この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

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お待たせ致しました。
第4章スタートです!

ウルトラメダル集めに5年ぶりに再熱中しております。
4月26日の再販楽しみ…


第4章:おいでませ水の都!黒き戦士と旧友の呪縛
この水の都にもう1人の錬金術師を!


『錬太郎、お前何を⁉︎』

 

『レンちゃん、それって⁉︎』

 

 炎に染まる錬金術師達の集う地、アルケミア。

 

 ロードの仕向けた四足歩行のトカゲに似た容姿の爬虫類型の生物兵器を前に苦戦を強いられているヴァルバラドとマジェード。及びハガネ兄さんとライラ姉さんが驚愕を滲ませた声色で僕へ尋ねてくる。

 

 2人の視線の先にいる僕は、とあるモノを手に持っていた。アルケミアの錬金アカデミーの金庫に封印されていた神器と遜色のないベルト。

 かつて破壊神の魔の手から世界を救った始まりの錬金術師、ソラが使用したガッチャードライバーだ。

 ガッチャードライバーを無断で持ち出したのだから後で怒られるのは承知の上。それでも、自分の故郷を、愛する場所を壊される惨状を目の前に我慢出来なかった。

 

『僕も、戦う!守られてばかりは…嫌だ!』

 

 決意を固め、僕は腰にベルトを当てた。しかし、現実は残酷だ。物語のようにご都合で力を簡単に与えることなんてない。

 ベルトは、起動しなかった。

 

『…ッ⁉︎お願い、このままじゃアルケミアが…』

 

 縋るように声を絞り出す。それでもベルトは応えてくれない。

 

『錬太郎!危ない!』

 

 ハガネ兄さんの言葉で我に帰る。そうこうしているうちに生物兵器が、バケモノが目前まで迫っており、僕を押し潰そうと前足を振り上げて叩きつけた。

 

『……クッ、アアア⁉︎⁉︎』

 

 咄嗟に回避したものの、それでも強い衝撃で突風が発生し、小さな僕の体躯をあっという間に吹き飛ばし、僕は背中を強く打ち付けた。

 

 打撲だ。背中を強くぶつけてジンジンと痛みが広がる。それだけではない。巻き起こされた突風が刃のように僕の体を切り裂き、無数の切り傷をあちこちに作った。

 

『ホッパー…』

 

『スチーム…』

 

カードの中からホッパー1とスチームライナーが心配している。

 

 実際体中痛い。足を上げるのも辛い。でも、諦めない、立つんだ。

 

『この場所を、この地に生きる人とケミー達の未来を守るんだ…

 

僕は…アルケミアの、戦士だぁぁぁぁ!!!!』

 

 刹那、ガッチャードライバーが光り輝き、僕の手の中を離れる。そして宙を舞って己の腰へ装着された。

 

『認めたのか…ガッチャードライバーが…』

 

『嘘⁉︎レンちゃんが…』

 

 驚くハガネ兄さんとライラ姉さんを他所に、僕は左腕のホルダーから2枚のケミーカードを取り出し、封印されている彼らに声をかけた。

 

『力を、貸して欲しいんだ。お願い…』

 

 僕はケミー達に力を貸すよう頼むと同時に覚悟を問う。ここから先は、命をかけた本当の戦いなのだから。

 

『ホッパ!』

 

『スチーム!』

 

 しかしそれは愚問だった。彼らは覚悟などとうの昔から決めていた。いつか来るであろう危機のために。

 

『ありがとう、一緒に戦おう!』

 

 カードを持ち直し、右にホッパー1、左にスチームライナー、それぞれのスロットにカードを装填していく。

 

『ホッパー1!』

 

『スチームライナー!』

 

 軽快な待機音がベルトから流れると、僕は両手で円を描いた後に重ねてその手を反転させ矢印の先端を形作る。その後、正面に突き出すと同時に声を轟かせ、ベルトのレバーを操作した。

 

『変身!』

 

『ガッチャーーンコ!スチームホッパー!』

 

 ベルトの力によって二重錬成されたケミーの力が群青の鎧となり、僕の姿を覆っていく。

 

 そうだ、思い出した。これは僕が初めてガッチャードになった時の…。

 

 

 

 

 

 

「う〜ん…夢か…」

 

 アクセルの街の警察署の独房にて、錬太郎は意識を覚醒させる。彼は数日前、アルカンレティアで傷害事件と器物損壊を引き起こした疑いが持たれ、身柄を拘束されていた。

 その後、検察官のセナを通じた尋問等を受けたのだが、基本パーティメンバーの誰かと行動している錬太郎はアルカンレティアを訪れているはずもなくアリバイが証明された。

 嘘を見抜く魔道具も反応がなかったことから誤認逮捕が濃厚となり、極め付けに錬太郎を逮捕した後も同様の事件がアルカンレティアで発生していたとのことで、錬太郎は釈放されることとなった。手続きも完了し、社場の空気を吸えるのはいよいよ明日だ。

 

「あの日のことは思い出さないようにしてたのに…

 

へくち!まぁ、いいや。もう一眠りしよ…」

 

 先程見た己の夢に愚痴をこぼした後、くしゃみを一つ挟んで錬太郎は再び夢裏の世界へと意識を手放したのだった。

 

 

 

 

「お世話になりました」

 

 翌る日、太陽の光が東から顔を出す頃。警察署の扉が重々しい音を奏でて開いた。錬太郎は見送り人としてその場にいたセナにお礼を述べたのだが、セナの方は手をパタパタと振って逆に深々と頭を下げてきた。

 

「いえ、私達の方こそすみませんでした。誤認逮捕ということになってしまい、本当に申し訳ございません」

 

「いえいえ、セナさんは検察官としての立場上の正義に従ったまでですから。そんな気に病まなくても…」

 

「そう言って頂けるなら幸いです。それであの…貴方もアルカンレティアに?」

 

 セナの質問に錬太郎は首を縦に振る。今回の一件、錬太郎に似た誰かが暴れているという事件には恐らくロードが関与していると考えている。

 錬金術師達の信頼喪失及び錬太郎の苦痛に歪む顔が見たいという理由でアルダープに真実をねじ曲げさせるよう指示を出す男だ。今回もおおかた似た理由であろう。

 ロードが関連しているのなら原因は芽のうちに摘んでおかなければ、後々大きな損害を被ることになるのは必至だ。

 

 錬太郎と面会した際にこの見解を聞いたカズマは、面倒事に首を突っ込みたくはないと避けようとしたのだが、アクアが

 

『そんなの一大事じゃない⁉︎ロードが私の可愛い信者達に何かするかもしれないわ!カズマさんカズマさん、明日にでも出発しましょ!』

 

 といつになくやる気満々であり、押される形でしょおがねぇなと承諾するに至ったのだ。

 余談だが中々カズマが了承してくれなかったこともあり、アクアが青タンと涙で顔をぐしゃぐしゃにしてカズマに縋り付いて懇願し、挙げ句の果てに自分一人で行くと宣い、アクア一人では問題を起こしかねないと渋々納得するしかなかったというのがことの真実だったりする。

 アクアが急かすこともあってか、錬太郎とゆんゆんを除く4人は、一昨日馬車に乗って既にアルカンレティアへ向かっており、錬太郎とゆんゆんはその後を追うことになっている。

 因みにポンコツ商品の返品をする際に口出しされては困ると、カズマ達はバニルにウィズを旅の同行に押し付けられたのだとか。

 

「左様ですか。アルカンレティアまでの旅お気をつけて。本当は私も同行したいところなのですが、生憎アルダープの一件の処理に未だ追われておりまして…。地獄の公爵の呪いが切れてからあの男の余罪がどんどんと浮き彫りになってくるものでして…」

 

「そちらも大変なのですね。わかりました。お気持ちだけでも感謝します、それじゃまたどこかで」

 

 挨拶を終え、錬太郎は手を振りながら歩みを進め刑務所から遠ざかっていく。セナも錬太郎が見えなくなるまで手を振り返してくれていた。

 

 刑務所も完全に見えなくなる距離まで歩いていたところ、地平線の彼方から誰かが見えてくる。目を凝らさなくても錬太郎はその人物がわかった。自身の帰りを待ってくれていた人、パーティメンバーにして友達のゆんゆんだ。

 

「錬太郎さん!」

 

 急に駆け出し、錬太郎の胸の中に飛び込んでくるゆんゆん。涙を溢れさせ、興奮と充血で真っ赤になった瞳が錬太郎をじっと覗き込んだ。そんなゆんゆんの頭を錬太郎は優しく撫でながら穏やかに言葉を綴った。

 

「ごめん、また迷惑かけちゃって…」

 

「本当ですよぅ…私、とっても心配したんですからね!」

 

 ゆんゆんは錬太郎の胸元から顔を上げると、プクリと頬を膨らませる。しかしその所作がどこか小動物のようで可愛らしく、錬太郎はクスクスと笑い声を上げてしまいゆんゆんの機嫌を損ねてしまった。

 

「笑わないで!笑わないでください!もぉ〜!」

 

 ゆんゆんは両手をぶんぶんと振りながら必死に抗議する。それでも愛らしい動きであることに違いなく、結局錬太郎は笑い続けた。しかしその一方で、ゆんゆんに感謝の想いも抱いていた。

 アルカンレティアに行く際、どうせなら錬太郎が釈放された後でも良いのではとカズマは提案したのだが、アクアが信者達が心配、早いうちに出発したいと駄々をこねたことと、錬太郎が自分のことは気にせず湯治及びアクアの子守に専念してあげてと後押ししたことによってカズマ達は説得され、一昨日にはアクセルの街を出発した。

 だがゆんゆんだけは、一人は可哀想だと錬太郎のことを案じて残ってくれた。錬太郎にカズマ達と行くよう言われても断固として決意は揺るがなかった。

 珍しく頑固なゆんゆんに錬太郎は多少は困惑したものの、それだけ自分のことを大切に思ってくれていることが、錬太郎は嬉しかった。

 

「じゃあ早速だけど出発の準備をしないとね」

 

「大丈夫です、錬太郎さんの分の荷物も準備してきましたので!」

 

「て、手際いいね…」

 

「勿論です!だって友達なんですから!」

 

 ゆんゆんは足下に置いてある大きな2つの鞄を持ち上げて自慢気に笑った。ただ錬太郎としては、友達という理由でそこまでしてもらっていいのかなぁとも少し感じていた。

 元々ゆんゆんはぼっち気質で、友達としての距離感に疎いところがある。故に今回のように端から見れば、友達としては度を越している、お節介に近い行動をしていることも仕方ないといえば仕方ないのかもしれない。

 

「…まぁいいや。それじゃ今からでも出発しようか」

 

「はい!ワープテラちゃんかクロっちさんのワープ能力ですね!」

 

「ああいや…クロっちは連日他パーティの助っ人で忙しくてまだ寝ているし、ワープテラはまだ見つかってないケミーの情報を集めてくるって留守だからゴルドダッシュに乗って…ん?何だ⁉︎」

 

 話をしている最中に、錬太郎の左腕のホルダーがモゾモゾと動き出す。その刹那、ホルダーから1枚のカード、ビークルケミーレベルナンバー10、『エクシードファイター』が飛び出してきた。

 

『エクシード!』

 

「わっ⁉︎びっくりした!」

 

「どうしたんでしょう?」

 

 突然姿を顕現したエクシードファイターに2人は驚愕する。理由を答えるように、エクシードファイターは己の肉体を巨大化させて、体の横部分に備え付けられた入場用の扉を開いた。

 

「もしかして、乗せてくれるの?」

 

 エクシードファイターの対応に錬太郎とゆんゆんは瞳を輝かせる。興奮抑えられぬまま、2人はエクシードファイターの内部へと乗り込んだ。エクシードファイターの中は豪華旅客機ばりの設備があり、キッチンにリビング、食料や本などで充実していた。

 

「凄い、母さんから聞いてた飛行機にまさか乗れる日が来るなんて…」

 

「カズマさんの話だと空を飛ぶんですよね?たのしみだなぁ」

 

 2人の搭乗を確認すると、エクシードファイターは扉をゆっくりと閉めて、地面を暫く滑走する。勢いがついてくると、やがて大地を離れて空の世界へと錬太郎達を誘った。

 

「おおっ、飛んだ!」

 

「空に浮いているような感覚がします。何だか新鮮ですね!」

 

「そうだゆんゆん!折角だからゲームとかしない?空の景色を楽しみながらさ!」

 

「いいですね、チェスにしますか?トランプにしますか?」

 

「トランプかなぁ、ケミー達の皆も参加するよね?」

 

『ホッパー!』

 

『サボー!』

 

 錬太郎のガッチャードローホルダーからホッパー1、サボニードルをはじめとしたケミー達が出現し、皆で仲良くゲームを始め、空の旅を楽しむのだった。

 

 

 

 

 一方でカズマ達は、アクシズ教徒の総本山であるアルカンレティアに到着していた。

 

 とはいえここまで大変な道のりだった。道中で強力なモンスターに遭遇して迎撃する際にダクネスのドMっぷりが暴走したり、アクアの特性故に引き寄せてしまったアンデッドの対処に追われたり、めぐみんが馬車にいたドラゴンに『じゃりっぱ』という独特の名前をつけたりと、安らぐ暇もなかった。

 

 やっとのことで到着したアルカンレティアは、景観は美しいという言葉以外出なかった。アクアを信仰する者達の街や水の都という二つ名に違わず、神聖な青色で彩られた建物で溢れており、彼方此方に張り巡らされた水路の水は、視覚からも神気のようなものを感じ取れるほど清らかだった。

 このように観光するにあたって街は文句のつけようがないほど素晴らしい、それがアルカンレティアだ。そう、街は。

 

「ようこそお越しくださいました旅の者!アルカンレティアへようこそ!」

 

「遠方よりお越しくださり誠にありがとうございます。宜しかったらこちらの入信書にサインを!」

 

「アクシズ教徒となった人達は皆晴れやかな気分になって幸せになります!一緒にアクア様の加護をその身に受けましょう!」

 

 問題はその街に住む人々、アクシズ教徒達だ。観光にやって来た者達に事あるごとにアクシズ教に勧誘し、入信書にサインするよう求めてくる。

 手法も様々で、道端で転んで善意に訴えてくる、彼ら目線で邪教徒とされるエリス教徒に襲われてるふりをする、知り合いを名乗って勧誘してくるなど、最早詐欺に片足突っ込んでいるのではと思わずにはいられないカルト教団っぷりである。

 アクシズ教徒達の様子に『皆キリキリ働いていて偉いわ〜、流石私の信者達ね〜』とアクアはご満悦そうだったが、勧誘されるカズマ達からしたらたまったものではなかった。

 その後アクアは傷害事件の真相を聞くため、本命としてアクシズ教のプリーストとして持て囃されるために教団本部へ向かっていってしまった。

 残されたカズマ、めぐみん、ダクネス、ウィズはというと、

 

「カズマカズマ」

 

「カズマです、どうしためぐみん?」

 

「いつも以上にアクアが浮かれていますので、羽目を外しちゃわないように見張りに行っておきますね」

 

「わかった!じゃあ俺とダクネスは…一旦宿に荷物置いた後に観光するか。ウィズは…昨日アクアの浄化魔法受けたのもあって休んでおいた方がいいかもな」

 

「そうだな、ひとまず宿に移動するか」

 

 5人分の荷物を抱え、ダクネスとカズマは予約しておいた宿の場所へと向かう。因みにウィズはカズマがおぶっている。

 爆裂散歩の帰りでめぐみんをおんぶすることが習慣化していたこともあり、軸もブレることなく安定してウィズを背負えていた。

 

「すみませんカズマさん…折角誘って頂いたのに…」

 

「なぁに気にするな、助け合いの精神こそ大切にすべきことさ」

 

 申し訳なさそうにカズマの背中から詫びるウィズに、カズマは紳士ばりの笑顔と透き通った声で返した。しかし内心はというと、ウィズの胸や尻に合法的に触れられるため、むしろ感謝していたくらいだ。結局カズマはカズマなのだった。

 

 

 

 

「いざ観光してみてわかったが…いかれた奴らしかいねぇ…まぁ駄女神の信者達だから予想はしてたけどさ…」

 

 立ち寄ったカフェの隅の席で、カズマはぐったりとしたため息を溢す。あの後ウィズと荷物を宿に残し、アルカンレティアの散策を始めたのだが、まともに観光することは出来なかった。

 それも当然だ。足を運んだ至る所でアクシズ教徒達が勧誘のための演技を仕掛けてくるのだから。

 例えばアクアの像のある噴水ではりんごを落とした女性がおり、カズマとダクネスが拾うのを手伝った後に御礼と称してアクシズ教に勧誘されたり、またある者達は、カズマと錬太郎がそれなりにお世話になっているエリスを邪神呼ばわりして勧誘する流れを作ったり、他にも記念品贈呈のサインとして渡された紙が入信書だったりで心身共に疲労が蓄積されるだけだった。

 さらにダクネスが自身はエリス教徒であると告げると、信者達の態度は一変し、皆地面に唾をかけて去っていった。勧誘されなくなるのはカズマからしたらありがたかったが、それ以上に他人から唾を吐かれることが不快だったのは言うまでもない。

 そしてエリスを信仰していると見做されたカズマとダクネスのテーブルの上には、大量の骨が置かれていた。カフェの店員曰く、エリス教徒へのサービスとのこと。信教の違いで対立することはよく聞く話だが、客である自分達にここまでの対応をすることには流石にカズマも怒りに震えていた。

 

「なぁカズマ!私がエリス教徒だとバレた途端、皆から冷ややかな視線を向けられ始めた!ここは天国だ、一緒に住まないか?」

 

「こういう時くらいブレろ変態クルセイダァァァァ!!」

 

「はひぃん!」

 

 相変わらずのダクネスの様子に、カズマは溜め込んだ怒りをぶつける。しかしそれはダクネスにとってはご褒美で、罵倒を受けるや否や彼女はいつも通り恍惚に浸る表情をした。

 再度憂鬱そうにため息を溢しカズマが項垂れた、その時だった。

 

「「「「「キャアアアアアアア!!!!」」」」」

 

 突如としてカフェ内に悲鳴が轟き、同時に物凄い物音が鳴り響く。

 

「なっ⁉︎嘘だろ…」

 

「馬鹿な、アイツは…」

 

何事かとカズマとダクネスは物音と悲鳴の方へと視線を向ける。そして両者はそれぞれの瞳に映った光景に絶句した。

 

 血の滲んだ青いローブの人物に殴られ、蹴られ、踏みつけられるアクシズ教徒達。青ローブは周りの様子など然程気にせず、テーブルの上に置かれていたアルカンレティア産の料理を素手で鷲掴みして次々に口の中へと放り込んでいく。

 そして暴行に及んでいる人物は、カズマ達もよく知るあの男だった。

 

「錬太郎…」

 

「そんな、こんなことが…」

 

 被害届の通り、錬太郎と瓜二つの人物が暴れ散らす様にカズマとダクネスは只々動揺していた。そして青ローブの錬太郎は食事を終えると、口周りの食べ残しを舌で舐めとり、その口を開いた。

 

「美味い、料理というものは。ゴブリンやコボルトの手足と違って栄養価がある…人間の味も知りたいけど、マスターがエネルギーを集めるためには我慢しないと…それに舌の使い方もわかってきた…言葉を話すことも造作もなくなってきた、なんとも便利な部位だ…」

 

 声までも一緒。しかし錬太郎なら話すことのない内容にカズマとダクネスは怖気を抱いた。それと同時に、この男は錬太郎ではないと悟った。

 

 刹那、青ローブの錬太郎がカズマ達の方へと視線を向けた。

 

「サトウ、カズマ… ダスティネス、フォード、ララティーナ…」

 

「コイツ、俺達のことを知ってるのか⁉︎」

 

「ら、ララティーナと呼ぶにゃ!!例え偽者でも公共の場で私の本名はやめろォォ!!」

 

「ねぇダクネス、わかってる?ヤバいかもしれない状況なんだぞ?何でそんな時に本名呼ばれたくらいで狼狽えてるんだよ…」

 

 よくわからないダクネスの羞恥心に、カズマは思わず突っ込みを入れた。そんな2人の様子を見て、青ローブの錬太郎が不気味に口角を上げる。

 

「取り込んだオリジナルの細胞の記憶通りだ…。女を泣かすことに定評のある鬼畜のカズマに、脳味噌まで筋肉のララティーナ…」

 

「おい何でそんなことまで知ってんだよ!てか泣かしたのは俺に生意気な態度取った奴だけだから!無差別に泣かせてなんかないから!」

 

「本名を呼ぶに飽き足らず脳味噌まで筋肉だと…⁉︎私を侮辱しやがって…ぶっ殺してやるぅぅぅぅ!!!!」

 

 青ローブの錬太郎の一言に、カズマとダクネスは怒号を上げ、ある意味阿鼻叫喚の地獄絵図が生まれる。その状況を前にしても錬太郎は慄くどころか寧ろ嬉しそうに頬を綻ばせた。

 

「激アツだぞ…これは」

 

 高揚するまま、錬太郎は懐からベルトを取り出して腰に装着する。しかしそれは普段錬太郎が使用するガッチャードライバーではない。禍々しい、漆黒のガッチャードライバーだった。

 

「丁度いい、力試しだ…」

 

 錬太郎は更に2枚のケミーカード、『レプリホッパー1』と『レプリスチームライナー』のカードを手に取ってベルトへと装填した。

 

『ホッパー1…DARKNESS!』

 

『スチームライナー…DARKNESS!』

 

 カード装填完了と共に、ベルトから不協和音な、不気味な待機音が鳴り響く。錬太郎は己の顔に左手を翳し、舌舐めずりをしながら声を上げた。

 

「ジュラピラ…変、身ッ」

 

『ガッチャーーンコ…』

 

 刹那、黒い霧のようなモノが出現し、錬太郎の全身を覆い尽くした。

 

『NOIR OF ALCHEMIST…スチームホッパー…』

 

その後、霧の中で鎧が生成されていき、次にカズマ達の目の前に現れたのは、錬太郎ではなく漆黒に染まった戦士だった。

 

「黒い…ガッチャード?」

 

「禍々しすぎだろ…色変わるだけでこんなに違うのかよ…」

 

 

 

 

(あざな)は…ノワールガッチャード。

 

お前らは俺の獲物だ…残さず余さず、食ってやる!!」




ノワールガッチャード スチームホッパー スペック
身長: 205.0cm
体重:90.3kg
パンチ力:15.4トン
キック力:22.6トン
ジャンプ力:一飛び23.5メートル
走力:100メートルを5.5秒

全体的なスペックとしては、スーパーガッチャードにやや劣るくらいです
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