暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2 作:dwwyakata@2024
後は封印の奧にいる事が決定したフィルフサを。
此方の世界に来る前に、叩き潰すだけです。
以前より遙かに手札が増えています。それが出来る状態に、ライザはあります。
ミーティングだけで、その日は終わった。解散したら夜中だったので、それで切り上げる事にする。
それくらい、決めておくことが多かったのだ。
皆には、解散時に告げておいた。
以前の、三年前の戦いと同等か、それ以上に厳しくなる。
最悪の事態には、備えて欲しいと。
皆、分かっている筈だが。
それでも、話しておかなければならなかった。
パティが風呂を使ってほしいと言うので、皆でアーベルハイム邸の風呂を利用させてもらう。
もうアーベルハイム邸のメイド長とも顔馴染みだ。
それにしても、何度見てもやっぱりフロディアさんと顔が同じだ。もうちょっと年長に見えるけれども。
風呂から上がって、ほんの少しだけ時間はあるが。
ほんの少しでは無理だと判断。
パティと話は事前にしてある。
明日、時間をヴォルカーさんに作ってもらうように頼んで欲しいと。
パティも頷いていた。
アーベルハイムも連携する必要がある。
幸い時間があるから、いきなりフィルフサがあふれ出して、王都が瞬殺で蹂躙される可能性はなくなった。
だが、それは可能性がなくなっただけの話。
今後どうなっても、おかしくはない。
最悪の場合は、水がフィルフサをどうにか食い止めている間に、防衛の準備をしなければならないし。
住民の避難もまたしかり。
王族も他の貴族も役に立たない現状。
それをヴォルカーさんには、やってもらう必要があるのだった。
アーベルハイム邸からアトリエに戻って、それで後は無心に寝る。疲れているのもあるし、明日からフルパワーで色々動かなければならないのもある。
寝ておかなければならなかった。
色々と疑念はある。
神代の一派。
神代の全てではないのだろうが。ともかく、神代には古代クリント王国ですら模倣に過ぎないと言われる程の、真の邪悪が存在していた。
そいつらがどんな奴らかは分からないが。
間違いなく錬金術師で。いや、それ以降の、エゴと権力欲と、万能感に塗れて。暴虐を振るうようになった錬金術師のながれを作った張本人だと判断して良いだろう。
そいつらと今後、何かしらの形で戦う事になるのだろうか。
なる可能性はある。
あたしは、今後世界を変える。
人類だって変える。
人類は、今までこの世界とオーリムに対して、やりたい放題をしてきた。その結果、此処まで荒廃させてしまった。
もし人類が魔物に対して攻勢に出て。世界が少しはマシになったとして。
錬金術が、この世界から消えて無くなるわけではない。
錬金術は才能準拠の学問で。
だからこそ故に、未来にまた発見される可能性は幾らでもある。
発見されたときに、対応できないのでは困る。また世界が蹂躙されてしまうのでは困るのだ。
だから、あたしは。
錬金術を今後、管理していかなければならないし。
なんなら錬金術を使う人間を見定めて。
エゴと権力欲と万能感に陶酔して、邪悪の限りを尽くさないように悪の芽は摘まなければならない。
それが、あたしが。
今後やるべき事だ。
目が覚めた。
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。伸びをすると、くみ置きしてある水で顔を洗う。
すっきりしたので、外で体を動かす。
そしてコンテナを漁っていると、パティが来る。今日は、ミーティングはしない。次のミーティングは明日だ。
今日は。他にそれぞれで、やっておくべき事が幾つかあるので、分担して動くのである。
フィーが嬉しそうに、パティの方に飛んで行く。
パティも嬉しそうに、フィーを抱きしめて、笑顔を浮かべていた。
「フィー!」
「フィー、くすぐったいですよ」
「フィー!」
クリフォードさんには最後までつれない態度だったけれども。
ともかく、フィーがドラゴンに極めて近い存在なのは、よく分かった。エンシェントドラゴンの西さんの残留思念にも、フィーを何かの精と呼んでいたし。何よりも、オーリム出身だ。
まだフィーは力が残っている。
だったら、グリムドルで今後は暮らして貰う事を前提にし。
それで面倒を見ていくしかないだろう。
この世界で生まれ。あたしが面倒を見てきた時点で。いきなりオーリムに放り出すのは絶対にアウト。
それは生物を側に置くときに。
絶対にやってはいけない事だ。
そしてあたしは、寿命を今後捨てるつもりでいる。
だとすれば、もしもフィーが何千年も生きる生物だったとしても、側にいることは出来るだろう。
「パティ」
「はい。 お父様は、昼少し前から、話を出来ると言う事でした。 時間は二刻ほど取ってあります」
「重要な話だって事は、伝えてあるね」
「……はい」
頷く。
パティはとても良く出来た子だ。
だから、こんな戦いに巻き込むのはちょっと心が痛むが。
それでもやらなければならない。
封印に関与する人間の残留思念は見てきた。
決してみんな聖人ではなかったし。
其処にはろくでもない思惑だって、散々絡んでいた。
だけれども、封印は少なくとも、この世界のために作られた。それだけは、本当。それだけは、古代クリント王国の外道錬金術師どもとは違うし。
更にそれより邪悪だという、神代の一派ともまた違っている。
あたしは、これから。
数百年稼いでくれた時間を生かして、この地に迫ろうとしているフィルフサをぶっ潰す。
フィルフサは、オーリムにとってもこの世界にとっても、邪悪な侵略性外来生物だ。
だからこそに、その存在は許してはおけない。
オーリムにいるだろう王種を叩き潰して。やっと時間を作る事が出来るだろうが。
それはまだ先になってくる。
それまでは、ずっと気を張るしかないだろう。
パティに戻って貰って、後はあたしは、自分でやるべき事をやる。少しでも、グランツオルゲンを増やしておく。
そして、昨日預けて貰ったアンペルさんとリラさんの装備を、一つずつ更改していく。
二人とも、装備をかなり使い込んでいるようだ。
目を細めて、修復して、更に強化。
これで、あたし達が今使っている武具防具に匹敵する性能になった筈である。
爆弾も薬も増やしておく。
本番は、この世界で門に辿りつく迄じゃない。
仮に封印の裏側でフィルフサがもうカリカリ壁をひっかいていたとしても。そんなものは水で押し流して、全部蹴り潰してやる。
問題なのは、オーリムの。奴らが領地にしている場所での戦闘だ。
以前と違って大雨ではなく、水が流れている、くらいの状況で戦闘をすることになる筈だから。
相当に厳しいのは確定だろう。
無言で調合を続けていると。
やがて。フィーがあたしの袖を引いていた。
時間か。
昼ご飯を軽くカフェで食べてから、アーベルハイム邸に出向く。
パティも同席する、ということだ。
今日、レントはタオとともに遺跡の状態を確認に。
クリフォードさんはアンペルさんとリラさんとともに、あたしが引き込もうと考えている川の状態を確認に。
セリさんは、単独で遺跡周囲の森を調べに行っている。
クラウディアは。今手を回して、戦場になりうる地域周辺の集落に、避難勧告をしてくれている状況だ。
皆が全力で動いてくれている。
あたしだけ、もたついているわけにはいかないのである。
パティとともに、ヴォルカーさんの所に出向く。
ヴォルカーさんは、険しい表情だった。
メイド長もいる。
あたしの声を遮って、ヴォルカーさんは言う。
「此方としても、総力を挙げての話になると思う。 私の右腕である彼女には、同席して貰う必要がある」
「分かりました。 ただし、分かっていると思いますが」
「ああ、他言無用に、だな。 文字通り王都そのものが危ないのだろう」
「ええ……。 王都どころか、人類全てが」
しばし黙り込んだあと、ヴォルカーさんは頷く。
席に着いて、話をする。テーブルに、メイド長が紅茶を並べてくれた。バレンツで出てくるものよりも、若干味が濃いが。まあ、それは可とするべきだろう。
「まずあたし達が戦って来た存在ですが、フィルフサと言います」
「聞いた事もない存在だが……」
「およそ五百年前、古代クリント王国を滅ぼした存在です」
「なんだとっ!」
危険な存在と戦っているのは分かってはいた筈だ。
だが、それでも。
あの古代クリント王国を滅ぼした。それだけで、ヴォルカーさんには分かりすぎるほど分かりやすい危険だったのだろう。
そもそも公的には、古代クリント王国の滅亡の原因は謎とされている。
どうして古代クリント王国の連中が、これを隠蔽したのかはよく分からない。
フィルフサとの決戦に出向いたアーミーの人達は殆ど生き残らなかっただろうし。
錬金術師どもは、みんな責任を現場で取らされた。
残った貴族やら王族やらは、フィルフサをどうにか撃退した後は権力闘争で互いを殺しあい、生き残りが最終的にロテスヴァッサ王国を建国したが。
それは所詮残りかすに過ぎず。
以降、大攻勢を開始した魔物によって、人間は加速度的に数を減らしていく事になるのである。
いずれにしても、古代クリント王国の滅亡は、この世界の人間にとってはターニングポイントであり。
それ以降、人類は魔物に蹂躙される時代がやってきた。
その原因を告げられて。
ヴォルカーさんが平静でいられないのも、よく分かる。
「それは一体、具体的にはどういう存在なのだ」
「生態から説明します。 王種と呼ばれる存在に率いられる真社会性の生物で、王種の下に将軍という統率個体がいて、普通の群れはその将軍の麾下に五千から一万程度。 だいたい一つの群れの規模は、二十万から百万というところです」
「ひゃ……」
「百万……!」
パティの方が腰を上げかけていた。
まあ、気持ちはわかる。
フィルフサのヤバさは説明してあったが。そういえば具体的な数字について説明したのは初だったか。
しかもだ。フィルフサの恐ろしさはこれだけじゃあない。
「フィルフサの特徴として、そもそも魔術がほぼ通用しません。 それに加えて生体急所が存在せず、体内にあるちいさなコアを砕かないと殺せない上、頑強極まりない外殻を持っていて、あらゆる生物を殺戮します。 古代クリント王国のアーミーは決戦で最新鋭のテクノロジーに加え、ドラゴンや精霊王まで動員して戦いましたが、それでも文字通り蹂躙されています」
「そんなことを、どうして知っているのかね」
「三年前に、錬金術と出会って、そしてある遺跡で全ての真実を見ました。 当時の決戦に赴いたアーミーの手記や、錬金術師の恨みつらみが書き連ねられた手記も」
「なんということだ……」
あたしも、危険な存在がいる可能性が高い話はヴォルカーさんにしてあった。
だが、それでもヴォルカーさんは、流石に驚いたのだろう。
歴戦の勇士が、冷や汗をだらだら流しているのが分かる。
メイド長が、気を利かせて水を皆に配ってくれた。
メイド長は、全然なんとも思っている雰囲気がない。
さては。
この人、知っているのではないのか。
どうもおかしいとは感じていたが。この人、ひょっとして。
だが、今はそれについて、詮索するべきでは無い。
ともかく、話を進める。
「フィルフサの唯一の弱点は水です。 そしてフィルフサが、この世界の拠点としている場所を既に調査で特定しています。 これからあたし達は、その拠点を水で覆い、準備が整い次第、相手の拠点に水を流し込みます」
「む……うむ」
「アーベルハイムでは、最悪の事態に備えてください。 勿論あたし達が、命がけでフィルフサは叩き潰します。 しかしもしもの事があります。 最悪の場合は、近場の川を決壊させ、指示に従って、全部流し込むようにしてください」
あたしは地図を拡げる。
昨日のミーティングで、タオと話したのだ。
最悪の場合に、どうするか。
門がある地点に、堰を潰して水を全部流し込むべきだと。
フィルフサは斥候を出して、現地に行きやすいかを確認する。しかし、そもそも門が湖の下になってしまったら、斥候どころでは無くなるはずだ。
勿論、その湖を作る事で。川の流れは変わる。
それどころか、街道を潰されて、最悪の事態になると王都の東が完全に封鎖されることになる。
西側の街道しか使えなくなり、王都はその力を半減させる。
だが、それでも最悪の時には、やらなければならないのだ。
「この地点、この地点、それにこの地点で、合図があり次第堰を切ってください。 勿論、そうはさせないつもりで戦いますが」
「我々からの戦力供給は」
「パティだけで大丈夫です。 今のパティは、渡してある装備も込みならば、文字通り歴戦の勇者といって良い実力です」
「……そうか」
腕組みして、じっと考え込むヴォルカーさん。
あたしが嘘をついている様子がないことを、理解してくれたのだろう。
今まで、散々色々と提携してやってきたのだ。
今更。嘘も何もない。
あたしは、腹の底を明かした。
だったら、今度はヴォルカーさんが誠意を見せるべきだ。
そして誠意を見せられないような人間であるのなら。
そんな人間には、今の地位にいる資格はない。
この場で首を刎ねる。
それくらいの覚悟で、あたしは来ている。
やがて、ヴォルカーさんは、パティを見た。
「パティ」
「はい」
「念の為に確認したい。 ライザくんの側で全てを見てきたはずだ。 それで今の説明について、どう思う」
「全て本当だと思います」
パティは断言。
それを聞いて、ヴォルカーさんは続きを促す。
「ライザさんと一緒に、驚天の遺跡をたくさん見て来ました。 技術はいずれも今とは比較にもならず、とんでもない強力な魔物や、自動で戦う人型のからくりや、私では理解も出来ないとても高度な仕組みもたくさんみました。 私はフィルフサそのものを見たわけではないですが、今までライザさんと一緒に見て来たものを見る限り、この話は全て真実だと思います」
「分かった。 その言葉で決まった」
ヴォルカーさんは立ち上がる。
あたしも、それと一緒に立ち上がった。
手をさしのべてくる。
握手だ。
ぐっと、力強い大きな手と握手をする。パティが小柄なことを考えると。遺伝はあてにならない事がよく分かる。
レントみたいに、悪い所ばかり似る事もあるが。
親と子は。
別の人間なのだ。
「これより、王都防衛の特別警戒態勢に入る。 私は君に全面的に協力しよう。 そのフィルフサという強大な魔物を撃破する作戦について、最大限の協力を約束する」
「ありがとうございます。 これで少しは楽になります」
「パティ、全力での支援をしろ。 そして、生きて帰れ。 恐らくこの戦いは、後世に語り継ぐことは出来ないだろう。 だが、それでも……アーベルハイムの戦士として、いや騎士としての名誉を汚さないように動いてくれ」
「はっ!」
パティが最敬礼をする。
そういえば騎士としての資格を正式に近々取るらしいなパティ。
パティはアーベルハイムの子なので、実の所試験なんぞ受けなくても騎士にはなれるらしいのだが。
敢えて庶民と同じ試験を受けて、それで正式に騎士になるつもりらしい。
今の時点でも、アーベルハイムの名を汚さないように振る舞ってはいるが。
それでも、更に陣頭で実力を見せる覚悟なのだろう。
その覚悟やよし。
だけれども、パティとタオの子供が出来たとしても。
その覚悟を引き継げるかは分からない。
世襲制には問題がある。
いずれ、それについては解決しなければならないだろう。
あたしはアーベルハイム邸を後にする。
パティは残って、ヴォルカーさんと協議をするようだ。
バレンツとこれから連携して、やるべき事を決めるのだろう。クラウディアも、これでかなり動きやすくなる筈。
さてあたしは。
これから、水を制御する道具を作る。
アトリエに戻る。
調合を続ける。
水を騙すための装置と言う仕組みについては理解した。水に、乾いていると誤認させるためのものだ。
ただこれは、効果が強烈で。
北の里を見ていても理解出来たが。長期的にはその場を砂漠化させてしまう。
地下水を吸い上げると良くない事は経験的に知っている。
どうも塩害が起きるようなのである。
恐らくは、その程度は対策してある道具であるのだろうが。それでも砂漠化が起きているということは。
相当に水という存在の分布バランスを崩す道具とみて良い。
だから、使うのは。
フィルフサと戦い、打ち倒すまでだ。
その後は、北の里の、水を吸い上げるシステムも完全停止させるつもりである。それくらいはしないと、錬金術師としての責任は取れないだろう。
無言で調合していると、クリフォードさんとアンペルさんとリラさんが来る。
装備をアンペルさんとリラさんに引き渡しておく。
装備を手にして、良い感じだと二人とも満足してくれたようである。あたしも、それを見ていると嬉しい。
「どうでした、川の状態は」
「だいたい予想通りに出来ると思う。 幸い荒野になっているから、生物への被害も最小限に抑えられるだろう」
「問題はこの辺りの水がオーリムに大量に流れ込む事ですが……」
「オーリムより水をあまりにもたくさん奪い取ったのだ。 それくらいは我慢して貰わないとな」
リラさんが苛立ち紛れに言うが。
あたしはそれに苦笑いしか出来ない。
この土地の人間が、それをしていた可能性は低いからだ。
ただ。神代の一派という連中が気になる。
その話をしたとき、アンペルさんも古代クリント王国の錬金術師が、なにやら崇拝しているものが存在するということを言っていた。
なんだったか。
万象の大典、だっただろうか。
それは知識の集合体にして、全ての錬金術師が目指す到達点的な意味を持つ言葉らしいのだが。
なんでも、説の一つとして。
それを名乗った集団がいたかも知れない、というのだ。
仮にそんな巫山戯た名前を名乗った連中がいたのだとしたら、本当に自分を神か何かと思い込んでいた存在だったのだろう。
神だったとして、それが世界を良い方向に動かすために行動していたのなら、それはそれで良いと思う。
錬金術を建設的に、世界のために使っていて。それで世界を良く出来ていたのなら、それは確かに神の名にふさわしい。
だが、神代の錬金術師は、そんな事は絶対にしていないと断言できる。
そんな事をしていないから、この世界はこうなっている。
神代の模倣をしたに過ぎない古代クリント王国が、此処まで世界を無茶苦茶にしたのである。
神を名乗っていた狂人か。
身の程知らずか。
もし存在していたとしたら、どっちかだったのだろう。
他の可能性世界には、或いは神に等しい錬金術師がいるかもしれない。苦労しながら、世界を良くしようとしているかも知れない。
だけれども、少なくとも此処にそんなものはいない。
それについては、世界の有様を見て来ているあたしは、断言できる。
「水を誤認させて集める装置については、明日いっぱいは掛かりますが、どうにかして見せます」
「分かった。 それについてはもう私の技術も知識も越えている。 手伝う事は出来そうにないが」
「アンペルさんは、想定通りに水が流れるように……お願いします」
「ああ、分かっている」
アンペルさんの固有魔術は空間操作。
とはいっても、実際には「切断」が近い。
それも限定的で、極めて使い勝手は悪いものの。その気になれば人間や人間大の存在だったら確殺出来るし。
岩だろうと金属だろうと、時間と労力さえ掛ければ穴を開けられる。
その力を利用して、水を誘導できるようにしてほしい。
そしてクリフォードさんは、歴戦の経験を生かして、土地を読んで。
水がちゃんと流れるように動いて欲しい。
二人には、それを頼んでいるのだ。
リラさんは、その作業の護衛である。
この経験はあたしにはないし。空間操作もできないから。二人に頼むしかない。
あたしは万能でも無敵でもないのだ。
やるべきものをどんどん作っていく。
今回は、下準備が絶対に必要だ。
他にも必要なものがある。
あたしは考えた末に、水を一旦すいあげて。蓄える装置。
そう。
古代クリント王国が、グリムドルから水を全て強奪した、あの装置を作ろうと判断していた。
ただし水を奪うのは、今度は此方の世界からだ。
それも、あれほど大規模にじゃあない。
まずは、手順としてはこうである。
封印に水を流し込む。
門までフィルフサを押し返す。
ただ今回は時間がなく、最悪の場合はそのまま敵地に突入して、それで一気に敵を押し流しながら戦うしかない。
濁流の中で戦うのは、此方も非常に危険だ。
フィルフサの大軍との戦闘は、三年前にも本当に綱渡りだった。
だが、三年前と状況が違う。
まず前提として、今回は門の先はグリムドルと状況がかなり違っている可能性が高い、ということである。
それはそうだ。
古代クリント王国は、幾つも門を作り、その先のオーリムで派手に略奪を繰り返した訳だが。
今回の行き先は、オーリムでも地域が恐らく違っている。
故に、水を奪われていない地域の可能性が高いのだ。
だが、今までの羅針盤で見た残留思念から、フィルフサが来ているのは確定であり。
土地の状態がどうなっていて。
どう水が流れているか、分からないのである。
其処に川の水を大量に流し込んだら。状況次第では仕方が無いとはいえ、それこそ侵略性外来生物である。
出来れば流し込むのは水だけにしたいし。
なんなら水を流し込む必要すらないかもしれない。
思考がどんどん動く。
ここ三年鈍っていたのが嘘のようだ。
調合を続行。
タオ達が戻って来た。
「ライザ!」
「何か大きな発見があったんだね、その様子だと」
「ああ、良い情報だぜ。 なあタオ」
「うん。 封印について調べてきた。 正確には、封印近くの遺跡の状態について。 もっと詳しく分かってきた」
手をとめて、話を聞く。
タオは頷くと、話してくれる。
「あの遺跡、地下水脈を引き込んでる。 多分戦うために、水を洞窟に流し込み続けたんだ。 門の辺りは、水浸しになってる可能性が高い。 状況にもよるけれど、川を無理矢理引き込まなくても良いかも知れないよ」
「よし……」
これは、幸運が向いてきた。
地下水脈を引き込む技術は、恐らくだけれども北の里と同じものだろう。
あたしは、一応念の為。
水を奪う道具は作っておく。
ただし、これはオーリムでは使わない。
全員が戻ってきた時点で、作戦と手札について、再確認をしておく。大丈夫。今日明日で、封印が砕かれることはない。
だけれども、それが年単位になると分からない。
だから、ここで。
今、あたしたちが有利に立ち回れる状況の内に。
門を閉じ。
そして、オーリムから此方に侵攻を目論んでいるフィルフサの群れを撃破し。
王種の首を取らなければならなかった。
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真女神転生Ⅲの二次創作(真Ⅴ要素なし)
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