この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

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やっと戦闘
しかし短めです


戦闘!ガッチャード

サブマリンマルガムとガッチャードはお互いを見据える。

2人の間を風が横切ったとき、戦闘の火蓋が切って落とされた。

サブマリンマルガムは自身の能力を使って地面を猛スピードで潜航した。瞬く間にガッチャードとの距離を一気に詰めると、地面から浮上して拳を振るう。

 

しかしガッチャードは然程焦る様子は見せず、迫ってきた拳を片手で受け止め、動揺しているマルガムの上腕部分に遠心力を利用した力強い蹴り技を放つ。

反動により一瞬後退するものの、ガッチャードは体制を整えてマルガムの懐に入ると、拳による強烈な一撃を腹部に叩き込んだ。

 

「グッ…ウオオオオアアアア!」

 

ガッチャードの打撃に思わず腹を抑えてしまうマルガムだったが、すぐに怒気を帯びた雄叫びをあげながら、力強く拳の連続攻撃を繰り出す。

 

一撃でも喰らえばレベルの高い冒険者でも、一時怯んでしまうであろう攻撃をガッチャードは体を逸らして受け流し続けた。

瞬間瞬間のうちに何度も自身に迫る脅威を、羽をはばたかせ、空を自由に舞う蝶のようにひらひらと。

 

その間にもマルガムの動きや癖を把握し、攻撃の間に生まれた隙を見逃さず、確実に蹴りや打撃を喰らわせていく。

 

マルガムが押しているように見えて、実際は一撃も当てることは出来ず、逆にガッチャードの攻撃によりじわじわと体力を削られていた。

 

自身の劣勢を悟ったマルガムは、一度ガッチャードと距離をとる。対するガッチャードもマルガムの次の一手を伺っている。

 

マルガムは思考する。相手は格闘戦に相当手馴れており、恐らくこれまでいくつも場数を踏んできたのであろう。そうなれば異形の力は持つものの、戦闘に関しては殆ど素人同然の自分が肉弾戦を挑むのは無謀もいいところであると。

 

「ならばっ!」

 

サブマリンマルガムは不敵に笑うと、自身の身体から魚雷のような弾丸を大量に生成した。体と体のぶつかり合いで勝てないのなら、兵器を用いれば良い。そう結論づけたマルガムはガッチャードに弾丸を差し向けた。この弾丸は弾道制御も可能であるため、不規則な軌道を描いた変則的な移動をして、瞬く間にガッチャードを囲むようにして迫ってくる。

 

さらにマルガムは狡猾なことに、弾丸をカズマとアクアの方にも仕向けてきた。魚雷の如く、時速100キロを超える弾丸に生身の16歳男児が対応出来る筈がない。さらにアクアを背負っているため、まともに動くことすらできない。

今度こそ駄目だ、カズマは目前に迫る脅威と恐怖を遮断するように強く瞼を閉じた。

 

しかし、そのような姑息な手段を用いてもガッチャードには及ばなかった。

 

 

「『下にあるものは上にあるもののごとく 上にあるものは下にあるもののごとく ただ一つたる 奇跡をなさん』」

 

 

両手を目の前に掲げると、誰も聞き取ることが出来ないほどの速さで呪文を詠唱し、錬金術を発動させる。刹那、三者に迫ってきていた弾丸は空中で静止した。

 

いくら待てど、弾丸が自身の体に命中する感じがしなかったため、カズマはゆっくりと瞼を開いた。

 

「なっ⁉︎」

 

そして目の前に広がる光景に目を疑う。

無数の弾丸は確かに自身の目と鼻の先にある。しかし、それだけである。それ以上進んでくることもなければ、軌道を変えてくることもない。

ふとガッチャードの方へ視線を移すと、手を前に掲げており、その様子からこれも彼の錬金術によるものなのだろうと悟る。

 

「な、何故だ⁉︎何故攻撃が進まない? 貴様、何をした⁉︎」

 

マルガムは予想外の自体に当惑する。自分に主導権があり、自在に操れる筈の弾丸が止まった位置から動かすことができないのだから。

マルガムは痛感する。自分の戦法が通用しないことに。

刹那、ガッチャードの視線が自身に向けられたことにマルガムは気付き、身構えた。しかし、その選択は誤りだった。戦いの場において、自身より技量のある相手に対して、自分から受け身になってしまったのだから。

マルガムが身構えたことを確認すると、瞬時に錬金術の呪文の詠唱をする。

 

「『万物はこれなる一者の改造として生まれうく』」

 

詠唱を終えると、弾丸達が液状に変化し、そのまま無数の鉄の剣へと錬成される。その刃の行先はマルガムを見据えて

 

「いけ」

 

ガッチャードの合図と共に、生成された鉄の剣が一斉にマルガムへと降りかかる。柔軟かつ、鋭く研ぎ澄まされた無数の刃。怒涛の刺突攻撃にマルガムは大きなダメージを負って地面に膝をついた。

 

「すげぇ…錬金術チートかよ…」

 

カズマは、まるで幼少期にテレビの前で憧れていたヒーローを見ているような気分だった。そして絶体絶命の状況であったとしても、錬金術を自在に操って敵を圧倒する姿は頼もしく、自身のパーティーに加えるべき逸材であると、改めて確信した。

ガッチャードは未だダメージの余韻に浸っているマルガムに歩み寄る。

恐らく次の一手でガッチャードが勝負をつける、そう思われた

 

その時だった

 

「はぁはぁ、あーーー!やっとこの金色の機械を見つけましたーー!早速レンタロウに乗せてもらうのです!」

 

「待ってよめぐみ〜ん!はぁはぁ…」

 

ゴルドダッシュに乗って、駆け出してしまった錬太郎を追ってきためぐみんとゆんゆんが現れたのだ。

 

「めぐみんとゆんゆん⁉︎」

 

「なんで2人が⁉︎宿に戻るよう言ったのに…」

 

予想外の人物の登場にカズマは勿論、ガッチャードも驚いていた。

 

「今だ!」

 

一瞬の隙をついて、サブマリンマルガムは技を放つ。自身の地中潜航能力を応用して、ガッチャードの足元に沼のような空間を生み出して、両足両手ごと捕縛した。

 

「しまった!」

 

ガッチャードは思いもしない事態に狼狽していたこともあり、流石に対応することは出来なかった。

 

「ゼェゼェ…よくもやってくれたなぁ…きっちりお返ししてやるぜ…」

 

マルガムはフラフラとした足取りでガッチャードの方へ接近し、一方的に殴りつける。体を自由に動かすことはもちろんの事、錬金術を使おうにも手を掲げることが出来ないため、発動は不可能。

先程までの優勢から一転、剣が峰に立たされる。

 

「おいどうするんだよ!錬太郎ピンチだぞ!」

 

「ええ⁉︎あの青い鎧の人は錬太郎さんなんですか⁉︎ど、どうしよう⁉︎」

 

「ならば我が爆裂魔法で相手をしましょう!怪物と相対するヒーローがピンチの状況、正しく絶好のタイミングじゃないですか!」

 

「馬鹿言うな!あの威力だと錬太郎まで巻き添え喰らうだろうが!」

 

ガッチャードの危機を、めぐみんは爆裂魔法で打開しようと試みたが、カズマに制止をかけられる。

マルガムがガッチャードの近くにいること、爆裂魔法の威力の範囲からしてこの戦いに適さないのは周知の事実である。

皆が突破口を見出せず悩む中、突然ゆんゆんに懐いていたプラントケミー達が現れた。

 

「みんな⁉︎どうしたの?」

 

急に出てきたケミー達はゆんゆんに向かって必死に何かを言っていた。言葉が人間のものとは違うため、何を伝えようとしているのかはカズマとめぐみんには理解できなかった。しかし

 

「うん、わかったわ」

 

ゆんゆんには伝達した。出会ってからそれなりに会話やゲームを楽しんだため、意思疎通に関しては問題はないようだ。

ゆんゆんが杖を持つと、プラントケミー達は彼女を取り囲み、力を貸すかのようにエネルギーのようなものを送る。プラントケミー達の加護を受けると同時にゆんゆんは魔法を放った。

 

「『ライトニング!!!』」

 

「何⁉︎グハァ!」

 

ケミー達によって強化されたゆんゆんの魔法は、マルガムに直撃し、爆裂魔法ほどではないにせよ衝撃波まで発生した。マルガムはあまりの威力に吹き飛ばされ、ゆんゆんも反動で少し下がってしまう。

 

「マジか…ケミー達の力で魔法も強化できるのか…」

 

ゆんゆんとケミー達の見せた魔法に思わず感嘆の声をあげてしまうカズマ。錬太郎の「ケミー達一体一体に世界を揺るがすほどの力がある」という発言はあながち間違いではないかもしれないと、身に染みて思った。

そしてマルガムが倒れたと同時にガッチャードの拘束も解けた。

ガッチャードは肩を何回か回した後、マルガムを指差して言い放つ。

 

「反撃開始だ!」

 

 

ガッチャードは強化された飛蝗の如き脚力で跳躍し、瞬時にマルガムに迫ると、そのままの体勢で膝蹴りを喰らわせる。その後、反作用によって宙に放たれた自身の身体を捻るようにして回し蹴りを前胸部に炸裂させた。

続けて鳩尾に向かって、弧を描くように拳を何度も叩き込み、マルガムを大きく後退させる。

 

「いけいけ!」

 

「頑張ってください、錬太郎さん!」

 

「このまま一気にやっちゃいましょう!」

 

マルガム相手に戦うガッチャードに、カズマ達は童心に帰ったかのように声援を送る。

そしてーー

 

「これで決めるぞ!」

 

ガッチャードはベルトのレバーを操作する。すると巨大なバッタのような姿に変わり、空高く舞い上がった。

そして空中で再び人型に戻り標的をマルガムに定めて蹴りの姿勢になり、

 

『スチームホッパー!フィーバー!』

 

「ハァァァァァァァ!!」

 

そのまま音速をも超えるスピードでマルガムを蹴り貫いた。あまりの威力にマルガムは爆発を起こし、先程のゆんゆんの魔法以上の衝撃波が起こった。

 

衝撃波による霧が晴れると、そこにはマルガムから解放されたケミーである『ディープマリナー』のカードを満足そうに持ったガッチャードがいた。

 

 

 

 

変身を解除してガッチャードから錬太郎に戻ると、カズマ達と合流し、今回の件について話すこととなった。

 

「それでさ、錬太郎。あの怪物はなんなんだ?」

 

カズマからの問いに錬太郎は眉間に皺を寄せ、真剣な顔で話し始めた。

 

「あれはマルガム。人々の悪意にケミーが取り込まれることで生まれる存在。簡単に言えばそんな感じかな。そしてマルガムになった人は、自身の悪意のままに行動して破壊の限りを尽くすんだ。そして、ケミーの悪意に引き寄せられる特性を利用して人工的にマルガムを生み出している存在もいる」

 

「それってもしかして」

 

「うん。錬金事変で生き残った錬金術師達だ。僕は、そんな奴らから人間とケミーの安全を守るために各地を転々として戦っているんだ。」

 

錬太郎の話に3人とも黙り込む。この世界で跋扈する魔王軍とはまた別の存在とも戦っているという事実に驚きを隠せていなかった。

 

「話が長くなってしまったね。ケミーの件に関しては僕は自力でなんとかするから、ここらでお開きにしよう。」

 

話すことは話したと、錬太郎は蹄を返してゴルドダッシュの方へと向かう。

 

「待ってくれ、ケミー達の回収なんだけどさ、俺も手伝わせてくれよ」

 

カズマは錬太郎を呼び止めると、自分もケミーの回収に協力したいと言い出した。

確かにケミー回収に関わるとマルガムに襲われる可能性はあるが、錬太郎がいるならそんなのお釣りが出るレベルで問題ないだろう。

何よりアクセルにいるケミー達を回収したら、錬太郎はこの街を出て行ってしまうかもしれない。

カズマとしてはそれだけは避けたかった。自分のパーティには水の女神(笑)や爆裂狂いの魔法使いと碌なメンバーがいない。だからある程度話が通じるまともで頼りになる人物が欲しいのだ。

 

「駄目だ!これは僕の問題だ。部外者である君達が関わる必要はない…」

 

錬太郎はカズマの申し出を容赦なく切り捨てた。

 

「そこをなんとか頼む!ウチのパーティーには駄女神といい、一発屋といい、まともな奴がいないんだ!本当に頼む!この通り!」

 

「ケミーのことじゃなくてそれが本音でしょ…」

 

カズマが必死になって懇願する様子に錬太郎としては少々断りづらい雰囲気となっていた。

 

「おい、私のどこがまともじゃないのか聞こうじゃないか!」

 

「やめてめぐみん。でも、私もケミーを集めるのには協力したいです…」

 

ゆんゆんの発言に皆が視線を向ける。一斉に見られて驚いたのか、頬をほんのり赤くしながら、ゆんゆんは話し始める。

 

「…確かにケミー達には危険な部分もあるかもしれません…でも、私の友達になってくれました、私に力を貸してくれました、そして思ったんです…もっとこの子達のことを知りたいって…錬太郎さん、私からもお願いします!」

 

ゆんゆんもカズマのように頭を下げて錬太郎に懇願する。しかし錬太郎も頑固なのか、なかなか頭を縦に降らない。

すると、

 

『ホッパー!』

 

突然ホッパー1が現れ、錬太郎の手のひらに乗っかった。

 

「どうしたんだ、ホッパー1?」

 

『ホッパ、ホッパ〜』

 

錬太郎はホッパー1の発する言葉を真剣に受け止める。何を言っているのかはわからないものの、何を伝えたいのかはわかった。

 

『信じてみてはどうか?』

 

ホッパー1に賛同するかのようにゆんゆんのプラントケミー達も騒ぎ始めた。

 

「みんな…」

 

ケミー達の様子を見て、錬太郎はかつての恩師の言葉を思い出す。

 

"ケミー達の言葉に耳を傾けろ"

 

錬太郎は大きなため息をついてから、3人の方に向き直り、笑顔で答えた。

 

「わかった、それじゃこれから一緒に宜しくね」

 

「よっしゃあ」

 

「ありがとうございます」

 

錬太郎の回答にカズマはガッツポーズをし、ゆんゆんは感謝を述べる。

 

「でも僕がカズマのパーティに入るとなったらゆんゆんも一緒に来ることになるよね?」

 

「そうなるな…めぐみん、いいよな?」

 

「まぁ、いいですよ。そうじゃなきゃこのぼっちが可哀想ですからね」

 

「ちょっと、今はぼっちじゃないわよ⁉︎」

 

どうやらめくみんの賛同も得られたらしく、これで正式に2人のカズマパーティ加入が決まったのだった。

 

「う〜ん、騒がしいわね〜」

 

酒に酔い潰れた後、カズマによって長らく気絶していたアクアが漸く目を覚ました。先程の戦闘や衝撃波で目覚めなかったのに何故このタイミングかは疑問であるが。

アクアはカズマの背中から降りると、重い瞼を開ける。そして錬太郎を見つけると、

 

「あーー!アンタ!シュワシュワ泥棒!今度は逃がさないわよ!」

 

会食の時のように錬太郎に詰め寄った。錬太郎はまたかとは思いつつも、自分に非があるため、甘んじて聞いてあげることにした。

 

「おいアクアよせって!」

 

「あによ!うるさいわね!…うっ、なんか気持ち悪くなって…」

 

カズマとまた口論になると思われた瞬間、アクアが口に手を当てた。

シュワシュワ、気持ち悪い、口を塞ぐ…どことなく嫌な予感がする。

その予感は見事に的中して…

 

「ウッ…ウウ…オエエエエエ!」

 

「ああああ!僕の服がぁぁ!」

 

「何やってんだこの駄女神がぁぁぁぁ!」

 

アクアは錬太郎の服に向かって吐き出してしまった。

そんなアクアに対するカズマの怒号が青黒い夜の色の空に響き渡る。

駆け出しの街での新たな仲間との出会いの締めくくりがよもやこのようなことになるとは…

錬太郎とカズマたちのケミー探しの物語の幕は切って落とされたばかり

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