暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2 作:dwwyakata@2024
夕方にアトリエに到着。ボオスも交えてミーティングをする。
今日は、これからクラウディアに頼まれた機械の修理をする。
まだ使い路がない例の機械だ。今日、明日の夕方以降を用いて、修理をしてしまう予定である。
それについても、皆に話しておく。
なお、貴族の権力云々には関わらないので、今日明日はパティには手伝って貰う予定はない。バレンツで雇っている戦士達に、手伝いは頼むつもりだ。
「すまないが、私達は別行動する」
「アンペルさんもいると心強いんだけどな」
「そう言ってくれると嬉しいが、「星の都」というお前達が見つけた遺跡がどうにも気になっていてな」
アンペルさんとリラさんはそっちの調査を優先したいという。
星の都には、記憶が曖昧になってしまっているとは言え精霊王「光」と思われる存在がいた。
確かに調査するのは良いことだろう。
そうなると、明日からはまたいつもの面子だけでの遺跡調査か。
ただ、アンペルさんとリラさんは、「北の里」への行き方を理解し。「数多の目」もその顔を覚えたはずだ。
これで、いつでも遺跡に行く事が出来る。
「それで、明日からはどうする。 俺の専門外になるのかこれは」
「いや、どうにもそうは思えないですね。 「北の里」が色々な資料からして放棄されたとしても、後から戻ってくる人がいた可能性はある。 そういう人のために、門戸まで完全に閉じたとは考えにくい」
「僕も同感だね。 他の遺跡は研究施設だったりそもそも地面に落ちてしまったり墓場だったりしたけれども。 純然たる集落だった「北の里」は。 それらとは状況が違うはずだよ」
「クーケン島も、地下に入れるようになっていたもんな」
ボオスが付け加える。
その通りだ。
仮に、「北の里」の生き残りがいたとして。
もしも封印のことを受け継いでいたりしたら。何かしらのトラブルの時に、封印に向かった可能性がある。
クーケン島でも、処分される寸前だったとは言え、タオの家に操作マニュアルが残されていたのだ。
同じようなものがあっても、不思議ではないのである。
「僕は明日、何か策がないか考えて見るよ」
「俺もだ。 今日は宿に戻って、今までの遺跡と照らし合わせて、いい案がないか考えてみる」
遺跡の専門家二人は、それぞれそんな事を言う。
セリさんは、現時点では植物学の観点からはお手上げ。
クラウディアも、音魔術探査の観点からはお手上げらしい。
だとすると、明日は二人は護衛に回って貰うか。
それにしても、何か見落としていないだろうか。
パティが、おずおずと手を上げる。
「あの、私みたいなド素人が意見を言うのもなんですけど」
「いいよ全然。 言ってみて」
「は、はい。 例えば、呼び鈴みたいなものがあったりして……」
「可能性は充分にあるよ。 ただ、今までは見つかっていない。 物理的な呼び鈴はなくて、何かしらの魔術的な呼び鈴の可能性はあるね」
ただ。そうなると。
「北の里」の人間が、みんな何かしらの特別な魔術か何かを使えたのか。
「北の里」のテクノロジーで、住んでいる人間の魔力を全てパターンとして記憶していたのか。
もし後者の場合は、正直手に負えない。
前者の場合は。
「北の里」に住んでいたのは、エンシェントドラゴンに教授を受けたとはいえ、とんでもないスペシャリスト集団になる。
あながち捨てきれない説だ。
何しろ、古代クリント王国に屈しなかったことが判明したのだから。
古代クリント王国が子供などを人質にとって脅したという話が「数多の目」から得られたが。
それも嘘とは思えない。
まて。
何かが引っ掛かる。
ボオスが咳払いした。
「ともかく、今日は一度解散して、それぞれ考えた方がいいんじゃないのか」
「そうだね。 僕も考えは一人でいる方が纏まる方だ」
「私も、今日は宿題の片付けに集中します。 後、これから一コマ授業受けて来ます」
「俺は疲れたな。 公衆浴場行って、さっさと寝る」
それぞれが、さっと解散。
あたしは、クラウディアとともにバレンツ商会に。
壊れてしまっている機械の部品を荷車に詰め込む。手伝ってくれる戦士には、手袋を渡して、注意をしながら荷車に部品を載せて貰った。
クラウディアが見ている事もある。
言う事を聞かない戦士はおらず。
しっかり動いてくれる。
そのままあたしはアトリエに機械の部品を運び込んで、エーテルに放り込んで修理を開始。
仕組みは理解しているから、簡単だ。時々インゴットを足して、調整していけばいい。
今日で七割程まで終わらせて。
明日の夕方以降で、残りと組み立てまでやってしまう。
まあ、組み立てても使い路はないのだけれども。
いっそ、あたしが作ったインゴットを伸ばして、それで試運転だけはして見るか。
そんな事を考えながら、部品の修理を終了。
バレンツ商会に持っていく。
壊れた部品と入れ替える。別物のように新しくなっているのを見て、戦士達がひそひそと畏怖を込めて何か話している。
クラウディアが、かなり威圧的に咳払いして。戦士達が背筋を伸ばす。
これは、あたしが怒る必要はないか。
「す、すみません副頭取!」
「ライザさんは今の時代を代表する豪傑で、私の親友です。 失礼をするという事が何を意味するか、理解しなさい」
「は、はいっ!」
クラウディアもよそ行きの顔がすっかり怖くなっているな。なお、戦士達に対してだから、あたしに「さん」をつけている。
クラウディアの無邪気で優しい顔は、あたし達だけが知っているものにいずれなるのかも知れない。
そう思うと、ちょっと面白い。
戦士達は一発で黙る。
そもそも此奴らでは戦士としてもクラウディアの足下にも及ばない。
それは、これだけ萎縮するのも当然かも知れなかった。
作業をサクサクをやっていき、適当な所で切り上げる。予定通り七割まで終わらせる。更には、なくなっていた細かい部品などもついでにつくっておいた。
空間把握能力があるから出来る事らしいが。
まあ、あたしとしてはやれるからやっていくだけの事である。
「よし、明日で全て終わるよ」
「ありがとうライザ。 またクッキーやドーナツ焼いていくね」
「へへ、楽しみにしてます」
「うふふ」
もう夜中だが、まだやる事がある。
一度、デニスさんの鍛冶屋に出向いておく。
コンテストがどうのと言っていたし。何よりも、幾つか打ち合わせがある。
まだ鍛冶屋はやっていた。
あたしが顔を出すと、デニスさんは疲れた様子で、汗を拭っていた。
「ライザさんか。 王都が騒がしいが、アーベルハイムが絡んでいる例の騒動にライザさんも噛んでいるのかい?」
「秘密です。 それよりも、コンテストはどうですか?」
「以前見せてもらったグランツオルゲンに強い感銘を受けてね。 だけれども、今まで手持ちの金属で、全てやっていこうと思っているんだ」
「なるほど……」
今まで扱い慣れた金属での作業か。
それもまた、ありなのだろう。
この人は、鍛冶師としては店を持っていて、充分過ぎる技量もある。
あくまで趣味でのコンテスト挑戦。
更には、自分の技術の再確認の意味もあるのだろう。
「コンテストは三日後だ。 結果が出たら知らせるよ」
「分かりました。 バレンツ商会に話していただければ、通じますので」
「了解。 それにしても、君の持ち込むインゴットには本当に刺激を受けた。 持って来てくれる仕事にもね」
「役に立てたのなら幸いです」
一礼すると、後はアトリエに戻る。
さて、問題は「北の里」だけれども。
どうしたものか。
「フィー」
「ん。 ご飯足りない?」
「フィー?」
どうもそうじゃないらしい。あたしが考え込んでいるのが、不思議に思えたのかもしれなかった。
まあいい。
ともかく。今詰まっているのは、些細な問題じゃない。
「北の里」の真上には、既に来る事が出来ているのだ。
後はどうやって、扉を開くか。
パティの言った通り、呼び鈴があるかも知れない。
それも、子供でも開くような。
合い言葉か。
いや、それだと多分、拷問とかすれば聞き出せてしまうはず。
何か、「北の里」独自のものがあったのではないか。
歩きながら考えて、そのまま公衆浴場に。
風呂で汗と砂を流した後、アトリエに戻る。
しばらく考えていたが、結論は結局出ない。
結論は出なかったが。
少しずつ、真実に近付いている気はした。
翌日。朝のミーティングにアンペルさんもリラさんもこない。これは分かっている事だ。
二人は別方向で連携して動いてくれている。
世界の危機である事に代わりは無い。
門がいつ開いてもおかしくない。
その門は文字通り地獄への門。
開かせるわけにはいかない。それは、例えこのロテスヴァッサに人生を滅茶苦茶にされたアンペルさんでも、共有している認識。
とりあえず、皆で話す。
「あたしの結論だけれども。 「北の里」の人間独自の方法で、中に入る手段があったのだと思う」
「なるほど、例えば」
「まだ具体的には分からない。 ただ、一番簡単なのは音じゃないかな」
世の中には、喋れない人もいる。
そういう病気だったり。心の病だったり。或いは年老いてしまったり。
だけれども、そういう人が、危険な砂漠に単独で出るとは思えない。
「北の里」の人が、出入りしていたとしたら、それはある程度健康な人間だったとみていい。
それくらい、あそこは危険な場所だからだ。
エンシェントドラゴンが、どういう風に里を構築したのかは分からないけれども。
それでも、人は人で。
ドラゴンに頼りっきりではなかった筈だ。
「タオ、使われていた言葉は喋れるんだよね」
「一応会話は出来るよ。 流石に専門用語までは無理だけれど」
「じゃあ、最初にクラウディアの音魔術で増幅して、タオに色々呼びかけて貰おう」
「なるほど、手の一つではある。 例えば、その呼び鈴のシステムが劣化している可能性もあるからね」
レントが話を聞いていたが。
不思議そうに言う。
「あの目の触手は、なんでその辺り教えてくれないんだろうな。 俺たちを信頼してくれたんじゃないのか」
「多分だけれども、その辺りは教えてはいけないってされているのでしょうね」
セリさんが、ぼそりと言う。
レントも、それを聞いてなるほどと納得。
確かに、あの存在だって古代クリント王国が狙い撃ちにしてきたら、捕らえられていた可能性はある。
そこから「北の里」への入り方がばれてしまったら、それでおしまいだ。
エンシェントドラゴンがいても、流石に全盛期の古代クリント王国のアーミー相手には勝てないだろう。
小競り合い程度で。
戦略的価値が明確に見いだせなかったから、「北の里」は己を守りきれたのだ。
もしも攻略の糸口が古代クリント王国に渡っていたら。
いくら何でも、守りきれなかった筈である。
他にも、幾つか案が出る。
地面を掘り進めるのは、最後の案。
乱暴に動いた場合、ワイバーン数十匹……それも生半可な奴では無く、ドラゴンに片足を突っ込んでいるような個体から、集中砲火を浴びる可能性がある。そうなれば、今の面子でも流石に勝てない。
まずは現地に。
そう思って移動していると。
城門近くに、乞食らしいのがいた。
驚く。
以前、あたし達に侮蔑的な言葉を掛けてきた例の令嬢ではないか。襤褸を纏っていて、完全に痩せこけている。
こんな短時間で、此処まで人は落ちぶれるものなのか。
あたしは逆に驚かされていた。
確かに此奴に生活能力は皆無だっただろうが。
それでも、いくら何でも。
パティに、縋り付こうとする。
「パ、パトリツィア……さ、さま! ど、どうかお助けを! わ、私とあなたの仲ではありませんか!」
「仲ですって? 貴方には侮辱と陰口しか受けた記憶しかありませんが。 私だけではなく、お父様や私の尊敬する人々に対しての陰口もね。 ……私に助けを求めるのでは無く、救貧院に行きなさい」
「あんな汚らしい所なんていやっ! 私は誇り高い、七百年の歴史を持つ……」
「貴方の家は、辺境から違法奴隷を買い入れて、使い潰して殺してきた。 その報いを受けただけです。 今、生きているだけでも幸運に思いなさい。 救貧院に行けば助かるかも知れません。 ですが、そもそも貴方の家がやってきた事の報いを受けている自覚がないのなら、そこで餓えて死ぬだけです。 貴方の家が殺してきた人達のように」
そっか。
こいつ、そういう輩だったのか。
あたし達の視線を受けて、ひっと悲鳴を上げるもと令嬢。どうでもいい。パティも冷たく振り払う。金切り声を上げるが、見かねて此方に来た戦士が乱暴に取り押さえていた。
パティが行きましょうと、あたし達に言う。
それでいい。
あれは、本来だったら首を刎ねられていて当然の人間だ。
どうやって王都に戻って来たかは分からないが、短時間であれだけ没落したのだ。他の人間……家長や、他の家族はみんな死んだとみて良い。
そして完全に無害になったから、誰もああして無視している。
あの様子では、体を売ろうにも客すらつかないだろう。
優秀な血統が聞いて呆れる。
貴族なんか優秀でもなんでもないと、あれがよく示していた。
「ボオスも一歩間違ったら、ああなっていたのかな」
「可能性はあるだろうね」
クーケン島で一番貴族に近いのはブルネン家だ。
だが、ブルネン家はそもそもクーケン島ではやっていけないことを理解していて、外との経済的交流に積極的だった。
現在の当主であるモリッツさんははっきりいってあまり好感を持てない人間だが。
それはあくまで人間的な性格が、であって。
今ではあたしのもたらす錬金術の有用性、クーケン島を支えているものの正体をしった事もあって協力的だし。
何よりも、今のあたしには、モリッツさんが島の為にどれだけ骨を折ってきたかもよく分かる。
まあ、先代があたしとボオスをくっつけようとしていたことに、今でも苦々しい反発があるようで。
それについては、あたしはしらねとしか言えないが。
ボオスは一時期完全に拗らせていたし。
もしもあの出来事がなかったら、確かにブルネン家没落の原因となっていた可能性もあるだろう。
そうなっていたら、今のバカ貴族の令嬢みたいになった可能性もある。
それどころか、クーケン島そのものが。
あまり考えたくないな。
あたしも、あれに手をさしのべる気にはなれない。
金があると言う事が理由で、多数の人命を。こんな世界であるにも関わらず、弄んですり潰してきたような輩だ。
今生きている事すら許しがたいが。
まあ、あれはどうせ長生きは出来ないだろう。
体内の魔力が乱れていた。寄生虫だろう。内臓が幾つか壊れかけている。救貧院での手当てにもよるが、多分苦しみ抜いて近いうちに死ぬ。外で食べたものに寄生虫が入っていたのだ。
そんなものを口にした理由は簡単だ。短時間で一気に没落したことで、元々生活能力がなかったのが、文字通り破綻したのだろう。
例のメイドの一族は、多分さっさと見捨てたのだ。あの令嬢のいた家そのものを。
本当に謎の一族だな。
そう、砂漠に移動しながら思う。
「覚えとけよ。 道を踏み外すと最終的にはああなる」
クリフォードさんがいう。
あたしも、肝に銘じる。
錬金術師として。
あたしが出来る事はたくさんたくさんある。
だからこそ、道を踏み外したときには。古代クリント王国の錬金術師どもがそうしたように。
世界丸ごと、劫火に包みかねないのだ。
あれは、悪い見本だ。
そう思って、走る。
砂漠は、もう少しだった。
「数多の目」にのって、不思議な流砂の中にある中州に到着。
パティは、尊敬する人達に不快な物を見せてしまったなと思った。
あの一族は、アーベルハイムに対してもっとも攻撃的な貴族のひとつだった。騎士から貴族になったお父様にも散々侮辱を働いていて。
パティが一度、学園で決闘を他の貴族の子弟に申し込んで、半殺しにするまでは。ずっと表だって侮辱もしてきていた。
パティがいざとなったら、正式な手順で殺しに来る。
それを知ったから、陰口と嫌みに留めるようになった。
ただ、それだけだった。
それ以降も、アーベルハイムを潰そうと色々と画策をしていたらしいが。
今の王都は、この間の騒動で分かったが。
例のメイドの一族が、裏からほぼ掌握している。
メイド長は何も言わなかったが。
そろそろ、追放された貴族達は、何らかの機会に処分するつもりだったのかも知れない。
お父様が動くと、メイドの一族は一糸乱れぬ連携で。
権力層の浄化を行っていた。
もともと王都の政治は、三十万の民を動かすだけのもの。
たくさんいる貴族は、殆どが名目上の領地と金を持っているだけで、王都の外に出てしまえばただの人間。
王都の中でさえ、ただ金を持っているだけで、権力なんて実際にはないにひとしい。
それなのに爵位がどうの派閥がどうの。
井戸の中のカエルだと、お父様が嘆いていた事があるが。
パティもあの無様な没落ぶりを見ると。
井戸の外に出た身の程知らずのカエルが、そのまま蛇に補食されてしまったのだとしか思えなかった。
同じになってはいけない。
そう、思い知らされた。
調査を始める。
パティは出来る事が護衛しか今はない。
大太刀に手を掛けたまま、周囲を警戒する。
クラウディアさんが音魔術で増幅して、タオさんが何か呼びかけている。呼びかけている内容はわからない。
タオさんは、会話だけでいいなら七つくらいの古代の言葉を理解しているらしく。それだけで、頭の出来が違いすぎる事がよく分かる。
中途半端に頭が良い人だと、「相手がどうして分からないのかが分からない」状態になるらしいが。
タオさんの場合は、どうして分からないのかを的確に把握して、即座に指導してくれる。
そういう人だ。
「タオ、どう?」
「挨拶は試してみたよ。 反応無し。 次は扉が開きそうな言葉を順番に試してみる」
「エンシェントドラゴンに呼びかけてみたら」
「……分かった。 それも一緒にやってみる」
周囲を警戒。
ねずみ退治を思い出す。
地面からわっと湧き出してきたねずみを見て、背筋が凍るかと思った。
虫が大の苦手であるのは前から同じだけれども。
ねずみが大量に土から湧いてくる様子は、生理的な嫌悪感を刺激するに充分だった。
だけれども、パティも分かっている。
そんなのは自分のお気持ちなのだと。
少し前に、クリフォードさんが蜂の子の食べ方とかを教えてくれて。それで頭がくらっとしそうになったけれども。
やり方は、覚えた。
いざという時は、虫だって食べないと生き残れない。
オーリムの有様は聞いている。
フィルフサという恐ろしい生物に汚染され切った世界。
この世界が、そうなるかは分からない。
だけれども、なにがいつどうなってもおかしくないのが、世界というものだと、パティもよく分かった。
あの令嬢は、七百年続く家が、と言っていたな。
それはあくまで伝承で、実際にたどれるのは三百年ほどらしいが。
それでも、三百年の惰眠が。
一瞬で終わり。地獄に叩き落とされたのである。
アーベルハイムだって。
いつ同じようになるか、わかったものではない。
ともかく、感情で世界を見るのはダメだ。自分の感覚で世界を判断するのは最悪だ。
それをパティは、タオさんから始まって。ライザさん達から学んできた。
「!」
ライザさんが、離れてと叫ぶ。
皆、わっと距離を取る。
のっぱらに、なにかがせり上がってくる。それは、巨大な骨のように見えた。
「こ、これは……」
「お手柄だねパティ」
「えっ、私ですか」
「呼び鈴だよ。 エンシェントドラゴンを呼んで、来て欲しいって呼びかけてみたんだ。 そうしたら、こうやって地下への入口が開通した。 でも、かなり動きが鈍かった。 「北の里」の動力が、弱っているのかも知れない」
恐縮してしまう。
この人達からすれば、パティなんて小娘も小娘なのだ。
最初にクリフォードさんがいく。勘が一番鋭い人だ。それも当然だろう。
「よし、特に危険は無さそうだ。 続いてくれ」
「さて、鬼が出るか蛇が出るか、それともドラゴンが出るか」
ライザさんは舌なめずりさえしている。
その圧倒的な強さに裏打ちされた余裕が。パティには興味深くもあり。こうありたいと思う、目標に今はなりつつあった。
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