この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

60 / 89
勝手に考えてる各キャラの地頭の良さのイメージ
めぐみん>>>ゆんゆん>カズマ≧ダクネス>錬太郎>アクア

めぐゆんは紅魔族、カズマは戦いの中で度々見せる機転とダクネスは貴族としての教養の影響。錬太郎がアクアの次に頭が悪いのは、1人だと容量がとてつもなく悪いからです。


甦る記憶

「ここは…」

 

 時は数刻遡り。レプリワープテラの能力によって転送された錬太郎は、アルカンレティアの何処かもわからない、木々が覆い茂った場所を只彷徨っていた。まだ汚染が進んでいない池のほとりに、月明かりに照らされた蓮の花が綺麗に並んで咲いている。思わず見惚れてしまいそうになった錬太郎だが、背後からの殺気に敵がいるのだと感じ、咄嗟に振り向いた。

 

「ほう…俺に気がつくとはな…」

 

 錬太郎の視線の先には青いローブに身を包み、怒りの表情を模した仮面を着用した男が腕を組んで仁王立ちしていた。ローブや仮面は違えど、ソラトスと酷似したその外見から、錬太郎は男がロードの一派、『ネガマスク』であると瞬時に悟った。

 

「気配は消せても殺気は隠すことは出来ていなかったからね。その(なり)からして、アンタはネガマスクだろ?」

 

「察しがいいなぁ少年…。伊達に2年間同族殺しを続けているだけのことはある。俺はロード様に仕えるネガマスクが一人、『グスティヌス』…。おっと、お前の前ではこの仮面は外した方がいいかもな…」

 

 ネガマスクの男、グスティヌスは右手を仮面の方へと運び、偽りの顔を剥がし取る。

 

「なっ…⁉︎」

 

 仮面の中から現れたその素顔に、錬太郎は驚きを隠せなかった。短い赤毛に翡翠色の瞳、顔の右半分は火傷による影響か、酷く爛れており、左半分と比べて機微すらない。2年前の頃とは違いがあるとはいえ、グスティヌスの顔は、自身の師でありライバルのアスラと瓜二つだったのだ。

 

「アスラ、そんな…だってアスラは…」

 

「驚いているねぇ、これはいい感情エネルギーになりそうだ。不思議なんだろ?錬金事変のあの日、お前との一騎打ちに敗れたアスラは、その後乱入してきたロボットマルガムの攻撃の余波をもろに受けて足を踏み外し、そのまま溶岩の海に落ちて体を焼かれた…

 

しかしロード様はその後にアスラの肉体を回収し、この俺を錬成したというわけだ…」

 

 グスティヌスからの衝撃の告白に、錬太郎は言葉が出なかった。グスティヌスは動揺に歪む錬太郎の表情を見て下衆染みた表情を浮かべながら、懐からドレッドライバーを取り出し、腰に装着した。

 

「無駄話はここまでだ。戦闘エネルギーも回収させて貰うぞ…」

 

 グスティヌスはさらに2枚のレプリケミーカードを手に取り、ドレッドライバーのヴェヴェルセッターにスラッシュリードした後に、後方のスロットへと装填していく。

 

『スチームライナー…』

 

『ユニコン…』

 

 ドレッドライバーから響く不気味な待機音が空気を圧迫し始めると同時に、グスティヌスは自身の口元を覆い、囁くようにして喉奥から声を鳴らした。

 

「変身…」

 

『ドレッド…壱式…』

 

 同時にドレッドライバーのレバーであるネクベトヴォークが展開され、ドライバーからレプリスチームライナーとレプリユニコンが飛び出す。漆黒に染まった骨が、レプリユニコンを強制的に鎧の形に変えて全身に纏わりつかせ、グスティヌスはドレッド壱式へと変身した。

 

「さぁ、始めようか…」

 

 ドレッド壱式は、右手に収まったブラッディーUCの切先を錬太郎へと向け、その後力強く地面を蹴って錬太郎へと肉薄した。戦闘の火蓋が、今切って落とされたのだった。

 

 

 

 

『Xレックス!スーパー!』

 

 ドレッドに対抗せんと、錬太郎はすぐさまスーパーガッチャード クロスエックスレックスへ変身し、ブラッディーUCをエクスガッチャリバーで受け止め、弾く。

 己が太刀を返された衝撃で、一瞬ドレッドは後退りするも、すぐに態勢を整えて、再度得物を振りかぶった。その一撃をまたしても受け止めるエクスガッチャリバーの青い刀身。

 今を隙と見たスーパーガッチャードは、手首を器用に回してエクスガッチャリバーを流麗に振るう。手首の回転に合わせて円の軌跡を描く青い剣は、ブラッディーUCの刀身を滑りながらドレッドの装甲へと流れ着き、見事に命中した。

 

「ほぅ、技巧においてもまぁ良きこと…」

 

 ドレッドは一度スーパーガッチャードから距離を取って、埃を払うように装甲をはたく。序盤からの激しい剣撃戦でやっと一撃与えたにも関わらず、対してダメージにはなっていない。まだまだ余裕綽々とした様子でブラッディーUCの柄を握りしめていた。

 

「なら、これならどうだ?」

 

『ゴルドダッシュ…ドレイン…』

 

 ドレッドはレプリゴルドダッシュのカードを「ヴェヴェルセッター」に読み込み、倒立式蒸留器である「コンススティラー」に装填してその力を強引に抽出する。

 その瞬間、ドレッドの姿が消えた。

 

「何処だ…」

 

 スーパーガッチャードは警戒しながら辺りを見回すが、風に攫われる砂埃と、木々しか見当たらない。

 次の一瞬、背後から風と共に何かが横切る。横切った存在はスーパーガッチャードの装甲を斬り付け、火花を散らした。

 

「…ッ⁉︎気づかなかった…極限まで速く動いて殺気を感じさせないようにしているのか…次は何処から…」

 

 先程よりも眼光を鋭くさせるスーパーガッチャード。しかしそれでもドレッドの速さを捉えることは出来ず、縦横無尽に斬りつけられるだけだった。

 

「…ッ、駄目だ。なら速さをこっちも得ないと…」

 

『ガッチャーイグナイター!ターボオン!』

 

 ガッチャードライバーにガッチャーイグナイターを取り付け、スーパーガッチャードは2枚のケミーカードを装填し、ベルトのレバーを引いた。

 

『スケボーズ!イグナイト!』

 

『アッパレブシドー!イグナイト!』

 

『ガッチャーーンコ!ファイヤー!』

 

 一連の動作を終え、スーパーガッチャードを地面から出現した青い火柱が包み込む。燃え盛る炎の中でガッチャードの鎧は変化し始める。赤い恐竜の鎧から、蒼炎を纏った赤武者の鎧へと。

 

『アッパレスケボー!アチー!』

 

 やがて蒼炎の壁をエクスガッチャリバーとガッチャートルネードの二刀流で斬り裂き、新たなガッチャード、ファイヤーガッチャード アッパレスケボーが姿を現した。

 

「速さにならこれで大丈夫だ!」

 

 

 

 

 ファイヤーガッチャードとなり、ドレッドに翻弄されていた速さに順応し、音速をも超える速さの世界で両者は互いの刃を幾度となく交わらせる。

 

「容赦無いな、かつての仲間の姿というのに…」

 

「関係ない。お前らに姿を真似られ、ネガマスクとして悪事をやらされることこそ皆にとっての屈辱だ。だから容赦する気なんて微塵もない。例え、裏切ったアスラであっても…」

 

「ふ〜ん、割り切っちゃってるのか…。だが、お前はアスラが裏切った理由を知っているのか?一丁前に言っておいて…。それにアルケミアの連中も、お前が思っている程綺麗な存在じゃないぞ?」

 

「何だと?」

 

「教えてやろうか?アスラが裏切った真実を…」

 

 腰のドローホルダーより2枚のレプリケミーカードを取り出すドレッド。

その2枚に宿る力をを、ドレッドライバーを通じて強制的に捻り出した。

 

『ミテミラー…ドレイン…』

 

『テレヴィ…ドレイン…』

 

 使い捨てのレプリケミーから力を抜き取ると、ドレッドはガッチャードへ左掌を向けて衝撃波を放つ。衝撃波を浴びたガッチャードの周りには、赤黒いオーラのようなものが出現していた。

 

「お前、何をした⁉︎」

 

「これから攻撃を交える度に俺の中にあるアスラの記憶を送れるようにしたのさ。これなら、効率良く感情エネルギーと戦闘エネルギーを両方得られるしなぁ…さ、行こうか!!」

 

 再び高速の激戦が幕を開ける。互いの得物を交える中、ガッチャードの脳内にはアスラの過去が流れ始めていた。

 

 

 

 

『よし、それじゃ解剖を始めるか…』

 

 在し日のアルケミアの錬金アカデミーの研究室。そこに1人手袋と白衣を着用したアスラは、ガッチャードやマジェード、ヴァルバラドに倒された生物兵器の解剖作業に取り掛かっていた。

 

『それにしても、こんなモンスター見たことない。それに人間の女性に酷似した染色体も検出されてたな。一体、ロードはどうやってこの生物達を手懐けたんだ?』

 

 アスラは手袋越しにアルケミストリングを装着し、生物兵器に触れて記憶を探る錬金術を発動した。その途端、アスラの脳内に吐き気を催す程の残酷な記憶が流れ込んできた。

 

『…なっ⁉︎』

 

 それは囚われた女性冒険者達が、ロードによって力を奪われた後に体を弄ばれ、最後には肉体を改造されるという一部始終だった。涙を流しながら悲痛な叫びを上げる女性冒険者達を意に介さず、ロードは狂気的な笑みを浮かべて、麻酔も打たず、彼女達を実験材料として楽しそうにしていた。

 

『(お、俺達は…人間を殺めていたのか…⁉︎)』

 

 腰を抜かし、アスラはその場に座り込む。さらに追い討ちのように、自身の発動した錬金術は予測された未来を脳内に映し出した。

 炎に包まれるアルケミア。アカデミーの校舎や街は破壊し尽くされ、ハガネやライラも地面に倒れ、息絶えている。

 そして残った錬太郎はロードに首を締め上げられ…。

 

 無惨に首の骨が折れる音だけが響いた。

 

『ァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!』

 

 耐え難い地獄に、アスラは発狂する。錬金術を通じて感じた。ロードには勝てないと。何としてもその事実を皆に伝え、最悪の未来を回避するために。しかし現実は。

 

『何だと?我々が敗北する?降伏して服従するべき?馬鹿馬鹿しい』

 

『いくら秀才のお前の意見とはいえ、それだけは聞き入れることは出来ん!』

 

『こっちにはダンさんや舞さん、マジェードにヴァルバラドに伝説の戦士ガッチャードがいるんだ!負ける訳ないさ!』

 

『あ〜あ、初代ガッチャードの子孫だというのに、錬太郎に2代目の座を取られた挙句に頭まだいかれちまったのか?天才も落ちたなぁ〜』

 

 アルケミア上層部はアスラの話をまともに聞き入れず、あろうことか一斉に笑い者にしてしまった。自分は真面目に話しているというのに、なんて脳天気な人達なのだろう。上層部に対するアスラの信頼はこの瞬間、ぐらりと揺らいだ。

 

 

 上層部の下を去り、アスラはとぼとぼとアルケミアの街を彷徨う。そんな時、ふと保育園にて幼子達と戯れる錬太郎の姿が目に入った。

 あんなに子供達と楽しそうに、笑顔でいるというのに。いつもなら笑っている錬太郎を見て喜べる筈なのに、今のアスラには喜べなかった。

 

『ん?アスラ、そんなとこにいてどうしたの?こっち来なよ』

 

『ああ…今行くよ…』

 

 焦点の合わない瞳で無理矢理に笑顔を作り、アスラは錬太郎の待つベンチへと向かう。一歩一歩、踏み出す足が鉛のように重い。予知の通りだとこの先錬太郎は、そう考えるだけでアスラには恐ろしくて仕方なかった。

 

『丁度お昼なんだ。今日お母さんがおにぎり作ってくれてさ。アスラも1つどう?』

 

『うん、貰っとくよ…』

 

 錬太郎が鞄から取り出した1つのおにぎりをアスラは手に取った。

 

『ふふ、じゃあ久しぶり早食い対決しない?最近はロードの襲撃が少なくなってるからいい機会だと思うんだけど…』

 

『…ごめん、今日はいいや…』

 

 アスラの返答に、錬太郎は驚いて目を見開く。基本的に勝負に乗ってくれるアスラが今日はどこかよそよそしい。いつもと違うライバルの様子に、錬太郎は心配しながらアスラの顔を覗き込んだ。

 

『アスラ…本当に大丈夫?』

 

『……錬太郎!実は!』

 

 ベンチから勢い良く立ち上がり、アスラは錬太郎の両手を握った。いつになく真剣な2つの瞳で見つめてくるアスラに、錬太郎は視線を逸らすことが出来なかった。対するアスラは、その先の言葉を紡ぐことが出来ず、両手を錬太郎の手から離すと、ぺこりと頭を下げた。

 

『ごめん…なんでも、ない…』

 

『そ…そっか…』

 

 錬太郎はアスラから顔を逸らし、ポリポリと頬を指で掻いた。危なかった、とアスラは1人安堵の溜息を零す。この場で錬太郎に話してしまえば、死んでしまうことを遠回しに伝えるだけでなく、錬太郎を巻き込んでしまう。それだけは、それだけは断じて避けたかった。

 アルケミアも、錬太郎も頼ることは出来ない。自分個人の交渉にロードが応じてくれる訳もない。ならば1人でロード打倒の方法を編み出さなければと、アスラは頭を捻る。

 

『(そうだ…レベルナンバー10の禁術…)』

 

 アルケミアで代々禁止されているレベルナンバー10の多重錬成。ガッチャードライバーやアルケミスドライバーが確立した現在でもそれは危険視された錬成の術。しかしそれしかロードに対抗する術はないとアスラは考えていた。

 

『(今夜にでもアカデミーに忍び込んでレベルナンバー10のケミー達を手に入れる。この街と、そして大切な錬太郎を守る為に!)』

 

 アスラは錬太郎から受け取ったおにぎりを頬張り、頭の中で計画を練る。全ては、大切な友である錬太郎の死を回避するため。

 

 

 

『お前にアカデミーの永久立ち入り禁止を言い渡す』

 

 結果として、アスラの目論見は失敗した。錬金術を巧みに駆使してアカデミーへ侵入し、レベルナンバー10達を奪取して禁術を行ったのだが、最後の段階で警備員に見つかって捕えられてしまった。アルケミアを救うため、と訴えても聞く耳を持ってくれず、アスラは学舎からも追放されてしまった。

 

『アスラ…』

 

 上層部の温情で、アスラが仮釈放されたと聞いて錬太郎はやって来た。アスラは顔を見てくれない。錬太郎は一度深呼吸を挟むと、アスラに歩み寄って肩を叩いた。

 

『話、聞かせてよ。アスラが何の理由もなしにあんなことするなんて思えないから。僕達、ライバルで友達でしょ?』

 

『…実は』

 

 もう隠し事は出来ない。錬太郎の説得に折れ、アスラは渋々話すことにした。

 

 

 

『そうか…あのモンスター達は、そしてアルケミアは…』

 

『上に言っても取り合ってくれなかった…やっぱり運命は変えられないのか…』

 

『何弱気になってるんだよアスラ!僕達は錬金術師として…』

 

『お前にはわからないよ!!ロードの恐ろしさが!!』

 

 アスラは声を荒げて、錬太郎の胸ぐらを掴んだ。錬太郎の服を握るアスラの手は、恐怖からなのか震えていた。

 

『アイツは冒険者から力を奪っているんだ!!力を奪ったら用済みとして生物兵器に改造した!!きっと色んな場所で多くの人から力を奪って破壊の限りを尽くしてる!!そんな底が知れない奴に俺達が勝てる訳ない!俺は、俺は…』

 

 お前に死んで欲しくない、俺と一緒に逃げて欲しい。

 

 アスラは錬太郎にそう言えなかった。言ってしまえば、自分の気持ちを錬太郎に知られてしまう気がして不安で仕方なかった。幻滅されるのではないか、アルケミアの人達のように錬太郎まで離れてしまうのではないかと怖かった。

 

『落ち着いてアスラ、悪い方に捉えすぎだよ。確かに、禁術に手を出したのはダメなことだけど、アスラのお陰で、またロードに対する警戒姿勢も強化されたんだ。君のお陰さ。大丈夫、僕が絶対に君を守るから』

 

 胸ぐらにあるアスラの手を、錬太郎は優しく包み返して屈託のない笑顔を向ける。その笑顔が、アスラには酷く辛かった。それと同時に、自分の行いを部分的に咎められたことは、錬太郎の為になんとかしようとした自分自身を否定されたかのように思えた。

 

『そう、だな。ごめん錬太郎。少し疲れてるみたいだ…』

 

 覚束ない足取りで、アスラは錬太郎に背を向けて去っていく。偶々見つけた路地裏に身を隠すと、アスラは一筋の涙を流した。

 

『どうすれば…いいんだよ…』

 

『お困りのようだねぇ〜』

 

 1人悩むアスラの前に、男が現れた。男は高身長で一部金色の装飾が施された黒いスーツに身を包み、丸渕メガネを掛けていた。その男を前に、アスラは戦慄した。

 

『ロード…』

 

『おっと、そんなに警戒しないでおくれ。私は和平を結びに来たんだよ、君にね』

 

『俺に?』

 

 予想外のロードの発言に、アスラは意図が読めず困惑する。

 

『話が通じそうなのは君くらいだからねぇ。君の願いを聞き入れてやってもいいよ?』

 

『本当か⁉︎』

 

『うん勿論!

 

 

 

 

 

君と百瀬錬太郎君だけを助けるというね…』

 

 ロードからの条件に、アスラは耳を疑った。自分と、錬太郎だけ。

 

『ど、どういうことだ⁉︎アルケミアを見逃してくれるんじゃないのか?』

 

『私は君個人に和平を申し出ると言ったんだ。憎ったらしいアルケミアを滅ぼさないなんて無理無理。それにさ、君も思ってるんだろ?自分を信じてくれない奴らなんてどうでもいいって…』

 

『そんなこと…』

 

『素直になりなよ…君の言ったことを馬鹿にした奴を守る義理なんて何処にある?そいつらの為に今まで頑張ってきたのに、いざ大事な局面じゃ邪魔者扱い。馬鹿馬鹿しいだろ?そんな奴らと親友、どっちを取るのが賢いと思う?それに君の親友を縛り付けているのは、憎きアルケミアの無能共だ。滅ぼせば、彼をしがらみから解放することだって出来るんだよ?』

 

 ロードは揺さぶりをかけて来る。言葉に魔力を含ませて相手を操る術を交えて。誘惑塗れの言葉の数々に、アスラの精神は、思考する猶予も許されずに、徐々に蝕まれて行く。そして次第にふつふつと、アルケミアの者達へ向けての憎悪を激らせた。もうアスラには、親友の錬太郎を助けることしか頭になかった。

 

『その話、乗るよ…』

 

『ふふ、洗脳完了。いい子だ。んじゃあアルケミアの情報をお願いね。それにしても百瀬錬太郎くんはいじめがいがありそうだったからこれは面白くなるねぇ…』

 

 その会話を最後に、アスラに関する裏切りの記憶の転送は終わった。

 

 

 

 

「どうだ?お前の親友の末路は?アルケミアに対する絶望とお前への気持ちで板挟みになってロード様の罠にまんまと嵌ったわけだ!滑稽な話だよなぁ。お前1人を守りたいが為に予知を自分で現実にしてしまうなんて、よぉ!!」

 

 記憶を送られると共に、少なからず動揺したガッチャードは、ドレッドによる攻撃への対応が疎かになり、遂に攻撃の嵐をその身に受け、地面へ強く衝突して転がり回った。力無く倒れるガッチャードに向かって、ドレッドの口撃は続く。

 

「結局お前が守りたいと思う人間なんてそんなもんだ。愚かで、身勝手で、狡くて、醜い。そうだろ?錬金事変の後の王都でもお前は白い目で見られ続けた。アルカンレティアの信者共も似たようなもんだ。そんな人間を救うことに何の意味がある?」

 

「…お前の言う通りだ。人間は愚かで、身勝手で、狡くて、醜い…どうしようもない部分だって沢山あるさ…」

 

 ガッチャードはゆっくりと身体を起こす。ダメージが大きかったために、エクスガッチャリバーとガッチャートルネードの剣先を杖代わりにしてフラフラとしているが、闘気は失われておらず、寧ろメラメラと陽炎のように激っていた。

 

「でも同時に、人間には困難を前に団結する勇気、危機を前にしても屈さない強さ、弱き者を労わる美しさもある!僕は、醜くも美しい、今を懸命に生きる人間を守りたいと強く思っている!

 

 

言われなき罵詈雑言の数々、大切な人達との別れ…失ってばっかで辛かったさ…でもカズマやゆんゆん達と出会って、もう一度立ちあがろうと思えた。その時に決めた。もう迷わない、前しか見ない。だから僕は、僕の信じる正義の為に、お前に勝つ!!」

 

 迷いなき声色で、ガッチャードはドレッドに言い放つ。人間を守るというガッチャードのら強い意思に呼応したのか、5つの光が四方八方からガッチャードの手元に集まった。

 

「皆…」

 

 その光とは、ビートルクス、リクシオン、ゼグドラシル、テンフォートレス、エクシードファイターの5体のレベルナンバー10のケミー達だった。

 

「うん。一緒にいこう!!」

 

『クロスオン!』

 

 ガッチャーイグナイターを取り外し、再度エクスガッチャリバーをベルトへと装着した。そしてユニット状になったエクスガッチャリバーに、レベルナンバー10のケミー達の力が宿されていく。

 

『エクスアッセンブル!ビートルクス!リクシオン!テンフォートレス!ゼグドラシル!エクシードファイター!』

 

『ガッチャーーンコ!エーーックス!』

 

 ベルトのレバーを操作すると同時に、眩い光がガッチャードを包み込む。光の中でカブトムシを模した右腕、獅子を模した左腕、戦闘機を模した胸部、大樹を模した左足、要塞城を模した右足の武装がそれぞれ生成され、ガッチャードの肉体を覆っていく。

 鎧の装着が完了すると、光の粒子がガッチャードの仮面を覆い、星の如き仮面を生成し、さらに背部には金色の二又マントも出現した。

 

「その姿は…」

 

 初めて見るガッチャードの姿に、ドレッドは驚愕を隠せない。

 

 禁忌とされたレベルナンバー10の多重錬成を遂げ、暗黒の破壊者に一矢報わんとする黄金を纏った戦士が誕生した瞬間だった。

 

『スターガッチャード!スーパー!』




本当はマーキュリーポセイドンの予定だったんですけどね…
アスラが出来なかったレベルナンバー10の多重錬成をやってのけた方がいいのかなぁと思ってスターガッチャードにしました。

アスラは錬太郎ラブ勢です。
アスラはめぐみんをモチーフにして生み出したキャラでございまして、めぐゆんみたいな描写を錬太郎とアスラでしたかったのですが、なんかトレギアとタロウもといクオンと吠みたいになっちゃいました…
白狐世界にてロードが錬太郎のせいでアスラが道を踏み外したみたいなこと言いましたが、錬太郎に脳を焼かれたという意味です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。