この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

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気づけばもう40話。皆様いつもありがとうございます。

本物のハガネ兄さんって、レオ兄さんやセブン師匠みたいな厳しさがあるけど、愛情がしっかりある頼れる兄貴のイメージなんですが、上手く表現できましたかね?


君の中の英雄が未来の君を目覚めさせる

 アクセルのギルドはいつもと比べて物静かであった。

 

先程、カズマパーティのアクアと錬太郎との間でいざこざがあり、ギルド職員が注意喚起を促す事態に発展したため、どうも場の空気は重苦しい。

 

 そしてそのカズマパーティ達は、錬太郎と時間を共にしたケミーの一体、『ズキュンパイア』から錬太郎の過去について詳細を聞かされようとしている。

 

今まで錬太郎にぼかされ続けていた彼自身の過去。関係者を通じてではあるが、その内容を初めて知る緊張と好奇心故か、皆どこか神妙な顔つきであった。因みにクリスは用事があるとのことでその場を後にしている。

 

『さぁ、錬太郎のことを話していこうか。彼は今から15年前の12月25日、元気な産声をあげて産まれた。彼の父のダンと母の舞はそれはもう泣いて喜んだらしく「ごめんズキュンパイア」何だい、カズマくん?』

 

「あの…出来れば重要そうなところだけ纏めてくれないか?このままだと日の出までかかりそうだし…」

 

 カズマからの指摘に、ズキュンパイアは目を点にしたのち、ほんのりと顔を紅く染め、頬をぽりぽりと掻いた。そしてこほんと咳払いを挟むと、再度話し始める。

 

『では改めて、じゃあ錬太郎の性格からね。錬太郎はね、元々は今のような渇いた性格じゃなかったんだ。

人懐っこくて、元気はつらつで饒舌で…自分の夢を現す〈ガッチャ〉を追い求める純粋無垢は男の子だった…』

 

「人懐っこい…」

 

「元気はつらつ…」

 

「饒舌だと…」

 

 意外すぎる錬太郎の素の性格に動揺するカズマ達。そしてズキュンパイアからの証言を元に、それぞれ想像してみたのだが…

 

『カズマ、めぐみん、ダクネス!おっはよ〜!今日も元気にクエストやってこ〜!掴め!最高のガッチャ!』

 

「「「うん違和感しかない!!!」」」

 

 今までの錬太郎からして、3人にはズキュンパイアの言った当時の様子は見当もつかないようだ。見事なまでにハモったカズマ、めぐみん、ダクネス3人のツッコミにズキュンパイアは思わずプッと吹き出してしまった。

 

『無理もないさ、2年前のあの日…錬金事変が彼を変えてしまったんだ…』

 

「錬金事変…世間ではアルケミアの錬金術師達の内乱だと言われているが…これまでのことを踏まえると…」

 

『察しがいいね、ダクネスちゃん。錬金事変の真実は、ロードによる侵略だ。

ロードを相手に、錬太郎のお父さんやお母さん、そして錬太郎の兄貴姉貴分にあたるハガネやライラは善戦していて、さらに途中からガッチャードライバーが覚醒して錬太郎を使用者として認めて、戦局は優勢、勝利は確実かと思われた…筈だった…』

 

「だったってことは、結果は…」

 

 めぐみんの続けようとした言葉を正解とばかりにズキュンパイアはうなづいて、話を続ける。

 

『その通りさ、めぐみんちゃん。ロードは何枚も上手(うわて)だった。言葉に魔力を含ませる能力で錬金術師達を洗脳して争わせ、さらに内通者を通じて情報を全て把握し、たった一夜にしてアルケミアを壊滅させた。

錬金事変の最中、父親は行方不明、母親はロードに力を奪われて冒険者を事実上引退、ハガネとライラは帰らぬ人になった…』

 

「そんな…」

 

『生き残った錬太郎は、王都にいる叔父を頼りつつ、錬金事変で世界に散らばったケミー達を探し、並行してアルダープによって捻じ曲げられた錬金事変の真相を世間に訴え続けた。けれど現実は残酷で、誰も錬太郎の声に耳を傾けず、蔑んだ』

 

「「「……」」」

 

 皆言葉が出なかった。仲間達を失っただけではなく、世間からも腫れ物扱い、過酷すぎる錬太郎の過去に何を言えばいいのかわからなかった。

 

『さらに追い討ちをかけるかのように、ロードは錬金事変で亡くなった錬金術師達の死体を媒介にホムンクルス集団、〈ネガマスク〉を組織して、錬太郎と戦うように仕向けた。君たちと何度も戦ったソラトスも、ハガネを模したネガマスクだ。

度重なるかつての同胞との戦いに、錬太郎の心は壊れていってね…。

一時期はまともにコミュニケーションをとることが出来ない状態にまで追い詰められてしまったんだ』

 

「なんだよそれ…」

 

『その後は叔父の死により、2年程拠点を持たずに放浪してたんだけど…君たちと出会って…という感じかな。この一連の出来事のせいで、錬太郎に秘密主義な部分が形成されてね、失うことを恐れて1人で背負い込んでしまうことが多くなってしまったんだ…』

 

 ロードの錬太郎に対する仕打ちにカズマは声を荒げ、めぐみんとダクネスも声こそ出さないものの、憤りを感じて体を震わせている。 

 

 そんな中、1人の人物が思い立ったかのように椅子から腰を上げた。

 

「アクア?」

 

「謝らないと…ロードをこの世界に連れてきたのは私…私が、錬太郎が傷つく原因を作ったじゃない!」

 

「アクア、お前…」

 

「許されるつもりなんてないわ、でもこれじゃ…私の気がすまないなんてもんじゃないわよ!」

 

 今まで見たこともないアクアの顔にカズマは驚く。今まで駄女神とか、穀潰しとか罵ってきたものの、彼女も錬太郎の人生の遠因となってしまったことに思うところがあったようだ。いつもよりも潔いアクアを前にカズマはため息を一つ挟み、頭を掻きむしってお決まりの言葉を零す。

 

「ったく、しょうがねぇなぁ。俺も行くよ、アクア」

 

「カズマ…」

 

「アイツがいなきゃ、色々面倒だからな。ジュラシックパーク同然のうちのパーティは俺1人じゃ骨が折れるんだよ。一度入った以上、困難は分割しなきゃな!」

 

「今ナチュラルに私達を貶しましたね⁉︎ジュラシックパークってのが何なのかわかりませんが、あと最後モロ私情じゃないですか!」

 

「うるせー!元はと言えばお前らが手のかかるお間抜け軍団なのが悪いんだろーが!」

 

「いいなカズマ!最近仕事が忙しく罵倒されずでムズムズしていたのだ!さぁ、もっともっと頼むぅぅ!」

 

 空気が変わればコントが始まる。そうだ、カズマ達はこうでなくては。重っ苦しくシリアスなど、彼らには基本似合わない。先程の張り詰めた空気はどうしたのやら、そこにいるのはいつもの煩く賑やかなカズマパーティだった。

 

 その時、ギルドの近くで人々の鼓膜を強く振動する衝撃音が響き渡った。

 

「何だ、今の音⁉︎」

 

ギルドの人々は、皆何事かと、音のした方角へ顔を向ける。

 

「取り敢えず外に向かって様子を見ましょう!」

 

 めぐみんの提言の下、カズマ達及び、気になった冒険者達並びにギルドの職員達が外へ足を運んだ。

 

『あれって…』

 

 ズキュンパイアは自身の瞳に映った光景に驚きの意を漏らす。

 

 彼らの視線の先では、ガッチャードマルガムとなった錬太郎と、この世を去ったハガネしか扱うことのできない専用錬成具、『ヴァルバラッシャー』で鉄鋼した戦士、ヴァルバラドが相見えていたのだった。

 

 

 

 

 

「どうだ錬太郎、お前が切り札と豪語していた黒い炎は俺相手の時でさえこのザマだ。ロードとの戦いでの結果など目に見える…」

 

「グッ…まだまだァァァァ!!」

 

 ヴァルバラドの言葉に躍起になったガッチャードマルガムは、再び猛攻を仕掛ける。両腕の武装から繰り出させる強力無比な乱撃だが、ヴァルバラドの専用武器『ヴァルバラッシャー』による巧みな捌きによって全て受け流されてしまった。

 

「お前1人の力は小さい。1人ではどう足掻いても限界がある…だから…」

 

「五月蝿い、これは僕の戦いだ!貴方やライラ姐さん達の無念を必ず晴らさなければならないんだ!」

 

 ガッチャードマルガムは荒ぶる感情のまま、黒炎を纏わせた両腕の列車型の武装を取り外して二両とも連結させ、ヴァルバラド目掛けて放つ。電光石火の如き迫撃を前にヴァルバラドはヴァルバラッシャーを盾のように構えて防御態勢に移る。

 そして視野の狭くなっているガッチャードマルガムに対し、厳しい声色で叱咤した。

 

「この大馬鹿野郎!」

 

『ガキン!ベロソル!ゴキン!』

 

『オカルトヴァルバラバースト!』

 

 ヴァルバラッシャーにオカルトケミーのレベルナンバー2、ベロソルのカードが装填され、その力が解き放たれる。ヴァルバラドの目の前に巨大な傘型の障壁が出現し、ガッチャードマルガムの攻撃を反射して逆にダメージを与えた。

 

「ガッ…ァァァァ」

 

 倍返しされた攻撃に、地面に転がり悶え苦しむガッチャードマルガム。しかしヴァルバラドは容赦なく厳しい言葉をかけ続ける。

 

「その考え自体が間違いだ。お前のゴールは復讐ではないだろう!」

 

『ガキン!ガッツショベル!ゴキン!』

 

『ヴァルバラッシュ!チューンアップ!ガッツショベル!』

 

 再びヴァルバラッシャーを操作し、今度はビークルケミーのレベルナンバー8、ガッツショベルのカードが装填される。刹那、ヴァルバラドの左腕にショベルカーのアームを模した武装が装着された。

 

 ヴァルバラドは新たな武装を携え、ガッチャードマルガムに肉薄すると、ヴァルバラッシャーとの二刀流で優位に戦闘を進めていく。

 

「2年間…どれほどの後悔を抱えてきたと思っている!故郷を、仲間である貴方達を、錬金術師達の社会的地位も失って…この地獄を忘れられる訳ないだろう!

それに今度はゆんゆんを危険に晒し、一度はカズマも命を落とした…

これ以上の失態を重ねて、どの面下げて貴方達の墓の前に立てばいいんだ!」

 

「なら…お前は今どんな顔をしている?」

 

 ヴァルバラドの言葉にガッチャードマルガムの動きが固まる。動揺しているのだ。しかし、戦場において一瞬の気の迷いも大きな隙となる。

 心が闇に沈んだ錬太郎に喝を入れるかの如く、ヴァルバラドはガッチャードマルガムの金色の肉体に傷を付けていく。

 

「巻き込みたくないということを言い訳にして、失うことを恐れ、仲間達そしてケミー達と向き合うことから逃げるような奴に、誰が墓前に立って欲しいと願うか!

そんな奴がゆんゆんちゃんを、クロスウィザードを救える訳無いだろ!」

 

『スクラップ!ヴァルバラブレイク!』

 

 ヴァルバラッシャーのボルトを操作して、左腕に纏わせたガッツショベルの力を解放する。

 

ヴァルバラドは、下から上に向かって弧を描くように左拳をガッチャードマルガムの腹部に炸裂させる。

 

ガッチャードマルガムはなす術もなく宙にその身を預け、ヴァルバラドはその瞬間を見逃さず、ヴァルバラッシャーをガッチャードマルガムに力強く叩きつけた。

 それでもなんとかヴァルバラドを押しのけ、よろめきながらガッチャードマルガムは立ち上がり、言葉を綴る。

 

「遠ざけるしかないだろ…これはカズマ達のためでもあるんだ。世界のために、人々のために…今は無理でも、いつかカズマ達だってわかってくれる!」

 

「都合の良い奴だな!大義のためなら平気で仲間を切り捨てていいのか?

 

それなら仲間同然のネガマスクを駒としてしか見ていないロードと何が違うというんだ!」

 

 再びガッチャードマルガムに迫り、ヴァルバラドは無慈悲な連撃を繰り出し、ガッチャードマルガムの装甲を砕いていく。それはまるで錬太郎の心を長年蝕んでいた負の感情を削ぎ落としていくかのよう。

 

「答えろ百瀬錬太郎!仲間達に真実を隠し、貼り付いた笑顔で振る舞っていたお前は、真実を捻じ曲げ、都合よく世間を牛耳ったアルダープと何が違うんだ!」

 

 ヴァルバラドの猛攻の嵐は止むことを知らず、やがて全ての装甲が抉られ、剥き出しのガッチャードマルガムが露わになった。

 

「過去を受け止め、人々と手を取り、救える命は全て救い、世界の矛盾を打ち砕くことこそがお前の掲げた夢だっただろう!お前が…お前の信念に背くなど、兄弟子の俺が絶対に許さんぞ!」

 

『ガキン!ケアリー!ゴキン!』

 

『オカルトヴァルバラバースト!』

 

 追い詰めたガッチャードマルガムに、ヴァルバラドはオカルトケミーレベルナンバー1、ケアリーの力による青白い炎をヴァルバラッシャーの刀身である『ラッシャーブレード』に纏わせ、必殺の斬撃を浴びせた。

 

「…ッ⁉︎ぐあぁぁぁ!!」

 

 疲労困憊満身創痍のガッチャードマルガムにもはや耐久力など残されておらず、攻撃を受けてマルガムは錬太郎の姿に戻り、ホッパー1、スチームライナーとも完全に分離した。

 

「カズマくん達は強い、お前が思う以上にな。お前の過去に触れて尚、仲間としてどう向き合うか考えるくらいだ。

だからケミー達は彼らと出会った時のお前に言ったのだ、信じてみろと。錬金事変の心の傷に囚われて、失うことを恐れ一人で抱え込んでしまうお前に対してな」

 

 地面に倒れ伏し、光の消えた瞳の錬太郎に言葉が届くかどうかは怪しい。それでも、彼を信じているから、大切な弟弟子だから、ヴァルバラドは話を続ける。

 

「彼らはありのままのお前を受け入れようとしている。今度は…お前の番だ。お前はどうしたい?使命や責任など今はどうでもいい、心の内を叫んで聞かせろ!」

 

 錬太郎からの返事はない。

失望したのか、はたまた別の思惑があるのか、ヴァルバラドはヴァルバラッシャーを天高く掲げると、錬太郎目掛けて勢いよく振り下ろした。

 

「やめろ!」

 

 ヴァルバラドの行動にカズマが叫んだが、もう遅い。ヴァルバラッシャーは既に錬太郎の目前に迫っていた。

 その時だった。錬太郎はアルケミストリングを装着した右手を目の前に翳し、錬金術の詠唱を行った。

 

「『下にあるものは上にあるもののごとく 上にあるものは下にあるもののごとく ただ一つたる 奇跡をなさん』」

 

 絶体絶命の瞬間、咄嗟に発動した錬金術により、虹の炎による障壁が錬成され、ヴァルバラッシャーの攻撃を見事防いだ。

 

「やるな…」

 

反動によりヴァルバラドは後退りするも、どこか嬉しそうであった。そして見据えていた錬太郎は、上半身を起こして震える声で弱々しく、されど本気の気持ちの籠った声で、自身の心の奥に仕舞った気持ちを吐露した。

 

「僕は…皆とまだ冒険したいよ…

 

こんなところで…終わるのは…本当は嫌だよ…折角…

 

折角皆と出会うことが出来たのに!!!」

 

 

 

 

「錬太郎!」

 

 遠くからする声に錬太郎は振り向く。そこにカズマ達パーティメンバーがいることにようやく気がついた。次の瞬間、カズマは2つのものを錬太郎へ向かって投げ渡し、錬太郎は見事にキャッチした。

 それは自分が置いていったガッチャードライバーとガッチャードローホルダーだった。再びカズマ達を視界に捉える錬太郎。錬太郎からの視線に、カズマ達は叫ぶように大きな声でそれぞれの胸中を告げた。

 

「お前にどんな過去があろうが関係ねぇ!心の広ーいカズマさんはお前の帰りを待ってるぞ!あとゆんゆんにお前がいなくなったこと聞かれたら色々面倒だから…えっと、その、ああ〜思いつかねぇ!とにかく絶対戻ってこい!パーティリーダーとしての命令だぁぁ!」

 

「カズマ…」

 

「相変わらずカズマは締まるところで締まりませんね…「うるせぇロリっ子!」全く、貴方は私の爆裂道の同士です!勝手にいなくなるなんて許しませんよ!」

 

「めぐみん…」

 

「私もカズマ達と同じだ!パーティとして共に歩むと誓った仲ではないか!」

 

『勿論僕を始めとするケミー達も、ね!』

 

『ブシドー!』

 

『スケボー!』

 

『カマカマ!』

 

「ダクネス…みんな…」

 

 錬太郎の視界がぼやけていく。涙だ。瞳から湯水のように沸き上がってくる涙のせいだ。しかしそれは数刻前まで自身の心を蝕んでいた後悔から来るものではない。自身を許してくれた、受け入れてくれたカズマ達に対する優しさ、温かさへの感謝と喜びから来る嬉し涙だった。

 

「こんな最低な僕を…馬鹿だよ…皆揃いも揃って大馬鹿だよ…」

 

 やがて涙は瞳に収まらず、一筋、また一筋と、光の線を描いて錬太郎の頬を伝っていく。遂には嗚咽も漏らした。情けない姿かもしれないが、皆の前で今の自分を偽りたくなかった。これが今の自分の気持ちなのだと錬太郎は心の底から感じた。

 やがて涙をローブの裾で拭うと、勢いよく立ち上がり、澄み切った瞳でヴァルバラドへ向かって声高らかに自身の想いを言い放った。

 

「兄さん、見つけたよ…僕の新しいガッチャ…

 

仲間たちと共に、大きな壁を越えていく…僕に宿る虹の炎で、この世界の悪意を焼き尽くす!」

 

「フッ、良い顔になったじゃねぇか…」

 

 錬太郎の決意にヴァルバラドは仮面の下で満足そうな笑みを浮かべた。目の前の弟弟子に曇りに曇り切った様子は影も形もない。今の錬太郎は、かつてアルケミアにいた頃の純粋無垢な少年そのものだった。

 

「ホッパー1、スチームライナー、そしてケミーの皆、

 

今までごめん!こんな僕だけど、もし許されるのなら…もう一度一緒に戦ってくれないか?」

 

『ホッパー!』

 

『スチーム!』

 

 錬太郎は自身のことを長い間案じてくれていたケミー達に非礼を詫びる。しかし、ケミー達はそんなこと気にしていないとばかりに元気に返事をし、また共に戦おうと鼓舞してくれた。

 ケミー達の優しさに錬太郎も笑みを浮かべ

 

「…ありがとう!!」

 

礼を告げた後、ガッチャードドライバーを腰に装着した。そして歴戦の相棒であるホッパー1とスチームライナーのカードをベルトへ装填する。

 

『ホッパー1!』『スチームライナー!』

 

『ホッパッパー!』 『ライナァァァァ!』

 

 カードの装填が完了すると、錬太郎の背後に巨大なホッパー1とスチームライナーが現れ、やる気の満ちた雄叫びを上げた。

 錬太郎も気合いの入った様子で両手で円を描いて重ねる。さらに両手を反転させ、矢印の先端を形作って正面に突き出した後、ベルトのレバーを操作して勇ましい声を響かせた。

 

「変身!」

 

『ガッチャーーンコ!スチームホッパー!』

 

 変身時のエネルギーが光に包まれる錬太郎を中心に放出され、曇天の夜空に広がる暗雲を一瞬で消し去る。

 星々の光が照らす中、群青の装甲に身を包んだ飛蝗と列車の戦士の姿が露わになる。

 1人の若き錬金術師の英雄達が、彼の心の闇を振り払い、今ここに錬金戦士、仮面ライダーガッチャードは完全復活を遂げたのだった。

 

 

 

 

 

「ガッチャード復活か…本当に大丈夫か最終チェックだ!これでハッタリなんてもんなら問答無用でスクラップだからな!」

 

 ヴァルバラドは、ヴァルバラッシャーの柄を握り直し、八双の構えを取る。対するガッチャードも地面を力強く蹴って、瞬く間にヴァルバラドに肉薄し、勢いを乗せた右足蹴りを炸裂させた。

 

「ハァ!」

 

「クッ…重いな…」

 

 なんとかヴァルバラッシャーで防いだヴァルバラド。しかしガッチャードの攻勢は続く。防がれた反作用で流される身体を引き戻し、再度回し蹴りを繰り出す。流石にこの連撃にヴァルバラドは対応できず、大きく後退した。

 

「なら、これでどうだ!」

 

 ヴァルバラドは銃を持つようにヴァルバラッシャーを持ち直し、ガッチャード目掛けて、無数の光弾『フォトンバレト』を刀身の先の『ケルビムマズル』から乱射する。

 

「それなら…ホッパー1、いくよ!」

 

『ホッパ!』

 

 対するガッチャードは、ホッパー1の力で強化された強靭な脚力で縦横無尽に飛び回り、銃撃を回避してみせた。

 

「僕はもう迷わない。仲間とケミー達と一緒に、未来を切り開いてみせる!」

 

 ガッチャードはベルトのレバーを操作して、空高く舞い上がる。そしてヴァルバラドへ狙いを定めて右足を突き出すと、光速をも超える速さで一気に迫った。

 

「兄さん…これが僕の覚悟だ!!」

 

『スチームホッパー!フィーバー!』

 

「その言葉を、待っていたぞ!」

 

『ヴァルバラブレイク!』

 

 ガッチャードのライダーキックに対抗し、ヴァルバラドもヴァルバラッシャーによる必殺技を放って相対する。

 激しく火花を散らして交わる脚と刃。それぞれの信念の籠った強撃は、やがて強い衝撃波を巻き起こし、アクセルの大地を揺らした。

 

「ど、どうなったのでしょうか…」

 

 振動が終わり、土埃が舞う大地を目を凝らして眺めるめぐみん。やがて砂煙が収まった場所には、背中合わせの錬太郎とハガネが満足そうに笑みを浮かべていた。

 

「もう、大丈夫なようだな。」

 

「うん、ありがとう…ハガネ兄さん」

 

 錬太郎からの礼に、ハガネは柔和な顔になって口角をあげる。その後、再び気を引き締めて真剣な顔になり、

 

「話が変わるが、ゆんゆんちゃんとクロスウィザードの件…スーパーガッチャードでは火力不足で2人を分離できないだろう?

なら、俺のヴァルバラッシャーをお前専用に再錬成しろ」

 

「いいの?」

 

 ハガネからの思いもしない提案に、錬太郎は目を丸くする。

 

「ヴァルバラッシャーは俺用だからな。死人の俺専用なんじゃ、あっても意味がねぇ。ヴァルバラッシャーに備わる使用者の技量に応じてケミーの力を解き放つ仕様は、今のお前にはうってつけだろ?

あとは、再錬成した時でも問題なく作用する程の十分な動力源が必要だが…」

 

「動力源…コロナタイト!」

 

「あるのか…なら、問題ないな」

 

 ハガネは刃を下に向けて、ヴァルバラッシャーを錬太郎に手渡す。そして自身の右人差し指に装着していたアルケミストリングを取り外し、錬太郎の左人差し指に指輪を嵌めてあげた。

 

「ほら、後はお前次第だ。帰れ、お前を待つ仲間達の元へ…」

 

 最後にハガネは錬太郎の背中をトンと押す。錬太郎が改めてお礼をしようと振り向くと、そこにはもうハガネの姿はなく、一匹の紫の蝶が星々の照らす夜空の道を羽ばたいていくだけだった。

 

「またね、ハガネ兄さん…」

 

 錬太郎は紫の蝶を見送ると、カズマ達のいる場所へと駆け出していった。

 

 

 

 

 戻ってきた錬太郎を、カズマ達は温かく迎え入れた。特に力強く抱きついてきたカズマとめぐみんに、錬太郎は少しばかりくすぐったく感じつつも、2人の温かさをありがたく感じた。

 

「あの、錬太郎…」

 

 突如、アクアが錬太郎に声をかけた。錬太郎はアクアに視線を向けると、アクアはもじもじとしながら何かを言いたそうにしていた。しかし、緊張故か、なかなか言葉を紡ぐことができず、謝罪が出来ない。

 対する錬太郎は、カズマ達から離れ、アクアの方へ歩み寄ると、彼女に向かって頭を下げた。

 

「アクア、本当にごめん!」

 

「へっ?」

 

 謝られるとは思ってもいなかったのか、アクアは間抜けな声を漏らした。

 

「アクアだって、この世界のことを案じての行動だったのに…僕の事情で心無いことを言っちゃって本当にごめん!」

 

「ううん、私の方こそ…結果的に貴方を苦しめることになっちゃって、ごめんなさい…」

 

 お互いに非を詫び、お互いを許す。錬太郎とアクアの間に生じた蟠りは、これで完全に消え去った。その2人の様子を、カズマ達も嬉しそうに眺めていた。

 

「そうだ、こうしちゃいられない。ゆんゆんとクロっちを救い出す方法があるかもしれないんだ!」

 

「そうなのか、錬太郎?」

 

「うん、でもそれには…僕1人だけじゃ無理なんだ…だから…」

 

「皆まで言うな、俺はお前のパーティのリーダーカズマさんだぞ?俺たちの力が必要ってことなんだろ?」

 

 錬太郎の心の内を見透かしたようにドヤ顔するカズマ。錬太郎も参った、降参とばかりに軽く笑い

 

「カズマには敵わないなぁ…皆の力を貸して欲しいんだ」

 

「任せなさい!これまでの罪滅ぼしも兼ねて頑張ってやるわ!」

 

「私も、ライバルのゆんゆんのために人肌脱ぎますか」

 

「無論、私もだ!」

 

 カズマに同調し、他3人も錬太郎に協力することを告げる。その優しさに、再び目頭が熱くなる錬太郎。泣き崩れそうな自分を律して笑顔を浮かべると、善は急げとばかりにガッチャードローホルダーからワープテラのカードを取り出した。

 

「ワープテラ、屋敷まで飛ばしてくれ!」

 

『ワープ!』

 

 ワープテラによる能力で、錬太郎達は彼らの屋敷へと直行し、ギルドを後にする。

 

「まぁ、なんだかんだあいつらが仲直りして良かったな!」

 

「違いねぇ!」

 

 ギルドに残された人々は、情報量の多さや急展開に少々困惑しながらも、寄りを戻した錬太郎達5人に安堵するのだった。

 

 

 

 

「それで錬太郎、何をするんだ?」

 

「ハガネ兄さんから貰ったヴァルバラッシャーとコロナタイトを再錬成して、ガッチャードライバー強化装置を生み出す。取り敢えず机の上片づけておいて」

 

 屋敷に戻るなり、錬太郎は自室に戻って冷却されたコロナタイトを持ってくると、カズマ達が片付けた机の上に、ヴァルバラッシャーと共に並べる。

 

「この2つは質がいいから超高等錬成術を扱わなきゃいけないんだけど、魔力消費がとんでもないんだ。だから、カズマのドレインタッチで魔力を供給して欲しい」

 

「任せとけ!おいアクア、トップバッターはお前な!お前の魔力値はカンストなんだからよ」

 

「はいはい、任せておきなさいな」

 

 カズマはドレインタッチを発動させ、片手をアクアに、もう片方の手を錬太郎に当てて、魔力の移し渡しを行う。それと同時に錬太郎も錬金術を発動させ、コロナタイトとヴァルバラッシャーが液状に変化していった。

 

「おお…順調だな…これなら…」

 

 幸先良しと口角を上げるカズマ。しかし、

 

「ぐっ…」

 

「あぁっ…ハァ、ハァ…」

 

 突然錬太郎とアクアが膝をついた。いくらカンストしているアクアの魔力といえども、錬成に対する供給が追いつかないようだ。

 

「アクアで足りないのなら、私も頼む!」

 

「紅魔族の質の高く強い魔力も忘れずに!」

 

『ホッパー!』

 

『スチーム!』

 

『ウィール!』

 

 カズマはダクネスやめぐみん、そしてケミー達からも魔力を受け取り、錬太郎へと渡していく。なんとか供給が追いついたようで、引き続き錬太郎は作業に取り掛かった。

 

「イメージするんだ…僕の新しい力…弱い人達を炎のような速さでいつでも助けて温かく包み込む…そんなガッチャードに僕はなりたい…

 

いや………、なってやる!」

 

 錬太郎の決意に呼応し、その瞳が七色に輝き、身体から虹の炎が吹き出して錬成中のヴァルバラッシャーとコロナタイトを纏めて包み込む。

 

そして錬成の呪文を大きな声で唱え上げた。

 

「『万物は、これなる一物の改造として生まれうく』!!」

 

 やがて炎は包み込んだ物質を新たな形、点火器を模した形状へと変え錬太郎の手の中に収まった。

 

「やった、完成した…『ガッチャーイグナイター』!!

 

ありがとう皆…本当にありがとう!!」

 

 屈託のない笑顔で礼を告げる錬太郎。その笑顔を見て、他4人も釣られて笑みを浮かべた。

 

 

 

 

「おめでとう錬太郎。ところで…ガッチャーイグナイターって…それの名前なのか?」

 

「うん、そうだよ」

 

「あの…俺が言うのもなんだが、もっといい名前がある気がするんだが…」

 

「そうですよ、紅魔族センスから名付けるなら…『ボーボーチャッカマン』なんてどうでしょう?」

 

「却下だ却下!ダサすぎるだろそれは!」

 

「そうよ、ここは私の魔力を中心に生まれたのだから『アクシズバーナー』で決定よ!」

 

「お前のもダメじゃ!私情を出してくんな!」

 

「ガッチャーイグナイター!絶対ガッチャーイグナイターなの!」

 

 新アイテムの名前決めで口論に発展する一行。どうして感動の場面がこうも変な方向に進んでしまうのか。まぁ、これも彼らの個性故なのだが。

 

 

「全く…錬太郎の新しい仲間は思った以上に凸凹(でこぼこ)してるなぁ…」

 

『エンジェリー…』

 

 皆の様子をこっそり眺めていたハガネは苦笑いを浮かべる。その隣にはオカルトケミーのレベルナンバー4、『エンジェリード』がいた。

 

「ありがとうな、エンジェリード。お前のおかげでまた錬太郎と話すことが出来た。心から感謝する…」

 

『エンジェリー♪』

 

 ハガネからの礼にエンジェリードは声を上げて喜んだ。

 

 

 

 

 

「ところで女騎士さん…どうして顔を紅くして震えているんだ?」

 

「ん?来客か?

 

皆が言い争う中、私は蚊帳の外…こんな放置プレイ…最高だぁぁぁ!」

 

「アンタ、めちゃくちゃ癖強いな」

 

「ぬぅん!見ず知らずの者から向けられる引かれた目、イイ!!」

 

 特殊性癖のダクネスに無自覚にじっとりとした目を向けるハガネ。その視線さえもダクネスは恍惚に感じる。

 錬太郎やカズマ達は苦労しているのだなぁと憐れまずにはいられないハガネなのであった。




遂にガッチャーイグナイター完成!
ゆんゆんとクロっちを救うことは出来るのか…

エンジェリード、本来はこういう役目するケミーなんじゃないかと勝手に解釈しています

今回のタイトルはガンダムAGEのed「君の中の英雄」のワンフレーズから来ています。
君(錬太郎)の中の英雄(ハガネ兄さん、ケミー達そしてカズマパーティ)が未来の君を目覚めさせるってイメージとマッチしたので採用しました。
とても良い曲なんですよね〜

ちなみに錬太郎とハガネ兄さんの掛け合いは、小説版ガンダムAGEでの老年フリットと少年フリットの掛け合いをオマージュしております。

それではまた

次回予告
「蒼炎の道しるべ〜君がまってる〜」
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