この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

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長くなりそうなのでエピローグは分割します。

容姿の説明難しい…


エピローグ①:錬太郎の目覚めとめぐみんの決断

 夕刻に差し掛かる時間帯。雄大な緑の草原が広がる地にて、作業着を着た屈強な大工達が何人かで大量の丸太を運んでいる。その様子から今現在街開発が行われているようだが、完成にはまだまだ時間がかかりそうである。

 幾分か作業がひと段落したようで、木陰で涼み、水筒の水を飲んで休憩を取る少女が2人。

 1人は長い茶髪をポニーテールで束ねている黒目で、白のブラウスの上に空色のケープを羽織り、黒のスカートを履いている。もう1人は、めぐみんやゆんゆん達紅魔族と同じく赤い瞳で、ウルフカットで切り揃えた黒髪の容姿、衣類は赤のワンピースらしきものを纏っていた。

 ごくごくと、熱を帯びた少女達の身体を癒すかのように、冷たい水が喉を通じて全身を巡る。一口飲み終えてほっと一息をついて口元を拭うと、ポニーテールの少女が、ウルフカットの少女の方を向いて口火を切った。

 

「みゅんなむ、わざわざありがとうね。破壊神の件でソラや私達に力を借してくれただけじゃなくて、街の開発にまで協力してもらっちゃって…」

 

「別に気にしてないよリエ。紅魔の里を出て右も左も分からなかった私を、貴方とジュン、そしてソラは優しく迎え入れてパーティを組んでくれた、これはその恩返しよ。

 

それに、『錬金術師達と共に新たな街を開拓した者』ってこれから名乗れるのよ?カッコいいじゃない?」

 

「ふふっ、やっぱり紅魔族の価値観もあるのね…」

 

 リエが笑みを溢し、釣られてみゅんなむも口角を上げる。伝染した微笑は笑い声へと変わり、2人の間に朗らかな空間が生まれる。

 ひとしきり笑い終わると、今度はみゅんなむの方から切り出した。

 

「でもね、一番は貴方達が開発しようとしているこの街の未来を自分自身の目で見てみたいの。錬金術を通じて、人と人、そして貴方達の生み出したケミーが手を取り合う未来を…」

 

 そう言ってみゅんなむは、西に沈む夕陽を眺めて黄昏る。リエも同調するかのようにみゅんなむと同じ方角を向いて優しく目を細めた。

 やがて2人の見惚れていた太陽は、地平線の彼方に吸い込まれるように消える。同時に夢虚を彷徨っていた1人の少年の意識は完全に覚醒した。

 

 

 

 

「…今のは…夢…?」

 

 開口一番に漏れた言葉。全身を包帯で巻かれ、ベッドに横たわる錬金術師の百瀬錬太郎の瞳の中には、窓から差し込んだ朝日が照らすゆんゆんの家の天井が映った。

 先回のシルビアとの対決。重症を負いつつも、応急処置を用いてなんとか最後まで戦い抜いたが、連続多重錬成による変身の負担と骨折は、彼の想像以上に重く響いており、意識戻った今も尚、平衡感覚が安定しない。

 頭を抑えながら、何とか錬太郎はベッドから身体を起こす。次に網膜が映し出したのは、驚きで目を見開き、口元を両手で塞いでいるゆんゆんと、何故か彼女の頭の上に乗っかっているホッパー1だった。

 

「あ…えっと、ゆんゆん、ホッパー1…おはよう?」

 

 錬太郎側も突然のことでどのように話せばいいのか分からず、ぼんやりとした脳内から絞り出されたのはなんとも間抜けな挨拶だけ。しかしそれは、ゆんゆんとホッパー1の心を安心させるには十分だった。

 錬太郎が声を発した瞬間にゆんゆんは駆け出し、錬太郎のいるベッドに顔を埋めると、静かに嗚咽を漏らしながら言葉を綴った。

 

「良かった…3日間、目を…覚まさなくて…アクアさんの回復でも意識…戻らなくて…」

 

 ゆんゆんの布団を掴む手に力が入る。それ程までに自分のことを案じてくれたのだろうと、錬太郎は嬉しくなると同時に申し訳なくも感じた。

 錬太郎は、感覚がまだはっきりとしない両腕を何とか動かして右をゆんゆんの頭に、左をホッパー1の頭の上に乗せて、想いを込めて優しく撫でた。

 

「ありがとう。ごめんね。ゆんゆん、ホッパー1…」

 

『ホッパー…』

 

 

 

「ねえちゃん、そのプリン食べていい?」

 

「駄目ですよこめっこ。この3つのプリンはレンタロウが目覚めた時にゆんゆんとホッパー1の3人で食べてもらうんです。今日こそは目覚めて貰わないと…私のライバルを名乗っておいていつまでも陰鬱な様子じゃ調子狂うんですよ」

 

「ねえちゃんケチ、ツンデレ」

 

「こめっこ⁉︎ど、どこでそんな単語を…⁉︎って、着きましたねレンタロウの部屋に。ゆんゆん、プリン持ってきたのでレンタロウの目が覚めたら…」

 

 差し入れを持ってめぐみんとこめっこの姉妹は、錬太郎の部屋へと訪れた。しかしタイミングが良くなかった。現在ゆんゆんとホッパー1は、目を覚ました錬太郎に頭を撫でられており、どう考えても水を差すのはお門違いの状況。その光景を目にしためぐみんも思わず固まってしまう。

 そして数秒の思考停止の後、めぐみんは常識なぞ知ったことかと言わんばかりに、ゆんゆんの家一帯に響き渡る大声で叫び散らかした。

 

「意識戻ってるじゃないですかぁぁぁぁぁ⁉︎⁉︎何で知らせないんですかぁぁぁぁぁ⁉︎⁉︎」

 

「め、めぐみん⁉︎貴方どうして…」

 

「どうしたもこうしたもありませんよゆんゆん!!何でレンタロウが目を覚ましたのにぼーっとしているんですか⁉︎貴方以外にカズマもアクアもダクネスも皆心配してたんですよ⁉︎何1人で感傷に浸っているんですか⁉︎こういうのは皆で分かち合うのが定番の展開でしょう?」

 

「あわわ…えっとぉ…」

 

 今までに見たこともない鬼のような形相をして迫るめぐみんに、ゆんゆんは生来のコミュ障故何も言い返すことも出来ずアワアワとしてしまう。

 一方こめっこは、紅魔の里で見慣れためぐみんとゆんゆんのやり取りを他所に、1人部屋から出ると、腹の底から大きな声を轟かせた。

 

「みんなぁぁぁぁぁ!!!!レンタロウお兄ちゃん目を覚ましたよぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

 

 

 こめっこの知らせがリビングに待つカズマ達の耳にすぐに届くと、錬太郎の部屋には多くの人で溢れ返った。カズマ達をはじめとするパーティメンバー達は勿論のこと、ゆんゆんの両親やウィズやバニル、あるえやふにふら、どどんこの3人にクロっち達ケミーの仲間も皆錬太郎の目覚めを喜んでいた。

 その後、錬太郎はその日のうちに歩けるようになるまで回復し、現在取り行われている紅魔の里の復旧作業に手を貸そうとしたが、クロっちやゆんゆんに断固反対され、渋々身を退くことにした。それでもまだ信用されていないようで、監視役としてクロっちとダクネスが近くにいた。

 

「ちぇ、もう僕は大丈夫なのに…」

 

『駄目と言ったら駄目!!錬太郎は自分の身体がどれだけ悲鳴を上げていたのか本当に理解していないんだから!!そうやって無茶をしたから3日間も寝込んだんでしょ?』

 

「うっ…返す言葉もございません…」

 

 頬を膨らませ拗ねる素振りを見せた錬太郎だが、クロっちの正論の荒波を前に完膚なきまでに萎縮してしまう。クロっちとしては自分の身体が動くのなら出来るであろうことは率先してやろうとする精神は感心するが、それ故に自身の体調を疎かにしてしまう点はどうにかして欲しいものなのだ。

 

『それに、僕達ケミーも協力しているから作業は思いの外早く終わりそうだし…』

 

 そう言ってクロっちの指差す方へ錬太郎が視線を向けると、確かに復興の為の労務に手を貸すケミー達の姿があった。

 アッパレブシドーとカマンティスが材木を斬り分け、ジャングルジャンをはじめとするプラントケミー達が蔦で材木を一纏めにし、その材木をゴリラセンセイやレスラーG、レンキングロボやギガバハムといった力自慢のケミー達が運んでいた。

 他にも機動力に優れたビークルケミーの面々達が指定された場所への資源の運搬をこなし、スマホーンやテレヴィ等のアーティファクトケミー達は情報伝達をして、作業の迅速化を図っていた。

 

「皆凄いなぁ。あっという間に紅魔の里の一員のように溶け込んでる」

 

『ウィ〜ヒッヒッ、そりゃ僕達は何年も生きて場数を経験しているからね。そういえば珍しくアクアも作業に参加してたよ。面倒臭がりそうなのに、意外だったなぁ』

 

「…そっか」

 

 クロっちの話を聞いて、錬太郎の頬が僅かに緩む。ドンポセイドンやマーキュリンからひっそりと聞いたが、今回の件にはロードが少なからず絡んでいたため、その原因たる自分が復旧に協力しなくてどうする、女神たるもの、これくらい余裕よと張り切っていたそうだ。

 

「後ウィズとバニルも錬太郎の偽物との戦いの後でかなり疲弊していたが、カズマのドレインタッチでクロっちの魔力を流し渡したら完全に回復していた。流石魔王軍幹部だな」

 

「本当にそうだよねダクネス………そういえばカズマとめぐみんは?」

 

『ウィ?確かにここら辺で見てないなぁ…』

 

「めぐみんのことだから、日課の爆裂散歩にカズマを誘ったのでは無いか?」

 

 錬太郎とダクネス、クロっちは首を傾げて辺りを見渡す。アクアやゆんゆん達はいるのに、先述の2人の姿は何処にも見当たらない。

 同刻、その2人は錬太郎とゆんゆんが本音を語り合った紅魔の里の曰くつきの場所、『魔神の丘』へやって来ていた。

 

「どうしたんだ?いきなりこんな場所に呼んでよ…」

 

「……」

 

 めぐみんの意図が分からず、カズマは招いた本人に尋ねるが、めぐみんは喋らない。厳密には言葉を喋ろうとしては飲み込んでを繰り返しているのだが、カズマがそれに気付くことはなく、そんな葛藤を7回程して漸くめぐみんは小さな喉奥を揺らした。

 

「すみません、急に呼んでしまって……ちょっとした相談事を、カズマになら大丈夫かなと思いまして…」

 

「ん?相談って何だ?」

 

「カズマは、器用万能な魔法使いは欲しいですか?」

 

 

 

 めぐみんの口から零れた予想だにしない言葉に、カズマは一瞬時が止まったかのような錯覚に陥った。そして同時に嫌な予感を肌で察知し、背中を一筋の冷や汗がなぞるように伝う。

 めぐみんは悲しそうに無理矢理笑顔を作ると、胸元から1枚のカードを取り出す。それは紛れもなくめぐみん自身の冒険者カードで、そこにはめぐみんのステータスや、今までめぐみんが冒険の中で屠って来たモンスター達の名前が細やかに記されていた。

 

「えみりん、凄かったですよね…口は悪かったですが、たった1人であんなに沢山のスキルを操って、魔王幹部相手に一歩も引かなくて…私もあの子みたいに他に魔法を使えてたのなら、もっと皆の援護も出来て、きっとレンタロウも前の戦いであそこまで無理をしなかったと思うんですよ…」

 

「おいお前…まさか…」

 

「ええ…」

 

 カズマの推測を肯定し、潤んだ赤い両目を揺らすめぐみん。そして一度深呼吸を挟むと、自身の決意を口から綴った。

 

「私は爆裂魔法を引退します。これからは紅魔族随一の上級魔法の使い手を名乗ることにします。元々、潜在的な魔力の量と質が優れていた私が爆裂魔法だけに拘っていたのが可笑しかったのかもですね。爆裂魔法が使えても、肝心な時にパーティメンバーを救えなければ意味がないのですから…」

 

 もうやめろ、やめてくれ。それは本意では無いだろう、悲しみを笑顔で無理に隠すな。叶うことならいつものように愚痴同然に吐き出したいとカズマは強く思う。しかしめぐみんの言うことも理解出来るがために、言いたくても言えなかった。

 

「それでカズマ、酷いことをお願いするですが、いいでしょうか?」

 

「……お前の代わりに、俺が上級魔法取得のボタンを押して欲しいってか?」

 

「はい、自分じゃ何故か押そうとすると体が強張ってしまって…」

 

「……本当にそれでいいのか?」

 

「自分で決めたことですから、お願いします」

 

 めぐみんは押し付けるように冒険者カードをカズマに渡し、深々とトンガリ帽子を被って目元を隠した。その際に一筋の光の放物線がめぐみんの頬をなぞるのを、カズマは見逃さなかった。

 カズマは何も言わなかった。無言でめぐみんの冒険者カードを操作して、めぐみんへ返却した。

 

「さぁ、戻って復旧作業に協力するとしますか!!」

 

「…あのさぁめぐみん。最後に1発、お前の爆裂魔法を見せてくれよ」

 

 カズマからの提言に、めぐみんは驚いたように目を丸くする。この男は、折角吹っ切れたとうのにどうして傷口に塩胡椒を塗りたくるのか。しかしこれでも好いた男の頼みだ。仕方ないと感情を押し殺し、首を縦に振った。

 

「いいでしょう。これが私の最後の爆裂魔法です。唯一の目撃者なのですからカズマは後世まで誇っていいですからね?」

 

「ふふっ、なんだそれ」

 

 簡単な軽口を交え、いよいよケジメの時がやって来た。めぐみんが詠唱を開始し、呼応するように彼女の杖に高濃度の魔力が凝縮して渦を巻く。やがて巨大な魔法陣が展開され、めぐみんは爆裂魔法の照準を定めた。

 

「これで最後です、さようなら…『エクスプロージョン』!!!!」

 

 声高らかに放たれた爆裂魔法。それは一瞬にして丘に生い茂る草木を飲み込んで爆炎と化し、遂には太陽が西に傾きかけている夕凪の空に1本の火柱が立ち昇った。

 

「え…?」

 

 魔力が尽きて地面に横たわるめぐみんは、思わず間抜けな声を漏らした。これ程の威力を今までの自分で出すことは出来なかった。出来るとしても、他の上級魔法に費やすと決めたスキルポイントを威力に全て割り振った場合のみ。まさかと思い、めぐみんはカズマの方へ首を向けると、カズマはいつになく穏やかな顔立ちで火柱を見上げていた。

 

「おぉ…相変わらずすんげぇ威力だなぁ〜」

 

「カズマ…どうして…」

 

 信じられないと言いたげな様子でめぐみんはカズマに問いかけた。

 

「仮にお前が上級魔法を覚えたとしても、そんな心持ちじゃあ聡い錬太郎はすぐに気付くぞ?自分に原因があるって。そうすりゃ絶対、アイツは一生引き摺るだろうよ。

 

 

お前は馬鹿みたいに自分の信じた爆裂魔法を磨き続けりゃいいんだよ。そうじゃなきゃ俺も何か調子狂うというか…なんかその…」

 

 照れ臭そうにカズマはポリポリと掻きながらそっぽを向く。顔も少し、いや大分赤い。きっとこれは素直になれないカズマなりの優しさだったのだろう。

 きししっ、と笑い声を零すと、めぐみんは夕焼け空を輝く瞳で見上げながら、堂々とした声色で決意を叫んだ。

 

「我が名はめぐみん!!紅魔族随一の魔法の使い手にして、いつの日か爆裂魔法を極めんとする者!!」




めぐみんが改めて爆裂魔法を極めると誓うことシーンはかなり好きです。次回は錬太郎とゆんゆんメインのエピローグ②となります。
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