この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

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第二章、最終回です

年末はデイブレイクガッチャードライバーとヴラスタムギアでずっと遊んでますが、メッチャ楽しいです。


すれ違い始める心

 アルダープとマクスウェルが変貌したビートルマルガムの登場により、法廷に悲鳴の嵐が巻き起こる。

 

「キャアアアアア⁉︎⁉︎⁉︎」

 

「あ、悪徳領主が怪物に⁉︎」

 

「こ、殺される…誰か助けてくれぇぇぇぇ!!」

 

 人々の恐怖に慄き助けを求める声に、錬太郎はハッと我に返り黒い炎を収めると、即座にゆんゆんの方に向き直って右手を差し出す。

 

「ゆんゆん、ベルトを!マルガムを止めなきゃ、裁判所の人達が!」

 

「は、はい!」

 

 ゆんゆんは錬太郎の気迫に少々押されながらも、弁護席からガッチャードライバーと、ガッチャードローホルダー、そしてケミーライザーを投げ渡した。

装備一式を取り戻した錬太郎は、ベルトを腰に装着すると、2枚のカードを取り出してベルトへと装填し、戦士へと変身する。

 

『スタッグバイン!』『ミテミラー!』

 

「変身!」

 

『ガッチャーーンコ!スタッグミラー!』

 

真実を照らす白銀の装甲と両手の剣が、悪に裁きを下す

ーー仮面ライダーガッチャード スタッグミラーの誕生である。

 

「いくぞ、ハァ!」

 

 ガッチャードは身軽に証言台を飛び越えて、マルガムに肉薄し、両腕の剣で縦横無尽に斬りつける。

しかし、流石はレベルナンバー10のマルガム。その強固な装甲には傷一つ付かず、やがてガッチャードの右手からの斬撃を片手で受け止めると、そのまま傍聴席へと投げ飛ばした。

 

「クッ…やっぱり、スーパーガッチャードじゃなきゃ…」

 

 息つく暇もなく、マルガムは甲虫特有の飛行能力で一瞬にしてガッチャードに迫り、馬乗りになって殴りつけてくる。その重量と威圧感から簡単に抜け出すことはできず、ガッチャードはただ攻撃を受けるのみの時間が暫く続いた。

 

「おい、錬太郎ヤバいぞ!早く俺の手錠外してくれよ!」

 

「待てカズマ、今のお前は武器も持っていないし、スキルだけで相手をするのなら苦戦は必至だ!こ、ここは…聖騎士(クルセイダー)の私が、皆の盾となり蹂躙されて…ハァ、ハァ…」

 

「こんな時に性癖に忠実になるんじゃねぇ!今色々ピンチなんだぞ!」

 

「にゅうん!久しぶりの罵倒…イイ…」

 

「ハァ…ダクネスはいつも通りですね…爆裂魔法を使いたいところですが…生憎場所が場所なので無理ですね、ケミー達もレンタロウの元にいますし…

あ、アクア!アクアならダメージを与えられるのでは?あの怪物には、悪魔も取り込まれていましたし…」

 

「成程!任せときなさい!これが女神の力、『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』!」

 

 某真紅のファイター、ウル○ラセブンのエ○リウム光線の如く、アクアの額から放たれる神聖な一撃。それはマルガムに見事命中し、怪物の体を炙るように焼き尽くした。

 

「ガァァァァァァァァ⁉︎⁉︎⁉︎」

 

 マルガムは悲鳴を上げながら転げ落ち、尚も悶え苦しんでいた。やはり女神たるアクアの浄化魔法だ。悪魔を取り込んだマルガムにも有効打なようである。

 

「よし、ナイスだアクア!偶には宴会芸の神も役立つもんだな!」

 

「ちょっと何言ってんのよヒキニート!私は清らかな水の女神よ!この私を何度も何度も馬鹿にするんだってなら天罰が下…る…わよ」

 

 段々とアクアの声が小さくなる。そしてみるみる顔を青くして、一点だけを見つめている。アクアの様子を怪訝に思った一同は彼女の瞳に捉えている対象を確かめるため、視線を移した。

 

「なっ⁉︎」

 

 カズマは思わず驚きの声を漏らした。そこには黒い炎を纏い、怒りを剥き出しにしたガッチャードがいたのだった。

 

 

 

 

 遡ること数刻前、ガッチャードはマルガムの打撃をその身に受けながら、1人突破策を模索していた。

 

「(このまま守りに入っていたら…確実に負ける!何とかしないと…ん…これは…)」

 

 攻撃の嵐に頭を回す中、ガッチャードの脳内に溢れ出した何かの記憶。先に述べておくとこの記憶は、マルガムの攻撃を通じてミテミラーが反射して映し出したアルダープの悪行の数々である。

ガッチャードはその凄惨な記録に思わず息を呑んだ。

 

アルダープに迫られ、いいように体を弄り回される女性達

 

マクスウェルの捻じ曲げる力によって、人々から冷たい目をむけられて孤立する冒険者達

 

誰にも真実を理解して貰えず、心に傷を負い疲れ果てた被害者達

ある人は崖から飛び降り、ある人は海の中へ身を委ね、ある人は首に縄をかけてそのまま…

 

「(ふざけるな…)」

 

ガッチャードの頭に浮かぶたった五文字。されどそれはこの上なく彼の感情を見事に表していた。驚愕から激怒へと移る心境に呼応し、ガッチャードの体から再度黒炎は燃えたぎる。

そして、アクアの浄化魔法でマルガムから解放されると、漆黒に染まる己の身を起こし、橙黄色の複眼で、苦しみ悶えるマルガムを見据えた。

 

「お前は…今まで何人の罪なき人々を傷つけてきた…どれだけ己の欲で苦しみと悲しみを植え付けてきたんだァァァァ!!」

 

 叫びながら駆け出し、マルガムへと迫るガッチャード。怒りを露わに走るその姿はまさに鬼神の如し。カズマ達は勿論、法廷にいる者達も畏怖の念を抱かずにはいられないのは至極当然で、ミツルギやクロっち、ゆんゆんといった、途中まで助太刀しようと考えていた者達にも、観戦を強いた程だった。

 

「ァァァァァァァァ!!!」

 

 猿叫のような耳を貫く雄叫び、そして黒炎を纏わせた凄まじき拳が容赦なくビートルマルガムを襲う。先程まで大したダメージも通さなかった自慢の装甲は、ガッチャードに殴りつけられていくうちに、みるみる砕けていく。

一発一発、ガッチャードは拳を丁重に握り直し、確実に振るっていた。まるで、一撃に一人分、アルダープによって無念を味わった者達の怨念を込めているかのように…。

 

「ほぅほぅ…やはり黒い炎の力は絶大なようだね…レベルナンバー10のマルガムとの力量差をも覆すとは…」

 

 この法廷の中でただ一人、異端な観戦者であったロードは面白がるように戦闘を分析していた。自身の探究心を唆る黒い炎なる物、ただ、その一点だけを見据えて。

その黒い炎を操るガッチャードは、ビートルマルガムの装甲をある程度破壊すると、新たに二枚のカードを取り出して、ベルトへと装填した。

 

『ユニコン!』『ザ・サン!』

 

『ガガガガッチャーーンコ!サンユニコーン!』

 

 聖なる日の光が、ガッチャードを包み込み、新たな姿を顕現させる。

 

純白の鎧を身に纏い、胸に煌めく日輪が悪しき者を焼き尽くす

ーー仮面ライダーガッチャード サンユニコーン

 

 ガッチャードは早速ベルトを操作すると、両手で矢印の先端を形作って前に出し、錬金術の詠唱を行った。

 

『サンユニコーン!フィーバー!!』

 

「『汝 全世界の栄光ヲ得たりて 一切の無名は散ずべし』!!」

 

 刹那、一瞬にしてビートルマルガムを覆うようにして空亡を連想させる黒い灼熱の球体が錬成され、マルガムの身体を四方八方から炙り尽くす。

 

「グギャァァァァァァァァァァァァァ⁉︎⁉︎」

 

 自身の肉や骨を刺激する熱に、マルガムは悲鳴を漏らす。この聖なる熱はライダーキックで分離できない程の力を持つマルガムとなった人間とケミーでさえも乖離させることができ、やがて火球が消滅すると、怪物はビートルクスとアルダープ、そしてマクスウェルに戻り、地面へ倒れ伏した。

 

 ビートルクスをブランクカードへと封印し、変身解除した錬太郎は、黒い炎を抑えるものの、地面のアルダープ達に鋭い眼光を飛ばす。その後、深呼吸を一つ挟んで吐き捨てるように言った。

 

「詳しい話はセナさん達に全て吐くように…そして国の司法の裁きを受けて、お前の悪行で苦しんだ人達の為に罪を償って貰うぞ…」

 

 話終え、アルダープの身柄を拘束する為に歩み寄る錬太郎。しかしそこにロードが割って入り、呆れたような、つまらなそうな顔をして口を開いた。

 

「しらけることをするなよ、百瀬錬太郎…親族の仇相手ならそこは容赦なく黒い炎の力で息の根を止めるのが普通だろう?」

 

残酷な仕打ちをどうということもなくヘラヘラと錬太郎に考案するロード。むごたらしい方法を何の躊躇いもなく言葉にするその様に、錬太郎や法廷にいる冒険者達は呆気に取られながらこの男の思考回路を疑った。

 そんな他者からの疑念などどうでもいいとばかりにロードはアルダープの方へと向き直り、ぬるっと左手を前に伸ばすと…

 

「敗者…必滅!」

 

低い声を法廷の中に轟かせる。その瞬間、無数の鎖がアルダープの身を縛り上げ、その背後に赤黒いゲートを生み出した。

 

「な、なんだこれは!ロード貴様、何をした⁉︎」

 

 突然の事態にアルダープは困惑しながら叫び散らす。予想通りの反応にほんの少し面白く感じたのか、ロードは僅かに口角を上げ、

 

「敗北者に相応しいエンディングをプレゼントしてあげるよ…君がこの世で暗躍し続けると(いず)れ私の障害になり得るやもしれないからね…マクスウェル、君はアルダープから対価を貰ったのかい?」

 

「ヒュー、対価?そうだ、まだ貰ってない!アルダープ、僕に君の絶望を見せてよ!誰にも邪魔されたくないから…地獄に行こうよ、きっと楽しいよ!ロードがゲートも作ってくれたしさ!」

 

 ロードの発言に思い出したかのようにアルダープの腕を掴んで訴えるマクスウェル。屈託ないその笑顔は無邪気そのものだったが、善悪の区別もつかないようなその様が返ってアルダープに恐怖心を植え付ける。

 

「ヒッ…や、やめろ!ロード、ワシを助けてくれ!お、お前とワシの仲ではないか」

 

「ん〜?私は只百瀬錬太郎の苦しむ様が見たいから君に錬金事変を捻じ曲げるよう脅しただけであって協力関係を結んだ覚えはないのだが?

そうだマクスウェル、アルダープの腕を折ってやり。そうすれば君の望む対価も得られるかもよ?」

 

「な、何を言う⁉︎そんなこと…ギャァァァ⁈⁈⁈」

 

 ロードの提案に顔を青く染めるアルダープ。子供のように素直なマクスウェルはその意見を聞き入れ、掴んでいたアルダープの腕をへし折って、そのアルダープのあげる悲鳴に恍惚の表情を浮かべた。

 

「ヒュー、本当だ!アルダープから恐怖を感じる!教えてくれてありがとう、じゃあ地獄に行こうか。ずっとずっと一緒にいようねアルダープ!」

 

「ろ、ロード…た、頼む、マクスを止めてくれ…お、お前はワシの邪魔をしないと言ったではないか…」

 

 アルダープは最後の望みをかけてロードへ懇願する。もうかつての余裕溢れた領主としての姿ではない、そこ知れぬ恐怖に怯え、誰ふり構わず助けを求める没落者である。しかし、人の苦しみを楽とするロードがそんな言葉に耳を貸す筈がない。

ニチャリという擬音が聞こえてきそうな暗黒の笑みを浮かべるロード。そして冷たく、嬉々とした様子で、

 

「ああ、ロードとしては邪魔をしないといったよ、だ・か・ら…

 

 

 

 

 

情報屋ダオルとして引導を渡してやったんでやんすよ」

 

最後にダオルの口調に戻してアルダープを嘲るように言い放つ。

そして話は済んだかとばかりに、マクスウェルはアルダープを地獄へと通じるゲートへと引っ張り出した。

 

「い、嫌だ!頼む、見逃してくれマクス!い、今までのことは謝る…だから…」

 

「ヒュー、ヒュー、いいよアルダープ。そのまま絶望を僕に見せ続けてね。いつまでもいつまでも一緒だよ、愛してる、大好きだよアルダープ。」

 

「いいねいいね、アルダープ。散々目の上のたんこぶとして邪魔でしかなかったけど、最後の最後に負の感情エネルギーを与えてくれてありがとうね、ありがたくレプリケミーレベルナンバー10達の錬成に使わせて貰うよ」

 

 アルダープの弁明に聞く耳を持たず、その絶望に対して愉悦に浸る二人。悪魔はマクスウェルだけのはずだが、この場にはニ体いるのではと錯覚してしまいそうである。

 

「た、助けて…」

 

 アルダープの救援の声は最後まで紡がれることはなく、やがてマクスウェルがアルダープをゲートの中へと完全に引き摺り込むと、はじめから無かったかのようにゲートは消滅した。

 ロードは衝撃の一部始終を呆然と見ていた皆の方を振り返ると、フッと笑みを浮かべて口火を切った。

 

「ではでは、また何処で…オル・ボ・アール(ごきげんよう)

 

 愉快な口調で放った言葉を最後に、ロード姿を消して、散々掻き乱された法廷には、その最後に似合わない静寂だけが残された。

 

 

 

 

 結局裁判は有耶無耶となってしまい、原告がいなくなってしまったこと、カズマと錬太郎の発言に嘘はなかったことなどから無罪判決となり、カズマ達は屋敷へと引き返したのだった。

 

『それにしてもダクネス、裁判長が一旦判決を覆したときに何しようとしてたの?』

 

「む、そのことか…クロっち、それに皆…今から話そうと思うが…私はダスティネス家の者、名をダスティネス・フォード・ララティーナ。そこそこ名の知れた貴族の身だ、それでその地位で裁判の判決を保留にさせて貰おうと考えていたのだが…」

 

 ダクネスからのカミングアウトに、錬太郎とカズマ以外目を丸くして聞いていた。そしてダクネスが区切りのいいところで言葉を止めると、皆揃って質問攻めに移った。

 

「ダスティネスって、王家の懐刀と称される名家じゃないですか⁉︎」

 

「そこそこどころか、国の中でも上層階級で地位を築いているあのダスティネス家の⁉︎」

 

「っていうかララティーナって…ダクネスの本名可愛いのね!」

 

「ら、ララティーナと呼ぶんじゃにゃいアクア!…それにしてもカズマは驚かないのだな…私のことを聞いても…」

 

「まぁ、錬太郎に事前に伝えられていたからな…んで、貴族のご令嬢様として接し方は変えた方がいいのか?お前が変えて欲しいんなら変えるが…」

 

「いや…そのままで頼む。私は貴族の娘ではなく、冒険者としてお前達と過ごしたい」

 

「わかりました、改めて宜しくお願いします!」

 

 ゆんゆんを皮切りに、皆が改めてダクネスを仲間として温かく迎え入れた。例え身分が違ったとしても、関係ない。かけがえのない仲間であることに変わりはないのだから。

 

「それよりもカズマ、どうしてそんなにプルプル震えているのですか?」

 

「ん?何ってめぐみん…やっぱ面白すぎるだろ、真面目で堅苦しくてドMって属性盛り盛りのダクネスの本名がララティーナって…ギャップありすぎて…何度でも笑えるんだがアハハハハハハハ!」

 

「や、やめろカズマ!こ、こんな辱め…私の求めるものじゃなぁぁぁぁぁぁい!!」

 

 自身の羞恥心を極限まで刺激されて限界だったのか、ダクネスの痛恨の叫びが屋敷の中に木霊した。

 

 

 

 

 散々名前を弄られて「ぶっ殺」状態だったダクネスをクロっちとゆんゆんがなんとか宥めて正気を保たせた後、一同の話題はアルダープへと移った。

 

『そういえば、なんでアルダープは錬太郎とカズマの極刑に執着してたんだろうね…』

 

「そのことだが…恐らく私に理由はあると思う」

 

 アルダープの狂行に、ダクネスは心当たりがある様子。皆の視線が集まったのを確認すると、ダクネスは申し訳なさそうに話し始めた。

 

「その、アルダープからは幼い頃から目をつけられていてな…妻がいなくなってから何度も求婚を迫られて…と、歳の差を理由にずっと父が断ってくれていたのだが…」

 

 居心地の悪い空気が場に流れる。ダクネスの憶測を聞いた者は皆、彼女に心底同情した。悪徳領主と名高いアルダープに長年付き纏われていたのだから、そして彼女がその呪縛から漸く解き放たれたことに安堵もするのだった。

 

「ろ、ロリコンだったのかよあの領主…。」

 

「あら、めぐみんの下着を剥いだことのある鬼畜兼ロリコン疑惑のあるカスマさんが言えることかしら?」

 

「カスマ言うな、張っ倒すぞ駄女神!まぁダクネスとアルダープの関係はわかったけど…錬太郎は?お前もなんか訳ありみたいだったけど…」

 

 カズマの話題転換で、今度は錬太郎にクロっちを除く五人の注目が集まる。しかし錬太郎は何も話そうとしない、否、考え込んでいるようでまだ話すことを決めていなかったのだ。そして錬太郎は漸く口を開いて透き通った声を喉から鳴らした。

 

「いや、話すようなことじゃない…僕からはノーコメントで」

 

「いやいや、ダクネスもカミングアウトしたんだし、アンタも色々話すのがお決まりでしょ?ささ、早く色々話して…」

 

 錬太郎を引き留めようと手を伸ばすアクア。しかし錬太郎はその手を振り払い、つれない様子で言葉を吐き出した。

 

「話したくないんだ、真実は時として知ったことを後悔させることだってある!僕の過去なんて…知らない方がマシだ…」

 

 話し終えると錬太郎は自室へと戻って、閉じこもってしまった。途中、ゆんゆんが追いかけようとしたが、クロっちに肩を掴まれ止められた。

 

『今はそっとしておいてあげて。彼、今まで追ってきたことの真実にまだ混乱してて、物事をうまく考えられてないんだ。落ち着いてきたらまた話すよう僕から伝えておくから…』

 

「錬太郎さん…」

 

 ゆんゆんは錬太郎の個室に憂いの色を纏った瞳を向ける。他の者達も同様だ。パーティメンバーの中で唯一詳細がわからない部分の多い百瀬錬太郎。彼の過去に一体何があったのか。語ろうとしない錬太郎と、気にかけるカズマ達。意図せずとも彼らの間には僅かに溝が生まれ始めていた。

 

 一方、錬太郎の部屋では、彼が布団にくるまって下唇を噛み締めていた。今回の裁判、結局はロードに敷かれたレールの上で踊らされていただけ。錬金事変のあの日からずっと、ロードの呪縛から逃れられていない…そのことが悔しくて悔しくて仕方がなかった。

 

「畜生…畜生…」

 

 悔恨の意を表したのか、一筋の涙が錬太郎の頬を伝った。

 

 

 

 

神々が集う場所、天界。

 地上にて盗賊クリスとしての役割を終えたエリスがいつもの修道服姿でとある場所に向かっていた。それは彼女の先輩にあたる女神アポロスの待つ宮殿。エリスが到着すると、そこにはずっと待っていましたとばかりに仁王立ちしているアポロスがいた。

 

「先輩、それで話というのは…」

 

「貴方もわかっているでしょ?黒い炎のこと…」

 

 アポロスの問いにエリスは沈黙する。その応対を肯定と見做したアポロスは、ため息を一ついれて残酷なことを告げた。

 

「あの力は、賢者の石の力を負の感情で満たした者が発現できる力。そしてそれは、カタストロフに限りなく近づくことを意味する…」

 

「何が言いたいんですか、先輩…」

 

「…もし錬太郎くんが力に呑まれたら…覚悟を決めなさい…」

 

 アポロスの口から放たれたことにエリスは言葉を失い、暫くの間、神殿には沈黙が流れたのだった。

 

 

 

 

「ヒュー、ヒュー、アルダープ?あれ?返事してよ、もっと絶望を見せてよ」

 

 天界と対を成す場所、地獄。誰も立ち入ることをしないこの最果ての地で、地獄の公爵マクスウェルは無邪気にアルダープと戯れを続けていた。最も、アルダープは度重なる苦痛により意識は遥か彼方なのであるが。

 そんな中、何処からともなく足跡が聞こえる。地獄に立ち入る者など魔を極めた者、それこそマクスウェルと同じ地獄の公爵クラスの悪魔達くらいである。

 

「やっと辿り着きましたね…ウィズさんやバニルさんの手助けがあっても一週間掛かるとは…それに地獄の名に違わず怖気を誘う場所ですねここは…」

 

「ん?君は…」

 

 マクスウェルの前には齢13程の少女。特徴的なトンガリ帽子に長い黒髪、緑色のローブを羽織っていて、宝石のような茶色の瞳の持ち主。

 そう、絶望の未来に抗う冒険者、カズマとめぐみんの娘にして、百瀬錬太郎の弟子、サトウエミことえみりんである。

 えみりんは一枚のデイブレイクケミーカードを取り出すと、マクスウェルの目の前に掲げ、声を轟かせる。

 

「地獄の公爵マクスウェルよ、未来を変えるためにその力、使わせていただきます」

 

『ケシケシ〜』

 

 それぞれの思惑や願いが交差する中、運命の歯車は確実に動き始めていたのだった。




アルダープ、退場…
お見合い無くなったよ、よかったねララティーナ!
今回のガッチャードの戦闘は、ゴ・ジャラシ・ダ戦のクウガとギーツのブチギレーザーブーストを参考にしました。

スタッグミラーのミテミラーの力が錬太郎の脳内に映し出したアルダープの悪行の数々…
説明だけで流しましたが、かなり多くの人々が被害にあってます
優しい人ほど怒らせると怖い
とはいえ折り合いはつけているので最終的な処分は国の司法に任せることにした錬太郎でしたが、敗者必滅!
…というかマクスの存在バレた時点で悪徳領主に未来はないのです。 

ロードの残酷な一面を2話に渡って表現したつもりですが、上手く出来てたかなぁ…ちょっと不安です
そして今回、明らかに錬太郎とカズマ達の間に溝が生じましたが、今後どうなるのか…

ラストに登場したえみりん。マクスウェルに接触するようですが、果たしてその真意は?


そして次回より、新章
「捲土重来!蒼炎のガッチャード」
のスタートとなります

一つここで注意、3章は錬太郎がほぼメインのため、序盤からかなりのオリ展開かつ鬱、胸糞、曇らせ要素があります。

それでは皆様、今年一年お疲れ様でした
良いお年を!
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