暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

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2、竜が語る事

意識が、体から分離した。

 

それがなんとなく分かった。

 

あたしは、側にいる大きな塊を見つめる。それが、残留思念となったエンシェントドラゴンだと言う事は、理解出来ていた。

 

「ずっと見ていた。 この里に入ってきたときから」

 

「貴方は、まだ残留思念でありながら意識があるんですか」

 

「最悪の事態に備えて、意識を残しておいたのだ。 もしもクリント王国の者達や、それに類するものが狼藉に来た場合は、この遺跡全てを崩落させるつもりでな」

 

そうか。

 

乱暴に振る舞わなくて良かった。

 

そう思う。

 

エンシェントドラゴンはどれほどの寿命があるのか分からない。ワイバーンですら、百年以上生きているものがザラなのだ。

 

オーレン族以上に長生きの可能性だって否定できない。

 

そんな種族なのである。

 

残留思念のまま、この世に留まり。

 

その残留思念が、ある程度の精神、物理、ともに干渉力を持っていても、不思議ではないのだろう。

 

「ライザリンという錬金術師よ。 そなたがフィルフサと交戦して、既に退けた事は把握した。 同じ過ちが起きないように、今各地を調べている事もな。 その心が心配だったが、少なくともエゴによって好き勝手をするために錬金術を手に入れ、磨いているわけではないようだな」

 

「はい。 あたしは……錬金術については、ただの力だと思っています。 だからこそ、力を持った以上果たさなければならない責任もあると。 あたしは感応夢で、古代クリント王国の錬金術師達がどれだけ愚かだったか見ました。 絶対にああならないとも決めています」

 

「その言葉に偽りはないようだな。 だが、一つ間違っている事がある」

 

「聞かせてください」

 

エンシェントドラゴンは言う。

 

更なる巨悪が存在すると。

 

古代クリント王国の錬金術師以上の巨悪だと。

 

一体それは。

 

いや、分かっている筈だ。

 

この世界の歪みを作り出した元凶がいるとしたら。

 

「神代の錬金術師ですか」

 

「理解が早いな。 正確にはその一派だ。 クリント王国の錬金術師など、その遺産を偶然見つけて、その模倣をした連中に過ぎない。 真の巨悪は今もこの世界に大きな爪痕を残し、それは再発見されれば何度でも悲劇を引き起こすだろう」

 

「分かりました。 そんなものは、見つけ次第粉々に打ち砕きます」

 

「……そうか」

 

エンシェントドラゴンは、少し寂しそうに言う。

 

見たかも知れないが、自分は罪を犯したと。

 

その罪とはなんなのかが、どうにもまだ確信できない。

 

「本来、我々のその生態行動は、世界に危機をもたらすようなものではなかった。 だが、神代のその錬金術師達のせいで、それは災厄そのものとなり果てた。 我等は成熟するまでに時間が掛かりすぎる生物だ。 故に、それを理解出来ず、今まで幾つもの爪痕を世界に残してしまった」

 

「何の話ですか」

 

「……お前達が封印と呼ぶものについて。 この里にあるものは、入口を開けておくとしよう」

 

「!」

 

エンシェントドラゴンは、肝心なところは答えてくれないが。

 

しかし、それでも言う事はきっちり言う。

 

多分これは精神構造の違いが故か。

 

いや、まだあたしのことを信用しきっていないのかも知れない。

 

「この里の封印については助かります。 しかし、まだ分かっていない事があります」

 

「……五つの封印が封じている座標だな」

 

「はい。 それが分からないと。 封印が、いつ壊れてもおかしくない状況なんです!」

 

「封印の側にお前達が光学式魔術によるコンソールと呼んでいるものがある。 それを調べよ。 其処に情報を入れておいた。 パスワードは……幽霊だ」

 

頷く。

 

だが、どうして幽霊なのか。

 

ちょっとそれが分からないが。

 

エンシェントドラゴンの残留思念が消えていく。

 

一体何を、あんなに強い罪悪感として覚えていたのか。

 

あたしは、呼びかける。

 

「貴方の名前は! 最後に聞かせてください!」

 

「人間には発音できない。 人間風にいうのならば、西の沼地に生まれた暑い日の五番目の子だ」

 

「……西さんでいいですか。 貴方の事は、きっと無駄にはしません! 貴方の罪も、もう犯させません!」

 

「そうか。 ライザリンよ。 貴様の才能は、恐らく神代で全ての無法を極めた錬金術師達をも凌いでいるだろう。 その力を使えば、それも可能かもしれん。 二つの世界……この「我々にとっての終焉の土地」と、お前達が「オーリム」と呼んでいる土地に……救いを頼むぞ」

 

消えた。

 

同時に、あたしも。

 

意識がはじけて。肉体に戻るのが分かった。

 

 

 

「ライザ! ライザ!」

 

悲痛な声に飛び起きる。

 

顔をくしゃくしゃにしたクラウディアが、あたしに抱きついてくる。あたしはしばしぼんやりしていたが。

 

やがて、がばりと顔を上げていた。

 

「その羅針盤、絶対にやべえよ! もう使うな!」

 

「いきなり倒れたんだよ!」

 

レントとタオが口々に言うが。

 

あたしは、じっと羅針盤を見つめてから、懐にしまっていた。

 

そして、クラウディアを優しく体から離す。

 

じっと黙り込んだのは、話す事を整理するべきだと判断したからだ。

 

「エンシェントドラゴンにあったよ……」

 

「!」

 

「残留思念が残っていたのね。 ドラゴンの中には、それくらいまで魂を練り上げる存在がいるとは聞いていたわ」

 

セリさんが、そう解説してくれる。

 

恐らくだが。

 

此処にいた西さんは、そういう領域に到達したエンシェントドラゴンだったのだろう。

 

順番に話をしていく。

 

エンシェントドラゴン、正式名「西の沼地に生まれた暑い日の五番目の子」さんは、全てを語ってくれた。

 

まず、封印だが。

 

あたしが指を指した方向。

 

壁が開きはじめている。

 

かなり色はくすんでいて、作られたときの三割程度しか力は残っていないだろう。それでも、八角錐の封印は存在していた。

 

「フィー、ダメだよ。 あれは食べちゃダメ」

 

「フィー!」

 

少し興奮気味のフィー。

 

あたしはちょっと逆に疲弊が酷い。ちょっとまともにあるけるか、なんとも自信がない。ともかく、一つずつ話をしていく。

 

話を聞き終えると、タオが頷いて、すぐに調べに行く。

 

パティが、怪訝そうに言う。

 

「その西の沼地の……エンシェントドラゴンは、どうして其処までライザさんに話したんでしょう……」

 

「あたしの事を、遺跡に入った所からずっと見ていたらしいからね。 もしあたしが宝目当てだったりとか、錬金術を極めて金儲けしようとか世界征服しようだとか考えていたら、多分適当な所で遺跡ごと押し潰されていたんだよ。 あたしはそういうのはほぼ興味なかったし、だから認めてくれたのかもしれない」

 

「ひえっ……危ない所だったんですね」

 

「それにしても話を聞く限り、随分と面倒な種族なんだなドラゴンって。 そんなに年老いるまで、まともな自我と知能がないのかよ」

 

レントがぼやく。

 

クリフォードさんが、そうでもないさと言う。

 

「成体になるまで生き方がまるで違ったり、更に言えば成体になってからすぐに死んでしまう生物って珍しくもないんだぜ。 セミなんか何年も、下手すると十年以上も土の中に埋まっているのに、成虫になると一夏だってもたないだろ。 体の構造が複雑な生物だって、それは同じでな。 結構そういう生物は存在しているんだ。 ドラゴンも、そうなんだろうな」

 

「なんだか悲しいですね」

 

「それは人間の考え方だ。 ただ、この「西の沼地に生まれた暑い日の五番目の子」って旦那は、そのあり方を悲しいと思っていたようだがな」

 

クリフォードさんが帽子を脱ぐと、もう一度黙祷する。

 

あたしも、ようやく立ち上がると、同じようにもう一度黙祷していた。さっきとは違って、人となりを知った。それ故の敬意からだ。

 

このエンシェントドラゴンは。

 

少なくとも立派で偉大な存在だった。それに疑う余地はない。

 

ただ、頭が相当に揺らされたのも事実。

 

本当にこの世界での錬金術師の中で。

 

あたしやアンペルさんは異質なんだという事を、改めて思い知らされる。

 

エンシェントドラゴンの西さんは、最後の最後まで、此処にトラップとして意識を残していたのだ。

 

悪辣な錬金術師が。

 

ごく世界的にみて一般的な存在がここに来ていたら。

 

まとめて埋め潰してしまうために。

 

それにしても、やはり気になる。

 

エンシェントドラゴンの西さんの罪とは一体何だ。

 

二つの世界に跨がる罪とは。

 

よく分からない。

 

とにかく、調査をしていくしかない。

 

不意に、人影が現れる。

 

パティだけ、大太刀に手を掛けた。

 

他の皆は、驚かない。

 

アンペルさんと、リラさんだった。

 

「酷い有様だと聞いていたが、随分と綺麗な状態じゃないか」

 

「アンペルさん」

 

「封印は無事か」

 

「はい、どうにか。 ただ……やはり此処も、消耗が激しいようですね」

 

頷くと、アンペルさんはおおまたで歩いて、封印を見に行く。リラさんが、あたしの様子を一瞥して。

 

そして教えてくれた。

 

「星の都にいた精霊王「光」が記憶を取り戻した」

 

「!」

 

「精霊王によると、およそ七百年前。 星の都は元々動力を使い果たしていた上に、災厄にあって落ちたそうだ」

 

「神代の技術で浮かんでいたほどの都市が落ちたんですか!? どんな災害……」

 

あたしも驚く。

 

リラさんは、頷くと続ける。

 

「その災厄は、時々起きるものだとして知られていたらしい。 いずれにしても、それが切っ掛けでフィルフサとこの近辺の民との戦いが始まった。 同時期に、エンシェントドラゴンが到来し、この里の民に知恵と技術を与えた」

 

「……偶然とは思えないですね。 実は此処のエンシェントドラゴンが、自分は罪を犯したと言う話をしていたんです」

 

「罪だと」

 

「はい。 どうにも妙だと思って。 それも、二つの世界に対してというような事も言っていました」

 

リラさんが考え込む。

 

精霊王の話については、かなり貴重な内容だった。

 

いずれにしても、何かがエンシェントドラゴンの到来と同時に起きたのだ。

 

それは習性に関する事だと言う話だが。

 

ドラゴン……特にエンシェントドラゴンになると、そんな破壊的な習性を持っているものなのだろうか。

 

持っていても不思議では無い。

 

もう人知が及ぶ存在ではないからだ。

 

ともかく、封印の様子を見に行く。

 

リラさんがフィーを抱える。フィーも、リラさんに頭をすり寄せている。嫌っている雰囲気はない。

 

「タオ、どう、様子」

 

「パスワードは正解だったみたいだよ。 それで、これは……」

 

「何か問題があったの」

 

「うん。 問題は、分かった。 封印の位置、恐らく間違いない。 特定出来たと思う」

 

タオが、光学式パネルを操作。

 

そして、地図にそれが表示されていた。

 

「やっぱり王都の近くか」

 

「嘘……こんなに至近距離なんですか!?」

 

王都の近くと言う事は、パティも覚悟はしていたのだろう。だけれども、この場所は。

 

あたしも足を運んだことがある。

 

というよりも、だ。

 

あたしとタオで、最初に調査した、近辺の遺跡。

 

羅針盤が落ちていた遺跡だ。

 

無言になる。

 

そういえば、最深部に何やら大きな扉だか壁だかのようなものがあった。あれが、封印だったのか。

 

ともかく、やるべき事がこれで分かった。

 

まずは、フィルフサに対策しなければならない。

 

アンペルさんが、厳しい表情で腕組みしていた。

 

「ライザ、この遺跡については既に足を運んでいるんだな」

 

「はい。 封印の解除については、特に難しくは無いと思います。 最悪こじ開けますんで」

 

「……分かっているな」

 

「分かっています。 フィルフサがどれだけ浸透しているか分からない。 だから、まずは大量の水から準備しないと」

 

タオに声を掛ける。

 

この遺跡で、以前のグリムドルから水を奪ったようなシステムが使われていないか。

 

頷くと、タオは更に調査を進める。

 

どうやらこの遺跡についての全てが、此処にコンソールに封じられているようだった。

 

「なるほど、分かってきたよ。 この里を放棄する二百年前、今からおよそ七百年ほど前に、エンシェントドラゴン「西の沼地に生まれた暑い日の五番目の子」が訪れた。 元々あまり豊かではない土地で、荒野にしがみつくようにして暮らしていた人々に文明を与えて、自らが指導者になった。 それからの歴史が記されてる。 メモを取る。 何処に重要な記載があるか、分からないからね」

 

「操作はじゃあ俺が変わる。 メモを取るのに集中してくれ」

 

「うん」

 

「水の出所については最優先で調べて」

 

頷くタオ。

 

勿論、此処の水が余所から奪った可能性は低いとみて良いだろう。

 

だが、何かしらの方法で。

 

此処では、大量の水を得ていると判断して良い。

 

それだけじゃあない。

 

此処の上が、砂漠になっているのにも、それが関与している可能性があるだろう。あたしは専門家二人に任せて、様子を見る。

 

八角錐の封印。

 

光がだいぶ鈍っているが、それでもまだ時間はある。それだけは幸い。

 

封印の具体的な場所も分かった。それも大きな成果だとみて良いだろう。

 

だけれども、まだまだ調べなければならないこと。

 

備えなければならないことがある。

 

「ライザ、それでどうするんだ」

 

「まずは水による防壁を準備する」

 

「そうだな、それが現実的だろうな」

 

「何もかも、オーリムまで押し流して。 そしてオーリム側に巣くっている王種をぶっ潰せば、当面は安心できると思うけれど。 とにかく、出会い頭に水での一撃を叩き込む所から考えないと」

 

フィルフサと戦うには。

 

通常の魔術は無意味だ。

 

今の皆は、未成熟とはいえグランツオルゲンを用いて、装備類を強化している状態であり。

 

以前よりも戦闘力は格段に上がっている。

 

あたしもそれは同じ。

 

此処にパティとセリさん、クリフォードさんが加わっている。

 

代わりにキロさんが参戦してくれないが。

 

キロさんの戦力分くらいの穴埋めは、皆の成長と、三人の追加でどうなっている筈である。

 

つまり、グリムドルでの対フィルフサ戦での戦力は、充分に備わっているということだ。

 

「アンペルさん、リラさん。 後でアトリエでのミーティングに参戦した後、装備を見せてください。 刷新します」

 

「頼もしいな。 それと……」

 

「分かります。 義手ですね。 調整します」

 

アンペルさんも頷く。

 

アンペルさんも、もう義手に対する嫌悪感はないようだった。

 

三年前に対して細かい技術は向上している。義手に対して、更に細かい調整が出来る筈である。

 

しかもアンペルさんの魔術は、圧倒的な破壊力はないものの、フィルフサに対しては特攻効果を持つに等しい。

 

流石に魔力に圧倒的に強いフィルフサも、空間操作の魔術には、手も足も出ないのである。

 

ただアンペルさんの固有魔術は強力すぎるからだろう。

 

殆ど線にしか発動しないし。

 

フィルフサはその生態構造上、それでは致命傷を与えられないケースが多い。それが難しいのだが。

 

「タオ、まだか」

 

「……後半分という所です」

 

「アンペルさん、タオは以前より更に手際が上がっています」

 

「分かっている。 だが、全て拾っているように見えてな」

 

それで良いと思う。

 

どうせ此処に来るのは、これで最後にしたい所だ。

 

それにしても災厄というのも気になるな。

 

神代の技術で浮いていた都市を落としたほどの災厄か。エンシェントドラゴンの力はそれほど。

 

いや、考えにくい。

 

精霊王は、話を聞く限り、どう考えても神代の人間が作り出した魔物だ。

 

それが動力になって浮かせていた都市である。

 

エンシェントドラゴン一体が撃墜出来るかというと、甚だ怪しいと言うのが、素直な意見になる。

 

そうなると、習性が引き起こす、桁外れの災害なのだろうか。

 

しかし災害だとすると、どうしてアスラアムバートは無事だった。

 

神代の飛行都市が落ちるような災害だ。

 

アスラアムバートなんて、消し飛んでいても不思議では無いはずなのに。

 

考えている内に、タオが情報を全て拾い上げる。

 

冷や汗を拭っているタオ。

 

「よし、タオ。 情報は帰路に整理して」

 

「分かった」

 

「このコンソールは閉じておくぞ」

 

「お願いします」

 

クリフォードさんも、タオの操作を見て覚えたのだろう。

 

タオほどの手際ではないが、ぱぱっと光学式のコンソールを閉じてしまった。

 

もう此処には来ないと思うが。

 

どうせそもそも、此処にはまず入る事だって出来ないだろう。後は、放置して帰るだけでいい。

 

タオが、下水の水を帰り際にとめていた。

 

水を大量に吸い上げなければ、この辺りの地形は元に……いや。元々荒野だったのなら、大して変わらないだろう。

 

ともかく、水を大量に集める必要がある。

 

出来れば決戦の場では、大雨が。それも土砂降りが起きているくらいが好ましいのである。

 

既に、フィルフサとの決戦は避けられない。

 

封印の話をしている辺りから、セリさんも表情が険しくなってきている。

 

フィルフサと戦う事がどういうことか、セリさんも知っているのだ。

 

だったら、表情が険しくなるのも、当然と言えば当然だろう。

 

遺跡を出て、「数多の目」を呼び出す。タオが話をしていると、「数多の目」は色々と返していた。

 

あたしはそれを横目に、アンペルさんと話をしておく。

 

「ここまで来るとは、本当に急いでいたんですね」

 

「そうだな。 もう一つ分かった事があってな」

 

「もう一つ?」

 

「フィーの同族についてだ。 その存在が、封印を試験中に一つ魔力を丸々吸い尽くしてしまった事件があったそうなんだ」

 

そうか。

 

確かにフィーも、封印を美味しそうなもののように見ていたな。

 

とっさにとめていなければ、全部吸い上げていたかも知れない。

 

封印と言っても、超ド級の魔石なのだ。

 

それに変わりはないのだから。

 

「フィーの同族については、精霊王もよく分かっていないようだった。 ただ……」

 

「ただ?」

 

「やはりフィーは、どうやらオーリムの生物で間違いないそうだ。 星の都にもたらされた個体も、遙か神代の時代にオーリムからもたらされたと言う事だ」

 

「……」

 

もしもそうなると。

 

古代クリント王国が派手にオーリムで暴れる前に。

 

神代の人間も、オーリムに対して何かをしていた、と言う事だろうか。

 

考えて見れば、もしフィーがオーリムの存在だとすると。

 

そうでなければ、説明がつかないのである。

 

前にアンペルさんから、自然門と呼ばれる、古代クリント王国が開ける以前に存在していたオーリムへの入口があるという話は聞いていた。

 

それは神代の頃からあったらしいのだが。

 

そもそもどうして「自然門」なのか。

 

古代クリント王国の時代のテクノロジーで。門は開ける事が出来たのだ。

 

神代でどうしてそれが出来なかった。

 

或いは出来たのが、出来なくなったのか。

 

それにだ。

 

さっき、エンシェントドラゴンの西さんも、色々言っていた。

 

神代の一派は。真の巨悪であったと。

 

古代クリント王国など、模倣存在に過ぎなかったと。

 

だとすると、何が神代にあった。

 

神代の繁栄は、ひょっとして。

 

多くの存在を踏みつけにしながら、成立したものだったのではないのか。下手をすると、古代クリント王国で破綻した人類の覇権、そのものが。

 

ともかく、アトリエに戻る。

 

整理する情報が多すぎる。

 

帰路でも、考え込んでいるあたしやタオを護衛すべく、レントとパティがかなり気を張ってくれている。

 

クラウディアも、だ。

 

皆がとても頼りになる。

 

そのおかげで、アトリエに辿りつくまでに。

 

やるべき事を、頭の中で整理する事が出来ていた。

 

一つずつ、順番にこなす。

 

まず最初にやるべきは、明日現地の調査だ。現地を調べて、封印の状態、開け方について、大丈夫かを調べておく。

 

そして封印を解除する前に。

 

水を叩き込む為の作業をしなければならない。

 

それは下手をすると戦略級の作業になる。最悪の場合、アーベルハイムの力を借りる必要も生じてくる。

 

ボオスが来るまでに、皆でああでもないこうでもないと話をして、軽くまとめておく。

 

ボオスが来て。アンペルさんとリラさんがいるのを見て、だいたい状態は悟ったようだった。

 

すぐに書記の準備をしてくれる。

 

とても有り難い。

 

まず、タオが咳払いした。

 

「まずは北の里の水について、分かったよ」

 

「聞かせてくれ」

 

「北の里の水は、高度な魔術によって吸い上げられている事が分かったんだ。 具体的には、周囲にあるすべての水を吸い上げて、それで北の里の人間が使えるようにしていたみたいだね」

 

なるほどね。

 

それは砂漠化も進むわけだ。

 

順番に話を聞く。

 

水を吸い上げる技術に関しては、いわゆる毛細管現象と呼ばれるものを、魔術的に行っていたらしい。

 

乾いている場所に水が移動する現象なのだが。

 

水に北の里が乾いていると誤認させる魔術を用いて、大量の水を誘導していたようだ。地中から、である。

 

そして水をタンクに溜めて、其処から生活用水を供給していたそうである。勿論浄水してから。

 

なるほどね。

 

具体的な技術については、幾つか聞いたが。多分再現は出来る。

 

だけれども、それで再現するべきなのだろうか。

 

最初にあたし達が足を運んだ遺跡は、そもそも水が豊富な土地にあった。周囲にはそこそこ大きな川もあった。

 

考えて見れば、あれも対フィルフサを想定して。

 

アスラアムバートがあった土地を抑えていた国が、運河のように川の流れを変えたのかもしれない。

 

遺跡を守るように。

 

門の存在を後から知ったのなら、フィルフサとの戦いで、あの辺りが踏み荒らされていてもおかしくない。

 

だとすれば、水で守ろうとするのは自然な流れだ。

 

「その技術で、水を流し込むのか?」

 

「……いや、それは止めておこう。 技術そのものは利用するけれど」

 

「どういうことだ?」

 

「川の流れを変える」

 

地図を拡げて貰う。

 

近くに大きな川が幾つかあるが、考えて見ればおかしかったのだ。本来だったら自然に流れるような川に、細工が行われている形跡がある。

 

これは恐らくは、人工的に手を加えたのだとみて良いだろう。

 

北の里への道中などでも、妙な荒野が存在していたが。

 

あれは北の里による水の取得技術だけではなく、人工的に水の流れを変えた結果だったとみて良い。

 

あたしは、地図にすっと指で線を引く。

 

「さっきのタオの説明で、水を引く技術は理解出来た」

 

「本当か。 どんどん化け物じみて来たなお前……」

 

ボオスが呆れる。

 

いや、畏怖が少し籠もっているか。

 

でもいい。

 

今は怖れられる位でいい。

 

「こう、水を引く。 そうすると、この川と、この川から一気に水を流し込むことが出来て、この遺跡を水没させることが出来る。 封印を解いた瞬間、一気にオーリムに水が流れ込む」

 

「なるほどな。 ただ、そのままでいいのか」

 

「当然良くない。 門を潰した後は、此処に堰を作って、川の流れを戻す。 堰については……」

 

その説明もしておく。

 

水を引きつける仕組みは、水に乾燥を誤認させる仕組みを用いる。

 

そもそも、川が近くにあるのに荒野になっている地帯。

 

あれは、もっと強烈な乾燥を水が感じ取っていたから起きていた異常現象だったのである。

 

水に意思があるのではなく、単純にそういう現象が起きていたのだ。丁度高い所から低いところにものが落ちるように。

 

ただの現象だったのだ。

 

その現象を、切り替える。

 

もう一度、後で北の里に行く必要があるだろう。

 

水を吸い上げるシステムを終わらせる。

 

そうしないと、あの辺りはずっと砂漠のままだ。今後何かしらの方法で緑化するにしても。

 

砂漠のままでは、不都合だって多いのである。

 

「ちなみにアンペル。 ライザの言っている技術を理解出来ているか」

 

「いや、もう私の及ぶところではないな」

 

「そうか……」

 

リラさんが、アンペルさんにそんな話をしていた。

 

あたしは咳払いすると、更に話を進めていた。




文字通りの死に証言の言葉で、幾つもの事が判明しました。

その中には、最大の問題だった「封印の位置」もありましたが。

何よりも。

この世の悪の権化に等しいとライザが考えていた古代クリント王国が模倣者に過ぎないという驚くべきものがあったのです。

更なる邪悪の存在。

恐れ知らずのライザすら戦慄する事実です。

本作の次に連載する作品はどれが良いですか?

  • 暗黒!アトリエシリーズのまだ未掲載の作品
  • 真女神転生Ⅲの二次創作(真Ⅴ要素なし)
  • 流行り神二次創作
  • その他二次創作
  • オリジナルの長編
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