この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

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明けましておめでとう御座います
第3章の幕開けですが、オリ展開かつ鬱要素、胸糞展開がかなりあります。ご注意ください。

特に錬太郎とゆんゆんはこの章の序盤はかなり曇ります

新年一発目がこれっていいのかなぁ…


第3章:捲土重来!蒼炎のガッチャード
ゆんゆんの涙


 薄暗い研究室にて。

 一人の男が机の上に足を組んで座っていた。名をロード。錬金術師の百瀬錬太郎及びその仲間達であるサトウカズマ達を前に何度も刺客を送り込み、さらに彼らの置かれた状況をかき乱すという、黒幕としても、トリックスターとしても暗躍し続けている男だ。

 そんな彼がここ最近関心を抱いているものが一つ…それは賢者の石である。

 

「う〜ん、百瀬錬太郎の中に眠る賢者の石は確実に成長しているみたいだな…あとはその石をどうやって引きづり出すかだが…」

 

 目当てのものは今近くにあるというのに、手出しがしにくいもどかしさ。ロードは自身の頭を回転させ、何か良い案はないかと思考を巡らす。そんな中、ふと一つのことを思い出した。

 賢者の石は始まりの錬金術師の一人であるリエによって一度ケミーの卵として錬成された後、孵化しないと判断されたためガッチャードライバーへ再錬成されたことを。

 つまり錬太郎の中にある賢者の石はケミーとしての本質を備えていると読み取ることが出来、ケミーの特性を活かして賢者の石を取り出せるのではないか。そして幸運なことに、その役務を果たすことが可能なケミーの本質も一つ、ロードには見当がついていた。

 

「百瀬錬太郎がマルガムと化し、彼の中の賢者の石と結びつけば理論上は可能か…となると百瀬錬太郎に強い負の感情を抱かせる必要がある…しかし故郷を滅ぼされても、かつての仲間の死体を再錬成したネガマスクを差し向けても尚、精神を保っていられる彼のことだ、もう一押し刺激が欲しいところ、ん?」

 

 ロードは常々監視していた錬太郎とカズマ達の動向を思い返し、いい案を思いついたとばかりに口角を上げる。そして2枚のケミーカードを取り出すと、指を鳴らして誰かを呼ぶ合図を出した。

 

「お呼びでしょうか?」

 

 ロードに応じて暗闇より参る影が一つ。赤いローブを纏ったネガマスクの一角、ソラトスである。ソラトスはロードの目の前まで来ると、ひざまづいて忠誠の意を示した。

 

「ソラトスよ、今回の(はかりごと)なのだが…」

 

 ロードは歩み寄り、ソラトスの耳に唇を近づけて何かを囁いて伝えた。その内容に少しばかりソラトスは驚いたような表情を浮かべたものの、すぐにうなづき、ロードの手から「ダイオーニ」と「マックラーケン」のケミーカードを受け取った。

 

「作戦については把握致しました。しかしその小娘はマルガムとなった私で何とか出来ますが、あのケミーは…」

 

「問題ないさ。レベルナンバー10といえども、私に掛かればどうということもない。自ら出向いて捕まえてくる。私がクロスウィザードを捕獲した後に合図を出すからその時に頼むぞ」

 

「はっ」

 

 話し合いを終え、一人暗闇の中へと姿を消すソラトス。ロードは再び椅子に腰掛けると、近くに置いていたコーヒー入りのカップを手に取り、口へ運ぶ。口を湿らせ、ほうっと生温かい息を吐くとそっとほくそ笑み、

 

「百瀬錬太郎にある意味一番気に掛けられていたのが運の尽きだったか…だが、これも全て賢者の石を手に入れるため、私が送り込まれた百年前からずっと腐り切っていたこの世界を破壊するためだ…悪く思わないでくれよ

 

 

 

 

 

 

              ゆんゆんちゃん♪」

 

 

 

 

アクセルの街のギルド 

 今日も今日とて数多の冒険者達が日銭を稼ぐために手頃なクエストはないかと掲示板近くを徘徊している。それは最弱職の冒険者であるサトウカズマ率いる徒党も例外ではない。

 

「今日はダンジョンに行きます!」

 

「イヤです!」

 

「行きます、一攫千金を目指してベルディア戦後に錬太郎から受けた施しをチャラにして、さらに出来れば残った金でのんびりする!危険な冒険者業からはおさらばじゃ!」

 

「イヤです絶対に!ダンジョンでは私の爆裂魔法を活かすことが出来ませんからただの荷物持ち!一般人でしかありません!それにカズマが冒険者を引退してしまえば魔王討伐に赴けないじゃないですか!私の最強の魔法使いの称号を得るという夢はどうなってしまうのですか⁉︎」

 

「殆ど私情ばっかじゃねぇか!ていうかお前パーティに入る時荷物持ちでも何でもするって言ったじゃねぇか!あと荷物持ちが嫌なら他に魔法覚えろやロリっ子!」

 

「イヤですイヤです!爆裂魔法こそ至高!我が全て!そう易々と信念を曲げてなるものですか!後!私はロリっ子ではない!」

 

 ギルドの机の上で、最早恒例となりつつある喧騒を起こすカズマとめぐみん。自称真の男女平等主義者であるカズマの容赦ない口撃に対して、めぐみんは不服とばかりに(かぶり)を左右にぶんぶんと振る。

今年14とは思えないその愛らしい振る舞いと、年不相応の小さく華奢な体躯から、傍から見ると兄の提案を聞き入れたくないと躍起になっている幼女に見えて仕方ない。

 まぁそんなことをしようが、めぐみんの本質に触れているカズマさんの心は微塵もズュッキュンされないのだが。とはいえこの二人がとある時間軸では後に結婚し、さらには娘も授かっているのだから、世の中よくわからんものである。

 話がかなり脱線してしまったが、その後カズマにいい感じに言いくるめられ、多少の不満はあるものの、めぐみんはダンジョンに行くことを渋々承諾した。そして最終的に今回のダンジョンには、カズマとめぐみんに加え、アクアの三人で向かうこととなった。

 パーティメンバーのタンクにあたるダクネスは、アルダープがいなくなってからアクセルの領主代行を引き受けた父の手助けの為、数日前から実家に帰省しており、ゆんゆんは故郷の父母に手紙を書く為今回のクエストはパスとのこと。

 そして錬太郎とクロスウィザードことクロっちであるが、ダクネスが帰省したと同日に、クロっちは行方不明となってしまった。錬太郎が現在捜索に出かけているものの、依然として手がかりは掴めぬまま。

 

 カズマとしては裁判以降、クロっちを介さないとどうも錬太郎との会話は気まずいものとなってしまうため、早く帰ってきて欲しいとは願っているのだが…

 

「なんかイヤな予感がするんだよな…」

 

「何をしているのですかカズマ!行きますよ!」

 

「わーったよ」

 

 先程までの物臭な様子が嘘のようなめぐみんに連れられ、カズマはアクアと並んでダンジョンへと向かう。フラグのようなことを言ってしまったカズマだが、それは自身は幸運値が高いにも関わらず、暗黒の破壊者の人柱にされたり、パーティの問題児のベビーシッターをする羽目になったり、法を犯す悪いことなどしていないにも関わらず、裁判にかけられたりと今までの経験から基づいた勘のようなものである。

 その予感が本当に当たり、否、予想以上の結果となって現実となると、この時のカズマは思いもしなかった。

 

 

 

 

 冬の寒さもそろそろ肌に慣れてくる頃合いの昼下がり。魔王軍も恐れる魔法のエキスパート集団、『紅魔族』の長の娘であるゆんゆんは、書き終えた手紙を手に、ギルドへと向かう。

 宛先は専ら彼女の両親や彼女が友達と思っている者達であり、今回は両親。アクセルの街に独り立ちして以来、定期的にやり取りしているものの、生来のぼっち気質を心配する内容ばかり聞かれるので少々困っているのはまた別のお話。

 しかし、最近はそんな悩みは薄れている。何故なら徒党を組めたから、胸を張って友達と呼べる人達と充実した日々を遅れているからだ。

 その中でも共に過ごすことの多い錬太郎に対しては、他のパーティメンバーに比べて手紙に詳細に記されている。

 

『お父さん、お母さん、紅魔の里でいかがお過ごしですか?私は元気に冒険者業をこなしています。

 

前の手紙からずっと書いてますが、ちゃんとパーティは組めています。本当です。沢山のスキルを使いこなすちょっとえっちな冒険者と、駆け出しとは思えないプリースト、実は貴族だったクルセイダーにめぐみんも一緒です。夢なんかじゃありません。

 

そして錬金術師の男の子がいます。

 

 クエストを一緒にこなしたり、ボードゲームをしてくれたり、私の話をよく聞いてくれたりしてとてもいい人です。どんな困難に直面しても挫けず、前を向いて立ち向かう姿勢は輝いて見えます。最初にパーティに誘ってくれたのも彼で、落ち込んだ時は頭を撫でたりして励ましてくれました。あの時はとても嬉しかったです。いつか二人にも会わせたいなぁと願っています。

それではまた、お便りします。 ゆんゆん』

 

「私…今本当に幸せだなぁ…」

 

 両手の手紙を口元に寄せ、現状に恍惚するゆんゆん。いつか錬太郎達を紅魔の里へ案内し、両親や魔法学園の同級生達に紹介する日を想像しながら嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねた。その後、浮ついた気持ちをなんとか呼び戻すと、ギルドへ向けて改めて歩みを進める。

 

が、その時一瞬にして眼前に広がっていた風景が真っ黒に染まり、次にゆんゆんが気づいた時には、黒く狭い場所に一人だけぽつんと佇んでいた。

 

「あ、あれ?ここどこ?私…ギルドに向かってた筈…」

 

 突然の事態に困惑しながらも、取り敢えず状況を把握せねばと、ゆんゆんは辺りをキョロキョロと見回す。すると見覚えのある人影が三つ。

 いずれも桃色のシャツに赤いネクタイを付けており、さらにはローブを纏っている。忘れもしない、ゆんゆんが紅魔の里の魔法学園『レッドプリズン』の学生時代に着用していた制服である。

 そして一人は左目に眼帯を付けていて特徴的な縦ロールの髪型、一人はツインテール、また一人はポニーテールだ。

 

「あるえ…ふにふらさん、とどんこさん!あ、アクセルの街に来てくれたんだ!あ、あのね!私には素敵な友達が『五月蝿い!』…へ?」

 

『気安く話しかけないで、別に友達でもないくせに』

 

『わかる〜、自分は私達の友達だって盲信して話しかけくるのマジウザいよね〜』

 

『前々から思ってたけど君と過ごす時間は私の小説のネタにすらならない、邪魔でしかないからとっとと消えて?』

 

「ふ、ふにふらさん?どどんこさん…あるえ?どうしちゃったの?」

 

 紅魔の里での同級生達からの突然の罵詈雑言に困惑するゆんゆん。彼女達へ気に障るようなことをした覚えなど全くない。

 ゆんゆんはなんとか気を取り持つと、動揺によって途切れ途切れの言葉で三人に質問をする。

 

「あ…あ〜、これってもしかしてドッキリですよね!久しぶりに会った私を揶揄おうとしているんですよね?…ねぇ、皆…」

 

『彼女達の言っていることは本心ですよ?』

 

 ゆんゆんの問いに三人は答えず、また別の方向から誰かが代わりに答える。ゆんゆんが振り向くとそこにはいつもクエストを共にするカズマ、アクア、ダクネス、そしてライバルのめぐみんがいた。しかしどういうわけか、四人の視線もあるえ達と同じくどこか冷たく鋭いものだった。

 

「め、めぐみん…何言って…」

 

『そのままの意味ですよ、レッドプリズン在学中から思っていましたが、貴方にライバルと認定されて付き纏われる日々にはウンザリだったんですよ。まさか、私がわざわざ付き合っていたことを自覚してなかったんですか?』

 

『私達と仲間になれたとか、小さいことではしゃぎすぎて正直目障りなのよ』

 

「あ…アクアさん?」

 

『全くだ。引っ込み思案な様子は見ていてイライラする』

 

「ダクネスさん…」

 

『お前なんかを迎え入れた錬太郎の気が俺は知れないね』

 

「…やめて…もうやめて…」

 

 パーティメンバーからの心無い痛罵はゆんゆんの心を抉った。信頼している人達から言われたというのも後押しして、もういつ壊れてもおかしくない状態だった。

 耐えられないと本能的に悟ったゆんゆんは両耳を塞ぎ、しゃがみ込んでしまう。

 

 どうして

 

その四文字がゆんゆんの脳内を目まぐるしく掻き乱し、呼吸を荒くさせる。

 

 ふと、視線を上げると、ゆんゆんの目の前に先ほどまでの七人の姿はなく、代わりに一人の少年がそこにいた。

 

 空色の服の上に黒いローブを纏った黒髪黒目の容姿ーー

 

仲間となった、パーティを組んだその日から長い時間を共にした、ゆんゆんが信頼して友と思っている者、百瀬錬太郎だ。

 

「れ、錬太郎さん…わ、私達友達ですよね?皆私から離れていっても貴方だけは…」

 

 精神をすり減らされ、掠れゆく声で縋るように、訴えるように錬太郎に尋ねるゆんゆん。しかし、錬太郎の答えはゆんゆんの望むものとは正反対の、冷たく、残酷なものだった。

 

『君を仲間と思ったことなんて、一度たりともない…』

 

 錬太郎の口から放たれた鋭利な棘は、ひび割れたゆんゆんの心を無慈悲に砕いた。四面楚歌、八方塞がりの状況を前に、遂にゆんゆんは地面に膝をついて項垂れた。

 光を失ったゆんゆんの瞳から絶え間なく涙が溢れ出す。滝のように涙を流しているにも関わらず、嗚咽の一つも漏らさない、否、漏らせないのだ。人は悲しすぎると声が出ないと言われているが、ゆんゆんの状況は正しくその先人の教えの通り。

 信頼を寄せていた者達からの思いもしない中傷を前に、ゆんゆんは完全に廃人と化してしまった。

 そしてその様子を嘲るように見つめる二つの影が。

 

「フヒヒヒ…自分が考案した作戦に言うのもなんだけどえぐいことすんね〜」

 

「まぁ、私も百瀬錬太郎に煮湯を飲まされてばかりですから…マックラーケンの力で墨のフィールドを作り出し、ダイオーニ由来の神通力で幻影を見せる…これくらいしてやらないと気が済みませんよ。それでロード様、例のケミーは?」

 

「ああ、クロスウィザードね。数日前に丁度単独行動してたから捕まえておいたよ。ソイツとゆんゆんちゃんがサトウカズマや百瀬錬太郎とは別行動しておいたから上手いこと進んで本当に良かった。はい、どーぞ」

 

 ロードからクロスウィザードの封印されたケミーカードを受け取ったソラトスは、そのカードをゆんゆんに向かって投げ飛ばす。

 

「『暗黒に、染まれ…』」

 

 刹那、ケミーカードのクロスウィザードは、負の感情に囚われたゆんゆんにいとも容易く取り込まれ、ゆんゆんの姿を変貌させる。

 

 全身の金色の包帯の包み隠すように纏った青いローブが特徴的で、頭部には祭壇に燃え盛る火を模した装飾が施された怪物の「ウィザードマルガム」である。

 

「わぉ!上質な金素体とは、嬉しい誤算だな…さぁ、後は百瀬錬太郎を誘き出すだけ…」

 

 準備は整ったとばかりにご機嫌なロードは、ニチャリと気味悪い笑みを浮かべ、最後の段階へと取り掛かるのだった。

 

 

 

 

「手がかりは…なしか…」

 

『ホッパー…』

 

 行く人行く人へと、百瀬錬太郎は、ホッパー1と共に数日前からクロっちの目撃情報を尋ねていた。彼女の性格上、自由気ままに出歩くことは想像に難くないのだが、連絡も寄越さず、数日も留守にするのは流石に妙だと感じたのである。しかし今のところ目撃情報はゼロ。今日に至るまで手掛かりは何一つ掴めないままである。

 

「少し休憩してからまた再開するか…」

 

 気持ちを切り替えようと思った錬太郎は、最寄りの店で昼食をとるために辺りを見回す。その時、錬太郎のケミーライザーが警告音を立てた。

 

「マルガムが現れたか…しかもかなり近い、急ごう」

 

『ホッパー!』

 

 錬太郎はケミーライザーの位置情報を元に、ホッパー1と共にマルガムの出現地へと駆け出した。錬太郎が到着すると、そこには逃げ惑う人々と、何故か暴れることを躊躇っているかのようなマルガムがいた。

 

「あのマルガム…まさかクロっちが⁉︎となると、ロードの奴…」

 

 ここ数日行方不明となったクロっちの真相を脳内で瞬時に導き出した錬太郎は、因縁の男の所業に腑を煮えくり返し、額に青筋を浮かべる。

 しかし、今はマルガムを止め、クロっちを救うことが先決と一度深呼吸を挟み、ガッチャードライバーを腰に装着する。そして二枚のケミーカードを取り出して装填し、ドライバーを操作した。

 

『ホッパー1!』『スチームライナー!』

 

「変身!」

 

『ガッチャーーンコ!スチームホッパー!』

 

 小手調べとばかりに先ずはスチームホッパーへと変身するガッチャード。対するマルガムはガッチャードを視界に捉えると、魔法による無数の風の刃を顕現させて攻撃を仕掛けてきた。

 

「ブレード・オブ・ウインドか…かなりの精度だ、油断すると一瞬で挽肉(ひきにく)間違いなしだ…」

 

 ウィザードマルガムの魔法をガッチャードは何度もバク転をしながら躱していき、一瞬の隙をついて体制を整えると、飛蝗由来の強靭な脚力で地面を蹴って、瞬く間にマルガムへと肉薄する。

 

「いける!」

 

 ガッチャードは勢いのまま、右ストレートを繰り出そうと、拳を強く握り締める。しかし、今回のマルガムは中々の強者。魔法を瞬時に切り替え、今度は中級魔法の『ライトニング』を放ち、ガッチャードを後退させた。

 

「クッ…惜しいな、って⁉︎まだ来るのか⁉︎」

 

 息つく暇も与えない。そう言わんとばかりにマルガムは雷を纏った強力無比な無数の斬撃を繰り出した。

 

「今度は…ライト・オブ・セイバー…なんだろう、まるでゆんゆんと戦っているみたいだ…」

 

 マルガムの攻撃に多少既視感を覚えながらも、いつまでも受けに回るだけでは駄目だとガッチャードは必殺態勢に移った。

 

「取り敢えず一発ガツンと決めるか!」

 

 ベルトを操作して空高く舞い上がると、ガッチャードは標的をマルガムへと定めて右足を突き出す。そして電光石火の速さでマルガムに迫った。

 

『スチームホッパー!フィーバー!』

 

「ハァァァァァァァ!!!」

 

 ガッチャードのライダーキックがマルガムに命中する、そう思われた時だった。一瞬、ガッチャードの視界が歪み、目の前のマルガムの姿が少女のものへと変わる。

 

「へ…?そんな…まさか…」

 

 紅く輝いている瞳から絶え間なく涙を流すその少女は錬太郎もよく知っていた。だからこそ動揺を露わにし、寸前にしてライダーキックを止めると、自身の足を地面へと誘った。

 そしてガッチャードは、声を震わせながらマルガムに問いかける。

 

「君は、ゆんゆん…なの?」




ああ…遂に…遂に来てしまった。
ウィザードマルガム…
ゆんゆんの心をボロボロにしていくシーンは自分でも書いててちょっと辛かったです。

でもまだ序の口だからこの先もっと…はい

こんな暗い話の後で後味悪いかもしれませんが、明けましておめでとうございます。
今年も山田を宜しくお願いします。

次回予告
「暗黒に染まるガッチャード」
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