この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

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随分遅くなりまして申し訳ございません。勉強やら仕事やらで忙しくて執筆に時間を取れませんでした。これからまた執筆を再開していきますので宜しくお願いします。


墓場のリッチーと忍び寄る影

錬太郎とめぐみんがギルドに戻ると、カズマ達が出迎えてくれた。

カズマの服装もジャージ姿から身体を動かす際に妨げにならない程度の布面積の皮の防具を纏った如何にもこの世界に合った冒険者らしい服装になっており、中々似合ってると皆絶賛した。

その中でなぜかアクアが笑っていたのだが

 

「いや〜、カズマさんったら調子に乗ってこれよりも堅い鎧を頼んだんだけど、重すぎて動けなくなってしまって…プ〜クスクス!」

 

「おい、やめろ!そのことは言うな!」

 

「何よ!ホントことでしょ!」

 

アクアが暴露した衝撃(笑撃)な事実にカズマは顔を真っ赤にして怒声をあげる。そしていつものように喧嘩が始まる。この2人は定期的にお互いを弄りあって漫才しなければ落ち着かないのだろうか。

 

『そんなことより、今からゾンビメーカーの討伐に行くんだろう?喧嘩はその辺にしておきなよ』

 

クロっちの鶴の一声によってカズマとアクアの喧嘩は収まった。しかし意地っ張りなのか、ふん、とお互いそっぽを向いてしまった。

 

「ゾンビメーカーの討伐?」

 

『あ、錬太郎とめぐみんはまだ聞いていなかったもんね。実はアクアのレベル上げを効率良く行えるクエストを探してたら偶然見つけてね…受けてみようって話になったんだ』

 

「アクアの職業ってアークプリーストでしょ?プリーストって、そんなにレベルが上がりにくいものなの?」

 

「その通りだ。プリーストは強力な攻撃魔法を使うことができないからな。基本的に前線に出てモンスターを狩るなんてことはしない。しかしアンデッドとなれば話は別だ。奴らは回復魔法に滅法弱いからな」

 

クロっちとダクネスの説明を聞いて、錬太郎は成程と顎に手を当てて頷いた。

 

確かに回復魔法を専門とするアクアが率先してモンスターを倒して経験値を得られるクエストであることに間違いはない。

 

そして経験値を集めてレベルを上げ、ステータスが上昇すれば万々歳だ。

元々高水準のステータスであるアクアが後方支援においてより安定して頼もしくなることは想像するに容易い…はずだ。

無論クエストを受けることに錬太郎もめぐみんも異論はなかった。

ただ、錬太郎は一つ気がかりなことがあった。

 

「ダクネスは鎧の修理がまだらしいけど大丈夫なの?」

 

そう。ダクネスの鎧は修繕が完了していないのだ。あの体当たりが強力なキャベツの軍勢に自ら進んで飛び込んだのだから、鎧の損傷はかなり激しかった。

しかし錬太郎の懸念に対して、ダクネスは威厳ある様子で言ってのけた。

 

「心配することはない。これでも防御スキルに特化している身だ。鎧無しでもある程度の攻撃にはそれなりに耐えることができる。それに、鎧無しで殴られた方が気持ちいいからな…」

 

「今気持ちいいって言ったよね?」

 

「…言ってない」

 

「言ったよ「言ってない!」…」

 

錬太郎の言及を食い気味に否定するダクネス。先程の頼もしさは何処に行ったのやら…最後の最後で彼女が自身の性癖を添えてしまったことでかえって不安になってくる。

 

「ねえカズマ、うちのクルセイダー本当に大丈夫だよね⁉︎」

 

「諦めろ錬太郎、あれはもう手遅れだ。俺たちにはどうしようもない…」

 

「…フヒッ」

 

不安を抹消するためカズマに尋ねる錬太郎だったが、カズマはもう諦めの境地にいた。恐らく何年もかけて形成されたであろう彼女の性癖を捻じ曲げるなど、無謀に等しい。

カズマの返答に錬太郎はがっくりと肩を落とす。

そして、そんな自身に対する2人の反応すらも悦びに感じてしまうダクネスなのであった。

 

 

 

 

墓地近くの丘の上

錬太郎達はゾンビメーカーの討伐に向けてキャンプをしていた。

 

この墓場は共同墓地であり、葬式を行うお金のない人達が埋葬されている。埋葬方法は土葬らしく、それ故にゾンビが生まれるというのだ。

そしてゾンビメーカーとは、ゾンビを操る悪霊の一種であり、自身は質のいい肉体に乗り移り、手下代わりに数体のゾンビを操るという少々厄介な能力であるが、駆け出しの冒険者達でも討伐できる部類らしい。

 

そんな敵とこれから対峙するという錬太郎達はというと…

バーベキューをしていた。

まだ夜食も摂っておらず、日が完全に沈むまではまだ時間があったため、話し合いの結果、食事をしながら待機ということになった。

 

 

「ちょっとカズマ、この肉は私が目をつけてたヤツよ!こっちの野菜の方食べなさいよ!」

 

「キャベツ狩り以来どうも野菜は苦手なんだよ!」

 

「まったく、騒がしい2人ですね…」

 

「こちらの野菜も頂くとするか…」

 

「お肉美味しい…みんなでご飯…えへへ…」

 

『焼き加減がいいね〜、流石錬太郎!』

 

「賑やかだねぇ…」

 

カズマとアクアは案の定と言うべきか、お肉の取り合いで喧嘩になり、めぐみんはそんな2人を呆れた様子で一瞥し、ダクネスは野菜の方にも手を伸ばし、ゆんゆんは大層嬉しそうに焼肉の味を噛み締め、クロっちは焼き加減を絶賛する。

そんな様子を眺めながら、錬太郎は肉や野菜を焼いていく。

 

(こんな感じでワイワイとバーベキューやるなんていつぶりだろうな…)

 

錬太郎は今の仲間達を見ながら1人物想いにふける。

アルケミアで家族や先輩、同期達と共に食事を楽しんだ在りし日が脳内を駆け巡る。

 

それと同時に、あの(・・)日のことも。

 

グリルの方へと目を移すと、パチパチと炎が激っていた。その炎を見て、眉間に皺を寄せる。

 

あの日の、思い出したくもない忌々しい光景が網膜へと映し出される。

獄炎に侵食される故郷、返り血により赤く染まった草木や花々、幼き自分に突きつけられた絶望、大量の涙を溢れ出しながら夜空に轟いた己の慟哭。

逃れたくても逃れられない自身の呪縛に錬太郎は無意識のうちに唇を噛み締めた。

 

「あの…錬太郎さん?」

 

心配そうに尋ねてくれたゆんゆんの声でやっと我に返る。皆の方へと視線を向けると、誰も彼も錬太郎の顔色を伺うように見ていた。

 

「大丈夫ですか?ゆんゆんが声をかけるまでずっと怖い顔をしていましたけど…」

 

「へっ⁉︎いや…大丈夫だよめぐみん!ちょっと考え事してただけ…」

 

「そうですか…ならいいのですが…」

 

錬太郎はなんとか誤魔化せたことに安堵し、心の中で胸を撫で下ろした。

 

「さて、僕もお肉を…あ」

 

錬太郎がグリルに目をやると、もうお肉は一欠片も残っていなかった。焼くのに専念していたのと、先程のこともあって争奪戦に参戦するどころか、既に終了してしまっていた。

 

「…野菜食べよ」

 

「わりぃ錬太郎、俺の肉やるよ」

 

「わ、私のもどうぞ」

 

『ぼくのもどーぞ!』

 

錬太郎はしょんぼりとしながら野菜を皿に取る。流石に可哀想に思えたのか、カズマとゆんゆん、そしてクロっちが錬太郎に肉を譲ってくれた。

 

「3人とも、ありがとう…ん?」

 

3人から肉を譲り受けた後、後ろから誰かが服を引っ張っていた。

錬太郎が振り向くとめぐみんがいた。そして皿を前に出して

 

「レンタロウ、私のお肉もあげます。今日、相談に乗ってくれたお礼です」

 

「え、いいの⁉︎ありがとう」

 

4人から貰った肉を皿へと移したあと、錬太郎は先程までの嫌な思い出を払拭するために、肉を胃の中へどんどん流し込んだのだった。

 

 

 

 

そんなこんなで一同は夜食を終えた。錬太郎はお腹をさすりながら辺りを見回すと、何やらカズマがマグカップにコーヒーの粉を入れて、初級魔法の「クリエイト・ウォーター」で水を注ぎ、同じく初級魔法の「ティンダー」を使ってカップを温めて、コーヒーを作っていた。

ちなみにこれらの初級魔法は仲良くなった魔法使いに教えてもらったらしい。

 

「はい、錬太郎の分も作っといたぜ」

 

「ありがとう…うん、美味しい」

 

「私にもお水お願いします。それにしても、初級魔法はほとんど使われていないのに、カズマを見ているとなんだか便利そうに見えますね…」

 

魔法の専門職として少々複雑に思ったのか、めぐみんはどこか不満気な顔でカズマから貰った水をごくごくと飲み干した。

 

「いや、元々そういった使い方するもんじゃないのか、初級魔法って。そういえば、このクリエイト·アースって何に使う魔法なんだ?」

 

カズマは手の平に粉状の土を生成して錬太郎達に見せた。どうやらこの魔法の用途は彼もよくわかっていないらしい。

 

「もしかして、モンスターが迫ったときにばら撒いて、視界を眩ませるのに使うとか?」

 

「ああ…確かにそういうのに使えそうだな」

 

「えっと…錬太郎さんカズマさん、クリエイト・アースで生成した土を畑に撒くと良い作物ができます。」

 

「ん?それだけ?」

 

「ええ、ゆんゆんの言うとおりですよ」

 

魔法専門の2人の説明を聞いて、カズマはがっくりと肩を落とす。その様子を見ていたアクアはぷっと吹き出し

 

「え〜?カズマさん畑作るんですか〜?農家になるんですか〜?土も出せるし、クリエイト・ウォーターで水も撒けるし、案外天職じゃない!プ〜クスクス!」

 

流石にアクアの態度が気に障ったようで、カズマは土の乗った手をアクアの前に出して初級魔法の『ウインドブレス』を使用した。

途端、風が吹き出し、カズマの手から放たれた土がアクアの顔面を襲った。

 

「ぎゃああああ!目が…目がぁぁぁあ!」

 

どこぞの大佐の如く目を抑えて喚き散らかす女神。その様子をいい気味だと言いたげにカズマは見ていた。

 

「成程、ちょいと工夫はいるが、錬太郎の言うとおり攻撃にも転用できそうだな」

 

「違います!普通そんな使い方しませんよ!というか、なんで初級魔法を魔法使い以上に使いこなしてるんですか!」

 

 

 

 

月明かりの照らす暗闇で、肌寒い風がそっと通り過ぎる。いよいよ深夜を過ぎる時間帯だ。

 

「冷えてきたわね…。なんだかゾンビメーカーじゃなくて大物のアンデットが出そうな予感がするんですけど。」

 

アクアがそんなことをぽつりと呟いた。

 

「おい、やめろ。それがフラグになったらどうするんだよ!いいか、俺たちはゾンビメーカーを倒して、取り巻きのゾンビ共も土に還して、とっとと馬小屋に帰って寝る!それ以外のイレギュラーが起きたらすぐに逃げる。いいな?」

 

「イレギュラーが起こったその時は、僕が時間を稼ぐよ。そして可能なら撃退する。」

 

「わーお、錬太郎頼もしいなぁ」

 

「僕は『仮面ライダー』ガッチャードだからねぇ…」

 

錬太郎はなぜか仮面ライダーのところだけ強調してカズマに言う。そしてわかりやすく顔を綻ばせてニマニマとしていた。

 

「(あれ?コイツ仮面ライダーって言いたかっただけなんじゃ…)」

 

錬太郎は、この前の仮面ライダーの称号をカズマが思っていた以上にお気に召しているらしい。

 

「!敵感知が反応した!」

 

敵感知が使えるカズマを一番前にして墓場を歩いていた一同だが、反応があったため、一旦歩みを止めた。

 

「ん?予想より多いな… これほんとにゾンビメーカーか?2、3体くらいしか操らないって聞いてたんだが」

 

『確かにこれは妙だね〜、ちょっと観察してみようよ』

 

クロっちが提案したちょうどその時、墓場の中央から、怪奇的な光が放たれた。

光の発生源と思われる場所には、大きな魔法陣と、その隣に人影が確認できた。

 

「あれは、ゾンビメーカーではないような気がします。」

 

「…あの人影、見覚えがあるような…」

 

めぐみんが自信がないように告げる。そしてゆんゆんはどこか心当たりがあるようだ。

 そうこうしている間に、人影の方には次々とゾンビと思われる者達が集まってきていた。

 

「突っ込むか?この時間帯に墓場にいるのはどう考えてもおかしい。それにこちらには、アンデッドに対抗できるアクアもいるし」

 

ダクネスが大剣を手にソワソワとした様子でカズマと錬太郎に尋ねる。

 

「お前はちょっと落ち着け!」

 

「でも、この時間に現れるのは怪しいし、めぐみんの言ったことも気になるな…

カズマ!取り敢えず「あーーーーーー!」…ふぇ?」

 

錬太郎が続けようとした言葉はアクアの大きな声により遮られ、突然の叫び声に皆驚き、錬太郎は間抜けな声を漏らしてしまう。

そして一驚している皆を他所に、アクアは人影の方へと走っていってしまった。

 

「ちょっと待てよ!クソッ、あの駄女神!」

 

「何で勝手に動くかなぁ…他の皆はここで待機で!」

 

自ら厄介事になるかもしれない事態を引き起こすアクアに呆れつつも、カズマと錬太郎は後を追う。

そして向かった先、アクアは魔法陣の近くの人影を指差していた。

 

「不届き者のリッチーめ!よくノコノコと現れたものね!このアクア様が成敗してやるわ!」

 

 

 

 

リッチー。それはアンデッドモンスターの最高峰の存在。

魔法を極めた大魔法使いが、魔道の奥義で人の身体を捨て去ったアンデッドの王、別称『ノーライフキング』。

元来のアンデッドと異なり、自らの意思で神の定めた自然の掟に反し、アンデッドとなった、神の敵対者でもある。

その超大物モンスターが現在…

 

「やめてくださーい!貴方は誰なんですか⁉︎いきなり現れてどうして私の魔法陣を消そうとするんですか⁉︎やめて、ホントにやめてください!」

 

「うるさいわね、アンデッド!どうせこの魔法陣でよからぬ事を企んでるんでしょ!こんなもの、こんなもの!」

 

泣きながらアクアの腰にしがみつき、魔法陣の破壊を止めるよう懇願していた。

リッチーの取り巻きとされるアンデッド達はその様子をただただぼーっと眺めている。

 

「これは未だに成仏出来ない迷える方々を天に還してあげるための魔法陣なんです!ほら、魂が空高く昇ってるじゃないですか!」

 

「リッチーの癖に生意気よ!アンデッド如きがプリーストの紛いの善行を行うなんて言語道断だわ!この共同墓地諸共、私に浄化されなさい!」

 

「ひぇ、ちょっとまっ…」

 

「『ターンアンデッド』!」

 

リッチーの言うことには耳を傾けずに、アクアは浄化魔法を放つ。刹那、墓場全体がアクアを中心に光に包まれた。光に触れたゾンビや人魂は、存在を掻き消すように消滅していった。さらに光の力はリッチーにも及び…

 

「ほぇぇぇ…身体が消えちゃう…成仏しちゃう…」

 

「ははははははは!愚かなアンデッドよ、私の力に平伏しなさい!」

 

浄化魔法によって消滅しかけるリッチー。そんな彼女を見て、アクアは高笑いをあげる。これではどちらが悪なのかわからない。

 

「おい駄女神、その辺にしとけ!」

 

駆けつけたカズマが拳骨をくらわせて、暴走気味だったアクアを止める。

 

「〜〜ッ!痛いじゃないのカズマ!何してくれてんのよ!」

 

拳骨をくらって集中が途切れたのか、浄化の光が止まる。アクアは頭を押さえながら目尻に涙を浮かべてカズマを睨んだ。

光が消えたのを合図に隠れていた面々も姿を現す。

そしてカズマと同じくやってきた錬太郎は、弱り果てたリッチーの元へと駆け寄っていた。

 

「大丈夫ですか?リッチー…でいいのでしょうか?」

 

「あ、はい。助けて頂きありがとうございます。えっと、おっしゃる通り、私はリッチーのウィズと申します。ノーライフキングなんてやってます。」

 

ウィズと名乗るリッチーは、フラフラとしながらも立ち上がり、丁寧に返す。被っているフードをあげると、その素顔が露わになった。

20歳ほどの女性だろうか。白い肌をした整った顔立ちで、ウェーブのかかった茶色のロングヘアーで片目が隠れている。そして喪服のような、修道服のような暗めの衣装でもわかる彼女の発育の良さには目を奪われてしまうだろう。案の定カズマは鼻の下を伸ばして、彼女を凝視していた。

 

「やっぱり!あのお店の店主さんじゃないですか!」

 

ゆんゆんはウィズの顔を見るなり驚いた。それはウィズの方も同じようで

 

「あらっ、ゆんゆんさん。もしかして貴方のお仲間さん達ですか?」

 

「え、あ、はい!私のな、仲間達です!」

 

ゆんゆんはウィズの問いに挙動不審になりながら答える。残念なことに、まだまだぼっち時代のコミュ障の弊害は直ってはいないようだ。

 

「それで、リッチーのウィズさんがどうしてこんなことをやっているのですか?魂を天に還すと言っていましたが…」

 

「ちょっと錬太郎!何普通にリッチーなんかと話してるのよ!そいつは腐った蜜柑のような存在なのよ!さっさと浄化させなさい!」

 

アクアは半ば脅迫紛いなことを言い出し、錬太郎の側にいるウィズを睨む。ウィズはそんなアクアが恐ろしいのか、錬太郎の背中に隠れて怯えたような、困ったような顔をしていた。

そしてそんな錬太郎が羨ましいのか、カズマは歯軋りしながら、嫉妬の籠った瞳で錬太郎を見ていた。

 

「その…私はアンデッドの王なので迷える魂達の声が聞こえるんですよ。そして、この共同墓地の魂の多くはお金が無いなどで碌な葬式すら受けられず、故に毎晩墓地を彷徨うしかありません。

それで私は定期的にここを訪れ、成仏したいと望んでいる魂達を送ってあげているのです」

 

ウィズは自身の良心からこの墓地に来ているようである。その心優しき話に錬太郎とカズマは心打たれた。

 

「ウィズさんの理由は分かりましたが、それなら街のプリースト達に任せるべきではないでしょうか?ここら辺に教会とかもありますし…」

 

錬太郎は話の中で感じた疑問を尋ねる。ウィズはアクアの方をチラチラと何度か見ると、気まずそうに答えた。

 

「えっと、その…この街のプリーストさん達はその…お金のない人達を後回しにしがちといいますか…」

 

「つまりこの街のプリーストはウチの駄女神の如く、目先の利益優先の拝金主義者がほとんどで、こういった共同墓地に足を踏み入れることなんざ滅多にないってことか?」

 

「何よカズマ!私そんな金の亡者じゃないわよ!あと駄女神は取り消して!」

 

カズマはウィズが伏せようとした内容をなんの躊躇いもなくアクアを例に添えてズバッと言い、その酷い言い様(ほぼ事実)にアクアはお決まりのように噛みつき、喧嘩が始まった。

 

「成程なぁ。そういえばゆんゆんはウィズさんのことを知ってたの?」

 

「あ、はい。あの店主さんの魔道具店は度々利用してますので…」

 

「はぁ⁉︎リッチーなんかが店をやってるですって!なめてんじゃないわよ!」

 

「ひぃぃぃぃ!」

 

錬太郎とゆんゆんの会話を聞いたアクアはカズマとの喧嘩を止めると、ウィズを見据えて大声をあげる。そんなアクアに怯えたウィズは再び錬太郎の背後に隠れて、彼の服を強く握りしめた。

 

「なぁ、そんなにリッチーって危険なのか?」

 

カズマが漏らした疑問にめぐみんは驚いたように目を見開いた。カズマからしたらアクアの浄化魔法で消滅しかけていたため、皆が恐れるほどの存在には感じなかったのだろう。

 

「カズマは知らないのですか?リッチーは魔法防御を持っていて、通常の攻撃の無効化、加えて触れるだけで様々な状態異常を引き起こし、相手の魔力や生命力を奪うのですよ!」

 

めぐみんの説明にカズマは思わず青ざめる。目の前にいる女性はそれほどまでに恐ろしい力を持った存在なのかと。

しかしながら今のウィズの姿は、誰がどう見ても主人の元で恐怖対象からの助けを求めている小動物のように思えてならなかった。

 

 

 

 

「みんな!あんなリッチー消したほうがいいでしょう?」

 

7人はウィズに対してどうしようかという話し合いをしている。アクアはどうしても浄化したいようだが、他のメンバーはそうでもないようだ。

 

「僕は反対かな…リッチーが危険なのはわかるけど、ウィズさん自身は迷える死者のために尽力してた訳だからさ…」

 

「俺も錬太郎と同じ意見だ」

 

「カズマも錬太郎も何言ってるのよ!相手はリッチーなのよ!アンデッドの王なのよ!」

 

錬太郎とカズマが否定意見を出して尚、納得がいかない様子のアクア。その話の輪にクロっちも参戦した。

 

『僕も錬太郎とカズマの意見に賛成するよ。信頼できる証人さんから話も聞いたしね』

 

クロっちが1枚のカードを取り出す。そこにはオカルトケミーのナンバー3である『セイゾンビ』がいた。

 

「あれ、クロっちいつの間に見つけたの?」

 

『遠くからウィズを観察してたときにちょっとね。この子、ずっとウィズのことを見てきたみたいだよ。ウィズは今まで自分の力を人々を傷つけるために使用したことはなかったみたいだしさ、見逃してあげてもいいんじゃないかな?』

 

クロっちの主張が終わると、セイゾンビの話を聞いた残りの3人も同じく反対意見を出した。多数決においてアクアの敗北は確定した。

 

「ぐぬぬぬぬ…」

 

「決まりだな。それにしてもケミー達は物分かりがいいんだな。絶対アクアより頭良いだろ!」

 

「何よカズマ!…なんで私ばっかり…うわぁぁぁん!」

 

カズマの知力比べ[ケミー達>アクア]がとどめとなり、アクアは地面に身を投げだし、手足をジタバタとさせながら駄々をこねはじめた。

最早女神としての威厳はない。思い通りにならないことに我儘を言う女の子のそれであった。

 

そんな中、錬太郎は1人だけ何処からか感じる殺気のようなものを感じていた。カズマの敵感知が反応していないのを察するに余程気配を消すのが上手いのか、将又普通のモンスターではないなにか(・・・)なのか…

刹那、自身らの方向に何かが迫ってくるのを感じ取る。錬太郎は自身の右人差し指にアルケミストリングを装着すると、錬金術の呪文を詠唱した。

 

「『下にあるものは上にあるもののごとく 上にあるものは下にあるもののごとく ただ一つたる 奇跡をなさん』」

 

迫り来ていたものは錬太郎の詠唱と共に空中で静止する。空中に止まっているのはクナイと手裏剣、モンスターにしては高い知性と手先の器用さである。となれば、この攻撃をしかけたのはおそらく

 

人間(・・)

 

「見つけたぞ…」

 

どこからともなく低い声が轟く。全員声のする方へと視線を移すと、そこには明らかに忍者を思わせる服装をした中年男性がいた。

そう、昼のマルガムの一件で現れた天魔悟だった。

 

「なんだあのおっさん!いきなり錬太郎に向かって手裏剣とクナイ飛ばして来るなんて!」

 

「我が宿敵よ…異界より来訪せし我が先祖から代々伝わりし秘伝忍術、天魔忍法の真髄、見せてやろう!」

 

忍者おじさんは錬太郎を冷たい視線で見据えて言い放つ。そして彼を取り囲むようにして黒い霧が現れた。

次の瞬間、忍者おじさんの姿は怪物へと変わる。

 

ボロボロの黒い包帯のようなものが忍装束のような形となって身体中に巻きついており、背中には刀を背負った異形の存在

ニンジャマルガムへと成り果てた。

 

「クソッ、どうしてこうもイレギュラーばかり起こるんだよ…」

 

「皆下がって。狙いは僕らしいから」

 

錬太郎は皆に下がるよう指示すると懐から『ガッチャードライバー』を取り出して、腰に装着する。そして「ホッパー1」と「スチームライナー」のカードを装填した。

 

『ホッパー1!』

 

『スチームライナー!』

 

「変身!」

 

『ガッチャーーンコ!スチームホッパー!』

 

猛々しい声と共に光が錬太郎を包み込んで、群青の空の如き装甲を纏った戦士、仮面ライダーガッチャード スチームホッパーが現れる。

 

「さぁ、行くぞ!」

 

ガッチャードは眼前のニンジャマルガムへと立ち向かっていく。

その戦いの様子を遠くから観察する影が一つ…

 

「さて、興味深い対決だ…この戦いによるエネルギーが私達をどのようなケミストリーへと誘うのか…精々楽しませてくれよ、ガッチャード…いや

 

 

 

 

 

同族殺しの錬金術師クン」




次回予告

「闇夜を照らすスマホタル/アイツの戦いと俺の戦い」
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