暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

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遺跡「北の里」の心臓部を動かす事に成功し、更には余所から掛けられていたセーフティを力尽くで外すことに成功もしたライザ。

一気に冴えた頭で遺跡攻略を……と行きたい所ですが。

思いもよらぬ壁が待ち構えていました。


地底に蹲る汚山
序、里の最下層


遺跡、「北の里」の最下層に到着。幾つもの橋を通って、それでやっとここまで来ることが出来た。

 

汚物まみれだ。

 

とにかく、此処を掃除するところから開始しないといけないだろう。死んでいる大量のワーム。

 

ワームや蝙蝠の糞。

 

何度か、遺跡そのものが呼吸した。

 

多分換気機能なのだろうが。

 

それくらいダイナミックな空気の入れ換えだった。

 

それで、ここでも呼吸はどうにか出来ているが、それにしても汚物だらけで異臭が凄まじいのもまた事実だ。

 

ワームはいるにはいるが、あたし達を見るとさっと逃げ散ってしまう。

 

さて、まずは掃除からだな。

 

床は、石畳だ。

 

というか、クラウディアが散々バリスタみたいな矢で制圧射撃をしたのに、穴一つ開いていない。

 

これはまた、あたしがしらないテクノロジーで作られた素材なのだとみて良いだろう。

 

広さは、かなりある。

 

クーケン島全域くらいはあるとみて良いだろう。

 

ともかく、掃除からだ。

 

あたしは、一度外に出て、以前作った中継地点に水も含む荷物の大半を降ろす。そして、荷車に、油紙を何重かに敷いていた。

 

これからやるのは、ピストンでの汚物排除作業だ。

 

「レント、これ」

 

「おう、シャベルだな」

 

「うん。 何をするかは分かるよね」

 

「……ああ、分かってる」

 

げんなりするレント。

 

大丈夫。

 

みんな、死ぬほどげんなりしている。だけれども、ここでやっておかなければならないのである。

 

順番にやる事は説明する。

 

生き残っている僅かなワームを片付けた後。

 

最下層に降りて、少しずつ外に死骸と糞を捨てる。これは何回も何回も往復してやっていく事になる。

 

油紙はあたしが直にゼッテルを弄ったもので、非常に強化してあるので、簡単に糞で汚れるようなものではない。外に汚物を運び出したら、流砂にすてる。

 

大型のワームの死体は、糞を運び出している間に、あたし達が焼き尽くしておく。そして、ある程度綺麗になって来たら、少しずつ消臭剤を撒いて、周囲を調査できる状況にしていく。

 

荷車はレントが引く。

 

そして、蝙蝠などの奇襲、いざという時の補助のために、もう一人が常につく。

 

更に中途で全域を見渡せる場所に、常にクラウディアが待機。

 

下でセリさんは待機して、もしも誰かが落ちた場合は、植物操作の魔術で対応する。あたしもその時は対応するつもりだ。

 

それらを説明すると。みんなげんなりしたようだが。

 

糞だらけ死体だらけの中を歩き回る訳にもいかないし。

 

何よりも、掃除を進めていけば。

 

汚物を処理するようなシステムを見つけることができる可能性は低くない。

 

最下層は住宅が多くあったようだ。

 

それならば、当然出るゴミや汚物を処理するシステムはあった筈。それを見つけ出せば、荷車による汚物のピストン処理はしなくても良くなるはずだ。

 

順番に説明して、皆のやる気を喚起する。

 

まああたしは農家の子だ。

 

堆肥の扱いには慣れているし、そうなる前の汚物の扱いも然り。

 

ともかく、順番にやっていくしかない。

 

それにだ。

 

対処するのが汚物なのだったら、それはむしろ気が楽である。

 

クーケン島の最下層に降りたとき。

 

其処にたくさん散らばっていた、使い捨てられた人達の人骨を見た時の悲しさに比べたら。

 

汚物くらいは、大丈夫。

 

ただ、病気になる可能性はあるから。

 

直に触るのは厳禁だが。

 

ましてや相手は未知のワームなのである。

 

打ち合わせを終えると、一度地下に。そして、シャベルですくって、汚物を荷車に積んで、捨て始める。

 

あまり効率は良くないが。

 

汚物を流砂に捨てに行くのと同時に、あたし達は周囲を調べ始める。シャベルで汚物をどけて、少しずつ行動範囲を拡げていくのだ。

 

タオは意外とこういうのは平気そうである。

 

「た、タオさん、平然とやっていますね」

 

「僕達も幼い頃は泥だらけになって辺りを走り回っていたし、多少はね。 それに遺跡を探索するなら、汚れるのは仕方が無いんだよ」

 

「まあ、消臭剤、消毒剤は後で皆で浴びておこう」

 

「はい……」

 

パティが悲しそうにしている。

 

何かを失ったような目をしているが、こればかりは仕方が無い。

 

それに、世界が滅ぶかの瀬戸際だ。

 

この程度の事で、足を止めていられない。

 

汚物の堆積は思ったほど凄まじくなく、ガスもそれほど出ていないようである。レントが戻って来たので、すぐに次を詰め込んで、地上に行って貰う。

 

その間に、タオが手を振る。

 

住居らしいものが見えてきた。それを掘り出す。中には、大量の幼体のワームが死んでいて。

 

人間がいなくなったあと、ワームが住処にしていたのが分かった。

 

タオが、死体を引きずり出した後、家の中を確認する。

 

どうやら、トイレを見つけたらしい。

 

消毒液で辺りを綺麗にした後、タオが色々と調べていて。やがて、そのトイレが、ごっと水を流し始めていた。

 

「よし、当たりだ。 細かいゴミは、多分トイレに全て流してしまえるよ」

 

「この水洗のシステム、王都のなんかよりずっと上だね」

 

「それは技術が違うからね。 とにかく、これで荷車での処理は死体に限定できると思う。 確実にやっていこう」

 

見ると汚物がこびりつかないように、かなり特殊な素材を利用しているらしく。

 

更には、水もしっかり流れていると言う事は、排水管も詰まっていないようである。

 

或いは、だが。

 

もっと大きな下水路があるかも知れない。下水路があるとしたら、恐らくだがメンテナンス用のハッチもあるはずで。

 

下水に、じゃんじゃか汚物を放り込んで、綺麗にすることも出来る可能性があった。

 

ただ、ここの下水がどう処理されているのかは非常に気になる所だ。

 

今の王都アスラアムバートなんかだと、下流の川に汚水は基本的に垂れ流しである。それが問題にならないのは、人間の集落がそれだけ少ないから。

 

王都の人口は三十万人程度だが、これがもっと増えたら、下流の川は使い物にならなくなるかも知れない。

 

昔は水質をどうにかするシステムが設置されていた可能性はある。

 

事実クーケン島でも、塩水を真水に変える装置があって、それがずっと動いていたのだから。

 

ただ新しく王都に水質浄化の装置をつける場合は、多分あたしが貼り付いても年単位で時間が掛かるし。

 

保守点検の為に専門の人員。

 

更には、その人員がずっと貼り付いていかないといけないだろう。

 

ともかく、順番に調査していくしかない。

 

タオも完全に目が据わっているが。

 

それでも、此処をまず綺麗にしないと駄目だと言う事は理解しているようだった。

 

「ワームが本当に汚してくれて……」

 

「! みんな、壁際に!」

 

「レントくん!」

 

皆がさっと壁際に。荷車を引いていたレントも同様。

 

遺跡の上が前のように開いて、呼吸している。それで、空気が一気に入れ替わっているようだ。

 

凄い勢いで空気が吸い出されて、新しいのが入ってくる。

 

こうでもしないと、遺跡内のガスは処理出来ないのだろう。

 

エアドロップを研究しているときに知ったように、人間の呼吸で、どんどん毒が出て溜まっていく。

 

本来は、こうやって時々空気を入れ換えていた。

 

それも、動力の停止で止まっていた、と言う事だ。

 

此処は本当に。

 

今では考えられない技術で動いているんだなと、感心してしまう。

 

流石にエンシェントドラゴンがもたらした知恵だ。

 

ともかく、風をやり過ごすと。

 

汚物を処理し続ける。

 

ワームの死体のうち、大きいのは焼いて消毒処分した上で、崩してレントに外に運んで貰う。

 

流砂に沈むと最終的に死体がどうなるかは分からない。

 

ただ、流砂はもうあっても意味がないものではあるし。

 

ちょっとやそっと魔物の死体が沈んだくらいで、どうにかなる程度のものでもないだろう。

 

黙々と作業をしていく。

 

やがて、他にも家屋が発掘出来はじめた。

 

次の日は、マスクを用意しよう。

 

臭いを遮断するためのものだ。それに、臭いが来ているということは、汚染物質が来ている事も意味している。それも遮断しないとまずい。

 

フィーが懐で声を上げる。

 

時間か。

 

この子は賢いな。

 

そう思って、もしもの未来を考えると、どうしても口を引き結んでしまう。

 

「よし、一度外に。 食欲は……大丈夫?」

 

「ちょっと厳しいです……」

 

「分かった。 一度今日は撤退しよう。 準備がいるよ、これを処理するのは」

 

あたしの言葉に、皆頷く。

 

そして、最後に山盛りに荷車にワームの死体を詰め込んで。

 

外まで運び出し。

 

流砂に投棄して、そして一息ついた。

 

みんな口数が減っている。

 

「タオ、力仕事はもういいから、地図作りに専念……出来るのはいつくらいになりそうかな」

 

「少なくともあと一日は汚物を処理しないと」

 

「そうだろうね。 橋の幅からして、今の荷車が持ち込める中では限界か」

 

遺跡の内部にあるテクノロジーを見ると。

 

或いは自動清掃とかが出来るシステムがあるかも知れないが。

 

そもそも、それにたどり着けていない状況だ。

 

まずは皆に消臭剤を撒く。

 

それでも、何かを失ったような顔をみんなしているが。

 

そして、桶に持ってきてある水を出して。顔とか洗って貰う。

 

人前でやるのは抵抗があるかも知れないが。今日は早めに引き上げる事もある。それに、である。

 

「明日は臭いを遮断するためのマスクを人数分持ち込むよ。 それと……今の戦闘用の装備の上から、汚れてもいい布を着込もう。 手袋も専用のがいるだろうね」

 

「今の装備は、もう既にかなり汚れてしまっているように思います」

 

「大丈夫。 今日は時間があるし、アトリエに戻ったら錬金釜にエーテル入れて、それで汚染要素を取り除くよ」

 

調合の応用だ。

 

こう言う事も既に出来る。

 

実はあたしは、私服はほとんど持っていないのだが。このエーテルでの調合を応用した洗浄をするようになってから、兎に角服のもちがいい。

 

一応いつか使うかもとドレスとかもクラウディアに貰って持ってはいるけれども。

 

それも時々釜で洗浄している状況だ。

 

「指ぬきの手袋をしている組は、今のうちに桶で手も洗っておいて。 水はまだたくさん持って来てるから」

 

「酷い臭いね……」

 

「ごめんねクラウディア。 後でしっかりお風呂で手入れはしておいて。 明日はそうならないように準備をしてくるよ」

 

「うん……」

 

クラウディアが悲しそう。

 

ともかく、クラウディアの服もしっかり後で釜に放り込んで綺麗にしてしまおう。

 

一通り洗浄が終わった後は、荷車の油紙も捨てる。油紙はその場で焼いてしまう。

 

油紙でしっかり荷車そのものはガードしたとはいえ、これも工夫がいるか。荷車には水も含めて、汚染が許されないものが結構積み込まれてきているのだから。

 

軽く幾つか話した後は、「数多の目」を呼んで遺跡を後にする。

 

タオが、「数多の目」と話をしていたが。

 

内容はわからない。

 

クリフォードさんも、これは理解出来ているか、微妙な所だろう。

 

後はアトリエに無言で戻る。

 

そして、まずは男衆には外で待って貰って。

 

女性陣から服を脱いで貰って、一人ずつ調合の要領で綺麗にしていく。エーテルに溶かして要素を分解する行為の応用だ。

 

あたしは魔術に関してはまだまだ応用がきかない、パワー任せの部分があるが。

 

調合に関しては、極めたとまで自称はしないが、それでも色々出来る。

 

フィーは臭いはまったく気にしていないようで、服を脱いでカーテンの向こうで順番に待つ皆を、不思議そうに見ていた。

 

「はい、パティ。 多分遺跡に行く前より綺麗になってると思うよ」

 

「ありがとうございます。 服は正直どうでもいいんですが、胸鎧と大太刀は家宝同然ですので……」

 

「そうだったね。 これを着込んで、もう公式の場に出てるんだよね」

 

「はい。 アーベルハイムは常在戦場の覚悟有りと、腑抜けた貴族に見せつける必要がありますので」

 

だとすると、綺麗すぎてもダメかも知れないな。

 

案配が難しい。

 

とにかく、順番にみんなの服を洗浄していく。あたしは女衆では最後。セリさんの服は、ちょっと独創的な作りになっていて、へえと感心した。貫頭衣に近いのだけれども、細かい刺繍とかが彫り込まれていて、それがとても独創的だ。

 

「セリさん、これって氏族ごとに決まっているんですか?」

 

「そうよ」

 

「それよりライザ、真っ裸で調合するつもり!?」

 

「下着は着てるし、気にしなくていいでしょ」

 

ダメ。

 

そう叫んだクラウディアが、珍しくげきおこである。

 

クラウディアがてきぱきと服を漁って、適当なのをあたしに着せる。普段と勝手が違うが、まあ仕方が無いか。

 

ともかくあたしの服も綺麗にする。

 

そして服を着直すと、男性陣を呼んだ。女性陣は、すぐに風呂に向かって貰う。パティが提案していた。

 

「ライザさんもそうですが、アーベルハイム邸の風呂を使ってください。 その、酷い仕事だったと思いますけれど、これも世界のためだったので」

 

「そう。 ではお邪魔しようかしら」

 

「男性陣も、後から来てください」

 

「ああ、風呂借りるぜ。 色々酷い目にあったな……」

 

一番間近で汚物と対面し続けていたレントが、遠い目でぼやく。

 

ともかく男性陣にもカーテンの向こうで服を全部脱いで貰って、一つずつ処理する。

 

てきぱきと処理していくのを見ると、クリフォードさんが呆れ気味だ。

 

「なんというか逞しいなライザ……」

 

「伊達に田舎街で育っていないですからね。 欲求が色々ずれてるのは自覚しているけれども、何も経験しないでもの言ってる訳じゃないんですよ」

 

「俺たちも自然にライザがリーダーシップを取るのを受け入れていたからな、昔から」

 

「うん。 でも、それが不愉快じゃないんだよね。 多分器の違いだよ」

 

服を綺麗にしていき、男衆もみんなアーベルハイム邸に向かう。最後にあたしも、一緒に其方に。

 

大きめの風呂を貸して貰う。

 

人心地がついた気がした。

 

流石にあたしも、エーテルで自分を洗う気にはなれない。

 

多分それをやると、自分を再構築してしまう事になるだろうし。地力で元に戻ることは出来ないだろう。

 

調合中の釜には、間違っても手を突っ込むな。

 

そうアンペルさんは何度も念押ししていたな。

 

無言で風呂で汚れを落とすと。

 

アトリエに戻り、クラウディアが何かいいたそうなので、念の為にもう一度消臭剤を撒いておいた。

 

さて、此処からだ。

 

以前集めたデルフィローズの繊維を用いて、対汚染用の布を作っていく。

 

全身にまとうためのものも作るし。

 

頭に被るずきんも作る。

 

そしてマスク。

 

マスクは複数の布と、更には幾つかの魔術を掛ける。空気を通りやすくするためのものと。

 

汚染を通さないようにするためのものだ。

 

それぞれの顔の大きさによって調整出来るように、作りも工夫する。

 

黙々と調合をしていくと、クラウディアがお菓子を焼いてきてくれたので、ありがたく相伴に預かる。

 

夕方までに、皆の対汚染服は作っておく。

 

それと、シャベルを増やしておく。

 

これくらいは、今ではもうすっかり簡単だ。

 

荷車用に、使い捨ての強化ゼッテル油紙も。これについては、後何回か汚物処理で日を潰す事を想定して、少し多めに作っておく。

 

丁度油紙を作り終えたタイミングで、夕方になり。

 

ミーティングの時間になった。

 

軽く話はしておく。

 

ボオスがいつものように皮肉を言ったが。今日はみんな、苦笑いをする余裕もないようだった。




とても嫌な壁の登場です(笑)

しかしながらこの程度の嫌がらせは想定内と、ライザは颯爽と対策を始めます。

仲間には何かを失った目をする者がいるかも知れませんが。

世界の終わりには替えられません。

本作の次に連載する作品はどれが良いですか?

  • 暗黒!アトリエシリーズのまだ未掲載の作品
  • 真女神転生Ⅲの二次創作(真Ⅴ要素なし)
  • 流行り神二次創作
  • その他二次創作
  • オリジナルの長編
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