暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2 作:dwwyakata@2024
ライザから借りたエアドロップを使って、アンペルは遺跡「星の都」に向かう。
百年前。
ロテスヴァッサの王宮で、アンペルは人間がどれだけ醜いかを嫌と言うほどみた。特に錬金術師は、エゴしか考えておらず。その力で人間世界を復興しようとか、苦しんでいる人々の生活を楽にしようとか。
そんなことは微塵も考えておらず。
一度それを口にしたら、ゲラゲラと笑い出す始末だった。
一人だけ友人はいた。
だが、明らかに才能が他の錬金術師と違っている彼は、浮いていて。
才能がある程度近いアンペルとともに孤立していた。
思えば、その友人が裏切って。
アンペルの腕を台無しにするような事故を誘発させたのも。
その孤独が原因だったのかも知れない。
彼は才能があったから。
だからこそ、周囲の貴族出身だったり、富豪の出だったりする、才能がない錬金術師からすれば不愉快な異物であり。
「貴族だから優秀」「金持ちだから優れている」などと無条件で信じているようなバカにとっては。
自分の立っている場所を、掘り崩す危険な存在だったのだろう。
彼もアンペル同様。
平民出身だったのだから。
アンペルは、自分を天才などと思っていない。
このエアドロップはどうだ。
ライザが即興で作ったものだが。ロテスヴァッサにいた錬金術師なんて、束になってもこれは作れない。
それも、ライザはかなり今スランプで、頭が鈍っているのに。
使う度に欠点を補強して。
今では、操縦もしやすく、安定性も抜群だ。それでいながら折りたたむことまで出来るのである。
リラですら、興味深々に最初これをみて。
操縦したいとまでいった。
何度か操縦をしたあとは。
アンペルに任せるようになったが。
ともかく、遺跡「星の都」に到達。多少魔物はいるが、リラと二人でなら、対応は難しくない。
此処での調査をしている理由は一つ。
此処がかなり高度な技術によるもので。
或いは都市を浮かせる技術を持ち帰れるかも知れないと思った事。
そして、もう一つは。
此処に、記憶がまだ曖昧な精霊王がいることだ。
精霊王とは既に接触済で。
何度か話をして、その度に少しずつ情報を得ている。
勿論得た情報はライザ達と連携する事で、この間ライザが存在を確定させた門。その位置を探るために使っている。
ただ、ライザ達より、アンペルが明確に優れている点が一つだけあり。
それが経験だ。
経験が、どうにも妙だと告げている。
何か見落としているのではないかと。
だから、敢えてライザ達とは別行動をして、ライザ達が調査を終えた遺跡を回っているのだ。
その結果、この「星の都」が一番怪しいと判断して。
此処にまた来たのだ。
内部が滅茶苦茶になっている「星の都」の奧にまで行く。途中の魔物は、どんどん倒して行った結果、既に小物しかいない。
此方の事も把握しているのだろう。
無言で此方を見ると逃げていく。
アンペルも無駄な戦闘を避けられて何よりだ。
見かけは若い。実年齢は既に百才をだいぶ越えているが、同じ年の人間どころか、三十路前で充分通用する。
それでも、やっぱり昔に比べると衰えが出始めている。
たまに、怒りが爆発したりするのも、それが原因だ。
若い頃もそうだったが。
感情を制御出来るようになって、数十年はずっと冷静でいられた。
だけれども、最近はたまに心が暴発することがある。リラはずっといつも冷静なので、羨ましいとさえ思う。
そんなだから、出来れば戦闘は避けたい。
やはり、体の衰えは、どうしてもあるのだから。
「此処だったな」
「それでアンペル、今日はどうするつもりだ」
「ライザから提供を受けたこれを渡す」
「いいのか。 貴重なものなのだろう」
採りだしたのはグランツオルゲンだ。
だが、ライザの言う通り、これは極めて貴重ではあるが。まだまだ研究不十分で、中途半端な品でしかない。
ライザが装備品の要所補強にしか使っていないのはそれが理由。
それも強度の補給ではなく、魔力増幅用のブースターに使っている。
本来だったら、これだけで武器を作れば、文字通り天を引き裂くような威力に出来る筈なのだが。
それとは程遠い、出来損ないに過ぎない。
勿論アンペルに再現は出来ない。
ライザはこの質で良いのならと、幾らでも作って見せるだろう。
もう錬金術師としては。
ライザは間違いなく、この世界最強。
それどころか、この世界の歴史でも、最高かも知れなかった。
精霊王のいる部屋に、空間を転移して入る。
精霊王は眠そうにしていたが。
アンペルを見ると、顔を上げていた。
「やあ。 また来たんだね」
「魔力を補給できると思って、持って来た。 渡しておく」
「ほう。 これは……凄いな。 ありがとう。 助かるよ。 少しはこれで、記憶も戻るかもしれない」
「それは良かった」
精霊王はここにいる「光」とは別個体に三年前にも遭遇したが、もともとそれほど好戦的な存在ではないのだと思う。
事実ライザはしっかり会話と交渉で戦闘を回避したし。
それどころか、オーリムでの戦闘で、精霊王達は加勢までしてくれた。最低限だけだったが。
精霊王は、アンペルの仮説では、決して人間に良い感情を持つような出ではない筈だが。
それでも人間を見るなり殺しに来ないのは。
つまり、人間よりずっと理性的だという証拠なのかも知れなかった。
「ふむ、凄い魔力だ。 僕の存在が、少しずつ戻っていくような気がする」
「何か思い出さないか、精霊王「光」」
「すぐには……残念だけれど。 ただ、一つなんだか思い出してきたものがある」
「!」
精霊王「光」はいう。
フィーとライザが呼んでいる生物に、見覚えがあると。
ライザも残留思念で、フィーに似た生物を何度も見たといっていた。
それは不思議ではないと思う。
「貴方は歴史に立ち会ったはずだ。 あの生物がなんなのか、具体的に分からないか」
「……今思い出している。 少しずつ記憶を接続している」
「アンペル、急かすな」
「分かっている。 だが、どうにも嫌な予感がする。 ライザはしっかり一線を引いてあれと接しているが、どうにもな」
しばし、待つ。
今は、精霊王「光」の記憶が頼りだ。
門を封じ、オーリムと此方の世界両方の不幸を避ける為には。
それが必須なのだから。
(続)
ついに最後の遺跡の調査を開始するライザ達。
今までとは別方向で探索が大変な遺跡です。
時間が限られている中。
リソースを最大限活用して、ライザ達は先に進みます。
備えがない状態でフィルフサがこっちの世界に来てしまったら、その時点で終わりです。
その破滅を防ぐために。
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