暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

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最後の遺跡、通称「北の里」。

闇の中で、その場所の特異性が明らかになっていきます。

元々この土地にあった国家にも屈せず、独立性を保っていた其処は。

封印の最後を守るのに相応しい、要塞の中の要塞だったのです。


1、竜の腹を照らし出せ

「北の里」に入って、まずあたしがやったのは。灯りの確保。

 

必要だと判断して作り出した浮遊する灯り。

 

「照明気球」を、打ち上げたのだ。

 

照明弾などよりも、更に長時間滞空する仕組みのものだ。

 

照明弾は一発だけぽんと光って、それからゆっくり光を散らしながら落ちていくが。

 

これはこの遺跡の高さだと、多分一刻くらいは持つ。

 

気球は簡単に作れる。

 

気球を浮かせる仕組みは、熱気球では無く、ガスだけにする。ガスは作るのが簡単だ。何かを腐らせればいい。

 

何かを腐らせることで生じるガス(全部では無く、ある程度エーテル内で分別がいるが)はとても軽くて、今あたしの手元にある、一抱えもない程度の気球なら簡単に浮かせる事が出来る。

 

水に雷撃を通すことで生じるガスは更に軽いらしいと、以前アンペルさんに貰った本に書いてあったのだが。

 

そもそも雷撃を作り出すのが難しい。

 

更にこのガスは簡単に引火して爆発するという事もあって。

 

今回は、採用を見送った。

 

灯りの仕組みは、ヒカリゴケなどから抽出して、圧縮したものを採用する。

 

爆発的な光を出すにはちょっと物足りないのだけれども。それは本来の話。

 

あたしはエーテル内で成分を分析して、それを何倍にも増幅している。

 

魔術灯やガス灯ほど安定していないがそれより遙かにローコストである。

 

ゼッテルで作った四角い箱の中に、この光成分を入れ。そして、気球で吊して浮かばせる。

 

これで、灯りの完成である。

 

問題は脆い事だが。

 

むしろ脆い事で、何かしらの危険があった場合、すぐに知る事が出来るのが強みである。

 

これに加えて、昨日完成させておいたルフトブースターをあたしも身に付け、クリフォードさんにも渡しておく。

 

クリフォードさんは、外で練習してくると言って、一度外に。

 

あたし達は、まずは灯りを展開して。更にクラウディアが、音魔術を全力で展開もしていた。

 

これは蜃気楼がどうも意図的に砂漠中で作られていた事を鑑みての事だ。

 

この遺跡の中でも、視覚を狂わせるような仕組みがあるかも知れない。

 

気球を飛ばして、灯りを展開。

 

光る物質は、丁度建築用接着剤のように、別の物質を混ぜることで光り始める。これは調査してある。

 

任意でこの物資が混ざり合うように、調整はしてある。

 

このくらいは、エーテルの中での要素を混ぜ合わせたり調整をしたりを、散々繰り返して来た今のあたしには軽いものだ。

 

気球はむっつ用意してきた。

 

いずれも、任意のタイミングで光らせる必要がある。

 

「うわ……」

 

光り始めた気球が、地中の遺跡を照らし始める。

 

それを見て、パティが声を上げていた。

 

王都にもガス灯などはある。

 

照明弾も、作戦中に使った事はあるだろう。

 

だが、それらと根本的に違う。

 

どこまでも拡がる、柔らかい光。

 

夜に祭などのために使おうとあたしが考え出したものだ。下手な人工灯よりも、遙かに強力である。

 

「流石だな。 それにしても……」

 

「まるで魚をたくさん食べた跡みたいだね……」

 

レントがぼやき、タオが地図を急いで更新していく。

 

灯りが遺跡全体を照らす事で、今まで見えていなかった地点が見えてきているのだ。

 

更に、それで橋の全容も分かってきた。

 

今までの遺跡は、遺跡がある程度生きていて、灯りがあったり。

 

更には光が差し込んでいたから、殆どこういうものは必要なかったのだが。

 

今回はこれが必要になった。

 

動力は。

 

クラウディアが、あれだよと指さす。

 

鼓動しているそれは、岩の塊のように見えたが。なんだか不可解に周囲に線みたいなのが伸びていて。

 

そして、蠢いていた。

 

手をかざして観察する。

 

魔力量は、殆ど残っていない。

 

これはクーケン島の動力と殆ど同じ状態と見て良さそうだ。最低限の動力を確保するために、他の物全てを犠牲にした。

 

クーケン島の場合は、それで海水を淡水にする仕組みが動かなくなり。

 

挙げ句の果てに島の平衡を保つ仕組みもなくなり。島も流されるという憂き目にあったのだ。

 

此処も同じか。

 

ともかく、かなり高度としては下になる。タオが、順番にメモした結果、判断を下していた。

 

「まずはあの橋を目指そう。 あの橋から、多分あの中枢動力に届く」

 

クリフォードさんが戻ってくる。

 

どうやら、もうルフトブースターのコツを掴んだらしい。

 

流石と言う他ない。

 

タオがクリフォードさんに状況を説明。

 

また、灯りが照らしていることにより、昂奮したのか蝙蝠が飛び始めている。結構大きいのもいるようだ。

 

丁度良い。

 

近付いてくるようなら、排除してしまおう。

 

ワームもいるが、これは逆に光が嫌なのか、どんどん地下の方に逃げて行っている。

 

外にいたデスワームほど大きいのはいないが。

 

それでも、結構大きいのがいる。あれは多分、遺跡の底の辺りで遭遇するはずだ。今のうちに、戦闘の準備はしておくべきだろう。

 

「まずは動力を直すために必要な橋の修復だな。 順番にやっていこう」

 

「そうなると、あの橋をまずは修理しないといけないわけだな。 ライザ、資材をくれるか」

 

「早速試す感じですか」

 

「ああ。 こんなロマン溢れる装備を貰ったら、俺も心がうきうきするぜ。 それはそれとして、命綱もつけないといけないけどな」

 

まあ、それはロマンと現実で線引きが出来ていると言う事だ。

 

色々面白い人である。

 

パティは。クリフォードさんのその辺りの落差が、よく分からないようで、ずっと困惑し続けていた。

 

 

 

二つ目の気球を上げる。

 

その間に、橋の修復を行う。

 

やはり灯りがあると言うのは絶大な効果があって、修理の作業もどんどん進んでいく。ただ、このまま下に降りて行くとなると、石材が足りなくなるかも知れない。それについては、此方で追加で用意するしかないだろう。

 

最初の気球は、地底部に降りたようだ。

 

その結果、最初の気球が一番下を照らし。

 

だいたいの高さが、あたしが計測した通りだと分かった。落ちたら死ぬ。

 

それだけじゃない。

 

見た所、橋以外の空中に、所々変なものがある。

 

糸に見えるが、あまり触らない方が良いだろう。

 

というのも、蝙蝠がそれを的確に避けて飛んでいる。

 

蝙蝠は確か、何らかの仕組みで見えない場所でもぶつからずに飛べるらしいのだけれども。

 

それが避けていると言う事は、ろくでもない仕掛けか何かがあると言う事だ。

 

「よし、この橋は大丈夫だ! 一人ずつ渡って来てくれ!」

 

「蝙蝠に気を付けろ!」

 

「順番にね!」

 

声を掛けながら、橋を渡る。

 

足下は充分に固めたとは言え、左右が不安定な橋だ。足場としてはあまり良いとは言えず、蝙蝠に襲われた場合、遠距離の攻撃手段で支援する必要がある。

 

そういう意味では、レントやタオ、パティは出来るだけ固まらずに橋を渡り。

 

また、あたしやクラウディア、クリフォードさん、それにセリさんも。それぞれ別々に渡った方が良い。

 

時間が掛かるが、仕方がない。

 

地図をタオがどんどん丁寧に仕上げていく。

 

あたしが荷車を引きながら移動。蝙蝠は、こっちを伺っているようだが。近付く奴が何体かクラウディアに撃ちおとされると、警戒するようになった。

 

あの蝙蝠だって、地下でワームでも襲っているのだろうし。

 

決して油断出来る相手じゃない。

 

クラウディアが撃ちおとした奴は、逆に今までエサにしていたワームに地下で貪り喰われているのだろう。

 

いずれにしても、あたし達は、それに関与しない。

 

橋を渡りきって、次の橋を修理。

 

方向転換をして正解だったな。

 

そうあたしは判断すると、次の橋の修理を始めるクリフォードさんと連携。まだ少し残っている周囲のワームを片付け。石材を先に準備しておく。

 

クリフォードさんは建築用接着剤にすっかり慣れたようで、てきぱきと軽業で橋を渡りながら、橋の破損箇所を修理していく。

 

また、ルフトブースターを的確に使ってもくれている。

 

ただしルフトブースターは、専用のルフトを補充しなければいけないから、ずっと使えるものでもない。

 

コアクリスタルに入れて置く強力な切り札となるような道具は、それはそれとして採っておきたいし。

 

替えの弾は、毎回用意しなければならないだろう。

 

空中で、クリフォードさんが体勢を整える。

 

片側のルフトブースターをふかして、バランスを立て直したのだ。

 

流石だ。

 

あたしよりも、空中戦の経験値が高いのである。

 

あれくらいは、出来て当然なのだろう。

 

「レント、こっちを手伝ってくれる?」

 

「よし、任せておけ」

 

「パティ、周囲の警戒を続けて。 セリさん、あの辺りの欄干を支えてくれるかな」

 

「分かったわ。 任せて」

 

クラウディアは音魔術で集中して、周囲を調べ続けている。

 

時々警告の声。

 

それと同時に蝙蝠が突っ込んでくるので、接近戦組が仕留める。あたしが出ても良いんだけれども。

 

パティは対空戦をやっておきたいと言う事なので。

 

それは任せてしまう。

 

パティもしっかり蝙蝠を引きつけてから、抜き打ちで確定でたたき落とせるようになっている。

 

集中力が上がっていると言う事なのだろう。

 

戦闘時、集中力を高められるのは良いことだ。

 

あたしも、橋の修理の前線で仕事をしているクリフォードさんの様子に気を配りつつ、周囲全てに警戒。

 

司令塔を任されているのだ。

 

気なんて、一秒だってぬけない。

 

一度クリフォードさんが戻って来たので、ルフトの次弾をすぐに取りだす。

 

あたしが作ったのだ。

 

ルフトの弾が尽きたことくらいは、一目で分かる。

 

無言でルフトを渡して、それで次。すぐにクリフォードさんが修理に戻っていた。

 

そろそろ、次の気球を打ち上げるか。

 

気球を準備していると、少し大きめの蝙蝠がこっちに来るのが見えた。

 

あたしは切り替え。

 

そのまま、クラウディアと連携して、熱槍を叩き込む。あの大きさだと、パティが斬り伏せても体当たりはしてくるだろう。

 

途中で叩き落とすのが一番安全だ。

 

あたしの熱槍の爆発をかろうじて回避した大きな蝙蝠だが、クラウディアの矢が胸と腹を同時に貫き、体勢を崩したところで頭を吹き飛ばした。

 

くるくると回って落ちていく。

 

可哀想だが、こっちもやられるわけにはいかないのである。

 

下に落ちた蝙蝠が、大きな音を立てた。破裂するようなあの音。

 

高い所から落ちたものが立てる、死の音だ。

 

無言になる。

 

あたしも、注意が途切れるとああなるのだ。

 

気を付けないといけない。

 

「大丈夫か!」

 

「平気です!」

 

「よし。 作業、続行するぞ!」

 

クリフォードさんが、作業に戻る。タオが、遺跡の一部に何かみつけたようだ。レントが力仕事を担当して、その一部を持ち上げて、どかしている。何かの機械だろうか。タオがすぐに調べて、それで頷いていた。

 

あっちはタオに任せておく。

 

トラップを発動させるようなこともないだろう。

 

クリフォードさんが戻ってくる。

 

「石材ですね」

 

「それもだが……問題は次の橋だ」

 

クリフォードさんの位置から見えたそうだが。

 

今、直している橋も、かなり下に向けているのだが。次の橋も、それは同じ。

 

ただ、その橋に問題が生じているらしい。

 

「橋の欄干が壊れかけていてな。 あれは多分、踏むだけで落ちるぞ」

 

「……そうなると、やはり向こう側に無理矢理渡るしかないですよね」

 

「えっ。 危険じゃないですか」

 

「危険だよ。 だけれども、多分このままだと手詰まりだと思う」

 

こう言うとき、常識的な反応をしてくれるパティは有り難い。

 

だから、心の準備も出来る。

 

しっかり先に、どうすればいいのかの対応も考えられる。

 

「最大限跳んで、ルフトブースターを使って届きますか?」

 

「そうだな……。 かなり厳しいかも知れない。 ライザはどうだ」

 

「……そうですね」

 

空中戦の技量はクリフォードさんの方が上。

 

しかしながら、あたしの場合は落下速度を更に軽減できる。跳躍に関しては恐らく同じくらいか、クリフォードさんの方が上だろう。

 

これにルフトブースターの落下速度軽減を加えれば、何とかいけるか。

 

しかし、それでも不安は残る。

 

「クリフォードさん、ブーメランでの支援をお願いします」

 

「おう、面白い事を考えるな」

 

「?」

 

「パティさん、大丈夫。 ライザがこう言うときは、とても素敵なことを考えているんだから」

 

クラウディアが、混乱するパティにそう諭す。

 

まあ、それはそれでいいか。

 

セリさんが、植物を伸ばして、更に橋の欄干を補強。ともかく、今直している橋を直したら、昼ごはんだな。

 

そう考えながら、あたしは次の行動について、順番に策を練り続けていた。

 

 

 

昼食を終えて、二つ目の橋の修復を続ける。

 

四つ目の気球を上げた。

 

これは明日も、最低でも六つ。出来れば七つは必要になるだろうな。そう判断はしておく。

 

この遺跡に、灯りがあるかは分からない。

 

動力を復活させて、一気に明るくなってくれればいいのだが。

 

そうなってくれるとは限らないのである。

 

魔物の攻撃は、一段落しただろうか。

 

大きめのが叩き落とされて、それで仕掛ける気が失せたというのはあるのかも知れない。

 

ただ、まだ残っているワームが、時々此方に威嚇してきたりもしている。あのワームは、最初から此処にいたのか。それとも。

 

ともかく。仕掛けて来たら斬る。蹴り殺す。

 

それだけだ。

 

クリフォードさんが、橋の向こう側で苦戦しているようだが。やがて戻って来た。疲れたようである。

 

「ふー、終わったぜ」

 

「橋の向こう側、何かあったんですか?」

 

「ああ。 ちょっと基礎部分が怪しくなっていやがった。 だから建築用接着剤で、がっつり補強しておいたぜ」

 

「ありがとうございます。 いよいよですね」

 

皆を促して、順番に橋を渡る。

 

建築用接着剤は、建物の重量も支えるほどの強力なものだ。人間の体重程度なんて、びくともしない。

 

荷車がそれに加わっても同じである。

 

気にするべきは、荷車を渡す時のバランス感覚。

 

ともかく、橋の左右が歯っ欠けなので、ちょっと手元が狂ったら荷車ごと真っ逆さまに行きかねないし。

 

普通に渡る時も。

 

体のバランスがあまり上手にとれない人は、そのまま落下しても不思議ではないだろう。

 

しかもこの橋、かなり勾配がきつめである。

 

坂を下る時、荷車はとにかく危ない。

 

無言で坂を下っていく。いつでも最悪の事態に備えながら。

 

クラウディアが。あたしを狙っていた蝙蝠を矢で叩き落としてくれた。本当にありがたい。

 

橋を渡りきる。

 

全員が渡りきって、それで冷や汗。

 

だが。今日の大一番は、此処からだ。

 

この位置からだと、ゆっくり降りて来ている気球のこともあって、鼓動している何かの球体がよく見える。

 

球体は鉱物で出来ているように上からは見えていたが、近付いて見ると、なんだか赤黒いもので囲まれている。

 

しかも鼓動しているから、まるで心臓のようだ。

 

なんだか、ドラゴンの体内みたいだなと今更ながらに思う。

 

そもそもドラゴンの口から入ってここに来ているのだ。

 

当たり前だろうに。

 

まずは、皆にこれからやる事を説明する。

 

レントが、頭を掻いていた。

 

「正気か?」

 

「大丈夫、なんとか出来る筈だよ。 あたしの空中機動技術、跳躍技術、このルフトブースター、クリフォードさんのブーメラン操作、全部が合わさる必要があるけれどね」

 

「体が軽い僕がやろうか?」

 

「いや、タオ。 お前、昔と違ってもう軽くないぞ……」

 

レントが正確な指摘を入れる。

 

タオはもう背も伸びていて、はっきりいって標準的な体重だ。見た目はやせ形だが、しっかり筋肉も詰まっているからである。

 

そうかなと、何故か恥ずかしそうにするタオ。

 

その心理はよく分からない。

 

「私は……」

 

「空中戦、出来る?」

 

「い、いえ。 すみません」

 

「私も支援はするわ」

 

セリさんも挙手。

 

届かないようなら、この位置から魔力をフルパワーで使って、植物を展開してくれるらしい。

 

それはそれで助かる。

 

ともかく打ち合わせをした後、あたしは軽く背伸びをして。

 

そして、助走。

 

あまり広くない場所だが、それでも充分な距離は稼げている。そのまま、あたしは全力で跳躍していた。

 

足の筋力もあるが、それだけじゃない。

 

そのまま跳びつつ、ルフトブースターをフル活用する。そして、足下で熱操作して爆破。更に飛距離を稼ぐ。

 

ひょお。

 

凄い高さだ。

 

ルフトブースターがない場合、死亡確定だろうなこれは。そう思いながら、飛んでくるブーメランを見る。

 

流石クリフォードさん。

 

元々魔術で操作しているブーメランだ。狙いは完璧。更にこのブーメラン、人間大ほどもある。

 

錬金術で強化している手袋がなければ、掴んだときに指を持って行かれるか、そうでなくとも複雑骨折だっただろうか。

 

しかも、魔物を倒すときと同じくらいのパワーで投擲している。

 

理由は簡単。

 

そうしないと、橋の向こう側まで渡るためのパワーを追加できないからだ。

 

掴む。

 

がっと、凄い衝撃が来るが。

 

それでもあたしは無言で、掴み。あまり回転しないようにブーメランを投擲してくれていた事もあって。

 

一気に加速する。

 

見えてきた。橋の向こう側。

 

ぞっとするほど高い。何度も調整する。上手いこと着地できないと、待っているのは死だ。

 

いや、まて。

 

ワームがいる。それも数体。これは、着地と同時に戦わないといけないか。舌なめずり。まあ、いいだろう。

 

クラウディアが、音魔術で声を届けてくれる。

 

「ライザ、いけそう!?」

 

「いける。 だけど、ワームが待ち構えてる」

 

「座標を指定して! 撃ち抜く!」

 

「……そうだね。 頼むよ!」

 

二秒後。

 

一矢。

 

あたしを丸呑みに出来そうなワームに、バリスタみたいな矢が着弾。流石である。一撃で、体半分吹っ飛んだワームが、壁に染みを作りながら、それでもまだビタンビタンともがいている。

 

他のワームが、警戒音を立てているが。

 

更に二秒後、もう一匹が吹っ飛んでいた。

 

しかも、矢で貫いた上に、壁に串刺しにしている。

 

流石はクラウディア。

 

狙撃手としては、もはやこの世界でも上位に食い込んでくるだろう。それも、最上位にだ。

 

三、四。

 

矢がそれぞれ、確実にワームを仕留める。

 

着地。

 

どうにか集中して、着地に全力を注げた。ブーメランを地面に突き立てる。

 

腰に結んでいたロープ。これは、こっちにあたしだけ渡っても意味がない。こちら側の何かに、ロープを結び必要がある。

 

最悪、ブーメランでもいい。

 

残ったワームは。

 

二体同時。左右から来る。

 

右のは、けり跳ばして、奈落の底に叩き落としてやる。だがもう一体が、必殺の間合いから、牙をつきたてに来る。

 

両腕をクロスして人体急所をガードしようとした瞬間、最後の一体であったそのワームを、クラウディアが撃ち抜いていた。流石である。

 

すぐにクラウディアの声が届く。

 

「ライザ、大丈夫?」

 

「問題なし! こっち側の地歩を固めて、それでロープを固定するよ!」

 

「まだ蝙蝠が来る可能性があります! 警戒は続けてください!」

 

「ありがとうパティ。 そっちも気を付けて!」

 

そういえば、空中で蝙蝠が仕掛けてこなかった。

 

見ると、セリさんの周囲に、大きな植物がある。

 

多分あれが、あたしに仕掛けようとした蝙蝠を叩き落としてくれていたのだろう。空中機動に、今まで人生でない程に気を張った。だから、こういう支援は、本当に心強いと言える。

 

土台を確認。

 

確かに橋の状態が良くない。少量持って来ている建築用接着剤を用いて、橋の土台をがっちり固めてしまう。

 

そして、ブーメランをがっつり地面に固定すると。

 

それにロープを結びつけて、手を振った。

 

「こっちはおっけい! 誰か一人、支援にロープを渡って来て!」

 

「私が行きます!」

 

向こうでもロープを固定したようだ。

 

そして、パティがロープに逆さにつかまるようにして、こっちに来る。

 

意外にロープにぶら下がって移動するだけなら、それほど難しいものではないのだが。

 

それでも途中で蝙蝠が襲ってくる可能性があるので、そこまで楽でもないか。

 

此方に到着。パティが、冷や汗を掻いているのが分かった。

 

更に、向こう側での橋の土台も固定が完了したようだ。後は、このロープと命綱を使って、橋を修理していくことになる。

 

橋の背骨になる部分が、非常に危ない状態になっている。それをまず手入れすることになるだろう。

 

その一番難しい作業は、クリフォードさんに頼む事になる。

 

あたしは一度腰を下ろして、魔力の回復を待つ。パティは何度も冷や汗を拭っていた。この地下空間は、むしろ涼しいのに。

 

「生きた心地がしませんでした。 見るのも、渡るのも……」

 

「大丈夫、そのうち慣れるよ」

 

「そうですね……。 腐った王都を改革するには、それくらいの肝が必要ですね」

 

その通りだ。

 

しばし休んでから、橋の修理にあたしも加わる。パティにも、支援をそのまま続けて貰った。

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