暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

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この状況から逃げ出さないパティはとても立派です(唐突)。

実際問題、汚れ仕事を部下にやらせるような上司は、碌なものではありませんので。

パティがアーベルハイムの当主になり。更に王都を導くようになった時は。

腐りきったロテスヴァッサ王国は、少しはマシになるかもしれませんね。


2、浄化のテクノロジー

アトリエに戻る。流石に汚染避けの服と消臭剤の効果はばっちり。問題は靴だ。それについては、帰る前に水でみんな一度洗い。

 

そしてアトリエに戻った後は、あたしが錬金釜で調整して、新品同様に綺麗にした。

 

とくにあたしの場合は、蹴り技が戦闘で重要なのである。

 

靴の調製は、必須と言える。

 

他の皆も、接近戦では基本的に蹴り技をしなければ話にならない。此処で言う蹴り技は、相手を蹴り殺す事ではなく、踏み込みの話だが。

 

いずれにしても、靴は戦闘では大事なのだ。

 

戦闘以外でも、人間の足という脆弱なものを守るために、靴は必須なのである。

 

ともかくアトリエで丁寧に靴を綺麗にして、それで一段落。夕方にミーティングをする前に、またアーベルハイムで風呂を使わせて貰う。

 

流石にみんなで入るような事はしない。というか風呂だけで四つもある(しかも来客用)なので、順番に入ってそれでおしまいだ。

 

或いはだけれども。

 

アーベルハイム邸は、もともと貴族の邸宅なんかではなくて、宿泊施設だったのかもしれない。

 

もしそうだとすれば、それはそれで面白い話ではあるのだが。

 

みんなさっぱりした所で、ミーティングに入る。

 

タオがまず、成果を説明してくれた。

 

「今日発掘できた施設は、やはりコントロールセンターだったよ。 ただし、全てをコントロールしているわけでもなさそうだったけど」

 

「続けて」

 

「うん。 あの地下層の、換気システム。 遺跡の呼吸だね。 あれが適切に働いているのが、光学式のコントロールパネルで確認できた」

 

「他にはないのか、あの階層を全部さっぱり洗うみたいな」

 

本音が出るレント。

 

まあ、これは仕方が無い。

 

パティだって、毎日死んだ目で上と下を行き来しているのだ。

 

あたしだって、気の毒だなとは思うのである。

 

一方フィーはまったく気にならないようで、全然平気なようだが。

 

「流石にそれはないけれど、近いシステムは見つけたよ」

 

「本当か!」

 

「ただ、試運転がいる」

 

頷く。

 

説明を聞く必要があると思ったからだ。

 

あの遺跡は、もともと地下に潜るのに百年くらいかけているそうなのだが。その過程で、あの最下層より下にも色々作ったのだとか。

 

大雨が来た時に、水を逃がす施設とか。

 

更には、浄水を提供するための施設。

 

そしてやはりあった、下水処理施設だ。

 

それを聞いて、あったかとは思った。それはそうだろう。相当な人数が暮らしていたのである。

 

排泄物をはじめとする汚物は、たくさんあったのだから。

 

「具体的にどうすればいい」

 

「地図で、この辺り。 更に下に降りられる入口がある。 その中に小型の動力炉があるんだけれども。 これが、ライザが復旧させたものと連動しているっぽいんだ。 ただ、さっき調べた感じだと、あまり上手に動いていない」

 

「何か起きていると」

 

「うん。 これ自体はただ動力を蓄えて、地下にある下水処理を上手く動かすためのものだから。 あの生きている動力みたいな危険はないと思う。 あるとしたら……」

 

ワームだろうな。そうあたしは思った。

 

ワームがいるとして、そいつが暴れないように仕留めなければならないという事か。

 

いや、それだけじゃない。

 

調べに入ろうとしたら、ワームがうようよぎっしり、なんて可能性だって否定はできないのだ。

 

そう考えていると、タオが眉を下げていた。

 

「ライザ、それについては大丈夫。 ワームじゃない」

 

「そうなの?」

 

「うん。 調べている間にコントロールパネルから、映像を見られる事が分かったんだ。 どうも機械が止められているっぽいね。 恐らくだけれども、里の人達が去る時に、嫌がらせをしていったんだ。 ワームをばらまいたのと同じようにね」

 

「……」

 

そうか。

 

里を放棄すれば、古代クリント王国のアーミーや錬金術師が押し入ってくる可能性があったわけで。

 

それを撃退するために、二重三重の面倒な仕掛けをしていったというわけである。

 

確かに今の状況。

 

封印が存在していて。

 

それが門である事が分かっていなければ、あたしだってとっくにあんな場所からは離れている。

 

それが物好きにもシャベルを振るって汚物を処理しているのは、文字通り世界の滅亡には変えられないからだ。

 

「じゃあ、明日はそれを掘り出せばいいんだな」

 

「うん。 その後は、また僕達は作業できないから、ごめん」

 

「何、気にするな。 それでボオス。 アンペルさん達は」

 

「ずっと「星の都」だとかいう場所を調査しているようだぜ。 なんだか重要な事が分かりそうだって話でな」

 

そうか。

 

手伝って貰えたらと思ったんだが。アンペルさんは、そもそもそれほど肉弾戦が得意じゃないし、身体能力だって高くない。

 

リラさんは平然と汚れ仕事をやるだろうが。

 

そもそもアンペルさんとセットで最大出力を発揮できるのだ。

 

だったら、今はその「星の都」の追加調査が必須だろう。

 

あそこにいた精霊王「光」(おそらく)は、何か知っていても不思議ではない。

 

今後のために、詳しく調べておくのは必須と言える。

 

だとしたら、あたしとしても、ああだこうだは言えなかった。

 

「ボオス、いつものように状況は伝えておいてね」

 

「問題ない。 汚い話ばっかりで気が滅入るがな」

 

「仕方が無いよ。 こればっかりは」

 

「ああ、そうだな。 汚い部分も世界にはたくさんあって、それを掃除してくれている奴がいる。 それを理解しない限り、世界はきちんと動かないもんな」

 

その通りだ。

 

皆が解散してから、薬、それに油紙を生産しておく。

 

最近は爆弾の使用量がどんどん減っているが、それはあたし達の力量が増しているから。いざという時はどれだけ使っても足りないくらいである。

 

あたしの切り札のグランシャリオは、一度の戦闘で二度ぶっ放したらガス欠になる。

 

爆弾は、使い方次第ではグランシャリオ以上の火力が出る。

 

特に、今後はフィルフサとの戦闘を念頭に置く必要がある。

 

それも古代クリント王国のせいで爆発的に増えたのでは無く、それ以前にいた現有種の可能性がある。

 

強さが、グリムドルにいたフィルフサと比べてどうかはまったく分からない。

 

性質もだ。

 

爆発的に増殖して、自分の土地に変えた所に住んでいるフィルフサが。そうでないフィルフサに比べてどうなのか、まるで分からないのである。

 

ただ、それもあくまで予想。

 

オーリムの全域がフィルフサに汚染されている場合、グリムドルにいたのと大差ないのが出てくる可能性もある。

 

ただそれは楽観だ。

 

そもそもフィルフサ王種とは今まで一度しか戦っていない。

 

あくまで、最悪の予想に備えて。

 

備えはしておかなければまずい、ということである。

 

夜半になるまで調合して、今日はそれで切り上げておく。

 

デルフィローズの繊維から作り出した布は、それなりに余っているので。明日の朝一にでも、カフェに納品するか。

 

風呂にはもう入っている事もある。

 

後は、寝るだけだ。

 

フィーはそれほど体調も悪く無さそうである。

 

何か要因があるのかも知れない。

 

異臭も気にしていないようだし、あの遺跡には何かしら相性が良い部分があるのかも知れなかった。

 

 

 

翌朝。

 

朝一番で、セリさんの畑に出向く。

 

何だか凄い事になっているのは分かっていたが。朝一と夜に作業をしているセリさんは、気にしておらず。あたしが指定された毒を持ってくると、まずは中身を確認して、頷いていた。

 

「禍々しいまでの毒ね。 期待通りだわ」

 

「ありがとうございます。 それで使えそうですか」

 

「充分ね。 これに耐えられれば……いや、浄化するのが目的よ。 既に繁殖のコントロールは出来るようになった。 あとは、この植物の浄化能力を試すだけ」

 

セリさんが、無言になって。

 

そして、目尻を拭っていた。

 

笑わない。

 

絶対に。

 

この人は、オーリムから此方の世界に来て、何百年も苦労を続けて来たのだ。やっと、その苦労が実を結ぼうとしている。

 

人間の時間とは感覚が違うことだって分かっている。

 

だけれども、セリさんは一人で。ずっと戦い続けて来た。

 

クリフォードさんがぼそりと言ったのを以前小耳に挟んだが。

 

ならず者の類を容赦なくセリさんは殺すくらい苛烈な事をしていたようだし。此方に来て、人間を嫌いになる一方だっただろう。

 

あたしは、人間という種族から逸脱することをもう何とも思っていないけれども。

 

それでも、あたしの事を信頼してくれたことは嬉しい。

 

セリさんは、そうでなければ。

 

絶対にまだ人間であるあたしの前で、涙なんて流さなかっただろう。

 

しばらくして落ち着いたセリさんは、ミーティングでと言うと、黙々と畑での作業に戻る。

 

さて、あの毒素だが。

 

生半可な代物じゃない。

 

そう注文を受けたのだ。あれを喰らって大丈夫だったら、だいたいの汚染は回復させる事が出来るだろう。

 

いや、まて。

 

そもそもとして、王都の下水処理に、あれは使えるのではあるまいか。

 

ちょっとそれについては、考えておこう。

 

今の時点では垂れ流しになっているのだ。

 

それをどうにかするためには、あたしはあらゆる手段を検討しなければならない。

 

農家の娘だから、汚染の除去がどれだけ大変かは分かっているつもりだ。

 

この井戸は。

 

あらゆる意味で、徹底的に洗浄しなければならないだろう。

 

帰路で義賊三人組とばったり。

 

挨拶して、軽く話をする。

 

話によると、カサンドラさんが作っていた例のミラクルフルーツが決定打になって、ついに農業区に人を入れる話が持ち上がったという。

 

近々ヴォルカーさんが直接足を運んで、此処で働く人間は王都の落ちこぼれであるという風評を払うつもりだそうだ。

 

また補助金を出して、農業で成果を上げた人間を激賞する制度を作るつもりだという。

 

王都の貴族はすっかり勢いをなくしており、王族は既に気力なんて持ち合わせていない。

 

多分、ヴォルカーさんの思うとおりに話は進むだろうと、義賊三人組の姉御であるドラリアさんは言った。

 

「結構色々細かい所まで知っているんですね」

 

「実はな。 アーベルハイム伯爵が、あたしらの事を近衛に迎えたいって話をしてくれていてな」

 

「近衛ですか」

 

「そう。 直接のお抱えの戦士だ。 義賊というのは、どうしても色々と動きづらいからね。 アーベルハイム伯が資金面で支援してくれたら、それはもっと義賊としてやりやすくなる」

 

それは、義賊なのだろうか。

 

ちょっとよく分からないが。

 

ヴォルカーさんは、今まで通りに活動してくれれば良いという話をしてくれているという。

 

なるほど。

 

より良い活動のために、連携するということか。

 

まあこの人達は、義賊といいながら「賊」の行動は一切していない。

 

それにだ。

 

この人達の行動は属人的な善性でなりたっている。

 

ドラリアさんは、自分に子供が出来ても、その近衛としての契約は所業をしっかり確認するまで結ばないという話までした。

 

それならば、確かにアリなのかも知れなかった。

 

「まあ、良い人を見つけないといけないけどね。 あたしらは」

 

「はあ、そうなりますか」

 

「ライザ。 あんたのおかげだ。 あんたが来てから、王都はどんどん良くなってる。 偉そうなだけの無能貴族がいなくなって、街の機械がたくさん直って、魔物も街の周囲から姿を消して、街道で商人が襲われることも減ってきた。 街の中の治安も、見違えるくらい良くなった。 あんたの恐ろしさに、悪党共が萎縮してるんだ。 あたしらは、以前は今と比べものにならないくらい悪党共を叩き伏せて、アーベルハイム伯……当時は卿に突きだしてた。 大きな悪党の組織はなかったけど、それでも十数人で悪事を働いている与太者はいた。 そういうのも、全部片付いた」

 

ありがとうと言われたので。

 

あたしは咳払い。

 

まだ終わっていないと。

 

王都を去るのはもう少し先になる。

 

その時には、機械を全て直してから去る。

 

それについて説明すると、義賊三人は驚いて。顔を見合わせていた。

 

更に水周りの修理が出来るかも知れないと説明をすると、更に嬉しそうにしていた。

 

「やっぱりあんた、人間離れしているねえ。 もしもそれらが終わったら、改めて礼を言わせて貰うよ」

 

「いえ。 とにかく、やってみないと分かりませんが、出来る範囲では努力します」

 

「ああ。 あたしらも、もう少し気合いを入れて街のために義賊をするよ!」

 

「へい姉御!」

 

取り巻きの二人も、そう声を上げる。

 

あたしはそれを微笑ましいと思ったが。

 

馬鹿馬鹿しいとは、思わなかった。

 

 

 

朝のミーティングを済ませる。

 

随分と気分がいい。

 

色々と、問題が解決しているから、かも知れない。

 

それよりも、まずはやるべき事を順番にやっていかなければならないだろう。

 

今日もまずは結局の所汚物の処理からやらないといけない。

 

それがしんどいが。

 

それでも、やるべきはやる。それだけだ。

 

皆に対汚染用のマスクや頭巾、それに上から被る服を配って、そして遺跡に向かう。油紙も、ちょっと多めに用意しておいた。

 

「数多の目」によって遺跡に向かい。流砂の中州に作っておいた物資集積所で、物資を先に降ろしておく。

 

油紙は多めに作ってあるので、多分大丈夫だろう。

 

荷車のセッティングをしながら、話をしておく。

 

「今日も同じフォーメーションで。 多分蝙蝠はいなくなったと思うけれど、それでもクラウディアに音魔術で支援はしてもらいたいからね」

 

「分かった。 今日も俺が力仕事だな。 得意分野だ、やってやる」

 

「マスクのおかげで、臭いもあまり気にならなくなりました。 なんとかやってみます」

 

「ただ、タオが見つけた下水処理施設を掘り出したら、一旦汚物の運び出しはとめて、全員で下に来て。 対応は、全員でやろう」

 

決めるべき事を決めてから、遺跡に。

 

入口になっているドラゴンの口を合い言葉で呼び出して、中に入り込む。

 

遺跡の中は、明るい。

 

最初に入った時が嘘のように。

 

鼓動している動力は、千年はもつ。この遺跡には、限られた人間しか入れないように処置はする必要があるだろうけれど。

 

封印そのものは、どうしよう。

 

封印されている門の場所がはっきりしたら、封印そのものは砕いてしまうという手もあるのだが。

 

いや、それはまずいか。

 

そもそもフィルフサが封印の向こうでどうしているかもよく分からないのだから。

 

いきなり王種、いや将軍でもだ。ともかく指揮官級が率いる万単位のフィルフサが押し出してきたら、今のあたし達でも押さえ込めるかはちょっと何とも言えない。

 

勿論、水による防御をはじめとして、色々な手をさきに打つつもりではあるのだが。

 

それはそれだ。

 

作業を開始する。

 

今日もシャベルで汚物をすくって、荷車に乗せて、外に運び出していく。そのまま、淡々と作業を進めていく。

 

レントは無言になる。

 

油紙でガードしたとはいえ、荷車には普段水や食糧も積み込むのだ。かといって、新しい荷車を作っているような暇もない。

 

今あたしが使っている荷車は、みんなで冒険した頃から、改良を重ねて頑張ってくれているものなのである。

 

勿論これと同等の性能のものを、今なら作れるが。

 

それでも、それを作っている暇すらも惜しい。

 

それはレントも分かっている。

 

どんどん汚物を外に運び出していく。重点的に、タオが示した地点を掘り出すようにして、汚物を処理していく。

 

感覚が麻痺してくるが、それでもやるしかない。

 

ワームの死骸も目に見えて減ってきた。勿論見かけ次第、全て焼いてしまう。汚物も出来るだけ焼いておく。

 

そうすると、遺跡が呼吸して、どんどん空気を入れ換えてくれる。

 

全自動での換気機能。

 

これはとてもありがたい。

 

そのまま作業を続行。

 

山となっている汚物を崩していく。やはり水分を飛ばすと、ある程度軽くなる。クリフォードさんはやはり手慣れていて、シャベルでどんどん汚物をより分けてくれている。そのまま、作業を続けて。

 

昼少し前に、ついにタオがいっていた下水処理施設の入口となっている、円形の蓋を掘り出すのに成功していた。

 

その周囲の汚物を運び出して、処分した後。

 

タオが、コントロールセンターに飛び込み、操作をする。

 

蓋は一応確認して見たけれど、ロックされていて、開かなかった。

 

タオが開けると、蓋は自分から開く。

 

周囲が汚物だらけだけれども、それはいい。ともかく、一旦みんなで集合する。昼メシは、一段落してからでいいだろう。

 

まずは、クリフォードさんが降りる。

 

更に地下になっている部分は、それほど深くはないが。それでも、面積そのものはクーケン島よりも広い。

 

そしてもっともっと多くの人が暮らしていたのが分かっている。

 

一日に出る汚物だけでも、相当な量だっただろう。

 

そういえば、食糧はどうやっていたのか。

 

状況から考えて、周囲から買い付けていたとは考えにくい。

 

まさか、ワームか。

 

いや、流石にそれは考えたくないな。

 

そう思いながら、地下に降りる。

 

皆、順番に降りて来て。外の見張りは、パティとセリさんに頼む。

 

クラウディアも、流石に気を張りながらの見張りが、これで一段落すると思うと、嬉しいようだった。

 

此処も灯りはしっかりついている。

 

カンテラがいるかと思ったが、そんな事もない。

 

下水は、特に汚れている様子もない。

 

それもそうか。

 

汚物塗れになっているとはいえ、今は人間が活動していないのだ。下水が汚くなる理由もないか。

 

タオが、大きな壁に向かって、何か操作している。

 

光学魔術による立体コントロールパネルを使っての操作。

 

クーケン島で見た技術は。

 

もう見慣れてしまった。

 

タオも本当になれた手つきで操作している。

 

これはタオが数百年前にもし行く事があったら、一年も経たずに技術に適応するのではないかと思う。

 

あたしでも、流石にそこまで出来る自信はない。

 

あたし達の中で、一番頭が回るのは、間違いなくタオだと。こう言うときにも、確信させられる。

 

「よし……構造は分かったよ」

 

「うん。 それでどうなってるの?」

 

「簡単に言うと、この先に大きなタンクがあって、其処に汚水と汚物を一度流し込むんだ。 この水路は、この遺跡にある住居や側溝とつながっていて、そこからこの先のタンクに行くようになってる。 タンクの内部では、複数の行程で汚物を処理して、それを下流の川に流しているようだね。 処理が終わると、飲めるくらいまで水は綺麗になっているようだよ」

 

「すげえな。 どういう仕組みだ?」

 

タオが言うには、目に見えないくらいちいさな生き物を順番に使うのと。汚物を分別して、発酵させたり焼いたりするのを全自動でやっているらしい。

 

そして、既に水は流れ始めている。

 

ただ、今はエラーが出ているという。

 

この遺跡の側溝。

 

彼方此方にあるそれが、詰まってしまっているからだ。

 

水を流そうにも流せない。

 

そういう事らしかった。

 

「側溝の場所は分かった。 というか壁際だね。 側溝をまずは掘り出して、その後僕が操作して水を流してみるよ。 それで、一気に汚物の処理が進むと思う。 ただ、処理の限界能力があるから、それについては確認を常にしないといけないけどね」

 

「また掘り出すのか……」

 

「でも、これで流砂に汚物を捨てなくて良くなる。 シャベルはまだあったよね。 シャベルのぶんだけみんなで掘れば、一気に作業を進められるよ」

 

タオが言うと、レントがうっという感じで言葉を詰まらせる。

 

咳払い。

 

外にいたパティとセリさんにも、クラウディアの言葉は届けていた。

 

シャベルの数は五つ。

 

二人は見張りについて貰う。

 

音魔術が使えるクラウディアがその内の一人だ。もう一人は、誰にするか。

 

手を上げるパティ。

 

「私もやります」

 

「汚物の中を歩くだけで、結構参っていたよね。 大丈夫?」

 

「覚悟は出来ています。 こういうのをしっかりやるようにならないと、王都に住み着いているだけで何もできていない貴族と同じです。 私はきちんと全部見て、経験するって決めましたから」

 

「分かった。 でも、此処でやった作業は、アーベルハイムの家で言ったらダメだよ」

 

頷くパティ。

 

それはそうだ。

 

流石にヴォルカーさんも、此処の実態と、やったことについて説明したら。多分無言になるだろうから。

 

一度地上に出て、消臭剤を撒いてから、みんな対汚染用の衣を脱いで、マスクも頭巾もとる。

 

それでも臭いが纏わり付いているようだ。

 

はあと、レントがとことん悲しそうにため息をつく。

 

分かっている。

 

だけれども、この作業が終われば、遺跡を一気に綺麗にしていく事が可能だ。荷車も、最下層だけで回す事に集中できるだろう。

 

そうなると、恐らくだけれども、汚物の処理速度も格段に上がる。

 

此処が正念場なのだ。

 

持って来ている水を先に飲んでから、食事にする。クラウディアも気を遣って、食べやすいサンドイッチを主体にしてくれていた。

 

みんなで黙々と食事にして。少しだけ休んでから。

 

再び重装備で固めて。

 

タオが指定した、側溝に向かう。

 

ワームの死体がぎっしり詰まっているので、それをまずあたしが焼いてしまう。遺跡が呼吸して、凄い勢いで空気を入れ換えてくれている。

 

この汚物の臭い。

 

流砂の周囲にいる魔物が釣られて、流砂にドボンとならないだろうか。いや、この砂漠でずっと生きてきたのだ。

 

其処まで馬鹿では無いだろう。

 

炭クズにしたワームの死体を崩すと、そのまま掘り出して、順番に避けて行く。まずは側溝を使えるようにする必要がある。

 

側溝といっても、あたしの背丈以上は深さがある長大なもので、長さもかなり凄まじい。

 

錬金術の装備で皆の身体能力を上げていなければ、何日も側溝だけでかかってしまっていただろう。

 

だけれども、皆、此処で一段落することが分かっている。

 

だから、気合いが入る。

 

流れ作業で、どんどん避けて行く。

 

確実に、汚物を側溝から出していく。全部最初に焼いてしまうので、ゴキブリも蛆虫も同じ運命だ。

 

ただこの閉鎖空間だったから、だろうか。

 

どっちも殆ど見かけないが。

 

「よし、側溝の入口は見えてきた! こっちは大丈夫だから、側溝が下水に流れ込む出口を確保して!」

 

「もう少しだな! 気合い入れて行くぞ! 畜生!」

 

「あんまり力入れすぎるなよ。 散らばるからな」

 

「……」

 

自分でやるといったけれども。

 

パティは相当に参っているようで、完全に無言になっている。

 

全力で汚物の掘り出し、避ける作業を続けた結果。ついに側溝から汚物を出し切ることに成功。

 

この遺跡が、涼しいことだけが救いか。

 

下の方の汚物は、半ば化石化していた。

 

さもありなん。数百年も此処は放置されていたのだから。

 

すぐに側溝を出て、タオが確認に行く。これでも駄目な可能性もある。皆で見守っている中。

 

タオが何かを操作したらしい。

 

側溝に、どっと水が流れ込み始めた。

 

この水も、多分川から直に引いているものではないのだろう。或いは、グリムドルの水を奪った……。

 

いや。それについては考えなくてもいい。

 

今は。ともかく。

 

作業がこれで、だいぶ楽になったことを、喜ぶ他なかった。

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