暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2 作:dwwyakata@2024
翌朝。
封印を見に行く。
最初に、王都近郊で見にいった遺跡。これが森の中にあったのは、偶然ではなかったということだ。
地下水脈を引き込んで、周囲の地下をひたひたにしている。
だから川も複数が存在していたし。
森もこうも豊かだ。
或いはだけれども。
本来は荒野になっている此処の北。北の里辺りまで。
水を無理矢理動かしているから、緑の分布に大きな隔たりが出ているのかも知れない。
それだけ、錬金術は大きな力を持っている。
だからこそ。
錬金術をエゴで使ってはいけないのだと、あたしは思い知らされる。
アンペルさんも交えて。遺跡の地下状態について確認する。
レントが石畳を剥がして、幾つかの場所で確認してくれていたのだが。封印になっている地点。
壁がある場所に向けて、複数の水脈が動いている。
川が幾つか、其方に向かっている状態くらいの水が、動いていると言う事である。
要するにこの土地にあった国家は、それだけフィルフサに手を焼き。あの不死の魔女も協力して。
これだけ強力な対フィルフサ要塞を構築したと言う事なのだろう。
「これだけの水があるならば、少なくとも一瞬でフィルフサに防衛線を突破されることは無さそうだな」
「いや、そうとも言い切れないよ」
「聞かせてくれ」
楽観的な事をいうレントに、あたしは返しておく。
何しろ、グリムドルでの戦いの時とは、状況が根本的に違っているのである。
オーリムの水をカス共が奪ったわけではない。
それなのにフィルフサが侵攻してきている。
と言う事は、だ。
水に弱いのは恐らくは同じだろうけれども。
グリムドルにいたフィルフサよりも、水に対する耐性が高いと言う事だ。
アンペルさんに昨日、ここ三年の成果を聞いた。
調べて回った所、今までに六カ所、フィルフサとの大規模会戦を行った土地が確認できたそうである。
それらの場所は全てが門があって。
その門の先で、古代クリント王国が狼藉を働いたのが確定だそうである。
今後は、それらの門付近で例の水を奪った装置を探し。
オーリムに水を戻す事を検討していくそうだ。
それら以外の場所では、門を半端にだが。閉じる事には成功していたそうである。
まあ、それ以上の箇所でフィルフサが此方の世界になだれ込んできていたら。
それこそどうにもならなかったのだろうが。
「パティ、アーベルハイムの方はどうなってる?」
「はい。 既に人員を派遣して、調査を始めています。 最悪の場合、この辺りを水没させる準備を始めています」
「いざという時に、それをやれるまで、後どれだけ掛かる?」
「二日というところですね」
二日か。
上出来だろう。
あたしも、今水を奪う道具を作っている状況だ。これは水を奪うだけではなく、戦略物資として活用も出来るし。
任意にとめる事も出来る。
三年前に見たから、再現は可能だ。
逆に言うと。
その程度の代物を作った程度で、古代クリント王国の錬金術師共は、自分を神に等しいと錯覚していたわけで。
本当に出会い頭に顔面を蹴り砕くしかないという結論に至る。
更に言うならば、道具だって使い方次第と言うことだ。
あたしはこれを悪用するつもりはない。
今回の戦闘が終わったら、破棄するつもりだ。
終わらなかった場合でも、戦地に持ち込むし。負けた場合は、フィルフサに蹂躙された挙げ句、湖底に沈むだけだろう。
不意に気配。
皆がばっと其方を向く。
ええと。例のメイドの一族の人のようだが。
着込んでいる鎧に見覚えがある。多分、カーティアさんだが、名乗って貰わないと確信は出来ない。ちょっと悔しい。
案の定カーティアさんだった。
「カーティアだ。 アーベルハイム卿に言いつかって、作戦行動への参加を要請されている」
「ありがとうございます。 ただ相手は……」
「水に弱く、魔術が通じず、生体急所が存在しない、大軍で攻め寄せて全てを踏みにじる存在だったな。 分かっている。 私は状況に応じて伝令と信号弾の管理を行う。 前線での戦闘は、君達に任せる」
頷く。
話がきちんと伝わっているようで有り難い。
後は、封印の状況を確認。
羅針盤で残留思念を見てきたから分かる。
壁に施されていた、膨大な魔石を用いた五重封印は、今やあたしがそのままその気になれば砕けるほどに劣化している。
フィルフサだって、裏側でカリカリやっていてもおかしくない。
グリムドルにいた奴と性質が違う可能性があるから。
いきなり王種がそこにいてもおかしくないのだ。
だが、クリフォードさんが言う。
「この向こうに危険な気配がある。 だが、手が届かない相手だとは思えないな」
「クリフォードさんの勘は当てになりますね。 そうなると……王種はまだ出て来ていないと見てよさそうかな……」
「だが、斥候は出していると見ていい。 水が減るのを待っているのだろう」
「その辺りは、性質がグリムドルにいた奴と同じと言う事なんですね」
リラさんが。
何百年もフィルフサと戦い続けた専門家がそういう。
ならば、それはある程度信頼出来る。
例え、この先にいるフィルフサが、リラさんの故郷や、グルムドルにいた奴と性質が別物だとしてもだ。
一度封印の調査を終えてから、先にやるべき事はやっておく事にする。
後二日で。
決戦が始まる。
特にセリさんは険しい顔をしている。
この先にいるフィルフサは、セリさんにとっては文字通り不倶戴天の相手だ。
しかも状況からいって、今までどうにもできなかった相手であるのも確定である。
リラさんは、グリムドルで勝利を経験している。
だけれども、セリさんは違う。
緊張するのも、当然だと言えた。
「一度戻ろう。 だいたい状況は把握できた。 タオ、この扉ももう解析できているんでしょ」
「うん。 いつでも開けられる」
「よし……」
なら。後は手札を徹底的に揃えるだけだ。
今度も王種の首を取る。
そして、この世界と、オーリムに災厄をまき散らし続けているフィルフサを。
少しでも減らして。
世界を平穏に、少しでも近づけるのだ。
(続)
ついに明らかになった全て(全てではありませんが、必要な情報は全て)。
門が自然に出来たものであること。その奥にはやはりフィルフサがいて、この土地にあった国家はそれとの戦闘で消耗したこと。門について研究している古代クリント王国に好き勝手をさせないため、徹底的な封印を施したこと。
この土地にあった国は決して楽園などではありませんでしたが、それでもこの対処だけは間違っていませんでした。
そして今、対応できるライザ達がフィルフサを叩き潰して。
全ての因縁に決着を付けねばならないのです。
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