この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

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特別章になります
47〜48話の間に起こった出来事です。

仮面大佐様の白狐の時系列は、第3章の最後ら辺から第4章の最初辺りです。

大体3〜4話で終わる予定です


特別章:超える世界
並行世界の白狐達と邂逅を!


 世界とは無数に存在し、人はそれを並行世界、もしくはマルチバースと呼称する。似通っているが何かが違う、可能性によって分岐した、人々の願いによって生まれた等、世界の特色も様々だ。

 そして時に、世界は交わり、また新たな物語を紡ぐことさえもある。これは、とある錬金術師と狐の戦士の失われた戦いの記録…。

 

 

 

 

 

「ふぅん、結構育ちが良くなってるじゃない…フフフ」

 

 鬱蒼と茂る植物で満ちた一室、ジャマーガーデン。そこにどこか幼くも貫禄ありげな少女が1人。

 傍から見ると、観葉植物に話しかける少女という、一般的にあり得そうな普通の光景なのだが、少女もといベロバが口角を上げながら眺めているのはただの植物ではない。

 ジャマト——。詳細については謎や曖昧な部分が多く、独自の言語を持ち、驚異的な成長速度を誇る植物だ。さらに人型、要塞型など、個体によって姿形も様々。そしてベロバが特に関心を寄せて見つめる個体が一つ。

 

「この子、育ちが他と比べて段違いね…、ルークやビジョップとも違う…成長速度からして噂に聞くキング?クイーン?あ、いい事思いついたわ!レギーナ!レギーナにしましょ!この子がライダー達を追い詰めて不幸のどん底に叩き落とす…想像するだけでゾクゾクしちゃうわ!」

 

 ご満悦、その言葉が似合うに違わず高笑いを上げるベロバ。実は彼女、アクアやエリスと同じく女神カミーラとしての側面もあり、司るは『厄災』。

 女神としての責務に下火かつ呑兵衛なアクア、アンデッドは善悪関係なく容赦なく葬る信条を持つエリスとは別ベクトルで危険な存在で、なんと人の不幸を喜ぶという悪趣味があり、さらに人類軍や魔王軍の行末など微塵も興味はなく、自身の満足する不幸のためならなんだってするという危ない思考も持ち合わせている。

 そんな彼女の前に、突如何者かがゲートのようなモノを介して現れた。

 

「ほう、ここが並行世界か…百瀬錬太郎のデータから存在するとは睨んでいたがまさか本当に実在するとは…」

 

「アンタ、誰?」

 

 先程の喜びの表情から一変。ベロバは現れた男に対して訝しげな視線を送る。対する男はベロバの敵意に然程動じることはなく、飄々とした感じで話し始めた。

 

「ごきげんよう御嬢さん。私は並行世界からの来訪者、ロードと申すものでね。ちょ〜っとここにある植物を一つ譲って欲しいんだけど…」

 

「は?いきなり現れたと思ったらアンタ何言ってんの?そんな頼み事聞くつもりないんですけど?」

 

「フフフ…随分と強気だねぇ…。世界は違えど女神は似るものなのか…」

 

「アンタ…私の正体がわかるの?」

 

 ベロバは動揺する。まさか初対面のロードに自身が女神であると見破られるとは予想もしていなかった。女神特有の神気はなるべく抑えていたにも関わらず、目の前の男はカミーラとしての己を探り当てた。

 

 只者ではない。そう悟ったベロバは手元に愛銃である『レーザーレイズライザー』を携え、ロードに向けて構えた。

 

「まさか、私とドンパチしようと?」

 

「私は腐っても女神…アンタを倒すくらい造作もないわ」

 

「へぇ〜、大口は立派なようだ。でも私は平和ボケしている神如きに倒されるほど耄碌(もうろく)しているつもりはないけどね?」

 

 

 ベロバは右人差し指を引き金にかけながら、喉奥から低い声を響かせる。ほんの少しだけ威圧の意味も込めて神気も解き放った。

 しかしそれでもロードは余裕ある態度を崩さず、不敵な笑みを浮かべながら皮肉を込めて煽り返す始末。

 

「アンタ、どうも読めないわね…何が目的なの?」

 

「何って…そんなの並行世界の君には関係ないだろう?ただ一つ植物を譲って欲しいというだけ。勿論それ相応の対価は用意するさ」

 

「ジャマトを手にしてどうするつもり?それに対価って何するの?」

 

「そうだな…、いい事思いついた…」

 

 ロードは植物園の辺りを見回し、その中の水槽で元気に泳ぐシャケに目をつける。そしてシャケと近くのポーンジャマトの前に手を翳し、錬金術の詠唱を始めた。

 

「『万物は、これなる一物の改造として生まれうく』」

 

 刹那、シャケが分子レベルにまで分解され、水槽の中の水と共に、近くのポーンジャマトに纏わりつき始めた。

 

『ジャ⁉︎ジャーーー⁉︎』

 

 突然の事態に、ポーンジャマトは驚きの声を漏らす。しかしこれだけではなかった。

 

「もうレプリを生み出したから用済みだな。最後は実験台になっておくれよ」

 

ロードは懐から4枚のカードを取り出し、ジャマトに向かって投げつける。カードの中に封印されていたレベルナンバー10のケミー達が、ジャマトの悪意に共鳴して解き放たれ、4体ともジャマトの体内へと引き摺り込まれていった。

 

『ジャ…ジャァァァァァ…』

 

「ちょっと⁉︎本当に大丈夫なの?」

 

 かつてない強大な力の奔流に、ジャマトは呻き声をあげながら蹲り、さすがにベロバもロードに対して声を荒げる。しかしロード当人はベロバの苦情など無関心で、気味悪い笑みでジャマトを見つめながら実験を楽しんでいる。

 そしてジャマトもやがて力に順応し始めたのか、荒い息遣いをしながら重い足を起こした。

 

「マジ?ポーンジャマトでもこんなに変わるものなの?」

 

 ロードの実験によって生まれ変わったジャマトにベロバは戦慄する。

骨と化したシャケのような頭部に、右手に獅子を模したような腕の武装があり、左手にはキャノン砲、背中にはジェット機のような推進器が備え付けられ、足は何層もの蔦のような装飾が絡まり、従来のポーンと比べて逞しくも禍々しく仕上がっている。

 

「君たちのセンスで名付けるなら…トラウトハデス。トラウトハデスジャマトだろうね…」

 

「すごい、すごいすごいすごいわ!アンタのこと疑ってたけど、ここまでのジャマトを生み出してくれるなんて!こんな強さ、今まで見たこともない!物凄いゾクゾクするわ!」

 

 ベロバはロードによって強化されたジャマトに瞳を輝かせる。それは女神ではなく、関心をそそられる事象に胸をときめかせる少女のよう。上機嫌なベロバの様子を見計らい、ロードは一つ要望を出した。

 

「では、約束通りジャマトを一体…」

 

「いいわよ、好きなのを取って行きなさい!これでライダー達の不幸が見れると思うと…楽しみすぎて夜も眠れなくなるわぁ!アハハハ!!」

 

「それはそれは良かった…では私はひとまずこれで…」

 

 レプリナインテイルの力でゲートを出現させると、ロードはレギーナジャマトを持ってジャマーガーデンを後にする。ゲートの繋がる先の自身の研究室で、ロードは1つカプセルを取り出してレギーナジャマトに埋め込んだ。

 

「百瀬錬太郎のDNAを内蔵してやったが、これからどのようなケミストリーを起こしてくれるか。楽しみだ…」

 

 薄暗い研究室の窓から一筋の月の光がロードの不気味な笑顔を照らす。研究室の隅では、レプリドクターコゾーが忙しなく作業を行っており、その手元には、漆黒のガッチャードライバーがあったのだった。

 

 ちなみにその後ジャマーガーデンでは…

 

「さぁ、トラウトハデス!私にとびきりの不幸を見せてちょうだい!」

 

ピゼラダグデカカ(シャケヲクエ)〜!!』

 

「ごめんちょっと何言ってるかわかんない!」

 

 

 

 所変わってアクセルのとある屋敷。ここはカズマや錬太郎達、さらにケミー達が住処にしている場所なのだが、この世界では少し違うようだ。

 

「や〜っとこさ俺と湊翔の疑いが晴れたな!それに魔王軍幹部も倒したってことで大金も入ってくる…、今まで頑張ってきた甲斐があったもんだ」

 

「そうだな、カズマ…」

 

 冒険者サトウカズマの隣で話している少年は百瀬錬太郎…ではなく、仮面ライダーギーツの変身者桐ヶ谷湊翔。彼もカズマと同じく転生者である。

 しかし以前錬太郎達が会った時とは容姿が異なり、この世界に転生したきた大部分の人々と同じで黒髪黒目だ。

 彼らは裁判でアクセル領主のアルダープに魔王軍の手先としての疑いをかけられ、その疑いを晴らすため四苦八苦していたのだが、つい先日、魔王軍幹部のバニルを討伐したことによりスパイ疑惑も無事晴れた。

 しかし湊翔には呆気なく訴えを取り下げられたことが不自然で仕方なかった。

 

「(セナさん曰く、アルダープはそう簡単に訴えを取り下げようとはしない…裁判の時も意固地な部分はあったし、まさか奴の後ろにまだ大きな存在が?もしかして、あの黒いギーツ⁉︎)」

 

 やはり裏があるのか、顎に手を当てて考え込む湊翔。そんな物事に探りを入れる彼の黒目を覗き込む者が1人。

 

「どうしたんだ?物想いに耽って湊翔らしくないぞ!」

 

「おおっ⁉︎なんだトウカか…」

 

 エメラルドのような翡翠色のポニーテールの髪を靡かせ、心配そうに湊翔の様子を窺っていた少女、トウカは意外とさっぱりした湊翔の対応を受け、呆れたように溜息を溢すと男勝りな口調で湊翔に迫った。

 

「なんだ、って…はぁ。心配するこっちの身にもなれ!自信家のお前がそんな調子ならアフターケア疲れるんだぞ?裁判の時とか大変だったんだからな!」

 

「うっ、すまん…」

 

 強気なトウカに言い返すことができず、干し椎茸のように湊翔は萎縮する。ここ最近はメンタルの調子が不安定で、トウカには迷惑をかけっぱなしだったため、頭が上がらないのだ。

 

「朝から騒がしいですね、もう少し静かに出来ないのでしょうか?、ねぇちょむすけ」

 

『なーお』

 

「いいんじゃない、偶には騒がしくったって。あ、ダクネス!そこのシュワシュワの瓶取ってちょうだい!白夜でもいいわよ?」

 

「アクア、ここ最近飲む頻度が増えてないか?飲み過ぎは健康に悪影響だぞ!」

 

「そうだそうだ、あと飲みたいなら自分で取りに行け!」

 

「何よ〜、融通が効かないわね〜」

 

 リビングではカズマや湊翔、トウカの他にもくつろいでいる者達がいる。水の女神にしてカズマの転生特典であるアークプリーストのアクア。

仮面ライダーナーゴにして爆裂魔法をこよなく愛する紅魔族のめぐみんとその使い魔のちょむすけ。

仮面ライダーバッファの変身者であり、ドM気質のクルセイダーのダクネス。

カズマや湊翔と同じく転生者で仮面ライダーライコウの力を持つ虎雷白夜(こらいびゃくや)

 

皆この世界のカズマパーティの一員である。

 

 因みにカズマも仮面ライダータイクーン、トウカも仮面ライダーラウンズとしての力を宿しているため、パーティメンバー全員が仮面ライダーということになる。

 その力を持ってして、彼らはデザイアグランプリなる神々の開催するゲームに身を投じ、魔王軍やジャマトといった巨悪との戦闘を乗り越えてきた。

 ここ最近はジャマトライダーの進軍や魔王軍幹部のバニルとの戦闘を勝ち抜いたのだが、ライダーとして、冒険者として生きる彼らに休みなど簡単に訪れることはない。

 

『緊急緊急!皆様、ジャマトが現れました!』

 

 突如、モニターのようなものがリビングに出現し、デザイアグランプリのナビゲーターのツムリが焦りを含んだ声色でアナウンスを告げる。屋敷にいた者達も一斉にモニターへ視線を移し、ツムリに詳細を尋ねる。

 

「場所は?今回のゲーム内容は?」

 

『場所はアクセルの街です。それと…今回はゲームではなく、急遽現れたのです。天界も想定していなかった事態で…』

 

「急いで向かうぞ!」

 

 ツムリからの広報に異常事態と見た湊翔を皮切りに、一同は現場に急行する。

 そして現場に到着した湊翔達は、各々の視界に飛び込んできた光景に絶句するしかなかった。

 

「嘘だろ⁉︎」

 

「阿鼻叫喚…まさにこのことだな…」

 

『ジャジャジャ〜』

 

 なんとアクセルの街には今まで彼らが倒したジャマト達が蹂躙し、さらには見上げる程の体躯を誇り、正しく城のような見た目のスラグフォートレスジャマトも空を彷徨っていた。

 

「これは、かなりキツイ戦いになりそうだな…」

 

 かつてない規模のジャマト達を前に、湊翔は額から緊張や焦燥の混じった汗を一筋溢したのだった。

 

 

 

 

 その頃、ガッチャードの世界はというと、めぐみんの日課である爆裂散歩にカズマ、ゆんゆん、錬太郎達が付き添っており、今はその帰り道なのだが、急遽錬太郎が寄っていきたい場所があるとの要望を出し、皆で同行している途中である。

 

「にしても錬太郎。どこ向かってるんだ?」

 

「僕にとって大切な場所。この時期になると行くことにしてるんだ」

 

 深くは答えず、錬太郎は鬱蒼と茂る林の中を重い足取りで一歩一歩踏みしめていく。

 背負われているめぐみん以外の者達も足元に気をつけながら錬太郎の背中を追って進んだ。

 

「それにしても何でこんな時にクロっちとワープテラはチェスに興じていていないんですかね?あとカズマ、ゆらゆらし過ぎです。またやましいこと考えてませんか?」

 

「テメェ…おぶって貰ってるからって好き放題言いやがって…ただでさえ歩くのキツイんだからそんなこと考える暇ないっつーの!」

 

「仕方ないわよめぐみん。クロっちさん達にも趣味はあるんだし。あとカズマさんに文句言っちゃダメよ!」

 

「あ、皆!そろそろ見えてきたよ!」

 

 錬太郎の指差す方角から一筋の光が照らしており、光を目印に進むとそこには数多の墓標が広がっていた。

 

「錬太郎、ここって…」

 

「ここは、僕の故郷のアルケミア跡地。僕の同級生や先生、先輩達が眠っているんだ」

 

 そう言うと錬太郎は沢山の墓の方へ歩いて行き、静かに手を合わせる。他の者達も錬太郎に続いて墓の前までやって来ると、同じく両掌を合わせた。

 

「ごめんね、わざわざ付き合わせちゃって…」

 

「何言ってんだ。いつもお前には世話になってる。こんくらい喜んでしてやるさ…」

 

「…ありがとう」

 

 カズマの優しさに感謝を述べる錬太郎。そして再度墓の方へ向き直り、

 

「ケミー探し…順調ですよ。新しい仲間と頑張ってます。

皆…僕のかけがえのない友達です」

 

 安らかに眠るかつての仲間達に穏やかな口調で近況を報告した。しかしこの発言、中々に不意打ちだったらしく、カズマとめぐみんは照れ臭そうにモジモジしており、ゆんゆんはかけがえのない友達というワードがボディブローのようにクリーンヒットし、キャパオーバー寸前だったそうな。

 

 

 そんな中、各々の携帯するケミーライザーが音を立ててメッセージの着信を伝える。どうやら緊急のものらしく、ダクネスからだった。

 

「ダクネス、何だ?」

 

『カズマか、緊急事態だ!アクセルの街に正体不明のモンスターが大量発生した!下手したら屋敷にまで侵攻して来るかもしれん!至急駆けつけてくれ!』

 

「よし行くぞお前ら!俺たちのオアシスを滅ぼされないためにもモンスター共を蹴散らすぞ!」

 

「調子いいな…わかった、ゴルドダッシュ、マッドウィール!宜しくね!」

 

 錬太郎の呼び出しに応じてゴルドダッシュとマッドウィールが出現し、ゴルドダッシュに錬太郎とゆんゆん、マッドウィールにカズマとめぐみんが乗って、アクセルの街へと急いだ。

 

『ダーッシュ!』

 

『ウィール!』

 

 ゴルドダッシュとマッドウィールの猛スピードで、短時間でアクセルの街へと到着し、錬太郎達は既に戦闘しているダクネス達に加勢する。確かにダクネスの言う通り植物を模したような、二足歩行の奇妙なモンスター達が群がっていた。

 

「よくわからないけど、敵対しているなら倒すしかないね!」

 

 錬太郎は腰にガッチャードライバーを装着すると、2枚のケミーカードを取り出して装填する。

 

『ヴェノムダケ!』『ディープマリナー!』

 

 装填を終えると、錬太郎は両手で円を描いて両手を重ね、その後重ねた手を反転させて矢印の先端を形作り、正面に突き出すと勇ましく声を上げ、ベルトのレバーを操作した。

 

「変身!」

 

『ガッチャーーンコ!ヴェノムマリナー!』

 

 翡翠色の装甲を纏い、全身に備え付けられた武装は正しく戦艦。

——仮面ライダーガッチャード ヴェノムマリナーである。

 

 

「ジャジャ〜」

 

 変身を終えたガッチャードを見て、一斉に進軍を開始する怪物達。しかしガッチャードは落ち着いた様子で錬金術の呪文を詠唱し始めた。

 

「いくよ!『万物はこれなる一物の改造として生まれうく』!!」

 

 詠唱を終えると同時に地面に触れると、瞬く間に大地が液状に変化して怪物の軍団を飲み込み始める。錬成術によって地面を沼状に再錬成したのだ。

 

「まだまだ!」

 

 ガッチャードはディープマリナーの能力で地面に潜没すると、両腕の『ヴェノミックスクリュー』を高速回転させて電光石火の如く駆け抜けて行く。そして怪物達の背後を取ると、今度は両肩のキノコの傘を模した『マッシュブレラ』から無数の魚雷を発射し、的確に仕留めていく。

 またガッチャード以外も怪物相手に交戦しており、

 

「『狙撃』!『狙撃』!」

 

 カズマは自身の幸運値と得意スキルである狙撃、そしてケミー達の能力を駆使して怪物達を射貫いていき、

 

「「『ライトニング』!!」」

 

 ゆんゆんとクロっちも多彩な魔法を駆使して次々と怪物達を薙ぎ倒して行く。

 

 

「よし、このままいけば…」

 

「錬太郎、前!」

 

 皆の善戦する様子に安堵したのも束の間、油断していたガッチャードにジャマト達が目前まで迫っている。咄嗟に受けの姿勢を取ろうとするも間に合わない。

 

「『バインド』!!」

 

 刹那、どこからか盗賊専用スキルが発動して怪物達を拘束したため、ガッチャードはことなきを得た。

 

「助かった、今のうちに!」

 

『ヴェノムマリナー!フィーバー!』

 

「ハァァァァ、タァァァァァ!」

 

 ガッチャードはベルトを操作して必殺態勢に入る。そして身動きの取れない怪物達に力強い回し蹴りを喰らわせ、爆散させた。

 怪物達が倒されたのを見届けると、誰かが歩み寄って来る。

 

 短い銀髪と軽装、そして頬の刀傷…、女神エリスの下界での姿にしてカズマに盗賊スキルを伝授した少女のクリスだ。

 

「クリスさん、さっきはありがとうございます!」

 

「錬太郎くん…君ねぇ、戦闘中は他所見と油断は危ないんだよ!あたしが来なかったらどうするつもりだったの?」

 

「うっ…返す言葉もございません」

 

「とはいえ、見事な錬成術や体捌きであったぞ。流石錬金小僧といったところか」

 

 聞き覚えのある声のする方へガッチャードは首を向ける。そこにはダクネスがいたが、その顔には何故かダンジョンでバニルに乗っ取られた際に付けていた仮面が。

 

「あ、バニ…」

 

 ガッチャードが声をかけようとした瞬間、目にも止まらぬ速さでクリスがマジックダガーを取り出して、鋭い刃でバニル目掛けて刺突を繰り出す。

 しかし流石は大悪魔。瞬時に反応し、ダクネスの大剣でクリスの不意打ちを防いでみせた。

 

「どうして悪魔がここにいるのかな?しかもあたしの友達の身体を乗っ取っているなんて…」

 

「ほぅ、随分と血の気が多いな…水の女神に貧乳を弄られている女神を信仰している娘よ。これはその汝の友の要望なのだがな(すまないクリス…散歩帰りに偶然戦闘に居合わせたというバニルと出会ったら…またあの痛みを味わいたくなって…)因みにこの鎧娘の要望がなくとも、我輩は貴様が来ることを見越して乗っ取っていたがな。盗賊娘、汝の悪感情美味であるぞ!」

 

「ダクネス⁉︎もうちょっとエリス様に仕える騎士としての自覚持ってよ⁉︎」

 

「崇高な信念など欲望の前では無意味だ。貧相をコンプレックスに感じることの多い男児のような盗賊娘よ」

 

「君本当に人の癪に触れるのが上手だね…いいよ、塵一つ残さず綺麗に消し去ってあげるから!」

 

 バニルの悪感情を引き出す煽りに、クリスのボルテージは上がっていき、殺意を剥き出しにする。しかしこのままでは下界を滅ぼす大戦争に発展しかねないので、慌ててガッチャードが仲裁に入る。

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいクリスさん!確かにバニルさんは悪魔ですけど僕達の味方なんです!人を傷つけることもしないですし、その…今は共闘という形で…」

 

「女神として私としても不本意だけど、錬太郎の言うことには一理あるわ。もしコイツが何がするようなら、問答無用で浄化するから。わかった、クリス?」

 

 アクアも割って入り、クリスを説得する。それでも悪魔と共同戦線など耐え難い屈辱らしくクリスは顔を顰めたが、何とか納得してくれたようだ。

 

「わかりました…よかったね、先輩と錬太郎くんのお陰で命拾いして」

 

「例えその姿の貴様にやられたとしても我輩には残機があるから問題はない。それより錬金小僧、この怪物達の出自が判明したぞ。

 

これは、別世界からの攻撃だ」

 

 バニルの発言に皆驚愕の表情を浮かべて視線を寄せる。曰く、何者かが怪物達を次元を超えて排出しており、その元凶を叩かなければいつまでも怪物の集団は現れ続けるとのこと。

 

「それにその元凶を見通した際、4つほど魔導師ケミーと同等の力を持っているように感じた。恐らくだが、ケミーとやらも関係しているやもしれん」

 

「…その世界に向かいます!元凶を倒して、ケミー達も解放します」

 

 ガッチャードはナインテイルのカードを取り出し、その世界へ移動する準備に移る。しかしそれに待ったをかける者が1人。

 

「いやぁ、でも…錬太郎くん。その問題は向こうの世界の人達に任せた方がいいんじゃ…ほら!その世界の問題はその世界の人達で解決してこそだし!」

 

 クリスがガッチャードをこの世界に留めようと、それっぽい理由を連ねる。

 しかしこれは建前であり、クリスもといエリスの本音は、ガッチャードが異世界間を渡ることで発生する始末書問題である。以前は錬太郎が異世界を渡り歩いて色々行動した結果、始末書が1億枚を超えるに至ったため、同じ轍をもう二度と踏みたくないのだ。

 が、世界は幸運の女神様に厳しいようで。

 

「でもガッチャードやケミーの力がないとケミーと悪意を分離出来ませんよ」

 

「……」

 

 クリスの説得虚しく、結局ガッチャードが介入しなければ事は解決しないということが証明されてしまった。さらに泣きっ面に蜂か、事態はクリスにとって悪い方へと流れて行く。

 

「あのさぁ〜、錬太郎…良かったら俺も別世界見てみたいんだけど…」

 

「カズマ、抜け駆けは許しませんよ!ここは紅魔族随一の天才である私が…」

 

「めぐみんずるい!私も錬太郎さんと一緒に異世界行きたい!」

 

 なんと異世界移動に立候補する面々が現れてしまった。結局ガッチャードが各々の役割を現地で割り当てると話し、カズマ、めぐみん、ゆんゆんの3人とも同行することとなった。

 

「待って〜、そんなに必要ないでしょ錬太郎くん!考え直して!考え直して!」

 

「万が一に備えてこの人数がベストアンサーです!それでは、行ってきます!」

 

 ナインテイルとハピクローバーの力でナインクローバーへ変身したガッチャードは、他3人と共に怪物達を送り出している世界へと渡った。

 

「さて、我輩達はまだまだやって来るであろう怪物達を相手取るぞ」

 

「言われなくたって!アクア様の華麗な杖捌きでバッタバッタと薙ぎ倒してやるわ!さ、クリス!あなたも頑張りましょ!」

 

 アクアが激励の意を込めた呼び声を送るが、クリスからの返事はない。何やらプルプルと震えた様子で、やがてクリスは吠えるように言葉を吐き出した。

 

「始末書がァァァァァァァァ!!!!」

 

 

 

 

 その頃、ガッチャードが向かった世界では湊翔こと、ギーツ率いるライダー達がジャマト達と交戦し終えていた。

 等身大のジャマトは殆ど撃破したのだが、残るフォートレスジャマトは攻略に難航した。

 

「コイツ…かなり強い個体だったな…」

 

「ああ…久しぶりに、強敵相手にワクワクより緊張が勝ったな…」

 

 空中から触手、そして光弾を繰り出すフォートレスジャマトの攻撃の嵐を回想し、ギーツとライコウは苦言を溢す。タイクーンの忍術では火力不足、ナーゴのビートやバッファのゾンビは後方支援、ラウンズは近接でこそ真価を発揮するため、フィーバーマグナムやライコウの必殺技の瞬間最大火力しか決め手がなかったのが苦戦の原因だった。

 そんな時、突如として一同の前に眩い光が出現し、そこから何人かが現れる。

 

「おおっ…ここが別世界」

 

「何だか私達の世界とあんまり変わりませんね」

 

「えっ…俺?」

 

「私に、ゆんゆんですと⁉︎」

 

 カズマとめぐみんは訪れた世界に対してそれぞれ真逆の反応をして見せ、そしてタイクーンとナーゴは現れた人物達に驚愕する。敵か味方か、得体の知れない者達を前にして、ギーツは意を決して声をかける。

 

「お前達は?」

 

「僕達は別世界から来た冒険者で、僕は仮面ライダーガッチャードです!」

 

 ギーツの尋問にガッチャードは元気な声で応対する。

 

それは時空超えて二代ライダーが邂逅した瞬間だった。




用語説明
レギーナ…ラテン語で女王の意味。そのジャマトをロードが持ち帰り、錬太郎の遺伝子を埋め込んでいたが…。

トラウト…シャケの一種、ニジマスを指す。
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