この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

61 / 89
アルカンレティア編、最終回
4章最終回は次回です

遅くなりました…




さらば、旧友(とも)よ…

「いくぞ、ドレッド…」

 

 輝く己が身を低重心でどっしりと構え、スターガッチャードは戦闘態勢に入る。次の瞬間、スターガッチャードは大地を力強く蹴り、ドレッドへ一気に肉薄する。ゼグドラシルによる重力操作と、エクシードファイターによる瞬間加速のお陰で、この間1秒足らず。

 

「くっ⁉︎速い…」

 

 しかしドレッドは咄嗟の反射神経で、ブラッディーUCを盾代わりに構えて、寸前で防御する。流石はロードの精鋭ネガマスク。簡単には攻撃を通すことは許してくれない。

 

「一発で駄目なら、何発も繰り出すだけだ!!」

 

 スターガッチャードはまたも加速し、電光石火の如く攻撃を繰り出す。対するドレッドもレプリゴルドダッシュの力で脚力を強化し、応対する。力と力、技と技がぶつかり合い、その都度衝撃波が舞う。雷を纏った拳と、流麗な太刀筋による得物の乱舞は、幾度も火の粉を振り撒き、戦いの激化を知らせる。

 

「まだまだ!!」

 

「…ッ⁉︎何だと⁉︎」

 

 しかし拮抗していたかに見えた勝負が動いた。人間である以上、基本的に長時間、高速の中での戦闘では、時間経過と共に攻撃速度や攻撃そのものの質がどうしても落ちてしまう。体力、集中力を意図して維持するための精神力も摩耗してしまうため、当然の摂理。それは人の体を媒介にして生み出されたネガマスクであっても例外ではない。

 が、対するスターガッチャードは、そのような道理は知らぬ風とばかりに、時間が経つにつれて攻撃力、速さが逆に上昇し始めた。人間であるというのに、ましてや禁術とされ、負荷の大きいレベルナンバー10の多重錬成をしている身でありながら。

 

「どういうことだ⁉︎何故、何故俺が押され始めている⁉︎」

 

「ケミー達の力が、僕に同調し始めて来たんだ。皆の、この街を守りたいって願う気持ちと一緒に!!」

 

「あり得ない…あり得ないッッ⁉︎⁉︎」

 

「わかんないだろうね…ケミーやアスラの身体を道具としてしか見ていない、お前なんかじゃ!!」

 

 スターガッチャードに押され、ドレッドは防戦一方となる。防御を担っているブラッディーUCも、徐々に亀裂が生じ始めた。

 

「今だ!」

 

 好機と見たスターガッチャードは、右腕に武装されたビートルクスアームに、リクシオンの雷、ゼグドラシルの重力のエネルギーを集中させ、ドレッド目掛けて力強い拳の一撃を繰り出す。

 

「グッ…ァァァァァァァァァァァァ⁉︎⁉︎⁉︎」

 

 ブラッディーUCでまたも防ごうと試みたドレッド。しかしブラッディーUCはスターガッチャードの拳を前に叩き折られ、さらに勢い付いた拳を懐へ撃ち込まれてしまった。

 尚もスターガッチャードの猛攻は続く。ブラッディーUCを失ったドレッドは、右半身のレプリユニコンの力を宿し、一応攻撃を受け流す機能を持つ『モノケウロ』があるのだが、それを持ってしても意味はなく、強撃を前に後退し、さらには膝をついてしまった。

 

「これで終わりだ!!」

 

 ベルトのレバーを操作し、スターガッチャードが天高く飛翔する。背後には、5体のレベルナンバー10のケミー達が星の陣形を形作ってガッチャードへ力を流し込んでいく。

 

『スターガッチャード!シャイニングフィーバー!』

 

 レベルナンバー10のケミー達の力を全解放したスターガッチャードは、照準をドレッドへ定め、右足を前に突き出して蹴りの姿勢に入る。そして疾風迅雷の如き速さで突き抜け、渾身のライダーキックをドレッドへ放った。

 

「ハァァァァァァァ!!!!」

 

 それはまさに一瞬。秒数を数える間もなくして、ドレッドの腹には風穴が空いていた。ドレッド自身がそのことに気がつくのは、それから間も無くであった。

 

「そんな…馬鹿なッ…」

 

 同時に、ドレッドの身体が砂のように朽ちていく。想定以上のダメージに、強固なホムンクルスの肉体も耐えることは出来ず、崩壊を始めていた。

 

 

 

 

「(まさか…こんなことが。俺は…こんなところで死ぬのか…)」

 

 ドレッドは、グスティヌスは未だ、己の敗北を認められずにいた。ロード直属の部下として、ネガマスクとしての取るに足らないプライドが理解することを拒んでいた。しかし崩れ行くその身体が、グスティヌスが必死に目を逸らす現実を突きつけて来る。

 

『ア…アア…』

 

 崩壊していく最中、グスティヌスの中から、誰かの呻き声のようなものが木霊した。

 

「…ッ⁉︎こんなところで終われるか…俺は…負けない…」

 

 鼓膜に響く声を振り払い、全身に力を込めるグスティヌス。その途端、身体の崩壊が止まった。咄嗟にドレッドライバーの中にあるレプリケミーの力を取り込み、マルガムへと成り果てることで強制的に身体を維持したのだ。

 おどろおどろしい漆黒の煙が、グスティヌスの身体から溢れ出し、その姿を怪物へと変えていく。一角獣のような頭部に、魚の鱗のような黒い装甲に包まれた全身、両腕には蒸気機関車を模した武装が施された多重錬成の獣、『ユニコーンマルガム ライナーミクスタス』へと。

 

「そんな…まさかマルガムになるなんて…」

 

「潰す…潰すッッッッ!!!!」

 

 両腕の武装に備えられた推進器を利用して、マルガムは瞬く間にスターガッチャードの懐に潜り込み、勢いに任せた強烈な打撃を繰り出す。必殺技を放ち、満身創痍かつ完全に油断していたスターガッチャードは対応することなど出来ずに吹き飛ばされ、大木に背中を打ちつけ、通常のガッチャードへと戻ってしまった。

 

「うっ…くぅ…」

 

「まだまだァァァァ!!!!」

 

 爆進し、再度ガッチャードへ迫るマルガム。背後の大木のせいでガッチャードに逃げ場はない。咄嗟に躱すにしても、直ぐにまた次の攻撃が来る。ここで受け止めるべきが最善とみて、ガッチャードはガッチャートルネードを取り出して、構えた。

 

「ゴリラセンセイ、頼む!」

 

『ケミーセット』

 

 アニマルケミーレベルナンバー8、ゴリラセンセイの力を宿し、マルガムの攻撃を何とか防御することに成功する。両者の力は拮抗し、鍔迫り合いの状態が続く。

 

『タ…ウ…レ…ロウ…』

 

 そんな中、ガッチャードの脳内に誰かの声が聞こえて来た。ガッチャードからすれば聞き馴染みのある声、2年前自身を師事し、共に競い合って来た友の声。

 

「あ、アスラ…」

 

『レン…タロウ…タス…ケテ…』

 

 ガッチャードが確認するように尋ねると、脳に伝わる声は今度ははっきりと聞こえた。助けてと。次の瞬間、ガッチャードの脳内には、声と共に記憶が流れ込んできた。それは、アスラの真実の続きでもあった。

 

 

 

 

 炎に包まれるアルケミア。その中で剣を片手に1人フラフラと彷徨うアスラ。彼の歩いて来た道には、多くの人が斬り倒され、血の池を作っていた。女子供も関係ない、目に映った者は例外なく始末される、まさに地獄絵図としか形容出来ない光景が広がっていた。

 そしてアスラが次に狙っていたのは錬太郎とも立ち寄った保育園。もう既に子供の何人かを手にかけており、残る者達も斬る対象だ。

 

「(殺してやる…俺を馬鹿にした、この街の連中を1人残らず…)」

 

「やめて!たすけてよぅ、アスラお兄ちゃん!!」

 

 1人の男の子が泣いて懇願するが、聞き入れられることはなく、アスラによって無惨にも身体を斬り裂かれた。

 しかしどうしたことか。その子供を斬った後に洗脳の効能が一部解けたのか、アスラはその場から動くことなく自身の手へと視線を移した。

 血に染まり、震えている。この街を守るべくしてあらゆる手段を尽くしてきた自分が、今やたった1人の親友を守るためだけに、罪もない人々を斬り殺している。上層部に対する怒りを、守るべき対象だった筈の街の人々へと向け、沸々と滾る憎悪のままに剣を振るう。そんな自分が、恐ろしく見えた。

 

「これが…俺の望んだことだったのか…これが本当に…俺の願いだったのか…」

 

 震える手から剣を落とし、アスラは地面に膝をついて蹲る。両目から滝のように雫を溢し、情けない呻き声をあげながら、自身の選択を初めて後悔した。

 

『アスラの夢って、何?』

 

『そうだなぁ…ここの保育園の子供達が、冒険者にならなくても生活に困らない、勿論ここの子達だけじゃなくて、世界中の子供達がそうであれる世界にしたいかなぁ』

 

『おっきな夢だね!でも、アスラならきっと出来るよ。何せ僕の師匠なんだし!そうだ、その夢、僕も手伝うよ、約束だ!』

 

『ああ!』

 

 ふと蘇るは、この保育園でかつて親友の錬太郎と交わした約束。思い出したその約束が、呪いとなってアスラの胸を締め付け、罪悪感を植え付ける。

 

「身体が、言うことを聞かない…もう、戻れない…」

 

 涙で腫れた顔を上げ、アスラは両目に夜空を移す。アスラとは対照的に、その日の星々は酷く輝いて綺麗だった。

 

 

 頭では誤ちを犯したとわかっているのに、ロードの術の影響でアスラの思考を全くと言っていいほど反映することはなかった。アスラの肉体は、ただ思考が出来るだけのロードの傀儡に成り果てていた。

 引くに引けなくなったアスラは、その後マルガムの力を強制的にロードに与えられ、心では拒絶しつつもハガネとライラも手にかけ、月の青白い光が照らす1座の山にて、錬太郎の変身するガッチャードと死闘を繰り広げた。

 激化する戦いに呼応して、山を覆う灼熱の溶岩はぐつぐつと激り、かつての親友2人の激闘を見守った。

 

『スチームホッパー!フィーバー!』

 

「ハァァァァァァァ!!!!」

 

 激戦は、ガッチャードに軍杯が上がった。敗北してマルガム化が解除され、ここで死ぬのだと悟ったアスラは両手を広げて錬太郎の攻撃を待ち望んだ。ここで死に、潔く地獄で罪を償いたかった。しかし…

 

「アスラ…」

 

 ガッチャードはとどめを刺すことなく、手を差し伸べた。悪き者は倒せ、手遅れになる前に。そう師匠として教えたというのに、どこまで酷く優しい男なのだろう。しかし、自分にその手を取る資格はない。

 ガッチャードの、錬太郎の優しさに応えることは出来ず、アスラは俯くまま。

 

「いやぁアスラくんまさか負けちゃうなんてね〜。でも、時間稼ぎご苦労様〜」

 

 突如として、ロードが間に割って入り、意気揚々と指を鳴らした。その途端、空よりロボットマルガムが飛来し、力強く山へと着地する。その際に地面は砕け、ガッチャードは驚異的な身体能力でなんとかことなきを得たが、アスラは…。

 

「アスラァァァァァァァァ!!!!」

 

 衝撃によって足を踏み外し、アスラはその身を溶岩の中へと預けてしまった。

 

「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!!熱い、熱い!!」

 

 灼熱は今までのアスラの残虐を断罪するかの如く、容赦なくその身を焼き尽くす。皮膚は爛れ、手足は火傷し感覚を失った。最早助かることはない。しかしアスラはそれで良かった。もう生きていることは苦痛だ。首の皮が繋がったところで、自分は自身の行いに苦しみながら生き続けることとなる。それならば、ここで死んであの世で罪を償おう。許されないことでも、それが自分の出来る贖罪なのだから。

 

 しかし、現実はアスラに非情だった。

 

「ふぅ〜、何とか溶岩から引き揚げたけど、まだ生きてるか〜」

 

 アスラが目を覚ました場所はあの世ではなかった。目の中に広がるは無影灯。そして己は手術台に縛り付けられている。その様子を覗き込むロードは、愉快そうにニヤニヤと笑っていた。

 

「手足は錬成したものを取り付けてやったが、顔の皮膚は半分までしか無理だったか〜。それにしても完全に死んでない状態でホムンクルスにしていいのかなぁ?まぁいいや。実行!」

 

「や、やめろ…やめろォォォォォォ!!」

 

 アスラは必死に首を横に振り、拒絶を示す。しかし身体は手術台にて拘束されて動かせず、抵抗など出来ないままにロードによって仮面を装着される。そしてロードの手から放たれる妖しげな光が、アスラの意識を奪っていった。

 

「今日から君はネガマスク、グスティヌスだ…」

 

「錬太郎…助けて…」

 

 その言葉を最後に、アスラとしての意識は、仮面に素顔を封じられたように、奥底へと沈んでいった。

 

 

 

 

「アスラ…君は…」

 

「何うだうだ言ってやがる!!」

 

 マルガムの攻撃を弾き、ガッチャードは大木のある後ろから右に逸れてマルガムに対して今一度構え直す。マルガムは隙を与えまいと、ガッチャード目掛けて再度突進を繰り出した。

 ガッチャードはガッチャートルネードの柄を再度握りしめる。そして向かってくるマルガムに一太刀を喰らわせる

 

 

 

 

わけではなかった。なんとあろうことか、ガッチャードは手からガッチャートルネードを放し、突っ込んできたマルガムの拳を受け止めると、マルガムを優しく自身の腕の中へと包み込んだ。

 

「な、何だ…どういうつもりだ⁉︎」

 

 突然の相手からの抱擁に、マルガムは訳もわからず困惑する。ガッチャードは変身解除して錬太郎の姿に戻ると、黒曜石のような2つの瞳でマルガムを見つめながら言った。

 

「ごめんね、アスラ。ずっと苦しんでたこと、何にも分かってあげられなくて…守るって約束したのに…これじゃあライバル失格だね…ごめんねぇ…」

 

 錬太郎は涙を溢しながら、ライバルとして、友としてアスラを理解することが出来ていなかったことを詫びた。罪悪感を秘めたまま意識を封じられ、ロードに利用された苦しみなど想像出来ない。だが、アスラが先走ってきた要因に自分があることに謝らずにはいられなかった。錬太郎の瞳から溢れた涙は、頬を伝ってマルガムへと流れ落ち、浄化するように広がっていった。

 

「な、何だ…こ、これは…ッッッ」

 

 刹那、錬太郎の涙を受けて、マルガムが悲鳴をあげる。そして醜い容姿が、長年縛り込んできた拘束から解き放たれるかのように人間の姿に変わっていく。その姿はグスティヌスではない。紛うことなき錬太郎の友人にしてライバルの、アスラ・ガレットその人だった。

 

「アスラ…」

 

「錬…太郎…、もう、疲れたよ…お、れを…」

 

「うん…分かってるよ…」

 

 錬太郎はアスラの想いを察し、取り出したエクスガッチャリバーにオカルトケミーのレベルナンバー4、エンジェリードのカードを装填する。せめてアスラが、苦しむことなくあの世に行くことが出来るように。

 

『エンジェリード!ストラッシュ!』

 

 エクスガッチャリバーを通じて、エンジェリードの力が解き放たれ、アスラの足下から眩い光が溢れ出し、アスラを包み込む。やがて光はアスラを浄化していき、魂を天へと誘った。

 

『錬太郎、ありがとう』

 

 アスラは最後にそう残して、笑顔で消えていった。

 

 

 

 

 

「あ、あれ…」

 

 アスラのいた場所に、ぽつんと寂しく置かれたものが1つ。錬太郎が近寄って確認すると、それは2年前の修学旅行で、自分がアスラに友情の証として渡したアルカンレティアのブレスレットだった。

 

「アスラ…ずっとこれ…大切に持ってくれて…」

 

 錬太郎はブレスレットを拾い、手の中で優しく包み込んだ。そして誰にも聞こえないように声を押し殺して静かに1人泣き続けたのだった。

 

 

 

 

 翌朝、アルカンレティアは賑わっていた。魔王軍の撃退、より強固となったアクシズ教徒達の絆に、源泉がさらに清められたからだ。元来、源泉はアクアに触れられたこともあって浄化されてお湯になってしまったのだが、ケミー達との共同作業時に彼等の特性といい感じに混ざり合い、結果以前よりも効力のある源泉へと変化したのだった。

 余談であるが、ハンスに捕食された人々も、アクアとケミーの力を解き放った余波で奇跡的に蘇生を果たしていた。

  

「いやぁ、疑って悪かったなぁ姉ちゃん!!アンタもガッチャードと同じく女神アクア様の遣いだったって訳か?」

 

「ちょっと!遣いじゃなくて本人よ本人!まっ、今日は機嫌がいいのと、信者の皆が助かったのだから特別に見逃してあげる!さぁ、皆でお酒飲みましょ!勿論、朝風呂をめぐみんと一緒に入ったカズマさんも!」

 

「おいぃ、アクアてめぇ!それは事故だって言ってんだろ⁉︎」

 

「でも朝風呂でそうゆう展開望んで混浴入ったのは事実なんでしょ?」

 

「ぐぬぬ…」

 

 アクアの指摘にカズマは何も言い返すことが出来なかった。一方でそんなことを聞いたゆんゆんは顔を真っ赤にして隣にいるめぐみんに是非を尋ねた。

 

「えっ…こ、こここ混浴⁉︎う、嘘でしょ…恋愛に疎そうなめぐみんがカズマさんと…ね、ねぇめぐみん⁉︎アンタ本当にカズマさんと…」

 

「喧嘩売る言葉が聞こえたような気がしましたが…えぇまぁそういうことですよ。私はカズマと爆裂散歩する仲ですから風呂に一緒に入ることくらいおかしくありません。

いつまでも妙な距離を維持しているあなたとは違うのです」

 

「そ、そんな。めぐみんに負けるなんて…うわぁぁぁぁぁん!!」

 

「私の勝ち!!(本当は混浴が女湯より広いから興味本位で入ったらカズマと鉢合わせただけなんですがね…)」

 

 ゆんゆんは泣きながらめぐみんの下を立ち去り、めぐみんは勝ち誇ったように拳を天高く上げた。そんな2人の様子を、遠くからクロっちとウィズは微笑ましそうに眺めていた。

 

「あらあら、可愛らしいですねお2人とも…」

 

『全く、2人ともどうでもいい勝負で張り合うなぁ。若さなのかなこれも』

 

「フフフ。そういえばクロっちさん、錬太郎さんは…」

 

『ああ…ちょっと散歩してくるって…』

 

 

 

 カズマ達が宴で盛り上がっている頃、錬太郎は1人昨日の戦場に足を踏み入れ、花束を手向けた。友であるアスラのせめてもの供として。

 

「アスラ、昨日ぶり。昔さぁ、よくアスラに僕、弱いって言われてたよね。その都度ムキになってたけど…アスラの言う通りだった…僕は、ガッチャードライバーを扱える身でありながら、アルケミアは愚か、傍にいた君すら助けられなかった、君の苦しみに、何1つ気づかなかった…そんな僕に、誰かを守る資格があるのかなぁ…僕こそ、裁かれるべき存在なんじゃないのかなぁ…

 

 

 

もしも、君の隣にいたのがカズマなら、ゆんゆんなら、きっと…また違ったのかなぁ…」

 

 錬太郎は涙ぐみながらアスラに自身の気持ちを伝える。今はもう、天で見守っているであろうアスラに向けて。

 

「忘れない…絶対に忘れるもんか!もう二度と、君のような想いを誰にもさせないから!!アスラ、見ててね」

 

 その言葉を最後に、錬太郎は手向けた花束に背を向けて去っていく。吹き抜ける風が、錬太郎と花の両方を揺らし、その様子を空に舞う青い蝶が嬉しそうに眺めていた。

 

 

 

「そういえばダクネス?さっきから静かよねぇ…」

 

「なんか珍しいな」

 

「確かに、ダクネスらしくないですね」

 

「え、いやぁ…あのだなぁ。皆。アスラっていたじゃないか?錬太郎の親友だったっていう…」

 

「ああ」

 

「その少年の日記を偶然今朝見つけてしまってだな…彼は結構錬太郎に対する感情が重くてだな…話すより見てもらった方が早いかもな…」

 

 ダクネスは懐から一冊の手記を取り出し、カズマとめぐみんの前へ出す。『日記 アスラ・ガレット』と書かれており、恐らく錬太郎達同級生と修学旅行にアルカンレティアを訪れた際に忘れたものなのだろう。

 

「人の日記を盗み見するのはどうかと思うが、ダクネスが引くってどんなのか気になるな」

 

「ですね。ここはいっそ見ちゃいましょう!」

 

「見ましょう見ましょう!」

 

 古びたページをパラパラとめくり、ダクネスは顔を顰めながら、アスラの文章を二人に提示した。カズマとめぐみん、アクアは覗き込むように机から身を乗り出し、日記に目を通すと同時に固まった。

 

「これは…ポエム?」

 

「永遠を…共にして…⁉︎」

 

「えっ、えええ…」

 

 アスラの日記に記された錬太郎に向けたであろう怪文書の数々に、アクアにカズマ、めぐみんも震え上がる。アスラの錬太郎へ向けた大きすぎる気持ちを前に、動揺せずにはいられなかった。

 取り敢えず4人はこれ絶対錬太郎に見せちゃだめだ、と思ったのだとか。

 

アルカンレティア編、まずはこれまで。




おまけ:アスラの怪文書ポエム(一部抜粋)

暗闇ばかりで出口の見えない場所
それでも君は照らしてくれる
全てを温かく包む太陽のように
君がいれば怖くない 
君とならば永遠の意味も証明できる
だからそばにいて
僕と永遠を共にして


因みに錬太郎に読まれており、これがきっかけで錬太郎はアスラにラブレター添削を依頼した。
(アスラ本人は、ラブレターの相手に嫉妬していた)
アスラのポエムに、錬太郎は詩人の才能があるんじゃと評価した。
錬太郎本人は自分に向けられたポエムとは気付いてません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。