この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

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今回微グロ注意です

ライダー要素強めになっちゃったなぁ…反省せねば


ガッチャードVSガッチャードに決着を!

 大勢の客がいるにも関わらず、静寂としたアルカンレティアのカフェの内室。互いに睨みを効かせるガッチャードとノワールガッチャードは、目と目の間で火花を散らしている。

 

「(とはいえ、ここでそんな暴れる訳には…移動するにしても街中じゃ思うように力を出せないし…)」

 

「場所が場所だから本気で戦えない…とでも言いたいのか?」

 

 ノワールガッチャードの発言に、ガッチャードは仮面の下で大きく目を見開く。此奴は今何と言った?どうして己の思考を読み取ったかの様な発言をした?まさか読心術でも持っているとでもいうのか?

 言葉では何とも言えない得体の知れぬ気味の悪さ。そんなガッチャードが面白いのか可笑しいのか、ノワールガッチャードはクックックッと小さな笑いを零し、カラクリを説明し始める。

 

「俺はお前の映し身、脳内のことなど、取り込んだお前の細胞を通じて手に取る様にわかる…」

 

「僕の、細胞…」

 

「お前とは是非とも本気で戦いたい。場所を変えるぞ…」

 

 脳内で情報が溢れ渦巻き困惑するガッチャードを他所に、ノワールガッチャードはレプリワープテラのカードを取り出す。刹那、両者の頭上に禍々しく巨大な黒渦が出現し、ガッチャードとノワールガッチャードを取り込んでしまう。役目を終えた黒渦は、やがて縮小していき、そして消えてしまった。

 

「な、なぁ。あの荒らし野郎が2人いたんだが、どうなってんだ?」

 

 閑散としてしまったカフェ内で、沈黙を破る様にアクシズ教徒の男性が恐る恐る口火を切る。男に呼応するように、その場にいた人々もざわざわとどよめき始めた。

 

「皆聞いて!あの黒い方は偽物で、青い方に変身した方が本物なの。アルカンレティアで偽物が暴れてるって聞いて、皆を助けたいからって駆けつけてくれたのよ!ほらゆんゆん、あなたも言って」

 

「そ、そうです!錬太郎さんは皆さんを、その…助けるため…えっと…」

 

「ちょっと、どうして言い淀むのよ!」

 

 アクアが所々脚色を加えながら住民達に説明し、より確固たる信頼を得るためにゆんゆんにも賛同を煽る。しかしながらゆんゆんとしては、入街した際に陰口を言われた錬太郎のことを思ってか、あまり強く同意を見せられない様子。アクアもアクアで信者達の錬太郎に対する誤解を解きたいが故の善意なので、ゆんゆんの反応を歯痒く感じていた。

 尚もどよめきの収まらない様子の住民達を前に、アクアは話を続けた。

 

「もう!ならいいわ、錬太郎の変身した方のガッチャードはね、この私女神アクアの使徒なのよ!」

 

 アクアの発言に、信徒達は目を見開いて視線を寄せた。

 

「な、何だと⁉︎」

 

「それは本当かい嬢ちゃん⁉︎」

 

 流れが変わった。先程の訝し気な目の色が180°変わった信徒達の様子に、アクアはご機嫌そうに頭を縦に振り、力強い演説を開始する。

 

「そうよ!あの群青の装甲は女神アクアから授けられた宝具なの。あの黒い偽物はそれを模倣してアクシズ教徒間の固い絆を砕こうとする悪い魔神の化身よ!そんなものにアクシズ教が負ける訳にはいかないわ!貴方達は女神たる私、アクアの加護を受けた素晴らしい子達なのですから!」

 

「「「「「ォォォォォォ!!!!」」」」」

 

 アクアの演説にアクシズ教徒達は喝采を上げ、瞳に炎を宿し始める。1人、また1人と士気向上して行き、『魔神許すまじ、魔神しばくべし』と大きな声を響かせた。

 

「いくぞお前ら!アクア様の遣いを援護しに向かうぞ!」

 

「「「「「エイ!エイ!オー!」」」」」

 

 活気に満ちたアクシズ教徒達は、カフェ店を一斉に飛び出し駆け出した。その迫力たるや、流石魔王軍が紅魔族と並んで恐れるアクシズ教徒といったところか。心を一つに勇気凛々と行進する者達の背を、アクアはここ最近で一番ご満悦そうな笑みを見せながら見送った。

 

「流石私の信者達ね!やれば出来る子達よ!私の完璧な説明を聞いたらすぐにわかってくれたわ!」

 

「なぁにが完璧な説明だ、この駄女神」

 

「今回はカズマさんに同意します…」

 

 アクアとは対照的に、カズマとゆんゆんはじっとりとした視線をアクアに向けていた。幾ら錬太郎の誤解を解くためとはいえ、勝手に使徒呼ばわりはいい迷惑である。対してアクアはカズマとゆんゆんが何故渋い顔をしているのかわからないようで、首をこてんと傾げた。

 

「2人とも、何でそんな顔してるのよ?錬太郎は私と長い期間一緒に冒険をしてきたじゃない。所々話は盛ってるけど女神の使徒って表現は別に間違ってないでしょ?」

 

 アクアの衝撃発言に、カズマとゆんゆんは固まった。アクアはその場凌ぎとして言ったのではない。本当に自分の使徒と思っての言葉だったのだ。そもそも幸運と並んで知力が絶望的に低いアクアのことだ。カズマのように上手に機転を効かせるなどまず無理な話だ。

 改めて思い知らされるアクアの残念っぷりにカズマとゆんゆんは、呆れを通り越して最早新たな領域に至ってしまった。

 

「さ、私も可愛い子達と一緒に向かいますか」

 

「あぁ、アクアさん!待ってください!」

 

 話は終わったとばかりにアクアは脱兎の如くカフェを後にし、ゆんゆんもアクアを追って出ていってしまう。カフェに残ったのは蔦で縛られたカズマのダクネスのみ。

 

「いやゆんゆんは残れよ⁉︎俺らの蔦解いてくれよ!!」

 

「カズマ、アクアのストッパーとしてゆんゆんは出て行ったのだろう…それにッ、緊縛された上に放置とは…また新たな快感を見つけてしまったな…ウゥン…」

 

「お前は何でこうも欲望に忠実なんだよ!やけに静かにしてたなと思ったら恍惚に浸りやがってヨォ!」

 

「ひぃぃん!追加で言葉責め…わ、私はこの日のために生まれてきたのかもしれない…」

 

「駄目だぁぁぁコイツ…」

 

 聖騎士(クルセイダー)としての威厳など微塵も感じさせないダクネスの涎を垂らして破顔した様子に、カズマはがっくりと項垂れてしまう。アクシズ教徒は身勝手だわ、アクアは勝手に錬太郎を使徒扱いするわ、ダクネスは性癖に正直だわ。加えて最後の頼みの綱であるめぐみんは今この場にいない。どうして自分ばかり骨が折れる目にばかり合うのか、そもそも自分達は湯治に来たのではないのか。行き場のない憂いに、カズマは一筋の涙をほろりと流す。

 

「なんだったんでしょう…アクシズ教徒達が物凄い勢いで去って行ったのですが、ってカズマとダクネス⁉︎そんなところで何してるんですか⁉︎」

 

 そんな中、困惑した表情で店の中に入ってくる人物が1人。小さな体躯に特徴的な紅い目と服、そしてトンガリ帽子、今現在カズマが最後に頼れるであろうめぐみんその人だった。

 カズマは自身の持ち前の豪運に心の底から感謝した。偶然にもカフェ店にやってきためぐみんと鉢合わせてくれたのだから。

 

「おおっめぐみーん!ジーザス!神は俺を見捨てなかったぁ!!普段は我儘で爆裂に煩くて、声は良いのに残念なロリっ子としか思ってなかったけど今のお前は女神だ!俺達を縛っている蔦を解いてくれ!」

 

「おい!聞き捨てならない単語がありましたが、喧嘩を売っているなら買おうじゃないか!」

 

「詳しい話は後だ!この街荒らしてた真犯人も明らかになったし、今アクアが信者共連れてどっかいった!アイツを放っとくと何しでかすかわからん!」

 

「むっ、カズマのくせにいつになく焦っていますね…確かにアクアのやらかしで損害を被るのはごめんです。今回は目を瞑ってあげますよ」

 

 めぐみんはカズマの方へと歩み寄り、魔法職とは思えない握力で蔦を引きちぎった。そして次はダクネスへ向き直り、同様に蔦を裂こうとしたのだが、とある疑問がめぐみんの頭にふと浮かんだ。

 

「でもダクネスの力ならこの蔦ごとき、簡単に破ることができると思うのですが…ていうか話聞いてます?ずっと嬉しそうな顔で上の空ですけど…」

 

「勿論だめぐみん。ンッ、だがこの蔦による締め付け、ハァ、何とも癖になるのだ。だから、ンッ…私を置いてカズマと共に先に行け!あぁ〜、また言うことが出来たぁ…」

 

 縛られた状態にも関わらず、身体をくねらせながらうっとりとした顔と艶めいた声でダクネスは答える。ダクネスらしい回答といえばそうなのだが、めぐみんは思わず冷たい視線を向けてしまう。所々で挟む嬌声もあってか、めぐみんにはダクネスが発情しているようにしか見えなかった。

 

「カズマ、この変態どうします?放っておきます?」

 

「ああっ、遂にめぐみんにまで変態と…イイっ!!」

 

「めぐみん、気持ちはわかるが助けるぞ。そんな目すんな、そりゃ俺だって渋ってるさ。でも放っておいたらま〜た俺が仲間を放置したとかいう不本意な悪名が広がりかねないんだ。そしてお前にだってとばっちりが来るかもだぞ?」

 

「…それは嫌ですね」

 

「よし、そうと決まれば覚悟しろよダクネス」

 

 めぐみんの隣に立ち、カズマは両手をわきわきとさせながらジリジリとダクネスに近寄って行く。誤解を生まないように説明するが、あくまで蔦を解くだけである。

 

「なっ、よせ!これは私の思い描いたプレイのための最高の…って待て、カズマ!めぐみん!あぁっ!蔦に触れるな!やめっ、やめろぉ〜」

 

 めぐみんがダクネスを押し倒して両手を押さえ、カズマが縄に触れる。ダクネスは抵抗とばかりに両足をバタバタと動かしてもがく。傍から見れば如何わしいことをしているように見えなくもないが、ただ蔦を解く作業をしているだけだ。その後暴れるダクネスをドレインタッチで脱力させ、無事蔦を解くことには成功した。

 

「よし、んじゃあアクアを追うぞ!」

 

「わかりました」

 

「プレイ…私のプレイ…」

 

 ダクネスは立ち直るまで時間をかなり要したのだそうな。

 

 

 

 

 時は遡り、ガッチャードとノワールガッチャードがテレポートしたばかりの頃。両者はアルカンレティアの源泉地である山の中へと足を踏み入れていた。

 

「さぁ、ここなら全力を出せるだろうオリジナル?」

 

 ノワールガッチャードは無邪気な子供のように嬉々とした様子で尋ねてくる。対するガッチャードは冷静を装いながら、1つ質問をした。

 

「1つ聞きたい。お前は何者なんだ?僕の細胞を取り込んだとか言っていたが…」

 

「俺か?俺はマスターによって生み出されたお前の分身…賢者の石を完成させるための、な…」

 

「賢者の、石…」

 

 ノワールガッチャードの解答に、ガッチャードの脳に電流が流れるような衝撃が走る。

 賢者の石、それはかつてはじまりの錬金術師達が発見した宝石にして、手にした者に強力な錬成術と力を授けるとされている。ガッチャードの用いるガッチャードライバーは、その一部が錬成されて組み込まれており、ロードも賢者の石の力を狙っていた。

 

「お前のベルトにある賢者の石は一度ケミーの卵として錬成され、その後今の形へと再錬成された。マスターはその特性に目をつけ、レプリケミーの技術を用いてベルトを複製した。そしてオリジナルのベルト同様、複製したベルトの適合者としてお前と同じ細胞を持つ俺が生み出されたと言うわけだ…

 

マスターはかつてカタストロフの得た破滅の力を望んでいる…そのために賢者の石は必要不可欠なのだ…」

 

 ノワールガッチャードの口から語られた真実にガッチャードは仮面の下で眉間に皺を寄せる。ノワールガッチャードの言うマスターは恐らくロードだ。己の野望のためだけに自身を模した偽物を生み出すだけでなく、かつてアルケミアの錬金術師達が平和を願って生み出した力を悪用しようとするなど、許し難いことこの上なかった。

 

「俺の中の賢者の石も、戦えば戦う程成長する…さぁ、遊ぼうぜオリジナル…」

 

 ノワールガッチャードは低重心となり、四肢を地面につけて猛獣のような姿勢を取ると、地を張ってノワールガッチャードは瞬く間に肉薄する。ガッチャードの懐に迫ると、自慢の手刀を繰り出す。

 

『ガッチャートルネード!』

 

 しかしそこは戦闘経験を積んできたガッチャード。即座に弓兼斬撃特化武器のガッチャートルネードを取り出すや、盾のように構えてノワールガッチャードの拳を受け止める。

 

「やるな…オリジナル…」

 

 両者は互いに刃を弾くと、次なる一手へと移る。ノワールガッチャードは拳を握り締め、ガッチャードは左腕のホルダーから「ホークスター」のカードを取り出してガッチャートルネードのスロットへと装填する。

 

「喰らえ!」

 

 ノワールガッチャードは右拳を振り上げて、接近する。しかしその無防備な様はガッチャードにとって動く大きな的。レバーにあたる「アルケミードロアー」を引き絞り、エネルギーの矢を生成する。狙いを定めるは、自身の黒い映し身。

 

『トルネードアロー!』

 

 放たれた矢は、鷹の姿を形作ってノワールガッチャードへ命中した。その威力の高さたるや、ノワールガッチャードの右腕を勢いのまま、容赦なく吹き飛ばしてしまった。

 

「ああっ〜、右腕吹っ飛んじゃったか…」

 

 しかし受けたダメージに反して、ノワールガッチャードは余裕な様子。普通、四肢の一部を欠損すれば、戦闘に支障が生じるのは言うまでもない。ましてや腕は攻撃する際の動作には必要不可欠だ。

 その筈なのに…。ガッチャードはノワールガッチャードに対して、得体の知れない不気味さを感じた。

 

 そして次の瞬間…

 

「ふんっ!」

 

 驚くべきことに、ノワールガッチャードが力むと同時に欠損部分が隆起し、ほんの一瞬にして右腕が、再び生えた。

 

「なっ⁉︎」

 

「フフッ、驚いたか?俺は再生能力も持っているんだ…簡単にはやられんぞ?」

 

 驚嘆するガッチャードを前に不敵な笑みを零し、ノワールガッチャードは再度戦闘態勢に移る。今度は両手を大きく上へ誘い、その後地面に力強く叩きつけた。刹那、ノワールガッチャードの両手を中心に電撃が発生し、ガッチャード目掛けて迫ってきた。

 

「不味い!」

 

『ワープテラ!』『エンジェリード!』

 

『ガッチャーーンコ!エンジェリープテラ!』

 

 咄嗟の機転でガッチャードはベルトのカードを即座に入れ替えて、姿を変える。

 

——純白の装甲と金色の装飾を纏ったその姿は正に天使

 

仮面ライダーガッチャード エンジェリープテラ

 

 両肩部に携えた翼を展開し、空中へと退避するガッチャード。即座に態勢を整えて、改めてガッチャートルネードの弦を引き絞り、狙いをノワールガッチャードは定める。

 

「ハッ!」

 

 放たれた矢は、エンジェリードの力によって幾多に分裂し、不規則な軌道でノワールガッチャードへと迫る。四方八方から乱れ来る矢はノワールガッチャードへ退路を与えない。

 

「激アツだぞオリジナル…そう来なくては…」

 

 ノワールガッチャードもガッチャード同様、2枚のレプリケミーカードを取り出し、入れ替えるようにしてベルトに装填した。

 

『ゲキオコプター… DARKNESS!』

 

『ダイオーニ… DARKNESS!』

 

「チャキョジュラピラ…大変身…」

 

『ガッチャーーンコ…』

 

『BREAK THROUGH THE DARK CLOUDS…

 

オニコプター…』

 

 カード装填を完了すると同時に、ベルトのレバーを操作すると、ノワールガッチャードを中心に強大なエネルギー波が発生、迫り来る矢の攻撃を打ち消したと同時に、新たな姿が顕現する。

 

——漆黒の己を身を包むは、無数の棘で覆われ、背面に旋回する推進器を備えた血塗られし鬼の鎧

 

仮面ライダーノワールガッチャード オニコプター

 

「いくぞ…オリジナル…」

 

 背中のプロペラを回転させ、ノワールガッチャードは空中の戦地を高速で飛翔する。対するガッチャードも、ワープテラのワープ能力と飛行能力を掛け合わせながらノワールガッチャードの機動力に対応し、両者は晴天を縦横無尽に駆け巡る。何度も何度も拳と得物、脚と脚とがぶつかり合った。その度に雲が貫かれ、暴風が発生し、戦闘は苛烈を極めた。

 

「ハァハァ…やっぱ武器あるのはずるいなぁ…そうだ…」

 

 何かを閃いたノワールガッチャードは、攻撃の手を緩め、滞空姿勢に移った。何か妙な気配を感じるが、今が好機。そう捉えたガッチャードは、ガッチャートルネードの柄を握り直し、肩部の翼を靡かせて一気に距離を詰めていく。

 

「これで決める!」

 

 特殊錬金属の鋭利な刃がノワールガッチャードを捉えた、かに思えたその瞬間

 

「な、き…消えた?」

 

 突如として、ノワールガッチャードが空気の中に溶けるように消えてしまった。ガッチャードが慌てて辺りを見回すも、気配を感じることは出来ない。

 撤退したのだろうか、それならば猛攻を中止したその瞬間に感じたあの感覚は一体。

 予想外の事態に当惑するガッチャード。しかしこれらは全てノワールガッチャードの計略の内だった。

 

「もらったァァァァ!!」

 

「…ッ⁉︎」

 

 頭上から声がする。ガッチャードが上へ頭を向けると、ノワールガッチャードは既に眼前へと迫っていた。反射的にガッチャードはガッチャートルネードを構えて防御姿勢をとったが、それこそがノワールガッチャードの狙いだった。

 ノワールガッチャードがガッチャートルネードに触れた瞬間、刃が、持ち手が、徐々に黒く変色し始めたのだ。

 

「こ、これは…」

 

「サトウカズマの見せたドレインタッチの応用だ…俺が無機物に触れると腐ってスクラップになる…さぁ、どうするオリジナル?」

 

 勝ち誇ったように声を上擦らせるノワールガッチャード。武器を封じられたなら普通は拳や蹴り、肉弾戦に転じるしかない。そう、普通は。

 

「生憎、僕は錬金術師なんでね。腐敗しようが壊れようが、何度だって再利用すればいい!『万物はこれなる一物の改造として生まれうく』!!」

 

 ガッチャードの錬金術の詠唱に呼応し、腐敗したガッチャートルネードが即座に無数の短剣に再錬成され、自在に空中を舞い始める。

 

「な、何だと…」

 

「形成逆転だな…いけ!」

 

 動揺するノワールガッチャードなど気にも留めず、ガッチャードは無数の短剣をブーメランのように操って攻撃を繰り出す。流麗な孤を描くように切り裂く短剣には、ノワールガッチャードも対処することが出来ず、背面の推進器も切り落とされてしまった。

 

「し、しまっ…」

 

「今度こそ決める!」

 

 ガッチャードはベルトのレバーを操作して必殺態勢に入る。純白の翼を広げて高く舞い上がり、超高度から勢いをつけて右脚を振り下ろした。

 

『エンジェリープテラ!フィーバー!』

 

「ハァァァァァァァ!!!!」

 

 ガッチャードの蹴り落としはノワールガッチャードに命中し、両者は雲を、空気を貫きながら急降下して行く。ノワールガッチャードは空中で踠き抵抗して見せたが、ガッチャードに力負けし、遂にその身を地面に強く叩きつけられた。

 

「そんな…バ…カ…な…」

 

 負け惜しみの言葉を最後に、ノワールガッチャードは爆発四散した。群青の錬金戦士と偽りの漆黒戦士の激闘は、本物のガッチャードに軍杯が上がった。

 

「偽物が本物に勝てる訳ないだろう…」

 

 ガッチャードはベルトから2枚のカードを抜き取り、錬太郎の姿に戻る。その後錬金術を駆使して破壊された地形を元通りに戻すと、蹄を返して皆の所へ向かおうとしたのだが…。

 

「あ、あれ?皆さんどうしてここに…」

 

 錬太郎の目先にはアルカンレティアの住人達、そしてアクアが満面の笑みを浮かべて出迎えた。

 

「錬太郎、よくやったわね!偽物を倒して私の子達の街を守ってくれてありがとう!御礼にアクシズ教徒の名誉栄典を授与してあげてもいいわよ?」

 

「え、ああいや…そういうのは別に良いんだけど…」

 

「遠慮しなさんな、アンタアクア様の使徒なんだろ?」

 

「私達を守る為にアクア様の天啓を受けて来てくれたのでしょう?ごめんなさいね、偽物に騙されて酷いこと言っちゃって」

 

「へ?へ?へ?」

 

 話について行けず、頭に無数の疑問符を浮かべる錬太郎。特にアクアの使徒という言葉には本能的に危機感を覚えた。母からもゆんゆんからも頭のおかしい集団と称されるアクシズ教。その教団に知らず知らずのうちに所属してしまったのだろうかとかつてないほどに焦っていた。

 

「英雄の祝福だぁ!」

 

「手始めにまずは胴上げだぁ!」

 

 アクシズ教徒達は錬太郎を中心に円形を形造り、錬太郎の身体を皆で持ち上げると同時に胴上げを開始した。

 

「「「「「わ〜っしょい!わ〜っしょい!」」」」

 

「ひええええ!お、下ろしてぇぇぇ!!」

 

 無情にも錬太郎の要望は信者に聞き入れられず、悲鳴がただ響くのみだった。

 時同じくしてカズマにめぐみん、ゆんゆんとダクネスも到着したのだが…。

 

「あぁ…遅かったですね…」

 

「錬太郎さん…」

 

「錬太郎はアイツらの犠牲になったのか…なんというか、お疲れ様…」

 

 胴上げされている錬太郎にカズマは静かに敬礼する。遠くから見てないで助けてよぉ〜と錬太郎の声が聞こえたが、介入しては碌なことにならないと無視した。一方ダクネスは…。

 

「プレイ…私のプレイ…」

 

 未だに落ち込んだままだった。

 

 

 

 

 アクシズ教徒達や錬太郎達が下山した頃、ノワールガッチャードが撃破された跡地は、妙に空気が張り詰めていた。次第に空気は跡地へと引き寄せられて行き、禍々しい心臓のようなものが出現する。そして心臓を中心に手が、足が、頭が生成されて行き、やがて人の形を成した。

 

「危なかったなぁ…でも、良い経験になったね。また遊びたいなぁ…フフフ…」

 

 完全再生した偽物、アナザー錬太郎は不敵な笑みを浮かべながら、おぼつかない足取りでその場を後にするのだった。

 




キャラ説明
アナザー錬太郎/ノワールガッチャード

 ロードが『白狐の世界』より持ち出したレギーナジャマトに百瀬錬太郎の細胞を埋め込む事によって誕生した。生まれたての存在故に、身体の動かし方がよくわかっておらず、融通の効かない部分がある。
 再生能力やジャマト特有の植物を操る能力を持つ他、相手の技を自分流に昇華してコピーする能力も持つ。ガッチャードとの戦闘では、カズマの潜伏やドレインタッチ、ゆんゆんのライトニングを参考にした技を披露した。
 食べることに対して並々ならぬ執着があり、アルカンレティアを襲撃した際には、必ず何かを食べていた。
 また、特殊な臓器である「ジャマー心臓」があり、その器官が無事であれば何度でも復活する。
 モデルはビターガヴとセルとウルトラマンタロウ。
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