この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを! 作:山田プロキオン
バニルさんの口調難しい…
忍者おじさん、及びゼインという想定外のワイルドカードの乱入により、混沌と化すキールダンジョン。八方塞がりに近い状況の中、バニルがカズマに声をかけた。
「鬼畜小僧、素晴らしい提案をしよう…」
「何だバニル?」
「この際一時的に共闘しようではないか。見通したところ、あの忍者コスプレ男と錬金小僧はどう足掻いても衝突する。そして残った戦力だけで我輩ひいてはあの白い者に挑むのは無謀もいいところだ…。いや、正直我輩だけでは奴に勝てぬやもしれない…」
「マジか、あの白いヤツそんなに強いのか?」
「我輩の見通す力程ではないが、1秒の間に数えるのを諦める程の予測演算を行い最適解を導く能力があってだな、我輩だけでは読み合いの繰り返しで一進一退にしかならん…」
「そっか、んじゃあ仕方ねぇ。その代わり、アイツ倒したらダクネスから出ていけよ!ダクネスもそれまでは身体貸してやってくれ!」
「(な、何を言うカズマ!確かに身体を刺激する痛みは最高だが…、悪魔に身を委ねるなどエリス様を信仰する騎士としては…)お取り込み中悪いが、早く決断せねば取り返しがつかなくなるであろうぞ?」
信教上の理由でごねるダクネスに、バニルは決断を急げとばかりに遠くを指差す。もう既に何人かの冒険者はゼインに向かって特攻を仕掛けていた。
「フン…数が多いといえどやはり人間。創世の神と比べてみれば動きは単調ですね。しかし彼らからは煩悩や金銭欲、悪意に繋がりかねないモノをラーニング出来ます。放っておいては危険でしょう…」
『オーズ プトティラコンボ 執行!』
冒険者達の連携攻撃を、得意分野の予測で容易く回避しながらゼインカードを裁断する。プトティラコンボの中に宿る恐竜の記憶を解放し、ゼインはベルトのプラグライズキーを押し込んだ。
『ジャスティスオーダー!』
「ハァッ!フン!」
ゼインは右手を振り上げ、勢いよく地面へ叩きつける。刹那、ゼインの周辺に吹雪と共に出現した氷が無数の螺旋を描いて冒険者達を容赦なく襲った。鋭利な結晶は、恐るべき速度で広がっていき、冒険者達に傷を付けていく。
「今のって…まさかオーズの力?」
「やめろーー!!」
『エックスレックス!スーパー!』
ゼインの能力にカズマが驚愕する中、錬太郎はスーパーガッチャードへ変身してゼインに向かって地面を蹴って駆け出す。しかし、
「忘れたのか、貴様の相手はこの俺だ!」
「グッ、邪魔だ!」
レスラーマルガムが割って入り、スーパーガッチャードの行手を阻むと同時に、戦闘へともつれ込んだ。
「れ、錬太郎さん⁉︎」
「まともな方の紅魔の娘よ、気持ちは分かるが最悪錬金小僧は1人でも何とかなる。だが、あの白い異物は…」
「…わかりました、やりましょう!」
「(ゆ、ゆんゆん⁉︎そ、そうだめぐみん、お前から何とか言ってやってくれ!ライバルであり友達なのだろう?)」
「何を言うのですかダクネス。神に仇なす悪魔と呉越同舟で一時共闘、最高のシチュエーションではないですか!しかもその悪魔よりも強いかもしれない敵を我が爆裂魔法で撃破できるとなると…末代まで誇れる伝説になるではないですか!」
『僕も参戦するよ〜』
「ダクネス、お前は冒険者である以前に王家の懐刀ダスティネスのララティーナ様だろ?神の教えと今守るべき民、どっちのがお前にとって大事なんだ?」
カズマからの問いにダクネスは黙り込む。確かにエリス教徒としての矜持も大事ではあるが、目の前のゼイン相手ではその矜持を守っていては太刀打ちは出来ず、守らなければいけない民である冒険者を危険に晒すことになり得る。
悩みに悩んだダクネスの苦渋の決断は。
「(わかった、今回だけだぞ。あと二度とララティーナと呼ぶな!)」
「え〜、ダクネスも乗り気?女神の私としては悪魔と相乗りするなんて真っ平ごめんなんだけど…「今日の夜はシュワシュワ5杯」乗ったわカズマさん、私何すればいい?」
報酬で欲望に忠実なアクアも手のひらを返し、バニルの案に乗ってくれた。その後、バニルとカズマからの作戦を聞いた各々は、それぞれの役割を果たさんと行動を開始した。
カズマとバニルの作戦は
・バニル憑依ダクネスと処刑人クロっちが前線で戦う
・カズマとゆんゆんがスキルと魔法で後方支援
・最終的にめぐみんが爆裂魔法で仕留める
・アクアはセナと一緒に負傷した冒険者の回復
の以下の通りになった。
当初こそアクアがもっと目立った仕事をしたいと不服を溢していたが、回復以外やれることがないと諦め、めぐみんはとどめをさせると知るとそれはもう喜んだそうな。
因みにバニル憑依ダクネスの頭に自身の渡した封印の札が貼られていることにセナは気づき、カズマに不信感をわずかに持ったのだが、状況が状況のため、あえて触れることはなかった。
「さぁ行くぞ!最近錬金小僧と何をして遊ぼうか悩みながら1日を潰す魔法使い兼処刑人よ、我輩について来れるかな?」
『なんとなくだけど君面倒くさいね、まぁ今はいいんだけど…』
バニルの話し方に呆れながら、クロっちはゼインに攻撃を仕掛ける。擬態した人物の華奢な体躯からは想像もつかないような力で巨大なハンマーを流麗に振り回す。対するゼインも予測演算を駆使して回避行動に移るが、その回避した先には大剣を手に待ち構えるバニルが。
「汝がそこに避けるところは見通せていたぞ」
「ラーニング完了。未来そのものを見ているということですか…厄介極まりないですね…」
バニルは大剣を振りかぶるが、ゼインは右手で軽々しく受け止めると、懐目掛けて蹴りの姿勢に入る。
「今だゆんゆん!『狙撃』ッッッッ!!」
「はい!『ライトニング』!!」
その瞬間、バニルの背後から無数の矢と雷がゼイン目掛けて降り注ぎ、ゼインは攻撃に転じることが出来ずに後退した。
「背後から援護攻撃ですか…しかしこの程度」
「と、思うじゃん?」
存外余裕そうなカズマの口振り。不審に感じるゼインだったが、視界に映った僅かな情報でその違和感の正体を掴んだ。
「いけ!曲がれ!」
避けたはずの矢がカズマの指示とともに弾道制御され、再度ゼインに襲いかかる。バレットバーンとバンバンブーの能力だ。
「しつこいですね…」
『龍騎サバイブ 執行!』
『ジャスティスオーダー!』
すかさず龍騎サバイブのゼインカードを取り出して裁断するゼイン。刹那、その手にドラグバイザーツヴァイが顕現し、バツの字を描く斬撃『バーニングセイバー』を飛ばして矢を焼き払った。
「マジかよ、龍騎の力もあるのかよ…」
「これで追尾されることは…」
『他所見は良くないよ!』
カズマの矢に気を取られた一瞬の隙を突いて、クロっちがハンマーによる一撃を叩き込む。完全に油断しており、見事に命中した。さらに。
「我輩も忘れてもらっては困るな!」
流れるように次はバニルの大剣。クロっちにより空中に打ち上げられたゼインにダクネスの自慢の脚力で肉薄すると、何度も何度も斬りつけて地面に叩きつける。そして。
「『ライト・オブ・セイバー』!!!ハァァァァァァァ!!」
プラントケミー達、さらにライデンジの加護を受けた上級魔法の一撃をゆんゆんがゼイン目掛けて放つ。魔法によって生み出された雷を纏った無数の刃が、勢いよく斬りかかり、大爆発とともに、土埃を舞わせた。
その光景を、めぐみんは頬を膨らませて不満そうにしながら眺めて愚痴を溢す。
「むぅ〜、最後をゆんゆんに持っていかれるなんて…私の爆裂魔法を使う必要なかったじゃないですか!」
「いいじゃねぇか。不完全燃焼分はまた爆裂散歩付き合ってやるからよ…」
「…言いましたからね、言質取りましたからね!」
カズマの説得に、めぐみんは不服そうな態度を崩さない様子なものの、何処か声は上擦っており嬉しさを隠しきれていなかった。
しかし、奴はまだ倒されてはいなかった。
『ウィ?何これ?』
「か、身体が動きません」
「おいおい、まさか…」
「やはり一筋縄ではいかぬか…」
突如としてバニル憑依ダクネス以外の者達の動きが止まる。否、動かすことができないのだ。まるで、時間そのものの流れを止められて、というよりも時間そのものに縛り付けられているかのように。
「フリーズを発動させましたが、流石は大悪魔といったところですか…」
「いや、元の我輩では止まっていたな。このクルセイダーの肉体を借りた二人力の状態でなければ一貫の終わりやったやもしれん…(私の身体を借りていたからなんとかなったのか…思わぬ誤算だったな…)」
「地獄の公爵バニル。貴様は私の掲げる正義によってここで朽ちる定め。私のコンピュータが弾き出した結論です。間違いはありません」
「そのこんぴゅーたとやらが何かは知らぬが、我輩は見通す大悪魔。その動きを封じる技は時間制限があるのだろう?」
「フリーズが解除する前に仕留めればいい話です」
「図星か。だが力量ならばこのクルセイダーと我輩の二人力。貴様に勝つことは出来なくとも、解除されるまで持ち堪えることなど造作もない。(そうだ、私の耐久力を舐めるな!)」
「その耐久力も、打ち破る術はあります」
ゼインカードを新たに取り出すゼイン。描かれたライダーを見るに、確実に仕留めに向かっていることは明白である。
そのカードは…。
『グランドジオウ 執行!』
『ジャスティスオーダー!』
最高最善の魔王の異名を持つグランドジオウのカード。裁断と同時にゼインの右手にはサイキョージカンギレードが出現し、さらにゼインが自分の上半身に触れると、3つのライダーズクレストが浮かび上がる。
『ウィザード!』
『ゴースト!』
『エグゼイド!』
「ライダー召喚だと⁉︎ディエンドみたいなことまでできんのか⁉︎」
『これだけの数は流石に…』
「だ、ダクネスさん…」
「新たに3人の戦士…敵と分かっていても紅魔族の琴線に来るものがありますねぇ…」
力強い電子音と共にウィザード ウォータードラゴン、ゴースト オレ魂、エグゼイド マキシマムゲーマーレベル99が出現し、その様子にまたしても驚くカズマ達。
そして召喚されたライダー達は各々ベルトを操作して、一斉に必殺態勢に移った。
『チョーイイネ!スペシャル!サイコー!』
瞬く間にウィザードはバニルに接近すると、背尾からドラゴテイルを出現させ、強烈な一撃をお見舞いする。
「グッ…ぬぅ…」
ダクネスの身体といえど、あまりの威力に空中にその身を預けてしまうバニル。そして空中で待ち構えるはゴーストとエグゼイド。
『ダイカイガン!オレ!オメガドライブ!』
『マキシマム!クルティカルブレイク!』
背後に出現した紋章から注がれるエネルギーを右足に込め、ゴーストの蹴りがバニルに炸裂し、続け様にエグゼイドが伸長した腕によるパンチを繰り出してバニルを地面に叩きつける。
「終わりです」
『キング!ギリギリスラッシュ!』
地面に埋められ身動きの取れないバニル目掛けてゼインは『ジオウサイキョウ』と記された巨大な光刃を纏ったサイキョージカンギレードを慈悲なく振り下ろす。
剣撃は見事にバニルに命中し、爆発と轟音を起こすと共に、強い衝撃波を発生させた。
「だ、ダクネスーー!!!!」
絶命必至の猛撃を受けた友の名を叫ぶカズマ。しかし当然というべきか返事はなかった。
「フッ…私の予測通りでした「なんという一撃だ!身体が隅々までジンジンすりゅ!もっと、もっと来い!」……は?」
勝ちを確信したようにほくそ笑んだゼインだったが、何事もなかったかのように起き上がるバニル憑依ダクネスを見て、人工知能とは思えない間抜けな声を漏らす。
「そうだよなダクネス、お前はそういう奴だったな…」
カズマも心配して損したかのようにため息を溢した。
あれ程の猛撃を受けてピンピンしているのはいくら高性能コンピュータといえども予測出来なかったようだ。ゼインにとってはこの上なく耐えきれない屈辱だが、それが彼のシンギュラリティを刺激するに至った。
「もっと来い…ですか。ならば…」
見るからに怒りを感じさせる手つきで新たなゼインカードを取り出してベルトで裁断した。
「このライダーの力なら、貴方を倒せる未来の予測を導き出せるはずです!」
『ゼロツー!執行!』
『ジャスティスオーダー!』
瞬く間に黄色と赤色の混ざった無数の残像を残しながらゼインは電光石火の如くバニルの周囲を駆け抜けて何度も何度も攻撃を繰り出す。
「むっ、速度を上げてきたか…だが!」
見通す力を駆使してバニルもゼインに応対する。しかしここで致命的な弱点があった。ゼインは人工知能であるが故、動きに限界がなく、人間の常識に囚われない機動が出来るのだが、バニルの場合は話が別。ダクネスの身体を借りているがため、勝手が効かず、次第に追い詰められていった。
「鎧娘!しばしの日数貴様の身体が悲鳴を上げる動きをすることになるが…(構わんやってくれ!)…確認するまでもなかったな!」
追い詰められつつも、ダクネスの身体で可能な範囲の動きをしてゼインの攻撃を弾くバニル。そして
「そこだぁ!」
一瞬を突いて大剣を振り翳す…しかし。
「甘いですね」
斬撃が命中することはなく、ゼインの姿が消える。そしてバニルが振り向くとそこにはゼインの拳が眼前に迫っていた。
「貴様の本体はその仮面。これでチェックメイトです」
勢いの乗った凄まじい拳がダクネスに命中すると同時にバニルの仮面を砕き割る。そしてその打撃の余波によってダクネスは吹き飛び、地面に強く衝突した。
「う、嘘だろ…」
『バニルが…負けた…』
地獄の公爵の一角であるバニルさえも破ったゼインの強さに皆が戦慄する。一同の方へゆっくりとゼインは向き直り、笑っているようなその不気味な仮面の複眼を輝かせ、淡々と話し始める。
「では、次は貴方達の番です。その後にマルガムを…」
フリーズで動けないカズマ達にゆっくりと歩み寄るゼイン。
その時、ゼインの現れた黒渦から青白い、膨大なエネルギーが放出し、フリーズの効力を強制解除した。そのような芸当が出来る者など、只1人しかいない。
「まさか、ここまで追ってくるとは…随分しぶといですね…」
「俺は諦めが悪いんでね、さぁ第二ラウンドといこうか!」
主役は遅れてやってくる、桐ヶ谷湊翔ことドゥームズギーツがようやくゼインに追いつき、得物であるドゥームズギーツバスターを構えるのだった。
ダクネスのライダーの技に対する耐久力の高さですが、空想科学読本において、めぐみんの爆裂魔法は科学的に今現在の世界が保有する核兵器の総エネルギーとほぼ同数であると記されていまして、その爆裂魔法に原作では(仲間だから手加減した可能性があるとはいえ)耐えていたのでこのようになりました
次回、決着です。
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