この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを! 作:山田プロキオン
そんな恐怖に貴方は耐えられますか?
信じられない伝達を受けてただただ走る。確かにロロ叔父さんは日に日にやつれていた。でも昨日は『大丈夫、これくらい何とかなる』と、見た目からは想像もつかない程元気に答えてくれたではないか。
やがて地平線の彼方から、ロロ叔父さんと生活を共にしている家が現れた。僕は押っ取り刀でドアを開けて、ロロ叔父さんの横たわるベッドへと急ぐ。そこで自身の網膜に映し出された光景に言葉を失った。
冷たく、脈もなく、息もしていないロロ叔父さん。
僕は…また守れなかった…錬金事変の時も、今回のロロ叔父さんも…
悲しみ、悔しさが心の中で洪水のように溢れ出し、僕は錬金事変の時と遜色ない慟哭をあげた。そして自分の無力さを再び呪うのだった。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
「⁉︎どうしたんだ、錬太郎⁉︎」
突然の錬太郎の叫び声に、ぐっすり安眠していたカズマも飛び起きて、何事かと尋ねる。カズマの視線に捉えられた錬太郎は、まだ寒い季節なのにも関わらず、服に染み込むくらいの大量の汗をかいていて、尚且つ息も荒かった。
「だ、大丈夫だから…ちょっと怖い夢を見ちゃって…」
「…そうか」
なんとか笑顔を作って安心するようカズマに促す錬太郎。鋭いカズマは、錬太郎がただ悪夢を見ただけではないと見抜いてはいたものの、追及するのは野暮だと思い、暫くして錬太郎が落ち着いたことを確認すると、布団を被り、再度眠りについたのだった。
カズマと錬太郎が国家転覆の容疑をかけられ、連行されてからはや3日が過ぎた。今日はいよいよ2人の裁判の日。容疑の内容が内容なのと、原告人がアクセルの街の領主のアルダープということもあって、多くの人の関心を惹き寄せたのか、裁判所には傍聴人で溢れていた。
「カズマに錬太郎、女神の私に任せときなさい!完璧な弁護でちょちょいのちょいよ!早く異議あり!とか言ってみたいわぁ!」
初めての裁判ということもあってか、アクアはかなり興奮気味。こんな状態で本当に弁護ができるのだろうか。一応取調で白を証明できたとはいえ、弁護人の1人がこの調子では、カズマと錬太郎の不安に火をつけてしまう。
「おい…お前ら本当に頼むぞ…余計なことはマジですんなよな」
「心配いりませんよカズマ。紅魔族は知力が高い…故に弁護などこの私には容易いことです!さらに!強力な助っ人もいますから肩の力を抜いて大丈夫ですよ!」
「お〜、めぐみんの姉御はりきってるね〜!あ、どうも、弁護側として協力させていただきやす、ダオルでありんす。宜しく頼みますぜ、カズマの旦那と、錬太郎の兄貴!」
カズマと錬太郎は、めぐみんより紹介されたダオルに視線を向ける。ダストとは違うベクトルで如何にも問題児のような波動を感じ取ったカズマは心の中で両膝をついて項垂れていた。
「あのロリっ子…どうしてあんなのに頼ったんだよ…完全にハズレじゃねぇか…」
一方で、錬太郎はダオルに既視感を覚えた。飄々とした様子に上手いように隠された読み取れない部分は、何処か因縁深い
「いや…考えすぎか…」
そして原告人の領主、検察官のセナ、裁判長らの入室が完了し、遂に運命の審判の刻が訪れた。
「静粛に。これより、国家転覆罪の疑いがある被告人サトウカズマ、並びにモモセレンタロウの裁判を開始する。告発人はアクセル領主、アレクセイ・バーネス・アルダープ」
裁判長の裁判開始の掛け声に、アルダープは起立する。そして弁護席にいるアクア達女性陣、特にダクネスに下劣そうな視線を向けた。
『ウィ?なんだかあの領主、僕たちの方を見てない?』
「そうですね…なんだかあの視線、気味が悪いです…」
「私もぼっちの意見に同じです。あのいやらしい目は風呂上がりのダクネスにカズマが向けていた野獣の目ですよ」
「おいめぐみん!お前俺の弁護する側だろ!変なこと言うんじゃねぇ!」
めぐみんの発言に食いつくカズマ。この裁判で自分の命運が決まるのもあってか、いつもよりも大きな声をあげる。
そんなカズマ達に呆れた視線を向けながら、裁判長は力強く木槌を打ちつけ、低い声で注意を促した。
「今は裁判中。私語は慎むように。それでは、検察官は起訴状を。この法廷には嘘を見破る魔道具が備えてあるので、真実のみを話すように」
裁判長の指示を受けたセナは、椅子から腰を上げると起訴状を読み上げる。
「では、起訴状を。被告人サトウカズマとモモセレンタロウは、アクセルの街に現れた機動要塞デストロイヤーを冒険者達と一致団結してこれを撃破。その際に現れた黒い戦士の繰り出した氷塊をサトウカズマが領主の屋敷に弾くようモモセレンタロウに指示を出し、その結果として屋敷を破壊。領主という立場の人間の命を脅かしたことは、国家を揺るがしかねない事件と見ています。よって容疑者2人に有罪判決を求めます」
「異議あり!」
セナの起訴状読み上げが終わると、アクアが元気よく挙手をした。
「弁護人にまだ発言権は与えていないのですが…まぁ、いいでしょう。では発言を」
「いえ、裁判で定番の異議ありを言ってみたかっただけです!」
『自分の欲を優先しない!これは大事な裁判なんだよ!』
アクアの幼稚な理由に、クロっちは戒めの意味を込めて斜め45度のチョップをアクアの頭に叩き込む。打ち込まれた角度が良かったのか、アクアは必死に頭を押さえて悶えていた。
裁判長は溜息をついてカズマと錬太郎に向き直ると、
「ハァ…被告人は弁護人をしっかり選ぶように」
「ウチの馬鹿がすみません…」
裁判長からの言葉に、カズマはただ謝ることしかできなかった。その後、裁判長が咳払いを1つ挟んだ後、裁判が再開される。
「こほん。では、被告人と弁護人に発言の許可を出します。陳述を」
漸くカズマ達の発言の順が回って来た。ここでの発言は重要になってくるが、変な見栄を張ったりでもしない限り大丈夫だろう。錬太郎とカズマは立ち上がり、自分達の無実を訴える。
「確かに僕達はデストロイヤーを討伐し、その際に乱入してきた黒い戦士のドレッドとも交戦しました。ドレッドの攻撃の件ですが、街への被害を考慮して上空に弾きました。そしてその際、カズマはゴーレムとの戦闘にかかりきりだったので、指示を出す余裕はありませんでした」
「そうそう、それに俺は魔王軍幹部を単独で討伐というすぅんばらしい功績を打ち立ててるんですよ?国から栄典を授与されてもいいと思いますけどね!」
2人の言い分を法廷にいる者達は一言一句逃さずに聞き取る。カズマはドレッドとして操られていたという重要な部分を切り抜いて仰々しく話してはいたものの、両者の供述は事実で変わりないので、魔道具の反応はなかった。
「ふむ。被告人の発言は以上ですね。それでは検察官、被告人2人の証拠提示を」
「では、これより被告人2人の有罪を証明するため、証人を召集致します。その証言から、サトウカズマの人間性が如何なるものなのか、明らかになるかと」
セナの発言とともに、扉が開かれると、衛兵達とともに何人かの証人が連れてこられた。
それは錬太郎達も良く知る人物である、クリスとミツルギ、そして彼のパーティメンバーであるクレメアとフィオだった。
「では、クリスさん。貴方はサトウカズマに盗賊スキルを使われて下着を奪われ、晴天の空の下、勢いよく振り回されたということですね?」
「あはは…そうなんですけど、自分が盗賊スキルの練習と題して勝負を仕掛けたのと彼の高い幸運値が災いした事故です。今はもう気にしてないですよ。それにあたしも彼の財布盗んじゃったし…」
「成程。下着を剥がれたのは事実というわけですね。それではミツルギさん、貴方はサトウカズマが仲間のプリーストを檻に閉じ込めていたのを助けたようですが…」
「はい。ですが、それはクエストを達成するための作戦だそうで、サトウカズマはアクア様…プリーストの合意の上で行ったのです!短い間の関係でしたが、僕は彼らが国家転覆なんて大それたことを実行するなど到底考えられません!」
ミツルギの陳述に、カズマと錬太郎は大きく目を見開く。今は自分達が魔王軍関係者と思わしきことを証言するときではないだろうかと。そんな2人に一瞬だけセナは振り返ると、優しく笑みを浮かべた。その笑みから錬太郎は何かを読み取ったのか、カズマにヒソヒソと伝える。
「そういえば、僕達の白はほぼ確実だから、検察官の立場上限られるけど、セナさんがサポートしてくれるって言ってたよね?もしかしてこれは…」
「多分そうだな…それにしてもナイステバサキ!イケメンでチートでムカついてるけど、今だけは感謝しといてやるよ!」
「ミツルギね、カズマ…」
相変わらずミツルギの名前を間違えるカズマに突っ込む錬太郎。しかし流れは一気にカズマと錬太郎達の方に傾き始めている。そのことが気に食わなかったのか、先程まで静かだったアルダープが声を荒げて裁判長に訴える。
「裁判長!時間の無駄だ、迅速に判決を!こいつらはテロリストだ!ワシの命を奪おうとした!魔王軍の手先だ!今すぐに極刑を科せ!」
アルダープのあんまりな言い様に法廷がざわつき始める。傍聴している皆が困惑する中、アルダープの発言に錬太郎とカズマも対抗して声を上げた。
「待ってくれ!俺達はテロリストでもないし、魔王軍の関係者でもない!」
「本当なんです!信じてください!」
カズマと錬太郎の発言には、やはり魔道具から音は鳴らない。法廷でのこれまでを踏まえ、裁判長は木槌を打って判決を言い渡す。
「判決を下します。魔道具の反応を見るに、被告人らの発言に偽りはなく、検察官から提示された証拠も不十分。よって被告人サトウカズマとモモセレンタロウは無罪…」
「裁判長…ワシに恥をかかせるとどうなるか…わかっているのだろう?」
アルダープの脅しともとれる言葉に裁判長は黙り込む。そして再度木槌を打ち、皆が耳を疑うようなことを告げた。
「被告人サトウカズマとモモセレンタロウは有罪。よって死刑を言い渡す」
衝撃的な掌返しに法廷は一度静寂し、再びどよめきだした。
「おい待てよ!こんなのおかしいだろ!何で一瞬にして判決が覆るんだよ!」
「そうです!明らかに不自然ですよ!」
裁判長の下した結論にカズマとめぐみんは到底納得できず、抗議の声を上げる。錬太郎とクロっち、そしてゆんゆんは何が起こったのか分からずに混乱していて、何も言うことができなかった。一方で、アクアは何処か訝しげな目で辺りを見回し、ダクネスは意を決して何かを取り出して立ちあがろうとしていた。
そんなとき、1人の男が口火を切った。
「裁判長に異議あ〜り!法廷でカズマの旦那と錬太郎の兄貴の無実は十分に証明されたのに、たった1人の権力者に怯えて判決を変えるなんてどうかと思いますね〜」
今まで裁判を静観していたダオルが遂に動いた。法廷にいた人々は、皆ダオルへ視線を向けた。そしてそれは、アルダープも例外ではない。
「なんだと貴様!言ったはずだ、コイツらはワシの命を狙った!人類の敵だ!」
「だ〜か〜ら〜、旦那や兄貴達の発言が事実と証明された時点で領主サマの屋敷に弾かれた攻撃が降ってくるのはあり得ないって判明したじゃないですか〜。嫌だね〜、こういう現実を受け入れられない大人。皆さんもそう思いませんか?国の司法を権力を使って掌握しようだなんて、裁判の意味がないですよねぇ〜?」
ダオルは巧みな話術で傍聴している者達に声を投げかけ、賛同を煽る。先程の裁判長の判決に納得できていない者達は揃って同意を示めした。
「そうだそうだ!」
「大の大人が情けない!」
「悪徳領主反対〜!」
今までアルダープに疑惑や不満を抱えていた者も多数いたこともあってか、民衆の声は波紋のように広がり、段々と大きくなる。
「いいぞお前ら!もっと言ってやれ〜」
因みにカズマもダオルが焚き付けた人々に便乗して声をあげていた。調子が良くなるといい気になるのは実にカズマらしいのだが。
そんなとき、ゆんゆんが錬太郎から預かっていたガッチャードローホルダーからホッパー1が飛び出した。
『ホッパー!』
「どうしたの、ホッパーちゃん?」
「急に出てきて何かあったのか?」
ホッパー1の出現に、ゆんゆんとダクネスは何処か不思議そうにして声をかける。
ホッパー1はアルダープを見据えて威嚇するかのように唸り声をあげた。
『ホッパー…ホッパー!!』
錬太郎はホッパー1の反応にハッとする。これは悪意や邪悪な力に対する警戒だ。ケミーは純粋故に善意にも悪意にも敏感。その特性が今現れているのだ。そして、ホッパー1が伝えたいことを錬太郎が言葉にして紡ぐ。
「この法廷に悪魔が紛れ込んでる…そうなのか⁉︎ホッパー1!」
『ホッパー!』
錬太郎の問いにホッパー1が力強く答える。
新たな情報にまたしても法廷がざわめき始め、その中でアルダープは1人顔を青ざめさせていた。
そんなアルダープの様子を1人見逃さなかったダオルは、口角をあげた後、裁判長に大声で提案を出す。
「裁判長〜、今この場で浄化魔法の発動の許可をお願いしま〜す!」
「な、何を言う⁉︎そんなことする必要はない!!」
ダオルの申し出に慌てて反対するアルダープ。しかし彼が反対することも予測済みだったダオルは再び続ける。
「公平に行われるべき裁判に悪魔が関与したとなれば、それはそれは国の司法を大きく揺るがすことの裏返し。浄化魔法は普通の人間に害はありませんから安心安全です。常に清く正しい法廷を維持するために何とぞ許可を」
「ふむ、そうですね。浄化魔法の使用を許可します」
「ま、待て⁉︎そんなこと「よ〜し、私の出番ね!『セイクリッド・エクソシズム』!」やめろ〜!!」
アルダープの声を聞き終える前に、やる気満々のアクアが浄化魔法を放ち、法廷が白い光に包まれる。
そしてその光は、法廷に潜む邪悪を暴いてみせた。
「ヒュー、ヒュー!」
なんとアルダープの付近から整った顔立ちの細身で金髪の青年が姿を現したのだ。
突然現れたその青年に、法廷にいる皆は驚愕すると同時に今まで感じたことのない怖気を抱く。ただ、例外としてアクアとクリスは殺気を剥き出しにしていた。
そんな混沌と化した状況の中、ダオルは臆すことなく現れた青年に質問をする。
「おやおや、本当に悪魔がいるとは…あのバッタちゃんの言ったことは本当だったようだね…ところで青年、君の名は?」
「ヒュー、僕?僕は辻褄合わせの悪魔のマクスウェル。あれ?何で思い出すことが出来たんだろう?」
「辻褄合わせってことは…今までに幾つか捻じ曲げてきたことがあるのかい?」
「うん、勿論。アルダープに頼まれて色々捻じ曲げたよ。さっきの判決や、魔王軍の幹部討伐にデストロイヤーに錬金事変。あと…
ロロ・アストロギアって人に呪いをかけたこともあるよ。ん〜?今日はやけに色々思い出すなぁ…」
マクスウェルの口から衝撃的なことが次々と語られる。
マクスウェルの発言に、アルダープはこの上ないほど顔を青く染める。必死に弁明しようと試みたが…
「ち、違う!そんなことワシは…」
チリーン。
今まで一度も鳴らなかった魔道具の音色が法廷に響き渡る。そして当然と言うべきか、傍聴人達の冷たい視線がアルダープに無数の鋭い槍の如く向けられる。
「やっぱ怪しいと思ってたぜ!でもあの悪魔をどうするか…」
「任せないなカズマ!アクア様の名の下に成敗してくれるわ!」
「先輩、あたしも力貸しますよ…悪魔は滅ぶべし!」
カズマの心配にアクアとクリスがいつもより頼もしく答える。その頼もしさと同時に漏れ出している殺意にカズマは少々引いてもいたが…。
しかし、事態は思わぬ展開を迎えることとなる。
「ねぇ…どういうこと?錬金事変を捻じ曲げた…?ロロ叔父さんに呪いをかけたって…教えてよ、どういうことなの…ねぇ!」
錬太郎がいつになく声を荒げた。その荒々しさたるや、法廷の中を一瞬にして彼の声だけで染めた。先程までアルダープに向けられていた多くの視線が、今度は錬太郎へと移動する。
錬太郎は大勢の目を気にすることなく、アルダープとマクスウェル、ただ2人をその瞳に捉えて同じ質問を繰り返す。
「答えてよ…錬金事変もそうだけどロロ叔父さんが死んだのは…アンタらのせいなの?何で…何で、何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で⁉︎
どうして…ロロ叔父さんを!!!」
「ヒィィィィ!!」
怒気の孕んだ錬太郎の叫びにアルダープは愚か、法廷にいた全員が戦慄する。
刹那、錬太郎の瞳が虹色に輝き、体から虹色の炎が溢れ出す。息をすることさえ忘れてしまいそうな美しい炎は、一同に鬼神の如き状態の錬太郎への恐怖心をより一層増大させるには十分だった。
「な…何なんだあの小僧は⁉︎何なのだあの炎は…」
「ヒュー…いいねアルダープ。今の君の怯えっぷり、惚れ惚れするよ…」
歩みを寄せる錬太郎を前に対照的な反応をする2人。そのとき、ダオルがアルダープの隣に立って、右手を前に出して錬太郎に静止を促す。そしてアルダープの方を向き直り、嘲るように言葉を吐き綴った。
「アハハハハ…情けないねぇアルダープ…まさか一気に追い詰められるなんて…」
「黙れ!元はと言えば貴様が場を掻き乱したからではないか!折角…奴の作戦に従って上手くいくはずだったのに…」
「へぇ…その奴って
こんな顔かい?」
ダオルは自身の顔面の皮膚を掴み、思い切り引き剥がす。その衝撃的すぎる光景に、その場にいた者達は目を逸らした。そして、再び彼らが目を向けた先にいたのはダオルではなかった。
「まさか、こんなに上手く転がってくれるとは思いもしなかったよ」
「ロード…貴様ァァァァ!!!」
アルダープはダオル改めロードに激情し、拳を振り上げて向かっていく。だが、ロードは軽くあしらうと、衝撃波を発生させてアルダープを地面に転がせた。
「ふぅ、正体明かして早々攻撃を仕掛けてくるとは…物騒な領主だこと。あ、そうだ。百瀬錬太郎、情報屋ダオルとして1つ教えておくよ。確かに君の叔父、ロロ・アストロギアはマクスウェルに呪い殺されたが、私はロロの件では指示を出していない」
「どういうことだ⁉︎」
ロードの発言の真意が分からず、荒げた声のまま錬太郎は聞き返す。先程の会話からロードとアルダープが繋がっていたのは明白。ではロードが指示を出したのではないかと疑うのは必然。しかしそれが否となると、気にならないわけがない。
「錬金事変を捻じ曲げさせるよう指示を出したのは私だが…遡ること2年前、君は王都にいた頃にロロと一緒に錬金事変の真実を訴えていただろう?そしてロロは並行して私について調べていた。賢かった彼はその過程でアルダープの真相に辿り着いたのさ。でも、ロロに暴露されることを恐れたアルダープがマクスウェルの呪いで…」
ロードは言葉を区切ると、右手の親指を立てて、首を切るジェスチャーをして見せる。そう、錬太郎の叔父のロロは、アルダープが保身の為にマクスウェルの呪いで殺したのだ。
その真実は、錬太郎の中の何かを粉々に砕いてしまった。
「保身の為に…ロロ叔父さんを…自分の悪事を隠したいというたったそれだけの理由で…そうかそうか…そういうことだったのか…
アレクセイ・バーネス・アルダープ…
お前が!!!!」
錬太郎の怒りに呼応し、身体中から燃え滾る炎は黒く染まる。全てを飲み込まんとする漆黒には皆、ただただ恐怖するしかなかった。
「れ…錬太郎…?」
何とか声を振り絞るカズマ。ふと視線を地面に移すと赤い水溜りのようなものが出来ていた。そしてその真上には力強く握りしめられた錬太郎の拳。憤怒のあまり、食い込んだ指の爪が錬太郎の手のひらから血を滴らせていたのだ。
「先輩…これって…」
「エリス、アンタも気づいたようね。まさか錬太郎にカタストロフと同じ力が…」
女神であるアクアとクリスもといエリスでさえ不安を滲ませた声になっている一方で、ロードは錬太郎の身体から燃え盛っている炎を見て、子供のように嬉々として目を輝かせている。
「素晴らしい…伝承で破壊神が賢者の石の力で発現させたという黒い炎…まさか、本当に見られる日が来るとは…」
「お、おいロード…わ、ワシを助けてくれ…」
ロードに向かって助けを懇願するアルダープ。最早先程までの威勢はまるで感じられない。そんなアルダープに地面に投げ捨てられたゴミを見るような目を向けて、ロードは冷たく言い放つ。
「はぁ?私はクズを見捨てることで定評がある男…自分の身ぐらい自分で守れよ…」
ロードは懐からインセクトケミーのレベルナンバー10、『ビートルクス』のカードを取り出して、アルダープとマクスウェルに向かって投げ捨てる。刹那、ビートルクスは2人に取り込まれてしまった。
「や、やめ…ウガァァァァァ⁉︎⁉︎⁉︎」
アルダープの悲鳴と共に出現した黒煙は瞬く間に彼とマクスウェルを包み込み、化け物に姿を変化させる。
包帯が全身に巡らされた素体に、力強いカブトムシが捕らわれたような醜悪な見た目の怪物ーー
ビートルマルガムである。
「さて、裁判中止。黒い炎の力、みせておくれよ…」
はい…今回もてんこ盛り。
裁判どころじゃないですね(他人事)
錬太郎、黒い炎を纏ってガチギレする。
この黒い炎は原作ガッチャードと設定が違いまして、賢者の石、つまり錬太郎の中の虹の卵に付随する力になります。なので、発火した当初は虹色だった訳です。
幽霊屋敷編での錬太郎の回想や、アルダープとロードの会話の際に仄めかしてましたが、ロロ叔父さんはロードの言う通り、アルダープの保身のためにマクスウェルの呪いで殺されていました
ちょっと錬太郎の経歴が複雑だと思いますので、まとめますと、
錬金事変で故郷のアルケミアが滅ぼされる。
↓
王都に住む叔父のロロの元に身を寄せる
↓
ロロと一緒に錬金事変の真実を世間に訴える
↓
アルダープの真相に迫ったロロがマクスによって呪い殺され孤児となり、ケミー達と共に残りのケミー探しの放浪の旅に出る。
↓
アクセルの街にやってくる
こんな感じです。いよいよ錬太郎も秘密を隠し通せなくなってきました…
そして情報屋ダオルの正体はロードでした
因みにダオルを英語に直すと
DAOLとなり逆から読むとLOAD、ロードとなります
名前から答えでしたね…
記憶力の乏しいマクスがすんなり捻じ曲げた数々を思い出して暴露したのは、ロードの言葉に魔力を含ませて支配する能力を受けたためです。
最後に、クリスマス、大晦日に投稿するとかほざきつつ、筆がかなり進んだため予定より早く出したことをお詫び申し上げます
皆様、メリークリスマス!明日は良き聖夜を!
そして次回は第2章、最終回です!お楽しみに
次回予告
「すれ違い始める心」