この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

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今回は結構長くなっちゃっいました…


ふたりは爆裂魔法使いプリ「言わせねぇよ⁉︎」

とある屋敷の地下室にて。

 一人の肥え太った男が業を煮やしていた。

名をアレクセイ・バーネス・アルダープ。彼はアクセルの領主なのだが、不当な搾取に賄賂疑惑、女癖の悪さなど、黒い噂の絶えない絵に描いたような悪徳領主である。

そんな彼が目の敵にしている人物が2人。

 

佐藤和真と百瀬錬太郎である。

 

「クソ…あの小僧どもめ…たかが冒険者の分際でワシのララティーナをォォォォォォ!」

 

 怒声を響かせながら、石造りの壁に拳を打ちつけるアルダープ。彼にとってここまで物事が上手くいかないのは初めてなのである。

 ベルディアとドレッドがアクセルの街を襲撃した際の被害責任の借金をカズマのパーティに押し付けようとしたが、錬太郎によりその目論見は失敗。

 領主の権限で風評を操作しようにも、錬太郎はアクセルの街の人々からも信頼を寄せられているため悪い噂もなく、陥れようにも陥れられない。

 カズマも基本的には常識人かつ、錬太郎と同様、アクセルの冒険者達と打ち解けており、彼に関する噂も、濡れ衣を着せるには弱いものばかりだ。

 

どうしてそこまで2人を排除しようとするのか。それは、錬太郎とカズマが自身が目をつけている女性であるダクネス、本名ダスティネス・フォード・ララティーナと一緒にいることが気に食わない、要は嫉妬である。

 

 そしてそんな彼をうっとりと見つめる金髪で整った顔立ちをした細身の男が1人。

 

「ひゅう、アルダープ、今日の君はいつにもまして輝いているね…」

 

「マクス!あの小僧どもを呪い殺せ!お前の力なら出来るだろう!」

 

 アルダープは自身を見つめる男をマクスと呼び、命令する。しかし返ってきた答えはアルダープの満足するものではなかった。

 

「ひゅう、無理だよアルダープ。1人は近くに強力な力を持つプリーストがいるし、もう1人は体の中に七色の卵のような、僕でもどうしようもない大きな力があって、それに守られている。僕には無理だ。ひゅう」

 

「…ッ⁉︎⁉︎この役立たずがァァァァ!」

 

 アルダープはより一層声を荒げて、八つ当たりとばかりにマクスを蹴り飛ばす。その時、何者かが、アルダープ達の前に現れた。

 

「おやおや、随分と御乱心だねぇ…領主サマ」

 

「お、お前は…」

 

 先程の憤怒していた様子から一変。突然の来客を前に、みるみる顔を青ざめさせたアルダープは恐怖心からなのか、後退りする。

 来客は、一部金色の装飾が施された黒いスーツに身を包み、丸渕メガネを掛けている。そう、百瀬錬太郎と因縁深い男、ロードである。

 

「な、何をしに来た!まさか、あの男のようにワシのことを暴露しようとでもいうのか⁉︎冗談じゃない!お前に脅されて、錬金事変の真相を捻じ曲げてやった恩があるではないか!」

 

 焦った様子でロードに弁明するアルダープ。こんな時でも自らの保身に走る彼の様をロードはつまらなそうに見ていた。ロードはため息を一つこぼし、口火を切った。

 

「私は別にロロ・アストロギアのように君を告発するつもりなど毛頭ない。ただ、百瀬錬太郎達を陥れたいなら丁度いい材料があると教えに来ただけさ」

 

「な、何だと⁉︎」

 

 ロードの発言に食いつくアルダープ。排除したい人物達への有効策がない中、ロードの言う陥れるためのいい材料が気にならないわけがない。ロードは釣り針の餌に無我夢中で飛びついた魚のようなアルダープを見て、ニヤリと口角を上げると、詳細を語り始める。

 

「今現在、アクセルの街に機動要塞デストロイヤーが向かっている。百瀬錬太郎の性格からして確実に撃退に向かうだろう…その際、デストロイヤーによる被害の責任を奴に押し付けてやるのさ、辻褄合わせのマクスウェルがいるなら、それくらい可能だろう?」

 

「成程…ではサトウカズマは…」

 

「適当に百瀬錬太郎の行動に指示を出した者とでもすれば良いだろう、さぁ、思い立ったが吉日。今のうちからマクスウェルに命令でもしておくんだな」

 

 話し終えると、ロードは用は済んだとばかりに空間錬成を利用してその場を後にする。

そして地下室に残されたアルダープは、先程の激昂が嘘かのように高笑いを始めた。

 

「フフ…フフフ…ハハハハハハ!そうだその手があったな、マァクスゥゥ!いつでも力を使えるようにしておけ!ワシのララティーナを奪った報いだ、地獄を見せてやるぞ小僧ども!」

 

 アルダープは嬉々とした様子でマクスウェルを蹴り付けながら、地下室いっぱいに声を轟かせる。そしてマクスウェルもそんなアルダープを輝かしいと思いながら、自身の血で汚れた床を這いずって笑みを浮かべたのだった。

 

 一方、ロードは自身の研究室に戻り、そこではソラトスが出迎えてくれた。

 

「お帰りなさいませ、ロード様。しかし良かったのですか?あの領主に百瀬錬太郎を任せるのは…」

 

 ソラトスはロードにアルダープ介入によって齎されるであろう今後に懸念を漏らす。しかしロードは落ち着いた様子でソラトスを諭し始めた。

 

「問題ない、百瀬錬太郎のことだ。あの領主の思惑通りにはならないさ。ところでソラトスよ、何故私がアルダープに策を進言したか分かるかい?」

 

「…いえ」

 

「もうそろそろ潮時なのさ、アイツは…、あの豚…2年前のロロ・アストロギアの一件で私の楽しみを奪いとった時から見切りは付けていた…それに奴のことだ。何れ私を切り捨てる。ならば、先に切り捨ててやった方がいい。私の告げた作戦でボロを出してもらって豚箱、いや地獄に行って貰いたいのさ…」

 

 ロードは笑いながら語りかけていたが、いつものような飄々とした感じではない。静かな怒りを宿した威圧感のある声色に、ソラトスも少しばかり戦慄していた。

 

「ソラトスよ、ドレッドの力でデストロイヤーの戦いに乱入しておいで。錬成に必要な戦闘エネルギー、まだまだ必要だからな」

 

「⁉︎、はい!畏まりました」

 

 ロードからの指示を受け、ソラトスは跪いて忠誠の意を示す。それぞれの思惑が交差する中、アクセルの街の危機は、刻一刻と迫っていた。

 

 

 

 

 アクセルの街の屋敷にて。錬太郎はクロっちと共に、お菓子を食べていた。このお菓子はサキュバスのお店の責任者から渡されたものである。

 

『まさかサキュバスに殺されかけるなんてね…』

 

「うん…本当に死んじゃったら母さん泣いちゃってたよ…」

 

派遣された新人のサキュバスが、誤って錬太郎の精気を適量以上に吸ってしまい、生死を彷徨わせてしまったことのお詫びとして贈られたのだ。

 

さらに料金も返すと言ってきたのだが、自分は支払ったわけではないので、肩代わりしてくれたダストに渡すようにと断っておいた。まぁ、ダストのことなので戻ってきたお金はすぐに借金返済に使われるだろうが。

 

 そんな感じでいつもよりも長閑にのんびりと過ごしていたのだが、平和の崩壊はいつでも突然に。

 

ギルドよりアクセルの街全体に緊急放送が鳴り響いた。

 

『デストロイヤー警報!!デストロイヤー警報!!機動要塞デストロイヤーが現在アクセルの街に接近しております!!冒険者の皆様は各自装備を整えて至急冒険者ギルドへ!!そして住民の皆様は、今すぐに避難を開始してくださーい!!』

 

 ギルドの受付嬢であるルナの切羽詰まった様子のアナウンスに、錬太郎とクロっちは顔を見合わせる。遂に来てしまったのかと…。

 

 放送が終わると、当然と言うべきか屋敷のリビングは騒がしくなっていた。

 

「逃げましょう!かなり遠くに!」

 

「アクア、もうどうにもなりませんよ。デストロイヤーがやって来る以上、アクシズ教徒以外は草も残りません。何もかもなくなってしまうのですからいっそのこと魔王城に殴り込もうではありませんか!」

 

 デストロイヤー襲来にアクアは慌てふためきながら荷物をまとめ、既に荷物を纏め終えていためぐみんは諦めた様子でお茶を口に含んでいた。

しかしながら、あのデストロイヤーと悪い意味で隣に並べられるアクシズ教徒に、流石に錬太郎は同情…いや、信徒間の挨拶が「パンツ丸見え」なら致し方なしと、考えを改めることはなかった。

 

「僕はギルドに行くよ、デストロイヤー討伐に参加してくる」

 

「何を言っているのですかレンタロウ!私の話聞いてましたか⁉︎デストロイヤーを倒すなど、万に一つもあり得ないのですよ⁉︎」

 

 錬太郎の行動を無謀とばかりにめぐみんは制止する。しかし百瀬錬太郎という男、一度決めたことは曲げることはない。仲間想いであるめぐみんの気持ちは感謝しつつも、返す言葉は決まっていた。

 

「例えそうだとしても、やれることは全てやってから諦めるよ。行動しなきゃ始まらない、行動すれば、万に一つの可能性が出て来ることもあるかもしれないじゃないか。僕は、それに賭ける」

 

「錬太郎さん…私も行きます!この街を、絶対に守りましょう!」

 

 錬太郎の言葉に感化されたのか、ゆんゆんもギルドへと向かうことを決心する。そして時同じくして、二階から装備を整えてきたダクネスがやって来た。いつもに比べて遥かに重装備かつ、気合いの入ったその表情は、普段の様子からは想像もつかない女騎士そのものだった。

 

「すまない、準備をしていた。カズマ、お前も早く支度をしろ。錬太郎はもう大丈夫なようだな。カズマもギルドに行くつもりなのだろう?」

 

「ああ!お前らダクネスを見習え!この街に思い入れはないのか?折角手に入れた屋敷、手放してたまるかってんだ!」

 

 錬太郎とゆんゆんに続いてダクネス、カズマと対デストロイヤーに決意を固める。4人の覚悟にアクアとめぐみんは折れ、パーティメンバー全員は、ギルドへと足を進めたのだった。

 

 

 

 

 ギルドに到着すると、そこはいつもに比べて空気が張り詰めていた。酒を飲んで冒険話に花を咲かせる普段の面影は鳴りを顰め、皆、迫り来る脅威に向けて完全装備をしている。何故だか男性冒険者の比率が高いのだが、十中八九あの店であろう。

そしてミツルギやダスト達といった面々も集まっており、錬太郎は彼等をどこか頼もしく思えた。

 

 ある程度冒険者達が集まったことを確認すると、受付嬢のルナが声を上げる。

 

「皆さん、今回は緊急事態に際して集まっていただきありがとうございます!只今から機動要塞デストロイヤー討伐クエストを開始致します!皆様がこの街最後の砦です、それでは早速作戦会議に移ります!」

 

 

 

 作戦会議を始めてから、重苦しい空気がギルド全体を支配していた。どうも打開策が見えてこない。そもそも街をいくつも滅ぼしてきた機動要塞を駆け出しの街の冒険者達だけでなんとかしようとすること自体が無謀に等しいのだが、皆なんとかなるのではと考えていた。

 

違ったのだ、現実はそう甘くはない。本当にこの一言に尽きる。

 

 機動要塞デストロイヤーは、かつて技術大国と称されたノイズにて開発された対魔王軍用の超巨大ゴーレムで、8本の足を備えた蜘蛛のような外見をしている。

使用されている魔法金属により、その巨体からは想像もつかないような速さで移動し、強力な魔力結界が常に展開されているため、魔法攻撃は意味をなさない。物理攻撃も並大抵では強固な装甲で無効化され、あっという間に距離を詰められ踏み潰されてしまうだろう。

 さらに手がかりが掴めそうな技術大国ノイズはデストロイヤーに真っ先に滅ぼされており、落とし穴等の罠も簡単に対処されてしまうとも添えられ、正しく八方塞がりである。

 そんな中、クロっちが思い出したかのように一つ案を出した。

 

「ねぇ、アクアなら魔力結界なんとかできるんじゃない?前に1人でウィズのお店行った時に、ウィズからアクア程の実力なら魔王軍幹部2、3人くらいが維持してる結界なら壊せるって聞いたんだけど…どう、アクア?」

 

「う〜ん、こればっかりはやってみなきゃわからないわね…」

 

 クロっちからの問いに、いつもに比べて自信がないように答えるアクア。しかし可能性があるというだけでも、冒険者達にとっては大きな希望である。となると後は要塞をも穿ち抜く火力であるが…

 

「火力持ちならいるだろ!頭のおかしい奴が!」

 

「そうだな、狂った爆裂使いが!」

 

「おかしい子、頼むぞ!」

 

 冒険者達が声を上げ、次々にめぐみんへと視線を集めていく。が、頭がおかしいは禁句だ。怒りの沸点が低いめぐみんは口調を荒げて

 

「おい、私のことを頭がおかしいと言っているのならその喧嘩買ってやりましょう!しかし…私1人の爆裂魔法では完全に仕留め切れるかどうか…」

 

 めぐみんからの予想外の返答に場の盛り上がりが一気に静まり返る。彼女の爆裂魔法を持ってしても怪しいとなると、もう1人火力持ちが欲しいところ。

しかしゆんゆんのライト・オブ・セイバーはケミーの力を借りたとしても一瞬しか爆裂魔法の威力を上回ることができず、ミツルギも魔剣の力を使おうにも接近する必要があるため、今回の作戦においてはめぐみんとは水と油になるのは明白である。

 

『取り敢えず彼に連絡しておくか…多分今も腕は衰えてないだろうし…』

 

 クロっちは1人呟くと、ケミーライザーで誰かにメールを送る。その時だった。ギルドに1人の女性が大忙ぎでやってきたのだ。

 

「遅くなってごめんなさい。ウィズ魔道具店店主です。私も冒険者としての資格は持ってますのでお手伝いをしに来ました」

 

「店主さんだ!」

 

「これなら勝てる、勝てるぞ!」

 

「貧乏店主さん、夢の中でいつもありがとうございます!」

 

 ウィズの登場にギルドの者たちは皆湧き立つ。何人か変なことでお礼を述べていたが今は気にしない。どうやらウィズはかつて凄腕のアークウィザードだったそうで、爆裂魔法も扱えるというのだ。

 

希望が見えてきた、デストロイヤーを倒せるかもしれないという希望が。

 

『ウィ?そろそろ来たみたいだね…』

 

「あ、クロっちどこいくの?」

 

 何かの気配を感じ取ったクロっちが、1人ギルドから外へと足を運ぶ。錬太郎もクロっちを追って外に出た。

 

『錬太郎、来るよ!かつてダンと舞のパーティメンバーの中で災厄と呼ばれた男が!』

 

 暫くして遠くから鈴の音が響いて来る。地平線の彼方からママチャリのペダルを勢いよく漕ぎ回す、首に数珠をかけた白い袴姿の男が、奴が来た。一丁前にサングラスなんかかけて。

男はクロっち達の目前でブレーキを踏んでママチャリを停止させると、サドルから降りて、話しかける。

 

「やあクロっち、久しぶりだね」

 

『そっちこそ、建築会社で働いている時に駆り出してごめんね〜』

 

「いいさいいさ、ん?君は…」

 

 男は錬太郎の方に視線を移すと、どこか懐かしそうにまじまじと眺める。

 

『彼は百瀬錬太郎。ダンと舞の息子だよ』

 

「おお〜、あの2人の。道理で面影がある訳だなぁ、ハハハ!」

 

 男は納得したように笑うと、錬太郎の肩をポンポンと叩く。初対面の割に馴れ馴れしいなと感じながらも、錬太郎は男に1番気になっていることを尋ねた。

 

「あの…貴方は?クロっちと知り合いみたいですが…」

 

「おっと失礼、私は異界『ニホン』からの使者、

スターサンシャイン赤石!

君のお父さん、ダン・アストロギアの旧友さ。」

 

 

 

 

 ウィズや赤石もデストロイヤー討伐の作戦会議に加わり、最終的にアクアがデストロイヤーの魔力結界を壊した後、めぐみん、ウィズ、赤石の3人でデストロイヤーの脚部を魔法攻撃で破壊、万が一に備えて他の冒険者達もいつでも戦えるよう備えておくと決まった。余談だが、クロっちも魔法攻撃に参加しようとはしたが、赤石から『戦闘時に頼りになる君は消耗すべきではない』と止められたため後方支援に回ることとなった。

 今現在、錬太郎達冒険者達は正門に出揃い、対デストロイヤーのための最終準備に取り掛かっている。錬太郎はクロっちと共に、バリケードを作る作業に協力している。あまり効果がないとはいえ、ないよりはあったほうがいい。

 

「『万物はこれなる一物の改造として生まれうく』」

 

 錬金術を巧みに操ってバリケードをいくつか完成させると、錬太郎達は作戦により決められた自身の配置に戻った。

 

「さてと、後は迎撃まで待機…ん?カズマとダクネス、何やっているんだ?」

 

 遠くからカズマとダクネスが何やら揉めているような様子が見てとれた。遠いため、詳しくはわからないが、読唇術でなんとなくだが何を言っているかは把握できた。

『この街の人々を守る責務がある』。ダクネスはそう言った。いつもの性癖に忠実で、攻撃も当たらず、足を引っ張ることのあるあのダクネスからは少し考えられないような発言だ。

その後、説得は無理だと判断したようで、カズマは1人戻ってきた。

 

「ダクネス、凄い覚悟だね」

 

「錬太郎…まぁな。あんなダクネスははじめてかもしれん」

 

「そっか…まぁ王家の懐刀のご令嬢様なら当たり前か…」

 

「そうそう、そういう高貴な人は責任感が強く…おい、今なんて言った?」

 

 錬太郎の口から並べられた規模の大きすぎる言葉の数々に思わずカズマは待ったをかける。錬太郎はカズマに口で説明するより見た方が早いと判断し、スマホーンを手に取り、ダクネスの詳細が記された画面をカズマにも見せた。

 

「スマホーンはあらゆる冒険者達のデータを纏めておくことができる。その中でダクネスの項を見てみると、本名はダスティネス・フォード・ララティーナ。ダスティネス家は王家の懐刀として名が知れ渡っているようだよ」

 

「マジか…あの変態聖騎士(クルセイダー)は貴族だったのか…思えば装備やけに高価だったり、テーブルマナー完璧だったりしたけどそういうことだったのか…にしてもララティーナって…」

 

 ダクネスの可愛らしい本名というギャップに思わずぷぷぷと吹き出してしまうカズマ。錬太郎もカズマの緊張がほんの少し揺るんだことを安心し、ユニコン、インフェニックス、ザ・サン、フレイローズ、バレットバーン、アッパレブシドーの6枚のカードを手渡した。

 

「はいこれ、ユニコンはアクアを、インフェニックスとザ・サン、フレイローズはめぐみん達を、バレットバーンはカズマを、アッパレブシドーはミツルギくんをサポートしてくれるみたいだからさ。カズマは今からめぐみん達の元に戻るんだろう?この子達も一緒に連れて行ってくれないか?」

 

「わかった、でもいいのか?こういうのってお前がアイツらを鼓舞して渡す流れだと思うんだが…」

 

「アクアとめぐみんを一番理解してるのは君だ。かけてあげる言葉は、君の方が何倍も励みになる。そしてミツルギくんも、カズマのことを認めてるみたいだから総合的に見て君が一番適任と考えたのさ、だから自信持って行ってきな!」

 

「…そんな、褒めたって何もでねぇぞ…まぁ、行って来る!」

 

 錬太郎からの高評価にカズマは満更でもなさそうにはにかみ、その場を後にして皆のもとへ向かう。そしてカズマの背を見送ると同時に、ルナの緊迫した声が皆の鼓膜を揺らした。

 

「皆様、デストロイヤーが見えてきました!各自戦闘準備をお願いします!」

 

 水平線の彼方より、破壊者がその姿を現す。伝聞通り全身鋼鉄の肉体の蜘蛛。素早く動かされる八本足は大地を砕き、さらには揺らす。凄まじい轟音を響かせ、デストロイヤーはアクセルの街へと迫る。

 

「よし、アクア!」

 

「任せなさいな、ユニコン行くわよ!『セイクリッド・ブレイクスペル』!」

 

 カズマの指示のもと、アクアが杖を前に出して強力な解呪魔法を放つ。聖なる光は要塞へと瞬く間に迫り、その強固な結界へ命中する。

さらに…

 

『ユニコ〜ン!』

 

 ユニコンの加護によって魔法の威力は増していき、遂に結界に亀裂を走らせた。そこから結界のヒビはどんどん広がっていきやがて

 

パリーンと甲高い音を立てると共に、あっけなく砕け散った。

 

「よし、次!めぐみんとウィズとおっさん、頼んだぞ!」

 

「おい、この赤石はまだ35だ。おっさんでは…あるか…」

 

 デストロイヤーの結界を破壊した後は動きを止める必要がある。ウィズは狙いを要塞の脚に定めて魔法の詠唱を開始する。しかしめぐみんは未だに杖を両手で握りしめて緊張から体を震わせている。そんなめぐみんを鼓舞するかのようにカズマは大きな声を響かせる。

 

「めぐみん、お前は紅魔族随一の天才なんだろう?だったらこんなところで立ち止まらなぇよな!俺たちに最強の爆裂魔法を見せてくれよ!」

 

 カズマの声にはっ、とするめぐみん。さらに近くにいるインフェニックスとザ・サンも『力を貸す、だからいつも通り堂々としていなよ』と送る。皆からの激励にめぐみんは大きく深呼吸をすると、マントを翻し、高々と名乗りをあげる。

 

「スゥ〜ハァ…我としたことが、醜態を晒してしまいましたね…我が名はめぐみん!不死鳥と太陽の加護のもと、大地を揺るがす異形を屠らん!いきますよ!」

 

 すっかりもとの調子を取り戻しためぐみんは、ウィズの隣に立ち、魔法の詠唱を開始する。そして赤石も、首の数珠に宿った5つの光を輝かせ、念じるように腕を前に突き出した。

 

「女神より与えられし我が力、今再び解き放たん…

(はや)きこと風の如ごとく、(しず)かなること林の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、動かざること山の如し!』」

 

 3人を中心に強大な力が渦を巻く。さらに2体のケミーの力も加わり、展開された魔法陣に収まりきらないほど。

 

「「エクスプロージョン!!!」」

 

風林火山(ふうりんかざん)!!」

 

 放たれた魔法は要塞の左右の足を見事に貫き、鼓膜を破るほどの爆音とともに大地を震わして、さらには衝撃波を生み出し辺り一面に砂埃を撒き散らす。

 やがて視界が晴れ渡ると、機動要塞は、災厄は…

 

動きを止めていた。

 

「「「「「ウオオオオオオオ!!!!」」」」」

 

 冒険者達の歓声が上がる。作戦が見事成功し、アクセルの街が灰燼に帰す危機を乗り越えることが出来たのだ。冒険者達の間には安堵と勝利ムードが巻き起こっており、涙を流す者、ハグをして喜びあう者で溢れていた。

 

「くっ、ウィズには及ばずですか…無念です…」

 

「でも、めぐみんの爆裂魔法凄かったわよ。流石私のライバルね!」

 

 一方、魔力を使い果たしためぐみんはゆんゆんに背負ってもらっており、爆裂魔法の威力で劣っていたことを悔しがっていた。とはいえまだまだ伸び代があるというのに、既にデストロイヤーの足を穿ち抜くほどの威力となると、この先彼女の爆裂魔法がどう進化していくのか、未知数である。

 何はともあれ、要塞も機能停止したため、これにて一件落着かと思われた。

しかし、錬太郎達冒険者は忘れていた。最悪の幸運値を持ち、フラグを建てては即座に回収してしまう駄女神がいることを。

 

「機動要塞って名前の割には拍子抜けだったわね!帰って勝利の祝宴をしましょう!」

 

「おいバカ!なんでこうもわかりやすいフラグを立てるんだ!」

 

 アクアの発言にカズマが突っ込むが、時既に遅し。一級フラグ建築師の水の女神に呼応するかのようにデストロイヤーが小刻みに震え始める。

そして…

 

『この機体は機能停止になりました。現在、排熱並びに動力エネルギーの消費が不可能となっております。乗員は早急に避難してください。繰り返します…』

 

 エネルギー消費の不可、避難用のアナウンス。この2つだけでも冒険者達は、デストロイヤーがこれから何を引き起こすのかを察した。

 

自爆だ。

 

「アクアお前ェェェェ!余計なことしやがってコラァァァァ!!」

 

「いや私のせいじゃないわよ、設計に問題があるのよ!自爆するのはデストロイヤーの仕様でしょ⁉︎」

 

 こんな時でも相変わらずか、喧嘩を始めるカズマとアクア。この2人には緊張感というものがないのか。

とはいえ、事態は一刻の猶予も許さない。

デストロイヤー程巨大な要塞が爆発するとなると、アクセルの街一つ消し飛ぶことなど容易に想像がつく。今から逃げようにも、移動手段が皆無に等しい現状では、爆発を逃れることも絶望的。

 すぐに冒険者達の間から悲観する声や、絶望で泣き出す声が聞こえて来る。

 

「(皆が知恵を振り絞って、やっとなんとかなったのに…こんな不条理、あってたまるか!)」

 

 重苦しい空気が場を支配する中、錬太郎は1人奮い立ち、前に出る。

 

「錬太郎⁉︎お前どうする気だ?」

 

「カズマ、さっきのアナウンスから考えるに動力源となるものが中にあるはずだ。それをなんとかすれば…」

 

 錬太郎の発案に皆目を丸くする。その方法ならデストロイヤーの自爆もどうにかなるかもしれないが、無謀もいいところである。

 

「錬太郎さん、無茶ですよ!」

 

「ゆんゆんの言うとおりです!ケミー達の力があるとはいえレンタロウでも…」

 

「それでもやらなきゃ!今ここで諦めたら、アクセルの街がなくなる!冒険者達や住民達に消えない心の傷を刻むことになる!皆で過ごした日々が、この怨毒の出来事に塗りつぶされる…そんなの…耐えられるわけないだろ!」

 

「「「「「………ッッッッ!!!」」」」」

 

「アルケミアの二の舞は一生ゴメンだ、たとえ一人でも、僕はやる!」

 

 決意を固めた錬太郎は、ガッチャードライバーを腰に装着すると、2枚のカードを取り出して装填する。

 

『ホッパー1!』『スチームライナー!』

 

「変身!」

 

『ガッチャーーンコ!スチームホッパー!』

 

 猛々しい声を響かせて錬太郎はガッチャードへと姿を変える。そしてゴルドダッシュを顕現させると、爆速でデストロイヤーへと向かっていく。

 

 一方、錬太郎の気迫に押されて静まり返った冒険者達はアクセルの街の日々を思い返した。冒険やクエストに疲れた自分達を温かく出迎えてくれたアクセルの街。一つ一つが彼らにとって思い出の一ページである。錬太郎の心の叫びは、冒険者達の心に再び火を灯した。

 

「錬太郎の言うとおりだ、この街は俺たちをいつでも出迎えてくれた」

 

「みすみす諦めてなるかってんだ!」

 

 一人、また一人とデストロイヤーに立ち向かう覚悟を決めていく。

 

「あのお店もあるんだ、俺たちの桃源郷を失うわけにはいかねぇ!そうだろ⁉︎」

 

「「「「「オオオオオオオオ!!!」」」」」

 

 台無しである。あれほど胸熱な展開だったのに、最後の最後でサキュバスの店という不純な動機を掲げて雄叫びをあげる男性冒険者達。感動もクソもあったもんじゃない。女性陣達は皆冷ややかな目をして呆れていた。

 

「全く錬太郎は…焚き付けるだけ焚き付けてほったらかしやがって…しょおがねぇなぁ…いくぞお前ら!錬太郎に続くんだ!」

 

 カズマの声を合図に、冒険者達は一斉に要塞へ駆け出していく。アーチャー職の人々の手助けもあり、デストロイヤーの甲板へと次々と飛び乗っていく。めぐみんは魔力切れ、ダクネスは鎧が重すぎるため、その場に待機となった。

しかし、デストロイヤーから無数のゴーレムが洪水のように溢れ出して冒険者達の行手を阻む。相対する冒険者達だが、特に目覚ましい活躍をする者が三人。

 

「ハァ!ヤァ!」

 

 一人はミツルギ。魔剣の勇者としての力を遺憾なく発揮し、さらにアッパレブシドーとの共鳴により、刀身に炎を激らせながら鋭い太刀筋でゴーレム達を切り捨てていく。

 

「あれが神器の力か…俺もいくか!『狙撃』!」

 

 二人目はカズマ。高い幸運値と、どんな武器も即座に使いこなす器用っぷりを活かして、弓を用いてゴーレムを狙い撃っていく。通常の矢ならばゴーレムの装甲に傷をつけることは困難だが、バレットバーンの力で一撃必殺にまで威力が練り上げられ、命中した途端、ゴーレム達は爆発四散するのだ。

 

「…普通の矢で爆発ってどういう原理なんだろうな…」

 

 湧き上がって来る疑問が脳内を支配するが、ケミーの力だ、うんと勝手に納得して、カズマは引き続き迎撃を続けた。

 

「『ライト・オブ・セイバー』!!ハァァァァァァァ!」

 

 三人目はゆんゆん。紅魔族共通の高い魔力と魔法のバリエーションを活かして次々とゴーレム達を撃沈させていく。ケミー達の力も加わり、その力は強力無比だ。

 

 そして肝心のガッチャードだが、一体のゴーレムに苦戦を強いられていた。暁色のゴーレムで、なんとガッチャードやケミー達と類似した技を使って来るので、ガッチャードは奇妙な感覚を覚えつつ、徐々に追い詰められていた。

 

「どうする、クロっちはまだゴーレムと戦ってるから呼び出す訳にもいかない…ここはXレックスで…」

 

「果たして敵はゴーレムだけかな?ガッチャード?」

 

 ガッチャードの後ろから、ドスの効いた低い声が轟く。振り向くとそこには拳を構えたドレッドが。

 

『ゴリラセンセイ、ゴリラセンセイ、

ゴリラセンセイ、ゴリラセンセイ…ドレイン…』

 

『ブラッドサクリファイス!』

 

「ブッ飛べェェェェ!!!」

 

 弧を描くように下から上へと振り上げられたドレッドの拳は、ガッチャードの腹部に命中し、やがてガッチャードの体を宙へと誘う。

 

「グッ…ァァァァァァァァ!!!」

 

 その威力たるや、ガッチャードは天高く吹き飛ばされ、雲を貫き、やがて大気圏外へと弾き飛ばされてしまった。

 

「そんな…」

 

「バカな…百瀬錬太郎は錬金戦士…簡単にやられるなど…」

 

「れ、錬太郎さぁぁぁん!!!」

 

 ガッチャードの退場。その衝撃的な光景は、カズマやミツルギ、ゆんゆんを始めとした冒険者達に無残にも絶望を突きつける。しかし、これだけでは終わらない。

 

「さて、暁のゴーレムよ…我が眷属となってもらうぞ…」

 

『ズキュンパイア…ドレイン…』

 

 ベルトを通じてレプリズキュンパイアの力を抽出するドレッド。刹那、掌から赤黒い光を放ち、暁のゴーレムを包み込む。やがて光が収まると、ゴーレムはドレッドの隣に相棒のように並び立った。

 

「さぁ、俺たちを楽しませてくれよ…」

 

 暗黒の破壊者と暁のゴーレムの揃い踏み。圧倒的な威圧感に冒険者達は戦慄する。

 

「どうする?サトウカズマ…」

 

「どうするって、これ無理ゲーだろマツルギ…錬太郎不在ってなりゃ、ドレッドはどうしようもねぇ…」

 

 転生者2人もお手上げ。額に汗をかきながら、最後の悪あがきと覚悟を決める。

 

「ちょっとお待ち!」

 

 ミツルギとカズマの背後から声が響く。声の主は鍛え抜かれた体格に特徴的なつけまつげ、フリルを用いた服装と頭には黒いダーバンを巻いている。そう、いつぞやの洋菓子店主である。

 

「危険です、彼らの力は絶大!神器がなければ太刀打ちできません!」

 

 ミツルギは店主に下がるよう促すが、店主は右人差し指を立てて、チッチッチと動作する。

 

「甘く見てくださらないでよミスターミツルギ。私はこう見えて、あなたと同じ転生者で、かつてはダン・アストロギアという凄腕錬金術師とともに世界を駆け巡っていたの。戦いのイロハは身に沁みているわ!坊や達2人、

ここはこの鳳凰寺・ルシファー・グリンホルンにお任せよろしくて?」

 

 洋菓子店の店主、鳳凰寺は懐から刀のような装飾が備え付けられた漆黒のベルトを取り出して、腰に装着する。そして南京錠型のデバイス、『ロックシード』を手に取ると、解錠し、ベルトへ装填した。

 

「変・身!」

 

『ドリアン!』

 

『ロックオン!』

 

 鳳凰寺のベルトからロックなギターサウンドが鳴り響き、頭上には夥しい棘の鎧が出現する。右手をムチのようにたなびかせて、刀型の装飾、『カッティングプレート』を倒し、ロックシードを展開した。

 

『ドリアンアームズ!ミスター!デンジャラス!』

 

 鳳凰寺の頭上の鎧はゆっくりと降りてきて、やがて武装される。

 

果物の王を模した鎧をその身に纏い、両手に収まった二対の鈍器『ドリノコ』で悪き者に天誅を下す戦士

 

アーマードライダーブラーボの誕生である。

 

「さぁ始めますわよ!破壊と暴力のパジェントを!」

 

「面白え…楽しませてくれよ…」

 

 ブラーボ対ドレッド。互いに睨みを効かせる両者。第二ラウンドの幕が切って落とされた。

 

 

 

 

 一方でドレッドのアッパーによって大気圏外へ飛ばされてしまったガッチャードは、どのようにして戻ろうかと模索していた。

 

「どうしよう…何かいい方法は…ん?あれは…」

 

 ガッチャードは網膜に映し出されたその存在に目を疑った。

 それは隕石だ。隕石なのだが、何故か上機嫌と見た感じにわかるような不思議な隕石だった。

 

「まさか、宇宙にいたとはね…お願い!君の力を貸して欲しいんだ!」

 

『メ〜テ〜オ〜ン♪』

 

隕石に飛び乗ってガッチャードも宇宙より帰還する態勢に入った。

 

本当の闘いは、これからである。




デストロイヤー!ブラーボ!ママチャリ!風林火山!
詰め込みすぎましたね…
作中で説明していますが、赤石さんと鳳凰寺さんは転生者です。
あと実はちゃんとロードが登場したのは11話ぶりだったり…
オリ敵の暁ゴーレム、実はモデルがあったりします…
なんでしょうかね?

錬太郎宇宙に飛ばされちゃったけど…
多分不思議なことが起こったし大丈夫でしょ
RXもそうだったし…

最近名前だけちょくちょく出てます錬太郎の叔父、
ロロ・アストロギアについてですが、詳細が明かされるのはちょいと先です。
自分で言うのもアレですが、ロロに関することはちょっとシリアスなので。

そしてマクスに言われていた虹色の卵…その正体、
皆さんならお分かりで?

それではまた次回

次回予告
「流星の奇跡/月の光と聖なる魔法が拓く道」

えみりんの再登場は…

  • 早くていい
  • 運命の日までお預け
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