この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

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裁判編…きちゃったか…
タイトルふざけてるのは見逃してください…
こうでもしなきゃこの後の展開まあまあ辛いんですよ…


逮捕と尋問、カツ丼抜きで

「サトウカズマ、並びにモモセレンタロウ!貴様ら2人には国家転覆罪の疑いがかけられている。自分と共に来てもらおうか!」

 

 デストロイヤー討伐から数日、いつも通り賑わっていたアクセルのギルドは、数人の兵を引き連れた黒髪の女性の厳しい声色によって一瞬にして静まり返っていた。

 

「あの〜?どちら様でしょうか…?っていうか国家転覆罪って心当たりがないんだが…」

 

 カズマは女性の言っていることの訳が分からず、びくびくしながら挙手して尋ねた。

 

「私は王国検察官のセナというものだ。サトウカズマ、そしてモモセレンタロウ、現在貴様らにはテロリスト、もしくは魔王軍の手先の疑いがかけられている!」

 

 検察官を名乗る女性、セナから険しい視線とともに告げられる内容にギルド中の冒険者達はざわつき始め、アクア達パーティメンバーも慌てた様子で声を上げた。

 

「ええっ⁉︎ちょっとちょっと!カズマ、アンタ一体何やらかしたのよ?ほら、早く謝って、私も女神の慈悲で一緒にしてあげるから!」

 

「待ってください!カズマは私のパンツを盗んだり、平気でセクハラしたりと小さな犯罪はやりかねませんが、この男に国家転覆など実行するほどの度胸や勇気なんてありませんよ!」

 

「ふむ、私もめぐみんの意見に賛同だ。そんな大それたことが出来るなら、屋敷の中を薄着で彷徨(うろつ)いている私に夜這いをすることくらい容易(たやす)いだろうからな。鬼畜だのゲスだの言われているが、思った以上に意気地なしだぞ!」

 

「おい、俺の擁護するのか貶すのかどっちかにしろ!」

 

 アクア、めぐみん、ダクネスと3人からのあんまりな言い様、とはいえ事実にカズマは握り拳を作ってワナワナと震えている。そんな中、1人だけ冷静な様子の錬太郎は、詳細について把握するためセナに声をかける。

 

「ところでセナさん、僕達がどういった経緯でその疑いをかけられているのか、詳しく聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」

 

「モモセレンタロウ、貴様が機動要塞討伐の際に弾いたとされる氷塊が、アクセルの地を治める領主の屋敷に飛ばされたのだ」

 

「なんてこった…つまり錬太郎の自己防衛が不幸にも領主を殺してしまったのか…⁉︎」

 

 セナから冷たく告げられた詳細に両手を口に当てて震え出すカズマ。しれっと錬太郎を売り出してはいたのだが、誰もそのことについては言及しない。というか、錬太郎本人も気にしてすらいなかった。何故なら錬太郎はあの時、ドレッドから弾いた氷塊は上空へと飛ばしたからである。そして氷塊が空気抵抗に耐えられず、消滅したのもしっかりと確認していた。だからこそセナからかけられている疑いに、錬太郎は若干違和感を抱いているのだ。

 

「(どういうことだ…僕は街へ吹き飛ばしてしまうかもしれない可能性を考慮して上空に飛ばした筈…)」

 

「勝手に殺すなサトウカズマ!奇跡的に領主様は無事だった!そして徒党の主である貴様がモモセレンタロウにこの行動の指示を出したのではと疑いがかけられているのだ!」

 

「いや待て、確かにこのパーティのリーダーは俺だが、錬太郎に指示する余裕とかあの時はなかったんだって!」

 

 セナから追求になんとかして逃れようとカズマは必死に弁明する。そして、このことを不服に思っていたのはカズマだけではなかった。

 

「おいおいおい、国のお偉い様の遣いだがなんだかしらねぇが、この街の為に命をかけた2人を反逆者扱いだぁ?」

 

「ふざけるのも大概にしろよ!!」

 

「そうだそうだ、こんなの国家権力の横暴だ!」

 

 ギルド中の冒険者達が揃って抗議の声をあげる。自分らのことを思っての彼らの行動に、カズマは目尻に涙を浮かべた。

 しかし現実は非情。そんなの知ったことかとセナが放った一言がギルドに沈黙を齎す。

 

「言っておくが、国家転覆罪は主犯以外にも適用されることもある。この男達を庇う者は連行することも辞さないぞ?」

 

 途端に静まり返るギルド。最早カズマ達を擁護する者は誰一人としていなかった。

 

「お前ら…」

 

 わかりやすい掌返しにカズマは怒りを露わにする。彼らにとって自分達はその程度の存在だったのかと。一方、錬太郎はガッチャードライバーをはじめとする装備一式をクロっちに預けると、セナのもとへと近づいて両手を前に出して言った。

 

「わかりました、署で話させていただきます」

 

「れ、錬太郎お前!正気かよ⁉︎明らかにこれ冤罪だろ⁉︎」

 

「そうですよ、どうして錬太郎さんが…」

 

 錬太郎の行動に対してカズマとゆんゆんは異を唱える。しかし、錬太郎は2人の方を向くと、諭すように答えた。

 

「例え冤罪だとしても、僕が誰かの命を奪いかねなかったのなら裁きを受けるのは必然だ、だから僕は国のルールに則って行くよ…」

 

 覚悟の籠った瞳。そんな錬太郎の目を向けられてはカズマもゆんゆんも何も言えない。

 

「抵抗はしないと見ていいのだな?さぁ、来てもらおうか」

 

 こうして錬太郎とカズマは検察官セナによって連行された。ちなみにカズマの意見は聞かれていない。錬太郎が行くと発言したことに反対をしなかったため、彼に同意したと思われたのだ。とことん不憫である。

 

「俺の意見ぐらい聞けぇぇぇぇ!!!」

 

 兵達に両腕を拘束されながら、この不当な扱いを到底受け入れられないとばかりにカズマは終始叫び散らしたのだった。

 

 

 

 

 セナに錬太郎達が連行されてから数分後、ギルドでは冒険者達が愚痴を溢していた。国の遣いという強大な力を前に屈服するしかなかっただけで、内心では錬太郎やカズマに対する扱いに不満はあったのだ。そしてセナが去ってから溜まりに溜まったものを吐き出しているといった様子だ。

 

「こんなのおかしいだろ⁉︎」

 

「クソ…国の立場だからってデストロイヤー討伐の立役者2人を…」

 

 そしてそれは残されたカズマパーティの面々も例外ではない。

 

「取り敢えず、なんとかしてカズマと錬太郎を救い出さないと。作戦を立てて今夜にでも実行するわよ!」

 

「とはいえどうするつもりなのだ、アクア?」

 

 なんとかして牢からカズマと錬太郎を助け出そうと意気込むアクアにダクネスが尋ねる。アクアは自信満々な様子でフフンと鼻を鳴らして話し始めた。

 

「そんなの簡単よ、めぐみんに爆裂魔法を放ってもらって、衛兵達の注意を引いてもらうの。その隙にカズマと錬太郎に針金を渡して脱獄してもらおうって腹積(はらづも)りよ!」

 

「確かに囚われた仲間の窮地を協力して脱するのは、紅魔族の感覚からしても最高なのですが、流石に難しいのでは…」

 

『めぐみんの言うとおりだよ、ここで問題を起こす訳にはいかない。そんな作戦実行すれば後々の裁判で不利になるのは間違いなしだし…』

 

 アクアの提案に、めぐみんとクロっちの反応はあまり芳しいものではなかった。この作戦では下手すればパーティから新たに犯罪者を出しかねない。

 

「でもこのままじゃカズマや錬太郎がどうなるかわからないわよ…国家転覆罪は、最悪死刑判決よ?」

 

 厳かな雰囲気でアクアは言葉を発する。誰もアクアに返すことが出来ず、静寂が訪れる。カズマと錬太郎の為に何かしたいが、現状の自分達ではできることは限られる、そんなもどかしさが皆の心を蝕んでいた。

そんな時だった。

 

「お困りのようですねぇ〜」

 

 重苦しい空気を破るように、アクア達に声を掛ける者が1人。声に反応した皆が振り向いた先には、サングラスを着用し、アロハシャツの上に赤いレジャージャケットを羽織った男がそこにいた。

 

「あの…貴方は…」

 

 突然の来訪者に戸惑う中、代表してめぐみんが尋ねる。男は待ってましたとばかりに口角を上げると、飄々とした様子で話し始めた。

 

「あっしは情報屋、ダオルというものでね、今回の一件も含めてアルダープについて色々調べているのさ」

 

「そうなのか…それで、その情報屋が私達に何のようだ?」

 

「よくぞ聞いてくれました騎士様!今回の一件にはズバリ!陰謀があるってことですよ…」

 

 ダクネスの問いに、ダオルは少しばかりねっとりとした口調で答える。ダオルの憶測に女性陣達は驚きの表情を浮かべた、クロっちと質問者のダクネスを除いて。

 

「おや、そこの紫ローブさんは心当たりがあるような感じだねぇ〜」

 

『まぁね。覚えがあるんだ…2年前の錬金事変と同じ感じがする…』

 

 ダオルの陰謀説に、クロっちはいつになく神妙な顔つきで話す。

 

「あの、クロっちさん。陰謀って…」

 

「そのままの意味だよ、ゆんゆん。ベルディアの件で賠償金を請求されたのも、今回の錬太郎とカズマの件も、恐らくアルダープが仕組んだことだと思うんだ。だっておかしいでしょ?アクセルの街の危機を救った後、僕たちに悪いことが立て続けに起こってる…」

 

「えっと…もっと簡単に纏めてくれないかしら…?」

 

 クロっちが真剣に話しているにも関わらず、相変わらずの残念オツムのせいでよく理解できていないアクア。彼女らしいといえば彼女らしいのだが。そんなアクアに皆じっとりとした視線を向け溜息をつく。その後ダオルがクロっちの伝えたい意図を簡潔に説明した。

 

「要するに、世の中に伝達するものってのは全部が全部真実ではない、誰かが広めたがっているものが殆どってことさ!」

 

『おおっ!上手な纏め方だね!流石情報屋!』

 

「あらやだ(あね)さん、お世辞が上手だこと!」

 

『やだなぁ、姐さんだなんてぇ〜』

 

「んもぅ、照れちゃって!」

 

 クロっちからのおだてにふざけた様子で返すダオル。そして今度はクロっちが照れて、ダオルが弄る。まるで初対面とは思えないフレンドリーな様子である。因みに2人のテンションについていけず、アクア達は呆然としていた。

 

「さてと、実はあっしは皆様に頼みたいことが1つあるんでやんすが…」

 

 ダオルは唐突に申出の有を告げる。情報屋の彼からの頼みとは何なのだろうかと皆固唾を飲んだ。そしてダオルの口から宣されたことは…

 

「あっしを裁判の弁護人として入れて欲しいということさ!」

 

 ダオルの願いに皆目を丸くする。確かに情報屋という職業柄、裁判での検察官の追及に対して、弁護人としてうまく対応できないこともないかもしれない。しかし、ダクネスとめぐみんには引っかかる部分があった。

 

「だが、出会ったばかりの貴方が弁護するというのも些か変ではないだろうか…」

 

「そうですよ。それに、これは私達の問題ですから「…姉の無念を晴らしたい」…へ?」

 

 めぐみんが話し終える前にダオルは割り込んで口を開いた。先程の飄々とした様子ではない、真剣そのものの声色に、一同は少しばかり驚いていた。

 

「あっしの姉は、綺麗だった。綺麗だった体をアルダープにいいように利用されて、飽きたら捨てられた。しかしその事実は誰にも信じて貰えず、姉は心に大きな傷を負った…もう二度と、あんな悲劇は見たくない!例えそれが赤の他人であっても、見て見ぬふりはあっしにはできないんでやんすよ!頼む、どうかあっしに力を貸させてくれ!」

 

 ダオルは額を地面に強く擦り付けて土下座する。ダオルの心の叫びはダクネス達の胸を貫いた。純粋な善意でカズマと錬太郎の為に尽くしたいというダオルの本気の気持ちは、彼女達の心を動かしたのだ。

 

「わかった、貴方の意見を飲もう。だが、どうしようもないときは私に任せてくれ!」

 

「…⁉︎騎士様、ありがてぇ!全力尽くすんで宜しくお願いしますぜ!」

 

 差し出されたダクネスの右手を、ダオルは力一杯握って固い握手を交わす。そして、ダオルの弁護人としての参加にアクア、めぐみん、ゆんゆん、クロっちも賛同してくれた。

その後は裁判の日に備えるようにと、解散することになった。

 

アクア達が屋敷に帰るのを見送ると、ダオルはサングラスを取って不敵に笑い、ボソリと呟いた。

 

「それっぽい話を仕立てたら案外チョロかったな…魔力を言葉に含ませて支配する力を使わなくてもよかったかもな…」

 

外したサングラスにほうっと息を吹きかけるダオル。レンズの曇りをジャケットの裾で拭き取り再度着用すると、右手にキューブを持って弄りながら、陽気にスキップして何処かへと去ってしまった。

 

 

 

 

 翌々日、所変わってアクセルの街に立派な様子で聳え立つ警察署。

 カズマと錬太郎はその警察署の牢にて、凍える夜を何とかしのいでおり、今日はいよいよ聴取の日である。

 

 取調室を目指して寝起きの重い体を引き摺り、刑務所特有の長い廊下を歩いていた時のこと。

 

「にしてもクロっちとゆんゆんは天使だったなぁ。昨日面会に来てくれてよぉ。それに引き換え、あの信号機色の三馬鹿共は来なかった…裁判で無罪証明したら絶対泣かす!」

 

「落ち着きなってカズマ。なんか凄い情報屋を雇ったらしいから、3人はその人と一緒に領主に関する資料を読み漁ってる的なことゆんゆんが言ったよ。何も見えてるものだけが全てじゃないし、3人は3人なりの考えがあると思うんだ」

 

「ハァ〜、だといいんだが…」

 

 理不尽に牢屋へ連れて来られてからか、いつもよりも荒んだ様子のカズマを錬太郎は宥めながら、共に目的の場所へと向かう。

 『取調室』。部屋の名を記された看板の三文字が異様なまでに威圧感を醸し出している。2人は深呼吸を一つ挟むと、意を決して部屋の中へと入室した。

 取調室には威厳ある様子のセナ、そして書記と思われる人物が1人。そしてセナと対面になるような形で2つの椅子が用意されており、おそらくそれは錬太郎とカズマのものだろう。さらに机の上には、洒落た感じのベルが置かれていた。

 

「これより貴様達の取調べを行う。言っておくが、嘘をついても無駄だ。この机の上にあるのは嘘を見破る魔道具だからな」

 

 初めて会った時と変わらず、厳しい声色で告げるセナ。息が詰まりそうなくらい重たい空気の中、運命の裁判の前哨戦にあたる事情聴取が幕を開けた。

 

「では、サトウカズマから。年齢16歳、冒険者。まずは出身地、そして冒険者以前は何をしていたのか、話してもらおうか」

 

「出身地は日本、そこで学生をしていました…」

 

 カズマが回答すると、ベルの音がチリーンと鳴り響いた。成程、このように反応するのか、と錬太郎は感心しつつも、『え⁉︎カズマの今言ったこと嘘なの⁉︎』と少し驚いてもいた。

 

「…えっと、学生とは言いつつも、実際は家に引きこもって自堕落な生活を送っていました…」

 

 今度は鳴らない。どうやら学生という部分に見栄を張ったと判断されたようだ。とはいえカズマにとっては生き地獄である。錬太郎やセナにヒキニートだったとバレてしまったのだから。今までアクアに言われていたことが事実だと、白日の下に晒されたことに変わりはないのだから。

 

「ふむ、では次。モモセレンタロウ。年齢15歳、錬金術師。質問内容はサトウカズマと同じだ」

 

「出身地はアルケミア、そこの錬金アカデミーで生徒として錬金術師になるための勉学に勤めていました」

 

「…ベルは鳴らないか…それにしても錬金事変で滅びたアルケミア出身とはな…」

 

 錬太郎からの発言に偽りはないとして、セナは書記に伝えた。一方で錬太郎は錬金事変という単語に一瞬だけ眉をひくつかせるも、表には出さず、次の質問をカズマと共に待機する。

 

「サトウカズマの出身地のニホンはよくわからないが…まぁいいだろう。次の質問だ。どうして冒険者となったのか、それぞれ聞かせてもらう」

 

「魔王軍に苦しめられる人々のために…」

 

チリーン。

カズマが答えている最中に、またしてもベルの音が鳴り響き、錬太郎とセナのじっとりとした視線がカズマに集まる。

 

「…えっと、その…冒険者ってなんかかっこいいというか、楽して稼いでいけそうだし、可愛い女の子達とキャッキャ出来そうだなって…」

 

「そ、そうか…」

 

「カズマって意外と下心多かったんだね…」

 

「うるせぇ!下心があって悪いか!お前が異常なんだよこの鈍チン錬金術師!常々思ってたけど何でお前ばっか夢の異世界ライフ堪能してんだよ!」

 

「静かにしろ!モモセレンタロウに質疑出来ないだろう!」

 

「…はい」

 

 セナの声に体を震わせてカズマは押し黙る。錬太郎はカズマに言われたことを少し引きずっているのか、ほんの少し間を置いた後、話し始める。

 

「冒険者になったのは…困っている人を助けたいのと、母さん…そしてアスラとの、友との約束を果たす為です」

 

「ベルは鳴らない…本当のようだな。では領主殿に恨みはなかったのか?」

 

 まだカズマはセナに怒鳴られて気落ちしていたため、この質問は錬太郎から先に答えた。

 

「まぁ、彼に疑いを持ったことは何度かありますが、そんないなくなってほしいとか、そこまで大きな気持ちはなかったですね」

 

「…俺はずっと腹たってました…錬太郎が肩代わりしてくれたとはいえ高額の借金背負わせて挙句今回は犯罪者にされて…アクセルの街救ってやったのに、恨まないのが無理だろこんなの」

 

 対照的な2人の意見だが、ベルは鳴らなかったため、これは嘘でないのは確定だ。カズマの恨みっぷりに少々セナは当惑しながら次の質問に移ろうとする。

しかし…

 

「この際なんですけど、率直に貴方達は魔王軍の関係者なんですかって聞けば良くないですか?こんな回りくどいことしていても埒が明かないというか…」

 

 痺れを切らしたカズマがセナに向かって言う。そして一息ついた後にはっきりと伝えたいことを述べた。

 

「俺たちは魔王軍の関係者じゃない!」

 

 ベルは鳴らなかった。カズマの証言は事実であり、セナは観念したとばかりに丁寧な口調で話し始めた。

 

「やはり、間違っていたのは私のようでした。申し訳ございません。実績があるとはいえ、レンタロウさんはともかく、貴方は倫理観を疑ってしまうような悪い噂がちらほら散見しておりまして…」

 

「検察官が噂で少しでも人を疑うのはどうかと思うけどね!因みにどんな噂が?」

 

「えっと…盗賊スキルを伝授した女性の下着を剥いだり、仲間のプリーストを檻に閉じ込めて湖に放置したり、仲間のクルセイダーにお風呂で背中を流させたりなど…他にも色々」

 

 セナが見聞した噂の内容にカズマは無言になってしまう。セナは訝しげな視線を向けてカズマに詳細を尋ねた。

 

「あの…あくまで噂なんですよね?」

 

「噂です」

 

チリーン。

 セナの質問に間髪入れずに答えたカズマだったが、魔道具を欺くことはできなかった。セナの引き気味の視線に耐えきれず、カズマは錬太郎に助け舟を求めた。

 

「錬太郎〜」

 

「変に誤魔化さずに訳ありだったって言えば良かったじゃん!こほん、セナさん。カズマの噂ですが、下着を剥いだのは彼が盗賊スキルを試した際に起きた不慮の事故です。そしてプリーストの件ですが、それは彼女との合意の上でのことです。そしてクルセイダーのやつは…すみません僕わからないです」

 

「な、成程。そうだったのですね」

 

 完全な弁明は出来なかったものの、カズマの株をなんとか一定数保つことは出来た錬太郎。まさかパーティの中でまぁまぁ常識人であるカズマの尻拭いをしなければならない時が来るとは…。錬太郎は色々な思いが混じったため息を溢した。

 

「では最後に確認ですが、本当に魔王軍の関係者ではないのですね?魔王軍幹部と交流があったりとかは…」

 

「いやいや、だからないですって。錬太郎はともかく、俺はそんな大層な…」

 

チリーン。

ベルが鳴った。カズマの発言は嘘ということになる。刹那、カズマはとあることを思い出しながら顔を真っ青にする。前にアクアからウィズが魔王軍幹部であるということを聞いたのだ。そう、つまり交流はあるのだ。

 

「えっと…ベルが鳴ったのですが…」

 

 セナの視線が再び鋭いものに変わる。もうダメだ。カズマがそう悟ったとき、隣の錬太郎が徐に口を開く。

 

「セナさん、多分なんですけど…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルディアのことなんじゃないですか?」

 

「ベルディア?あの魔王軍幹部だったデュラハンのですか?」

 

「ええ、意識がなく操られていたとはいえ、カズマは単独でベルディアを討伐しました。恐らくですが、そのことを交流とみなされてベルは反応してしまったのかと…」

 

 錬太郎の話を聞いたセナは少し考えた後、成程と頭を何度か縦に振って納得してくれた。

そして無事取り調べが終わり、2人は牢の中に戻った。

 

「いや〜なんとか無実を証明出来たな…最後に鳴ったときはヤバイって思ったよ…」

 

「まぁ、ベルディアとの一件を交流って呼ぶかは弁明した自分でも些か疑問だけどね…」

 

「あの…錬太郎そのことなんだが…ウィズ、いるじゃん。魔道具店の店主でリッチーの…」

 

「?うん…」

 

「アクアによるとな、魔王軍幹部らしい…」

 

 カズマからのカミングアウトは錬太郎にとって今日一の衝撃だった。声を上げるくらい驚いたが、慌てて口に手を当てて塞ぐ。その後カズマからウィズは幹部になってから人様に手を出したことは一度もなく、魔王城の結界を維持する為のなんちゃって幹部と説明され、このことは裁判が終わるまで言わないようにと釘を刺された。錬太郎はぶんぶんと頭を縦に振り、その日は夜食を摂ってカズマと共に就寝した。

 

 運命の裁判の日は明日。各々の覚悟と謀略の入り乱れた混戦が、幕を開けようとしていた。




裁判に備える各々。
原作ではアクア達が脱獄させようとした描写がありましたが、クロっちが裁判に向けてやめた方がいいと助言したことで、脱獄計画はありませんでした。
謎の男、ダオルが残されたパーティメンバーに接触。アルダープについて追っている自称情報屋で、尚且つ錬太郎とカズマの無実証明に協力してくれるようですが、果たして彼は本当に味方なのでしょうか?
気になる裁判はまた次回。

次回予告
「お前が!!!!」
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