういえばどうしてゆんゆんにもケミーがいるのですか?」

 

「ふふん!聞いて驚きなさい。この子達はアクセルの街で出会った私の新しい友達なんだから!」

 

 めぐみんの問いに対してゆんゆんは胸を張って自慢気に答えた。めぐみんは少しばかりゆんゆんの胸に対して羨望の視線を向けたが、すぐに余裕そうな態度に戻り

 

「ええそうですか。それにしてもぼっち時代に植物しか友達がいなかったからか、友達となったケミー達も植物ばかりなんですね」

 

「ちょ、皆がいる前でなんで言うのよ!」

 

めぐみんの暴露した真実に慌てる様子のゆんゆん。錬太郎とカズマはなんとなくゆんゆんがそういう感じの部類であるなとは感じていたものの、流石に皆がいる前で言われるのはとても気の毒に感じた。

 

「ゔゔ〜ん、うるさいわね……ああーーっ!」

 

突如、目を覚ましたアクアが大声を上げた。その声に皆が反応し、アクアの方に注目が集まる。

 

「私のシュワシュワが無くなってる…誰よ!私のシュワシュワ飲んだのはどこのどいつよ!」

 

 大好物であるシュワシュワが無くなっていたらしく、アクアは酔った影響の顔をさらに赤くしながら怒鳴り散らしていた。

 しかしながらアクアが使用していたジョッキは彼女が寝ているときも握っていたため、誰かが飲んだとは到底思えない。そんな中、何故か錬太郎の顔がみるみる青ざめていった。

 

「も、もしかしたら僕が金を錬成するときにオレンジジュースと一緒に…」

 

錬太郎の発言を聞くや否や、アクアは彼に詰め寄り、胸ぐらを掴んで叫び散らかした。

 

「アンタよくも私のシュワシュワを奪ってくれたわね!弁償しなさい弁償!それから土下座して謝って!今すぐ!」

 

 アクアはとんでもない声量で錬太郎に文句を言う。同時にアクアの唾と酒臭い吐息が飛んでくるため、錬太郎は自分が悪いと思いつつも、少しばかり不快感を感じた。

 

「ホントに…ごめんなさい」

 

力無く錬太郎はアクアに言った。しかしアクアには聞こえてなかったらしく、カズマとクロっちが止めに入るまでアクアの説教は続いた。

 

 

 

 

 あの後、カズマの拳骨によってアクアは気絶し、今日のところはお開きとなった。クロっちはアクアを止める際、彼女の酒臭い吐息に鼻腔をやられたため、今日はカードに戻って錬太郎のホルダーの中で眠ってしまった。

 因みにクロっちがケミーだったことには皆驚いていた。

 今現在、錬太郎はめぐみん、ゆんゆんと共に宿に向かって歩いている。予約する宿は錬太郎とゆんゆんが同じ場所で、めぐみんは違う所なのだが、途中まで方角が同じなので、それまで一緒に移動しようという話になったのだ。

 

「そういえば2人ってどういう関係なの?」

 

錬太郎は突然前を歩いているめぐみんとゆんゆんに問う。ゆんゆんはよくめぐみんとの勝負に拘っているように見えることからそれほど深い関係なのではないかとは踏んでいるものの、確証がないため本人に聞いた。

めぐみんは歩く足を止めると、呆れたようにため息を吐いて

 

「一体なんですか?急にそんな質問をするなんて」

 

いつもの気怠そうな瞳で錬太郎を見据えて逆に質問で返した。

 

「少し気になってさ…」

 

「ええっと…永遠のライバル…ですかね?」

 

「そう彼女が言ってるだけですのであまり宛にしないでください」

 

「ええ⁉︎ライバルでしょ!学生時代は毎日色んな項目で勝負してたでしょ!」

 

 毎日勝負をしていたとは…もうこれは盟友という関係の方に近いのではないだろうかと錬太郎は感じる。

 

 刹那、錬太郎のケミーライザーが音を立てた。何事かと思って見てみると、ケミーの反応があったようだ。しかし、これまでの反応と違って危険信号に似た警告のようなものまで出ていた。

 

「まさか…」

 

錬太郎はケミーライザーが反応した方角に視線を向ける。カズマ達が向かった方角だ。錬太郎は嫌な予感がするとともに、額と背中に汗が流れるのを感じた。

 

「錬太郎さん?」

 

「どうかしたのですか?」

 

 錬太郎の様子を不思議に思っためぐみんとゆんゆんが声をかける。しかし、錬太郎は2人の声に耳を貸さずにホルダーから一枚のカードを取り出すと、ケミーライザーに装填した。

 

『ケミーライズ ゴルドダッシュ』

 

するとケミーライザーから金色のバイクであるゴルドダッシュが現れた。

 

「えええ?なんですかこれは⁉︎」

 

「これも錬金術…?」

 

めぐみんとゆんゆんは突如現れた金色の機械的なモノに驚きつつ、興奮しているのか紅い目を輝かせている。

 

「2人は先に宿に戻ってて!いくよ、ゴルドダッシュ!」

 

『ダーッシュ!』

 

錬太郎はゴルドダッシュに乗ると、アクセルを操作して、猛スピードで例の方角へ去ってしまった。その場に取り残されてしまっためぐみんとゆんゆんは暫くの間ポカンとしていたが、やがてゆんゆんが口火を切った。

 

「えっと…先に宿戻る…?」

 

ゆんゆんの問いにめぐみんは答えない。ただプルプルと震えている。

 

「あの…めぐみん?」

 

「…は」

 

「…へ?」

 

「なんですかあの乗り物は!見た目がかっこいいのはもちろんですが、あの速さ!まるで風みたいです!是非とも乗せて欲しいです!」

 

めぐみんはゴルドダッシュのかっこよさに心打たれたようだ。そして風のように颯爽と移動していく様子を見て自分も乗りたいと思ったらしい。

 

「行きますよゆんゆん!レンタロウを捕まえて乗せてもらいましょう!」

 

「ええ⁉︎ちょっと待ってよめぐみーん!」

 

めぐみんは錬太郎の向かった方角に走り出し、そんなめぐみんを後をゆんゆんは追った。

 

 

 

 

 錬太郎達と別れた後、カズマは気絶したアクアを背負いながら、星に照らされた夜道を歩いていた。相変わらず背後から香る酒臭い息にイライラしながらも、目的地である馬小屋へと向かう。途中アクアが自分に対する弄りとも取れる寝言を発したため、このまま野道に放り投げてしまおうとも考えた。

 

「それにしても、錬金術か…」

 

 歩くのをやめて錬金術を使っていたときの錬太郎を思い出す。彼を是非とも自分の仲間に加えたい。物体や空間の錬成、とても強力な力であるのは間違いない。アクアといい、めぐみんといい、ぶっ飛んだメンバーが多いパーティに自分以外に常識人枠が欲しいという理由もあるのだが。

 

「明日、相談してみるか…」

 

 カズマは明日にでも錬太郎を勧誘しようと意気込むと、再び歩き出した。

道を進んでいくと、その先に人影が見えた。中年の男性が夜道に座っていた。男性はカズマの方へ顔を向け、徐に立ち上がると

 

「おい、お前。金目のものをよこせ…」

 

虚な目でカズマを見据えて言った。

 ゲームで盗賊や山賊に出会したときによく聞くフレーズではあったが、彼の言い方は異様なまでにドスが効いていたため、カズマは背筋がぞくりと冷える感覚がした。本能が告げている、この男は危険だと。

 

「おい、出さねぇのか…なら、ちょっと痛い目に遭って貰おうか…」

 

そう言って男は気味悪い笑みを浮かべた。刹那、男を黒い霧のようなものが包み込み、次の瞬間男の姿は異形のものへと変わっていた。

 

シュモクザメのような白い牙を持つ水色の潜水艦と、銀色の素体を強引に結び付けたような怪物、サブマリンマルガムである。

 

 サブマリンマルガムはザッ、ザッとゆっくり音を立ててカズマ達に近づく。カズマは動かなかった、否、動けなかったのだ。ジャイアントトードとは違い、得体の知れない怪物が目の前にいるという潜在的恐怖によって体が思うように動かないのだ。

 こんな時でも背中にへばりついている女神はいびきをかいているのだからどうしようもない。こういう時こそ起きろよと思うものの現実は残酷である。

 

殺される、カズマが覚悟したその時だった。

 

『ダーッシュ!』

 

「グギャ!」

 

 この世界で聞くことはまずありえない筈のアクセルの音が鳴り響き、自分の背後から何かが颯爽と通りすぎるのを感じた。そしてその何かは目の前まで迫っていた怪物を吹き飛ばした。

 一瞬の出来事に困惑していると、自分の目の前に金色のバイクとそのバイクに跨る1人の男がいた。

 黒いローブと髪、間違いない。カズマは安心したような、緊張が解けたような声で彼の名を呼ぶ。

 

「れん…たろ…」

 

「アイツは僕に任せて」

 

錬太郎はバイクから降りると怪物の方へ向かう。

そして懐から黒とオレンジに彩られたタブレット端末に似たようなベルトを取り出して、腰に装着した。

 

「いくよ。ホッパー1、スチームライナー。」

 

『ホッパー!』

 

『スチーム!』

 

 錬太郎は取り出した2枚のカードに語りかける。勿論だと言わんばかりにカードの中のホッパー1とスチームライナーは答えた。

そして錬太郎はベルトに2枚のカードを装填した。

 

『ホッパー1!』『スチームライナー!』

 

 ベルトが装填したカードに宿るケミーの名前を読み上げるとともに、軽妙な待機音声を流す。

 錬太郎は両手で円を描く。そして両手を重ね、さらにその手を反転させて矢印の先端を形作り、正面に突き出すと猛々しく叫んだ。

 

「変身!」

 

『ガッチャーーンコ!』

 

『スチームホッパー!』

 

瞬く間に錬太郎の姿が変わった

 

飛蝗と蒸気機関車の意匠が施された青く煌めく鎧の戦士の姿へと。

 

「貴様、何者だ…?」

 

サブマリンマルガムの問いに戦士は落ち着いた口調で答える。

 

「ガッチャード。錬金戦士『ガッチャード』だ!」

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