この素晴らしい世界にCHEMY×STORYを!   作:山田プロキオン

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いつも遅くなって申し訳ございません


母の懐古

「病院ではお静かに!!」

 

 舞の錬太郎の母であるという独白は、何もしらないカズマ達を大いに驚かせた。その際に漏らした声のあまりの大きさに、看護師の1人が鬼の形相で現れ注意喚起を促した。どうやら院内で1、2を争う程に怖い看護師だったらしく、カズマ達は正座をして頭を下げるしかなかった。

 暫くして漸く説教の時間から解放されたカズマ達は、改めて舞へ挨拶をし、詳細を伺うことにした。

 

「すみません、お待たせしてしまって。俺カズマといいます」

 

「アクアよ」

 

「めぐみんです…」

 

「ゆんゆんと申します」

 

 カズマを皮切りに、各々が自己紹介をしてアクア以外は頭を下げる。場所を考えてか、めぐみんとゆんゆんはいつもの仰々しい紅魔族特有の挨拶は行わず、カズマとアクアに合わせた簡潔なもので済ませた。

 

「それで、錬太郎の母親っていうのは……」

 

「ええ、本当よ。この世界に来てもう25年くらいになるけど、まさか私が母親になるなんてね……はじめは全く想像もしてなかったわ」

 

「この世界?どういうことですか?」

 

 発した単語のひとつが引っかかり、すかさず舞に尋ねるめぐみん。めぐみんからの質問に、舞は在りし日を懐古するようにして話を始めた。

 

「昔はね、日本と呼ばれる場所で暮らしていたのだけど、私は身体が弱くってね。15の頃に病気で死んじゃって、とある女神様にここへ連れて来てもらったの」

 

 舞はそこで一区切りすると、ゆっくりとアクアの方へと首を向ける。

 

「アクア様、覚えていますか?20年程前のことですけど…」

 

「えっ⁉︎い、いやぁ、勿論覚えてるわよ?た、確かえ〜と、その…」

 

 舞から急に話を振られ、アクアはしどろもどろとしてしまう。必死に頭を回転させるも、容量の少ないアクアのオツムには舞のことはすっかり消え去っていたようで、思い出すことは出来なかった。

 

「覚えてないんかい!!」

 

 

「そ、そんなことないわよカズマさん⁉︎なんてったって私は慈悲深いアクシズ教の女神……、転生させた人達の顔と名前くらい覚えてるわよ!!今日はその……ちょっと調子が悪いだけだから!!」

 

「息をするように嘘をつくな!!マツルギのことさえ忘れてたお前だ!!マイさんのことも頭の中からすっぽ抜けてたんだろ?」

 

「そんなことないもぉぉん!!おぼえてるもぉぉん!!」

 

 自身の弁明を一蹴するカズマに、アクアは病院にいることを忘れて喚き散らかす。しかし病院内で感情に任せた行動は誤りだった。

 ゆっくりと病室の扉が開かれ、その隙間から漂う威圧感と圧迫感にカズマとアクアは身震いする。恐る恐る扉の方へと首を向けると、先程の看護師が目を血走らせ、青筋を浮かべながら口角を上げていた。

 

「病院では……

 

 

 

 

お・し・ず・か・に…」

 

「「はい!!」」

 

 カズマとアクアは怯えながら敬礼をして理解の意を示し、看護師は相変わらず眉間に皺を寄せながらゆっくりと扉を閉めて去る。

 

「ぷっ、あはははは!!」

 

 カズマとアクアの日常化した言い合いが余程ツボだったのか、舞は口元を抑えて小さく笑い声を零した。

 

「いや〜、こんなに笑うのは久しぶりだわ。2人ともセンスあるわよ。お笑い芸人でコンビ組んだら売れると思うわよ?」

 

「「コイツ(こんな人)となんて絶対嫌!!」」

 

 声量に気をつけながら互いを指差し嫌悪感を示すカズマとアクア。とはいえ息ぴったりな2人が言っても説得力はなく、その光景に再び舞は笑ってしまった。

 カズマと絡むアクアが気に入らないめぐみんは遂に我慢ならなくなり、2人の間に割って入ると、舞に話を仕切り直すよう促した。

 

「話が脱線しすぎです!!兎に角今は、マイさんの話を…」

 

「あ、そうだったわね。私は其方のアクア様の命でこの世界へとやって来てね……。そしてこの世界で徒党を組んで色々な経験をさせてもらったの。多分だけど、カズマくんも名前からして私と同じ?」

 

「あ…はい」

 

「え⁉︎カズマもマイさんと同じく別の世界から来たのですか?」

 

 めぐみんは驚愕しながらカズマを紅く煌めく瞳で捕えた。ゆんゆんも真偽の程が気になるようで、めぐみん同様視線を向けていた。

 カズマとしても、もう誤魔化すことも出来ないと悟ったようで、後頭部を数回掻くと覚悟を決めて真実を話した。

 

「まぁ…違う世界から来たって言っても信じてもらえないだろうから今まで誤魔化していたんだが……」

 

「なんでですか、そんな最高に活かす背景を持っていて語らないなど、私からしてみれば信じられませんよ!!」

 

「お、おお…」

 

 食い入るように迫るめぐみんに、カズマは困惑してしまう。

 普通なら別世界から来たなどという、常識的に考えてみれば荒唐無稽な話をしても信じられない、下手すれば相手にされない可能性すらあるというのに。紅魔族の琴線というものはよくわからないものである。

 

「ということは、アクアさんの女神って嘘じゃなかったんですか?」

 

「ちょっとゆんゆん!!今まで疑ってたの⁉︎」

 

 同時にゆんゆんも、カズマと舞の話からアクアの女神発言が冗談や見栄張りではなく本当だと飲み込めたようだ。

 しかしながらそれは今までアクアの言っていたことを信じていなかったことの裏返しでもあり、そのことに対してアクアはゆんゆんに食い寄って来た。

 

「いや、あの…違います⁉︎決してアクアさんを馬鹿にしてたつもりなくて、その…女神様が本当に現世に来るとは思えなかったので……」

 

『まぁ、ふらっと現世にやって来る女神様もいないことは無いと思うけどね……』

 

 聞き馴染みのある声に、一同の視線が集まる。そこには尖った耳と長い銀髪を携えた紫眼の少女がいた。姿は違えど、いつもの青色の魔導服はそのままだったため、カズマ達はすぐにその少女の正体を察した。

 

「クロっち⁉︎お前いつの間に……ていかその姿、また擬態変えたのか?」

 

『君達が舞に迷惑かけていないか、お見舞いついでに監視しに来たんだよ。それと、長い間同じ姿だったから気分転換にね。病院じゃ、普段のケミー姿じゃ驚かれちゃうから』

 

「そ、そうか。ていうか、何で舞さんが錬太郎のお母さんって教えてくれなかったんだよ!!口振りからして知ってたんだろ?」

 

『君達が僕の話も聞かずに勝手に盛り上がっていたからね。仕方ないだろう?人の話はちゃんと聞かないと』

 

 クロスウィザードからの正論に、カズマ達はぐぅの音も出ず押し黙るしかなかった。一方で舞は、クロスウィザードの来訪を旧知の仲として暖かく迎えてくれた。

 

「久しぶりクロスウィザード、元気そうね」

 

『そういう舞も、大分回復して来た?』

 

「ええ。でも、錬金事変でロードに力を奪われた影響もあってまだまだ前線には戻れないわ……。アクア様から渡された神器も、そのせいで機能してくれなくて……」

 

『そっか…』

 

 舞の返答に、クロスウィザードも残念そうに下を向く。2人の会話に、カズマ達は錬太郎達から片鱗しか語られていない錬金事変の過酷さを汲み取った。同時に舞とクロスウィザードの空気に覆われるように、無意識のうちに4人もどんよりとした雰囲気に引きづり込まれてしまう。

 

「あ、ごめんなさい。暗い感じにしちゃったわね!!え〜と…私の何から話そうかしら?」

 

『舞のこと知りたいの?じゃあダン…錬太郎のお父さんと出会った当初の尖ってた頃の話をしようかい?』

 

「あ、ちょっと待ってそれは……」

 

 クロスウィザードの提案した話題に、先程までの陰鬱な様は風に流されたかの如く消え去り、皆の関心はクロスウィザードの話へと向けられる。

 

「気になります!!」

 

「クロっち教えて!!」

 

 

 

 

 

『それで一目惚れして口説いて来たダンを舞が杖でボコボコにしてね、その後も何度かアプローチを受けても「私が愛するのはこの世界だけ」とか言って突っぱねてさぁ…』

 

「ほぉぉぉ!!何とカッコいい言い回し……。紅魔族センスからしてその振り方は100点満点中150点ですよ!!」

 

「やめてぇクロスウィザード……お願いぃぃ…」

 

 舞の冒険者時代の武勇伝、もとい黒歴史をつらつらと語るクロスウィザードに、めぐみんは赤瞳を燦然とさせる。冒険者としての舞の生き方に、めぐみんは強く共感しているようだ。もっとも、当の本人は大分恥ずかしく思っていたらしく、顔を真っ赤に染めながらベッドの上の布団を握り締めていた。

 

「あ、確か病弱だったのに気が強い日本人の女の子を受け持ったことがあったような…もしかしてその()が…」

 

「舞さんかもなぁ…」

 

「で、でも!!ダンさんが錬太郎さんのお父さんということは、その後にちゃんと応えてあげたんですよね?何かきっかけはあったのですか?」

 

 クロスウィザードの話譚の最中、生来のぼっち気質故に中々会話に入ることの出来なかったゆんゆんが気になっていたことを尋ねた。すると今度はゆんゆんの疑問の答えへと皆の興味が向けられた。

 腕を組み、頭を捻る舞に、まだかまだかと固唾を飲んで見守る一同。静寂と共に数秒が経過する。窓から流れる寒さと暖かさの混じった隙間風が舞の黒髪を撫でる、時同じくして漸く舞は口火を切った。

 

「なんだろう。あんまり特にコレっていうのは無いのよね……」

 

 舞からの解答に思わず4人は肩を落としてしまった。ラブロマンスや、刺激的な出来事等を期待していたのだが、これでは拍子抜けもいいところである。

 

『どちらかというとダンは錬金術の発展には貢献してたけど困るようなことしかしてなかったような……。

僕達ケミーの封印を解いたのも小さかったダンだったなぁ…。

復活させた理由がアルケミアでもう御伽話になってた僕達ケミーの存在を立証するためってわかった時はずっこけちゃったよ……』

 

「それに婚約指輪を選んだはいいけど、友達とふざけてキャッチボールして指輪無くしたって言った時は流石に殴り飛ばしてやろうと思ったわよ。まぁ、今となっては笑い話だけどね」

 

「え、えっと…結構破天荒な話ばかりですけど……」

 

「マイさんって、そんな人のどこに惹かれたんですか…」

 

 距離を縮めるエピソードどころか、ダンの問題点ばかり浮き彫りになる思い出話に、カズマやめぐみんも大分引いた様子。アクアも声に出して言いはしなかったものの、表情からして2人と同意そうであった。

 

「(めぐみんはあまり人の事言えないと思うけど……)」

 

 1人冷静に話に聞き入っていたゆんゆんは、めぐみんが性格に一部難のあるカズマに好意を寄せていることを知っているため、舞とどこか似通っていると感じる彼女に、心の中で静かに突っ込みを入れる。

 対して舞も、自身の恋情に関してあまり深く考えたこともなく、ダンとの逢瀬についてなんとか記憶を思い起こしながら話を続けた。

 

「う〜ん。ずっといるうちにドジで抜けてる部分がなんか放って置けなかったから…

放っておくとすぐ突っ走っちゃう奴だったからなのもあるわね……

後は自然とそばに居てくれると安心するようになっていったというか……」

 

「成程。長い時間が友情を、そして愛を育んだと!!」

 

「……そうかもしれないわね」

 

 めぐみんの補足に舞も答えの出せなかった当時の自分の感情に納得した様子で、頬を緩める。

 そして同時に今度は悲しむような、憂うような色に瞳を濁らせ、独り言のように言葉を綴り始めた。

 

「不思議なのよね……ダンさえ錬金事変で行方不明にならずに今もいてくれたら、きっと錬太郎はロードについて思い悩むこともなくて、伸び伸びと年相応に生きていけたと思うの……」

 

「あの…錬太郎のお父さんって、そんなに強い人だったんですか?」

 

 カズマは少し躊躇いを含ませながら舞へダンのことについて尋ねる。その瞬間、ほんの少しだけ舞の瞳孔が開き、光が灯ったかのように煌めく。そしてゆっくりと口を開け、小さく覗かせる喉から声を紡いだ。

 

「強い…ていうのはあるわね……。

ハガネくんの鉄鋼化錬成の基盤になったアルケミスドライバーを作って、それでダンも錬金戦士ウインドになっていたからね…

 

 

あの人はどんな困難を前にしても挫けない人だった。

そんな彼なら、苦しんでる錬太郎をきっと何とかしてくれる……

そう思えたのよね……」

 

 懐かしむような、愛しそうな声色でダンのことを追想する舞。それだけ想っていた、信頼していたのかとカズマ達4人の胸の内も呼応するようにじんわりと熱を帯びた。同時にそのダンが行方不明となってしまったことは相当心労なのだろうと皆は感じた。

 

「でも、そんな心配は杞憂だったわ」

 

 しかし皆の予想に反して、舞は朗らかに笑った。陽光の如く眩しい笑顔に、カズマ達は安堵と同時に少々困惑を隠せない。

 そんなきょとんとしたカズマ達を他所に、舞は笑顔のわけを声高らかに話した。

 

「錬太郎、今とっても楽しそうだもん。きっと、あなた達のお陰ね」

 

「俺達は別に錬太郎にやってあげられたことなんて……寧ろ助けられたことの方が……」

 

「あの子の側にいてあげられてるでしょ?それだけで錬太郎はとても救われてると思うわ。故郷のアルケミアが亡くなって、ロロ義兄(にい)さんも死んじゃって……

そんな時に貴方達と出会って、仲良くしてくれたからこそ錬太郎は前を向いていられるんだと思うの。本当にありがとう」

 

「は、はい……」

 

 舞はベッドの上で正座をして、深々と頭を下げた。人からの礼儀正しい感謝にあまり慣れてはいないカズマ達は、鼻の下を擦ったりクネクネしたりして照れくさそうにしていた。

 舞は面を上げると、神妙な顔立ちでカズマ達を瞳に捉える。対するカズマ達も舞に向かって姿勢を正し、同じく彼女を見据えた。

 

「錬太郎のこと、宜しくお願いしますね」

 

「こちらこそ」

 

 

 

 

「では、俺達はこれで」

 

「お邪魔しました」

 

「ありがとうございました」

 

「また来るわね」

 

『体調に気をつけて』

 

 各々が挨拶をして病室の扉へと向かう。息子の友人達との別れを寂しく思いながらも、送り出すように舞は激励を送った。

 

「冒険者だと色々大変なこともあると思うけど、迷わず突き進みなさい。貴方達ならきっと大丈夫、絶対上手くいくわ」

 

「何で、そう思うんですか?」

 

「先人としての勘、かな?私もカズマくんと同じ転生者で冒険者だったし。それに、私の勘は結構当たるのよ?」

 

 ペロッと舌を出してウインクをする、年不相応な仕草をする舞に一同は若干の苦笑いを浮かべながら、病室を後にする。そして最後の1人であるゆんゆんも去ろうとした時だった。

 

「あ、そうだ。ゆんゆんちゃん、ちょっといいかしら?」

 

 

 

 

「はい、何でしょうか?」

 

 舞に呼び止められ、1人病室に残ったゆんゆんは、ベッドに近くにあった椅子に座って舞と向かい合う。

 

「実はね。錬太郎が貴方のことについて沢山手紙を送ってくれてたの。最近は私が返信出来ていなかったんだけどね。一緒にクエストに行ったとか、アルカンレティアや紅魔の里に行ったとか、文面からして嬉しそうだったのよ」

 

 舞の口から語られたのは、錬太郎から見たゆんゆんの話。思えばゆんゆんも錬太郎と出会ってから様々なことを経験してきた身だ。錬太郎とのクエストや日々の思い出、激戦の記憶がまるで昨日のことのように駆け巡る。そして自分と過ごす日々を錬太郎もよく思ってくれているであろうことが嬉しかった。

 

「あとは温泉でくつろいでいるとハプニングで全身見られちゃったとか、紅魔の里では一緒に寝てしまったとか……」

 

「わぁぁぁぁぁ⁉︎舞さんストップストップ!!」

 

 訂正。身内に思い出を書き伝えることは嬉しいが、内容はしっかり厳選してほしい。ゆんゆんは錬太郎に対して強く思った。

 ゆんゆんの慌てぶりが面白かったようで、舞はクスクスと笑う。揶揄われたのだと悟ったゆんゆんは、顔を紅くしながらじっとりとした視線を舞へ向けた。

 

「ごめんごめん。でも、手紙に書かれていたのは他の子達と比べて特に貴方とのことが多くってね、こんなに錬太郎が夢中になったのはライバルで相棒みたいだったアスラくん以来で……」

 

 舞はゆんゆんへ謝罪すると、錬太郎の昔話も混えて嬉しそうに声を弾ませる。しかしゆんゆんは何処か浮かない顔の模様。その理由は舞の話の中で出てきたアスラのこと。

 今でこそ錬太郎より相棒と言われているゆんゆんだが、昔はその場所に別の人物がいた。そのことがどうも心に陰を落とす。

 分かっている、アスラが錬太郎の支えとなった人物であるということくらい。それでも、頭で分かっていても心は理解と乖離してしまい、やがてその嫉妬は、表情を通じてゆんゆんの外へと押し出された。

 

「あれ?妬いちゃった?ゆんゆんちゃんってもしかして……」

 

「ちちちち、違います⁉︎錬太郎さんとは健全な付き合いの仲で……で、でも?大切な友達ではありますから!!」

 

「そっか、友達か。でも、その方がいいかもしれないわね」

 

 舞は半分残念そうな声色で納得し、改めてゆんゆんに向き直る。真剣な舞の眼差しには、先程までのおちゃらけた雰囲気は微塵もなかった。

 

「友達って、あまり隔たりなく互いに干渉できる立場でしょ?あの子、昔から寂しがり屋な癖に強がな部分があってね…。本当の自分を見せない様にしているし、誰かに頼るって事が苦手な子なの。

父親と似て1人にしておくと勝手に突き進むから危なっかしいのよ……

 

 

 

だからね、ゆんゆんちゃん。私の不器用な息子を友達として、支えてもらっても良いかな?」

 

 

 

 

 

「勿論です!!」

 

 舞の頼みに、ゆんゆんは紅い瞳を輝かせながらどんと胸を叩いた。

 

「錬太郎さんは私の事を相棒と言ってくれました。あの人のお陰でパーティを組めましたし、他にも沢山の友達も出来ましたので凄く感謝してます。それに辛い時には、私が側にいると伝えました。

だから、絶対に一人にはさせません!今までもそうでしたし、これからもです!!」

 

「ありがとう。あの子と、仲良くしてあげてね」

 

 ゆんゆんの頼もしさに安心した舞は真剣な表情を崩し、柔和に微笑んだ。

 

 

 

「あ、ゆんゆん。遅かったですね」

 

「何話してたの?」

 

「えっとですね………」

 

 病室から出たゆんゆんを、カズマとアクア、めぐみんの3人が暖かく出迎える。病室から遠のいていく声を見送りながら、舞は再びベッドに体を預け、1人物想いに耽った。

 

「錬太郎、良い友達と仲間を持ったのね……」

 

 アルケミアの外の世界でできた息子の友達。また会えることを楽しみにしながら舞は眠りつこうと瞳を閉じた。

 刹那、窓から透き通った風が入り込み、優しく舞の黒髪を撫でる。風は眠りの底へ誘われていた舞の意識を呼び戻すと同時に、彼女にとって懐かしい匂いを運んできた。それはずっと、彼女が帰りを待っている愛しい男の香り。

 

「あ……」

 

 ゆっくりと上体を起こした舞は、病室に立つ人影にはっと息を飲み込んだ。そこにいたのはボロボロとなった黒衣で全身を包み込んだ長身の男。フードを深く被っており素顔は見えない。しかし舞は、その人物が誰なのか、すぐに分かった。

 

「おかえり……でいいのかしら?」

 

 舞の視界が涙で歪み、震える声で男に尋ねる。男は舞の問いにゆっくりと首を左右に振ると、ゆっくりとした口調で話を始めた。

 

「まだ……だ……俺の……本体は…まだ時空の……狭間……

かろうじて……錬成した義体を……元の世界に……送れたのみ……」

 

「そう……」

 

「俺は……必ず……戻ってくる……」

 

「うん、私待ってるから。ずっと、ずっと。だから……」

 

 舞は瞳に溜まった涙を袖で拭い、男に向かって穏やかに笑いかけた。

 

 

 

「絶対に帰ってきてね、ダン」




今回はカズマ達と舞の邂逅でした。掛け合いに関しましては、マサオンさんからのリクエストを参考にいたしました。本当にありがとうございました。

舞との掛け合いでカズマとアクアの転生者関連、ゆんゆんと錬太郎関連の話はさせたかったのですが、中々納得のいく形にならず難産してしまいました。誠に申し訳ございません。
あと来週は用事がありまして投稿をお休みします
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