この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを! 作:山田プロキオン
ずっと書きたかった章でもあるので感無量です
これも読んでくださる皆様がいてこそです
いつもありがとうございます。
このぼっち娘から衝撃的な告白を!
駆け出しの冒険者達が集まる街、アクセル。その街の中にある森を抜けた山奥にひっそりと位置する家にて、錬太郎はケミー達と共にバニルに提示する商品の錬成を行っていた。その家はかつて、錬太郎とカズマ達が訪れた少女エミとその両親が住んでいた家である。
「『万物はこれなる一者の改造として生まれうく』」
『ヴェノム〜』
『コゾー!』
『マーキュリン!』
錬太郎が詠唱を開始すると共に、マーキュリンの出現させた特殊な聖水が錬金術によって再錬成され、そこにヴェノムダケ、ドクターコゾーの2体の力が齎す薬用効果が追加される。完全に錬成が完了した液体は、予め錬太郎の用意しておいたフラスコの中へと注がれた。
「よし、解毒兼体力回復の効能のあるポーション完成!!皆、ありがとうね」
『『『〜〜♪♪』』』
錬太郎は、錬成に携わった3体のケミーに笑顔で御礼を述べた。ケミー達も錬太郎に感謝されて大層嬉しいようで、家の中を満足気に飛び回った。
「フフフ。さっきのポーションに加えて、カズマが教えてくれた日本の知識を基に完成させた魔導カメラ。きっとバニルさん気に入ってくれると思うな〜。そうだ、今カズマ達ギルドにいると思うし、商品について話してみようかな!そうと決まれば急いで行っちゃおう!ワープテラ!」
『ワープ!』
錬太郎の声に応答し、左腕に収まるガッチャードローホルダーより、ワープテラが出現する。そして錬太郎の要望通り、彼とケミー達を纏めてギルド付近までテレポートさせた。
その後何歩か歩みを進めて入り口まで来ると、錬太郎は軽やかな音を響かせて開扉し、ギルドへと足を踏み入れた。
「あ、カズマ達だ!ねぇ聞いて!新作のポーションとカズマが提案した魔導カメラを作って来たんだ…けど…どしたの?」
ギルドにやって来て早々、錬太郎はカズマ達のいるテーブルを見つけたのだが、いつもに比べて各々の雰囲気が重苦しい。まるでお通夜ムードだ。カズマは頭を抱え、アクアは死んだ魚の目をして、ダクネスとクロっちは呆れ気味。そして背後から陽炎が見えるくらいに不服そうにしているめぐみん。
感情の差異からして、恐らくめぐみんに原因があるのだろうと行間を読み取った錬太郎は、何故朝っぱらから既に気落ちしているのか、詳細を尋ねることにした。
「成程、回遊マグロの依頼を受けたものの、そのクエストの最中めぐみんがカズマやクロっちの制止も聞かずに爆裂魔法を放ったと…そして地形が大幅に変わって来年からのマグロは絶望的と…」
「し、仕方ないじゃないですか!!マグロがモンスターに横取りされそうになったあそこが爆裂魔法を撃ち込める絶好の機会だったのですから!!それに今回の出来は120点なので結果的にプラスです!!」
「プラスな訳あるか爆裂ロリぃぃ!!マグロごとぶっ飛ばしたら意味ねぇだろうが!!」
めぐみんの滅茶苦茶すぎる言い分に、カズマは声を荒げ、激昂する。このままいけば鬼畜だの、変態だの、一部で囁かれている己の噂を解消出来るかもしれなかった上に多額の報酬も手に入る算段だったというのに、あろうことか、損害賠償の請求される地形破壊を徒党の一員が引き起こしてしまい、挙句マグロも手に入らなかった。怒りたくなるのも道理である。
「ま、まぁカズマ。めぐみんも少し興奮してしまったのだろう。一旦落ち着いて…」
「お前も言うこと聞かずにマグロに飲み込まれたよな?良い加減性癖を出す場を弁えろよ、あと生臭い」
「はひぃん!」
仲裁に入ろうとしたダクネスも、今回の一件でやらかしていたようでカズマから咎められる。しかしそこはマゾの気質のあるダクネス。反省するどころかカズマからの扱いに寧ろ興奮している様子。やっぱりこの女聖騎士には説教することは、糠に釘なのかもしれない。
「そういえばゆんゆんは?」
「ゆんゆんなら今日は家族から手紙が来るみたいで今回のクエストはパスしたわよ」
『ケミーライザーの連絡によればもう少しで来るらしいよ。なんかギルドに錬太郎は来ているかって変な確認があったけど…』
錬太郎が今この場にいないゆんゆんについて尋ねると、アクアとクロっちが回答してくれた。それならばゆんゆんが来て全員揃ってからポーションと魔導カメラの説明をした方が良いかもしれないと錬太郎は考え、空間錬成を使ってそこにポーション、カメラ両方を仕舞った。
「錬太郎さん!!!!」
刹那、ギルドの入り口の扉が勢い良く開かれ、先程パーティ間で話に上がっていたゆんゆん本人がやって来た。しかし何処か様子がおかしい。息を切らし、焦るような素振りでギルドにいるであろう錬太郎を探している。
そしてギルドにいる何人かの冒険者やパーティメンバー達と共にゆんゆんに注目している彼を見つけると、一目散に錬太郎の下へと駆け寄り、その両手を握った。
「へ⁉︎ちょっとゆんゆん⁉︎どうしたのいきなり⁉︎」
「錬太郎さん!!私、私、
錬太郎さんとの赤ちゃんが欲しい!!」
ゆんゆんの口から放たれたのは、超が付くほどぶっ飛んだという表現が似合う告白。その衝撃っぷりに、錬太郎は勿論、ギルドにいる全員が肝を潰された。証拠として、先程までそれなりに大きな声で駄弁っていた冒険者達も黙りこくってゆんゆん達の方へと視線を寄せていた。
「あ、あのぉ〜ゆんゆん?本当にどうしたんだ?急にそんなこと言い出して…」
「そうですよ!長年ぼっちを拗らせていたことがここに来て大爆発したのですか⁉︎言っておきますが、子を身籠らせることを口実に相手を縛ることは友達とは言いませんからね!!」
「違うのめぐみん…わ、私が錬太郎さんと結婚しないと…紅魔の里が…ふにふらさんやとどんこさんが…皆が…」
頭の熱りが冷めて落ち着きを取り戻して尚、告白の意味が分からずに詳細を尋ねるカズマとめぐみんに、ゆんゆんは紅いその瞳からから大粒の涙を溢す。話すこともままならず、嗚咽を漏らすその様子から、それ程までに深刻な問題なのだろう。
因みにゆんゆんに手を握られたままの錬太郎はというと…
「……………」
ゆんゆんの告白のインパクトが凄まじく、脳がキャパオーバーしてしまったが故に、立ったまま白目をむき、泡を吹いて気絶していた。
ゆんゆんの告白の真意を確認するべく、一同は屋敷へと戻り、ゆんゆんの言う原因とされる手紙を皆で読むことにした。その手紙はゆんゆんとめぐみんの故郷である紅魔の里から送られてきたもので、送り主はゆんゆんの父にして紅魔族の長、『ひろぽん』である。
——この手紙が届く頃にはきっと私はこの世にいないだろう
壮大な一文から始まり、早くも一同の間に不穏な空気が流れる。めぐみんもゆんゆんの気持ちを理解し始めたのか、いつになく額に冷や汗をかいていた。
読み進めていくと、魔王軍はアクシズ教徒と並ぶ侵攻の障壁となりうる紅魔族の殲滅乗り出すべく、幹部を派遣したのだという。里一番の占い師『そけっと』によると、その幹部によって紅魔族は滅び、ゆんゆんが紅魔族最後の生き残りになるのだという。
「ちょっと待ってください⁉︎なんでゆんゆんだけなんですか⁉︎ここに、ここにもう1人いますよ⁉︎」
『もしかしてだけどその占い師さんめぐみんのこと忘れてたんじゃ…』
「なんですとクロっち⁉︎よぉし乗り込みましょう!!例え里一番の美人と謳われる占い師のそけっとであろうと、この紅魔族随一の天才を忘れるとは!!許すまじ!!」
「落ち着けめぐみん!!お前が里を攻める側になってどうする?取り敢えず、続き読んでいくぞ」
めぐみんの怒りを鎮め、再度手紙の内容に目を通すカズマ。2枚目に入り、どうやらここに記載されていたことがゆんゆんの錬太郎へ婚姻を迫ることに繋がったらしい。
「『紅魔族最後の生き残りとなったゆんゆんは、皆の無念を背負いながらいつか魔王を打ち滅ぼすべく、駆け出しの街アクセルにて修行に励んだ。
そんなある日、クエストの最中に魔物に追い詰められてしまったゆんゆんは、とある1人の錬金術師に助けられる。百の眷属を携える心優しいその錬金術師こそ、ゆんゆんの伴侶となる相手だった』…と」
『百の眷属って、もしかしてケミーのこと?錬金術師の部分は確かに錬太郎に当てはまってるけど…』
「あと既に出会ってるはずなのにまるでこれから会うみたいに描写されてるのも何かおかしいわね…」
手紙に記された内容を何処か怪訝だと、クロっちとアクアは首を捻る。所々錬太郎に当てはまっている部分があり、逆に当てはまっていない部分もある内容には、カズマやめぐみん、ダクネスも不信感を覚えていた。とはいえ全部読まなければ先へ進めないため、手紙の最後の一文へと移った。
「『やがて2人の間に子供が生まれ、その子供は少年と呼ばれる年齢にまで成長し、旅に出ることとなる。
だが、少年は知らない。彼は後に暁の錬金術師となり、紅魔族の仇である魔王を倒し、絶望に染まった世界に夜明けを齎す存在になるということに。』だってさ」
『暁の錬金術師…まさかソラと同じ力に辿り着くってこと?』
「何だか…突拍子すぎるような気がするのだが…」
「ダクネスの言う通りね。でもその予言が本当なら中々に迷惑なんですけど?私パパッと魔王倒してもらってさっさと天界に帰りたいんだけど。ねぇ、2人の子供が大きくなるまで待てって言うの?せめて3年、3年くらいでなんとかならない?ならないのなら普通にその占いはなかったことにしちゃわない?」
「おい駄女神、お前倫理的に結構な問題発言してること自覚した方がいいぞ?まだか弱い3歳児に冒険者やらせるとか俺でも言わねぇぞ?」
「そんなことよりカズマ、レンタロウはあそこで何やってるのでしょう?」
めぐみんの指差す方へ、皆視線を移す。一同から少し離れた場所にて、錬太郎はホッパー1と共に自身の両隣に積み重なった大量の本を、一心不乱に一冊一冊読み漁っていた。
「お〜い、錬太郎。お前何読んでるんだ?」
「ど、どうしよう…子供の養育費のために効率の良い仕事はどれにすればいい?離乳食は?子供服は?おもちゃは?因みこの、オムツシリーズってのはどういう側面を重点的に見て選ぶべきなんだ…ホッパー1はどう思う?」
『ホッパ…』
錬太郎もゆんゆんに負けず劣らず壊れていた。ゆんゆんの赤ちゃん欲しい宣言を真に受けて、現に育児に関する知識を詰め込もうとしている。
「おぉいしっかりしろ!今子育てのノウハウは別に良いだろ!!」
「しょうがないでしょカズマ!!僕赤ちゃんの面倒見たことないの!!」
『2人とも喧嘩しないで。心配しなくても、もしもの時は僕が面倒見るよ。小さい頃の錬太郎のおしめ変えたこともあるし』
「全くあの男共は…それにクロっちは意外と家庭的ですね…ん?」
カズマと錬太郎の口論を横目に、めぐみんは改めて手紙に目を通す。そして何かに気付いたようで、手紙を手に取ると、ゆんゆんの方へと身を寄せた。
「ゆんゆん、もしかしたらその予言嘘かもしれませんよ?」
「何言ってるのめぐみん!!そけっとさんの占いよ!!外れるわけ…」
「手紙の最後の方に『紅魔族英雄伝 第1章 あるえ著』と記してあるのですが…」
じっとりとした目で、めぐみんはゆんゆんに告げる。元々早とちりな面が目立つ部分のあるゆんゆんのことだから、きっと最後まで読み終えずに判断してしまったのだろう。
自分の心配はなんだったのか、そして勝手に錬太郎と変な感じに発展することを匂わせる小説を送りつけたあるえに対して行き場のない気持ちが芽生えたゆんゆんは、羞恥と怒りのままに顔を真っ赤にしながら涙目で手紙を破り捨てた。
「ァァァァァァァァァァァァ!!!!あるえの馬鹿ァァァァァァァァ!!!!」
「なぁんだ、あるえの小説か…確かに文体まんまだ。それにしてもまた文章力上がってるし…ね、ホッパー1」
『ホッパ!』
予言の内容が嘘だと明らかになると、錬太郎はコロっといつもの様子に戻り、錬金術で復元したあるえの手紙の内容を読んで笑った。
「レンタロウ、あるえのこと知っているのですか?」
「知ってるよ。作家志望の紅魔族の女の子でしょ?まだカズマ達と出会う前に紅魔の里にケミー探しで立ち寄って、その時偶然あるえと知り合って仲良くなってさ、アルケミアの歴史とか話したりしたなぁ。それから定期的にあるえから送られてきた小説を読んだり感想を送ったりしてね。最近音沙汰無いと思っていたら紅魔族英雄伝書いてたからだったのか…」
「ハァ⁉︎お前女子と文通してんの?」
「何で教えてくれなかったのですか⁉︎」
ここに来て錬太郎があるえと面識のあったということが発覚。その新事実に、カズマとめぐみんは揃って錬太郎へ詰め寄った。
「えぇ?だって聞かれなかったんだもん…」
「聞かれなかったから教えないは言い訳にならねぇぞ錬太郎!!その言い分、契約内容の詳細を告げずに女の子を魔法少女に変えていった白い極悪宇宙生命体と変わんないんだからな!!」
「は、はぁ…なんか、ごめんね…」
女の子と文通という夢のようなイベントを経験していた錬太郎に嫉妬心を募らせ、詰め寄るカズマの圧が増していく。一方で錬太郎は、何故カズマがそこまで怒っているのかが分からず、ただただ頭を下げるしかなかった。
「しかし、最初の族長の手紙は本当なのではないのか?紅魔族は魔法の熟練者達の集まりだ。魔王軍に攻められてもおかしくないのだと思うが…」
「多分本当ですよダクネス。我々紅魔族は昔から魔王軍に目の敵にされていましたからね」
「なら、どうして冷静でいられるのだ?お前の家族に危機が迫っているのだぞ⁉︎」
故郷の一大事だというのに、冷静な様子を見せるめぐみんに、焦りを孕んだ声で訴えるダクネス。めぐみんは気怠そうにしながらも、紅い瞳でダクネスをじっと見ながら返答した。
「私の故郷の者達は魔王軍も恐れる紅魔族ですよ?皆がそう簡単にくたばる訳がないじゃないですか。それに私やゆんゆんがいるんです。心配せずとも紅魔族の血は後世にも残りますよ。だからもし何かあってもこのように考えればいいのです。里の者達はいつまでも私達の心の中に…」
「めぐみんの薄情者ぉぉぉぉ!!!!」
めぐみんの言い分に耐えられなくなったゆんゆんは、羞恥に悶えていた自分自身を何とか律し、めぐみんの胸ぐらを掴んでグワングワンと揺らした。
その後、カズマと錬太郎が仲裁に入り、明日にでも紅魔の里に向かおうとのことで話が纏まり、その場は収まった。
「ふむ、成程。このポーションに魔導カメラ。確かに有用性は高いと見た」
「ありがとうございますバニルさん。売れ行き次第では生産数を増やしておきますね」
『ホパパ〜』
紅魔の里に行くと話が纏まった後、錬太郎はホッパー1とウィズ魔道具店に向かい、バニルと新商品の話し合いをしていた。カズマが鍛治スキルを用いて生産した商品の方はバニルの方で量産が完了し、後少しで販売開始になるとのこと。バニルからそのことをカズマにも伝えておくようにと、錬太郎は言われた。
「ところで錬金小僧。ここに来たのはそれだけではないのだろう?」
「あぁ、ウィズさんはいらっしゃいますか?明日、パーティメンバーで紅魔の里に向かう予定でして。クロっちは行先での戦闘を見据えて魔力温存、ワープテラはついさっきに他のケミー捜索に出かけたのでウィズさんにテレポートをお願いしたくて…」
「ポンコツ店主なら相変わらず売れる見込みのない商品を持ってきたので殺人光線を喰らわせて今は寝込んでおる。それにしても紅魔の里か…」
錬太郎の話を聞き、バニルは顎に手を当て、俯いて考え込む。見通す力を持ち、悩むということが然程無い彼には珍しい。数刻程の沈黙の後、バニルは錬太郎へ顔を向けると、どこか神妙な雰囲気で話始める。
「錬金小僧。見通す悪魔からの忠告だ。汝は紅魔の里に向かうべきではない」
「へ…⁉︎どうして…⁉︎」
バニルの発言の意図が分からず、錬太郎は聞き返す。
「そのままの意味だ。紅魔の里へは向かうな。相変わらずしっかりとは見えぬが、汝は紅魔の里での経験を後悔することになると出ておる。そしてその経験が、後に取り返しのつかないことへ繋がると…な」
悪感情を堪能する時とは打って変わってバニルの声は真剣そのものだ。彼がそこまで釘を押すのは、それ程までに錬太郎の今後を左右しかねない事態が発生するということなのだろう。
「バニルさん、ありがとうございます。でも、僕は危機に陥っている場所があることや人がいることを知るとじっとしてなんていられません。自分の出来ることを精一杯やり通したいんです。だから、その忠告は聞き入れることは出来ません」
「……我輩は言ったからな、やめておけと」
その会話を最後に、錬太郎はぺこりと頭を下げると、ホッパー1と共に魔道具店を後にした。
「やれやれ、鬼畜小僧の徒党の一員だけあって錬金小僧も中々面倒であるな…」
閑散とした店内にて、いつになく憂える様子でバニルは溜息を零して店の掃除を始めるのだった。
後書きにあんまり書くことがないので、第5章の副題のとある単語について補足しておきます。
来ませい→来ますの命令形です
以上。