この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

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キャベツ争奪戦です。あと新フォームも出ます


キャベツ収穫とマッドでスターな新フォーム

「今年もキャベツ収穫の時期がやってまいりました!今年のキャベツは出来がよく、一玉の収穫につき一万エリスとなります!できるだけ多くのキャベツを捕まえ、ここにお納めください!人数が人数、額が額なので、報酬の支払いは後日まとめてとします!」

 

正門の方へやってくると、奴らは来た。

地平線の彼方から空を飛んで。

 

緑の葉が重なり合った丸い形状、ひとかかえ程の大きさで、まるで羽虫ののように群れをなしていた。そうキャベツである。

 

「なんだ、あれは…」

 

カズマは目の前の光景に目を疑った。それもそうである。重装備の冒険者達が野菜と激戦を繰り広げるという奇々怪界な状況が起こっているのだから。そんなカズマの隣にアクアがやってきて厳しい様子で

 

「この世界でのキャベツは飛ぶわ。収穫の時期が近づくと、食われてたまるかとばかりにね。そして大陸を渡り、海をも越え、誰にも食べられずにひっそり息を引き取ると言われているわ」

 

なぜキャベツにそんな壮大な物語があるのか、なぜキャベツの収穫で激戦を繰り広げなければいけないのか、

 

「馬小屋に帰って寝てもいいか?」

 

「あれ?カズマは参加しないの?」

 

「錬太郎か…いや、俺の元いた世界とのギャップが激しくてさ…ああ…日本に帰りたい」

 

奇想天外なことばかり起こるこの世界で、カズマの精神は疲れきっており、現実逃避を始める。

 

「まぁまぁ、ここで頑張って大量に捕まえれば懐も温まるだろうからやってみようよ」

 

「…しょおがねぇなぁ」

 

カズマは気怠そうにしつつも、キャベツ収穫に参加することにしたらしい。そんなカズマを見送ると、錬太郎は他のメンバーの様子を観察する。

 

「めぐみん、キャベツの討伐数で勝負よ!」

 

「嫌です、そもそも上級魔法を会得してないあなたが私に挑むのは無謀かと思うのですが?」

 

 いつものようにめぐみんに勝負をせがむゆんゆん。対するめぐみんは、そんなゆんゆんを一瞥しつつ爆裂魔法を発動するべき好機を伺っている。うん、いつも通りの2人である。アクアは我武者羅にキャベツを追いかけており、こちらも特に問題はなさそうである。

そして気になっているのはクルセイダーのダクネスだ。カズマ曰く、攻撃が全く当たらず、中身もどこか、めぐみんやアクアに通ずる部分があるそうだ。

少し気になるため、彼女の近くを訪れてみると、ちょうどダクネスが剣を抜いて、キャベツに向かっていた。

勇猛果敢に立ち向かうその姿は正しく騎士といえよう。さて、肝心の攻撃だが…

 

「(よもや、ここまでとは…)」

 

錬太郎はダクネスの剣技に絶句する。勿論悪い意味でだ。彼女の斬撃は全て空振ったのだ。当たらないのは勿論のこと、掠りさえもしていない。命中率がマイナスの方にカンストしているのではないかと思うくらいの不器用っぷりである。

そして、カズマが懸念している中身の残念な部分も知ってしまった。

 

「大変!あっちの冒険者達がキャベツに襲われてるわ〜」

 

声を聞くなり、その冒険者達のもとへと駆け急ぐダクネス。そして彼らの盾になるようにキャベツ達の前に立ち塞がった。

 

「ここは私に任せて逃げろ!」

 

行手を阻むダクネスに対してキャベツ達は容赦なく体当たりを繰り出す。その威力は高く、ダクネスの鎧は破壊されるのだが、何故かそのダクネスが攻撃を受けるたびに頬を紅くし、どこか悦んでいるように見える。

特徴的な碧眼は興奮のためか潤んでいて、息づかいも荒い。

錬太郎はそんなダクネスの様子を見て、彼女の性質について最悪の結論に辿り着く。

 

「この人、多分ドMだ…」

 

一方で、ダクネスの姿に冒険者達は感銘を受けていた。傍から見れば、キャベツによって打ちのめされている人々を守るために身を挺して盾になっているのだから。他の冒険者に止められようが、一向に退くことはない。

 

「ああ、騎士様が盾に!」

 

「なんて気高い精神なんだ!」

 

「騎士様を見習え!後に続け〜!」

 

ダクネスの高貴な姿を前に、冒険者達は士気向上し、キャベツへと向かっていく。そんな様子にある意味感心した錬太郎はそろそろ動くべきだと感じ、キャベツの方へと歩みを寄せた。

 

「おい、何してんだ兄ちゃん。そんな軽装じゃキャベツに押し潰されてしまうぞ!」

 

「その通りだ!さぁ、早く私の後ろに!」

 

とある冒険者とダクネスが忠告に入る。しかしながら、キャベツに打ちのめされて破顔しているダクネスが言っても、錬太郎は全く頼りに感じなかった。

 

「大丈夫だよ…僕もそれなりに戦えるから…」

 

錬太郎は懐から取り出した『ガッチャードライバー』を腰に装着し、2枚のカードを手に取る。

そしてベルトにある2つのスロットにカードを装填する。

 

『マッドウィール!』『パイレッツ!』

 

ベルトが装填したカードに宿るケミーの名前を読み上げるとともに、軽妙な待機音声を流す。

錬太郎は両手で円を描き、そして両手を重ね、その手を反転させた後、矢印の先端を形作って正面に突き出し猛々しく叫んだ。

 

「変身!」

 

『ガッチャーーンコ!』

 

『マッドパイレーツ!』

 

眩い光に包まれて錬太郎の姿が変わる。その様子にあたりからどよめきが起こった。

 

「「「「「ええええ⁉︎」」」」」

 

「姿が変わった⁉︎」

 

「なんだあの鎧…」

 

「前とは別の姿…しっかし、かっこいいのに変わりはないのです!」

 

「前と違ってかなり攻撃的な見た目だな…」

 

キャベツ収穫のため、現れた新たなガッチャード

 

誇り高き海賊の如き風貌と暴走車の如き荒々しさを兼ね備えた深紫の姿

──マッドパイレーツ

 

その姿にカズマやめぐみん、ゆんゆんをはじめとした冒険者達は目を輝かせるが、ガッチャードはどこか不服そうにしている。そして

 

「これは、違うな…」

 

「「「「「「「「「「へ?」」」」」」」」」」

 

満を持してガッチャードの発した一言に皆、気の抜けたような声を出す。民衆の前で大胆に変身したのにも関わらず、変身後にガッチャード本人が違うと言うとなると、このような反応になるのも当たり前である。

 

「ちょっと待って、待ってね…」

 

待ってくれと言わんばかりにキャベツに手をかざすガッチャード。そして再度、ベルトを操作して

 

『ガッチャーーンコ!』

 

再び光に包まれると、ガッチャードの姿がまた変化していた。

 

「「「「「ええええええええ⁉︎」」」」」

 

「また変わった…」

 

「しかも今度は人型ですらない…」

 

先程変身した時よりも皆の大きな声が響き渡った。それもそのはずである。目の前に現れたのは人の形をした存在ではなかったのだから。

 

大砲を備えし海賊船が四輪を得たるが如し、その姿

──マッドパイレーツ ワイルドモード

 

「そうそう、これこれ!じゃあ、いくか!」

 

ガッチャードは車輪を回転させ、猛スピードでキャベツ達の方へと向かう。そして背後に備えてある大砲の砲撃で、次々とキャベツを撃ち落としていく。

キャベツ達も飛行して砲撃を躱そうとするが、ガッチャードのヘッドライトの如く、キャベツ達を洗うように走り抜ける『マッドパイレーツアイ』と、風の如き速さとともに放たれる砲弾を掻い潜るのは至難の業であり、抵抗虚しく殆どのキャベツは打ち取られてしまった。

 

しかし中には屈強なキャベツ達もおり、集団で行く手を塞ぐように、ガッチャードを包囲し、やがてガッチャードの視界は、辺り一面緑一色に染まる。四方八方から攻めてくる緑の球体、逃げ場などない。

 

だが、キャベツ達の判断は誤りだった。ガッチャードに気を取られ、別の脅威について無頓着になっていた。

その脅威とは人類最大の攻撃魔法を駆使する頭のぶっ飛んだ少女、そう、めぐみんである。幸いにも今日はまだ爆裂魔法を放っていないため、彼女の魔力は有り余っている。

ガッチャードもそのことに気付いたのか、将又瞬発的な直感によるものなのか、めぐみんに向けて大声で

 

「めぐみん!めぐみん!爆裂魔法だ!キャベツ達を蹴散らしちゃって!」

 

「私の出番ですね!いいでしょう!」

 

ガッチャードに応えるようにめぐみんが魔法の詠唱を始める。詠唱と共に空気が震えだし、魔力の渦が生じた。

 

「いきますよ!『エクスプロージョン』ッ!」

 

めぐみんの杖から強力なエネルギーの光が放たれ、巨大な魔法陣を展開した。

 

「よし、今のうちに…」

 

ガッチャードは新たに2枚のカードを取り出し、ベルトに装填する。

 

『サボニードル!』『ホークスター!』

 

刹那、大爆発が起き、爆心地のキャベツ達は消滅し、発生した衝撃波によって直撃を免れた周囲のキャベツ達もボトボトと地面に落ちていく。

 

その光景を見送ったと同時にめぐみんは満足そうに地面にその身を預けた。

 

「ふふ、最高でした…」

 

「おお〜、すげー…じゃねぇよ!錬太郎どうなったんだよ!アイツ爆心地にいたんだぞ!」

 

満足そうにしているめぐみんにカズマが突っ込む。ガッチャードが指示したとはいえ、彼もろともキャベツを吹き飛ばしたのだからそりゃ怒鳴りたくもなる。

変身してはいたものの爆心地にいたのだ。無事では済まないだろう。

 

「おーい」

 

空でも飛べない限り。

 

「え、空飛んで…あとまた姿変わって…」

 

カズマ含む冒険者達は空中で元気そうに手を振るガッチャードを放心状態で遠目に見ている。この男は何度自分達を驚かせれば気が済むのだろうか。

 

新たな姿──覇王樹の如き針と若葉色の鎧に身を包み、隼の如く空を舞う姿は正に天空神

仮面ライダーガッチャード ニードルホーク

 

「さあ、一気に決めるぞ!」

 

ガッチャードはベルトのレバーを操作する。すると大気中の空気がガッチャードへと引き寄せられ、炎のようなオーラへと変わり、ガッチャードを包み込む。

 

『ニードルホーク!フィーバー!』

 

ガッチャードは右手を上げてから、思いっきり下に振り下ろす。次の瞬間、炎を纏った針の雨が残りのキャベツ達へと降り注ぐ。槍の如く、鋭い棘がキャベツ達を次々と貫いていったのだった。

 

 

 

 

「納得がいかねぇ、なんでキャベツの野菜炒めがこんなに美味いんだ。」

 

「はむっ、…うん、美味し。」

 

収穫が終わり、集まった6人は、経験値の詰まった新鮮なキャベツの野菜炒めを食べていた。

 

「これ食うだけでレベルが上がるのか…」

 

あり得ないとでも言いたげな様子でカズマが呟く。

 

この世のあらゆるものは魂を体の内に秘めており、対象を食べたり、倒したり、何かしらの存在の生命活動にトドメを刺すことによって、その存在の魂の記憶の一部を吸収できるというのがこの世界のレベルアップの原理である。

 

「それにしてもやるわね、ダクネス!あの鉄壁の守りにはキャベツ達も攻めあぐねていたわ」

 

「いや、私などただ硬いだけの女だ。誰かの壁になって守ることしかできない。その点、めぐみんの爆裂魔法は凄まじかったぞ。」

 

「ああ、あの一撃がなければ僕もキャベツ達の猛攻に追い詰められてたかもしれないからね。ありがとう、めぐみん。」

 

「フッ、我が爆裂魔法の前に敵はありません!それにレンタロウも凄かったじゃないですか!天空に舞い上がって炎の針で大量のキャベツを仕留める姿はとてもカッコよかったです!」

 

「まぁ、そのせいで殆ど保存状態が最悪だったけどな」

 

「うるさい…キャベツ泥棒…」

 

カズマの嫌味に錬太郎は頬を膨らませ、キャベツ相手に潜伏スキルで気配を消して、背後から窃盗(スティール)で強襲したカズマの戦い方を皮肉って、不名誉な称号をつける。

 

「キャベツ泥棒いうな!あぁ、もうどうしてこうなった!」

 

1人悲観するカズマをよそに、錬太郎はゆんゆんの方に視線を移す。酷く落ち込んだ様子でキャベツの野菜炒めをモソモソと食べている。めぐみんとキャベツの討伐数で勝負したようだが負けてしまったようだ。そんな彼女を見かねてか、錬太郎は自身のキャベツを二切れほどゆんゆんにあげた。

 

「ふぇ⁉︎」

 

「ゆんゆんも収穫頑張ったでしょ、これはほんの労い。お疲れ様。」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

ゆんゆんは錬太郎から貰ったキャベツを嬉しそうに食べるのだった。そんなゆんゆんを見て、錬太郎もまた笑みを浮かべた。

 

「では、名はダクネス。職業クルセイダー。戦力としては期待しないでくれ、だが壁になるのは大得意だ!」

 

紹介文だけでダメだとばかりカズマと錬太郎はため息をつく。

そんな2人をよそにアクアは嬉しそうに

 

「これで上級職が5人よ!アークプリーストの私に、アークウィザードのめぐみんとゆんゆん、今はいないけどクロっち、そしてクルセイダーのダクネス!なかなかいい感じになってきたじゃない!」

 

確かにパーティーの殆どが上級職なら頼もしい事この上ないだろう。普通なら。

しかし蓋を開けてみると、金使いが荒く、酒癖の悪いアクア、一発屋のめぐみん、元ぼっちでコミュ障のゆんゆん、ドMのダクネスと内面に問題がありすぎる。カズマと錬太郎のこの先の苦労や計り知れない。

 

「それでは、これからも遠慮なく囮や壁に使ってくれ!なんなら捨て駒にしてくれたっていい!ああ…想像しただけで、武者震いが…」

 

頬を紅潮させ、涎を垂らしながら言うダクネスにカズマと錬太郎は呆れつつも、新たな仲間として迎え入れたのだった。

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