暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2 作:dwwyakata@2024
完全に復活した「北の里」の下水を利用して、最高効率で汚物を片付けて行く。
タオはずっと竜の像を任せる。調査のために、あたしは消毒を最優先でしておいた。臭いとか汚れとかが、調査の妨げになってはいけないからだ。タオもそれを見て、感謝はしてくれた。
あたし達は、ひたすらに「北の里」最下層の掃除を続ける。ずっと溜まり続けて来た汚れ。
恐らく、後から古代クリント王国が来た時に対応するためのものでもあっただろうそれを。
徹底的に処理して。
此処を綺麗にしていく。
勿論、その後には埃が積もっていくのかも知れないが。
その時はその時だ。
いずれにしても、此処にあるオーバーテクノロジーは、人間が安易に触ってはいけないものだろう。
だから、人間が魔物に対して攻勢に出て。
その後、錬金術の再度の災厄が引き起こされないように手を打ち。
更には、人間が錬金術以外の技術を用いて、世界に災厄を引き起こさないようにもしっかり手を打ってから。
此処に人が入れるように。
あたしは、手を打つ義務がある。
それが、錬金術と言う驚天の技術を手に入れたあたしの責務。
あたしにとっては、それが今後の人生の課題。
普通の人間の、なんてことのない人生というのは、もう終わりだ。
農家の娘か。
それは別に今後も同じ。
だけれども、責任を手にした時点で、あたしは変わったのだと言える。
父さんと母さんが、家庭を持って責任を手にして、保守的になった事が今となっては理解出来る気がする。
あたしは強大な力という非常に大きな責任を手にして。
「当たり前の人間」ではいられなくなった。
ただ、それだけの話なのだ。
この世界で錬金術師が犯したあまりにも大きすぎる過ちを、今後繰り返させないためにも。
あたしは、少なくとも。
錬金術を悪用する輩が出たら、全員即座に抹殺する事を考えなければならない。
人を殺す事には、抵抗はない。
それだけあたしは。
もう闇に浸かっているのかも知れないが。
それに後悔は無い。
「レント、この辺りの運んでいって!」
「任せろ!」
家の中を、クリフォードさんと一緒に片付ける。
やはりどの家も、完全にすっからかん。個人レベルでの持ち物は、此処を引き払うときに全て持って行ったのだろう。
書物どころか家具すらもほぼ存在していない。
本当に、此処には何も残さなかったのだ。
「北の里」を去った人達がどうなったのか、知る術はない。
だけれども、去る際に相当な混乱があったのは、簡単に想像がつく。
その先に、何か良いことでもあったのだろうか。
そうとは、とても思えない。
良くて離散。
悪ければ、古代クリント王国の人間に捕まって、奴隷として死ぬまで使い潰されたのかも知れない。
今は、その運命も分からなかった。
もうワームの死体もない。
徹底的に掃除をして、その後は噴水の水を周囲に撒いて、確実に辺りを綺麗にしていく。かなりの範囲があるが、セリさんの植物魔術で、周囲に大量の水を一気に撒いていく事で。地面を洗い流していく。セリさんが召喚したのは、巨大なつぼみみたいな植物で。水を凄い勢いで吸い上げて。つぼみみたいな所から噴射して、遺跡最下層の隅々まで、一気に洗うことが出来た。
遺跡が呼吸する頻度も減っていく。
それだけ、この辺りの空気が良くなっていると言うことだろう。
やがて、床までぴかぴかになってきたので。
あたしは、頷いていた。
不衛生という観念は、今と昔で全く違っている。
それは分かっているが、それでもこれだけ綺麗にして、更に消毒まで一緒に植物魔術で撒いたのである。
これならば。
少なくとも、今の基準ならもう綺麗だ。
ただ此処に最初に来た時の有様を考えると。
床に寝たりとかは絶対にしたくはないが。これはあくまで、個人的な考えである。後から此処に知らずに来た人が、汚いと思う事はないだろう。
「よし、これでいいと思う。 タオ、そっちはどう?」
「……もう少し待って」
「分かった」
一度、皆外で綺麗にして、食事もしておく。タオは完全に入り込んでいるので、邪魔をしない方が良いだろう。
昼を回って、一刻ほど過ぎて。
それでタオが。それぞれの家の中を調べていたあたしの所に来た。
「分かったと思う」
「!」
「みな、集まってくれ!」
レントが声を掛けてくれる。
みなで集まって、竜の像の所に。
竜の像の口の中をタオが操作。多数の光魔術による光学式コントロールパネルが浮き上がる。
あたしも操作はできるが。
タオの操作は、手が何本も増えたくらいに見える程、的確で素早かった。
「かなり複雑なロックがかかっていて、解析に時間が掛かったけど、これで開くと思う」
「流石だな……」
「俺は泥臭い遺跡探索は得意だが、こういうのはタオには勝てん」
「クリフォードさんの勘にはいつも感心していますよ。 この件が終わったらアーベルハイムに雇用されるらしいですが、僕の研究の時には一緒に来て欲しいくらいです」
勿論いいぜ。
そうクリフォードさんが迷わず言った。
或いは、この二人が今回の一夏で、一番仲良くなったのかも知れない。
ちょっとむくれているパティが可愛いな。
まあ、分からないでもないが。
そもそもパティが好きになったのは、こういう奴だ。
それについては、パティも半ば諦めているし、理解は出来ているだろうとは思っている。
がちりと音がする。
そして、ドラゴンの顔が大きく開いていく。そこに大きな穴が出来ていくかのように。
やがて、完全にドラゴンの顔の原型がなくなるほど大きく開いた其処は、ぽっかりと穴が開いていた。
「流石だぜ……」
「!」
あたしの戻り始めている勘が、告げてくる。
やはりこの先が本丸だと。
空気がひんやりしている。
そして、奧には、今までとは打って変わって清潔な空間が拡がっていた。
「フィー、大人しくしていてね」
「フィー!」
今までの封印の、超圧縮魔石の性質から考えて、魔力を餌にするフィーを近づけるのは致命的だろう。
だからフィーにも言い聞かせておく。
さあ、ついに此処を調べれば、五つ目の。最後の封印の状態が分かる。
それ次第では、フィルフサが封じられている門と、どう向き合わなければならないかも分かる。
いずれにしても、門を閉じるにしても、フィルフサの王種は仕留めなければならない。
今後、もっと解析が進めば、フィルフサとの平和的な対応も見つかるのかも知れないが。
今は、この世界とオーリム両方のためにも。
フィルフサは、特に王種は。
見つけ次第、全て仕留めなければならないのだった。
(続)
ある意味最強最悪の壁。
それを突破した結果、ついに遺跡「北の里」の最深部に到達することが出来ました。
さあ最後の封印状態と。
それに、封印の場所。
そして全ての謎が明らかになる時が近付いています。
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