暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

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決戦開始。

フィルフサに対して、最強の精鋭達と。

それに水をぶつける事になります。


1、濁流の壁と

決戦当日。

 

あたしは、皆とともに。最初に王都近辺で足を運んだ遺跡に出向いていた。既に準備は出来ている。

 

門を封じている壁の前に来て、それで何となく思う。

 

この遺跡の、うねうねした構造。

 

少しでもフィルフサの侵攻を遅らせるためのものだったんだなと。

 

勿論些細な構造だが。それでも、最初の一撃を耐えきるにはこれで充分だったのかもしれない。

 

まだ分かっていない事はたくさんある。

 

だが、それでも。

 

分かっているのは、フィルフサが此方の世界に大挙して押し寄せたら終わりだと言う事。

 

最悪の場合は王都周辺の地形が変わることになっても。

 

この壁の先にある門を、水没させないといけない、ということだ。

 

壁の前に立ったあたしは、カーティアさんが来たのを見る。

 

「此方は準備万端だ。 合図があり次第、いつでも水を全て流し込むことが出来る」

 

「よし。 それではまず第一段階から行きます」

 

「ああ」

 

まずは。この遺跡の戦いにくい地形を変える。

 

遺跡を爆破するわけではない。ちょっと心苦しいが、水浸しにしてしまうだけである。

 

水が満ちているだけで。フィルフサには脅威なのである。

 

幸いというべきか。

 

この辺りに、水は少なくない。

 

爆弾のセーフティを解除。

 

そして、その後段階を踏んで。

 

安全を確認後、起爆していた。

 

普通の発破を使う。

 

此処で物資を大量に消耗する訳にはいかないからだ。爆発音とともに、近くにある森が揺動する。

 

流れ込んでくる水。

 

どっと流れてきた水は。遺跡の複雑な構造に勢いを殺されつつも、足首くらいに辺りを満たした。先に流し込んだ水に加えてこれ。フィルフサに取っては、もう此処は死地だ。

 

まずは、これでいい。

 

ちょっと足場が悪いが、フィルフサに与えるダメージが更に大きくなる。最悪の場合、足場を凍らせて戦えば良いだけ。

 

全員の装備は更改済。

 

いける。

 

「足下を確認! 戦い辛い人は!?」

 

「問題ありません!」

 

「思ったよりすごいなこの靴!」

 

パティとレントが口々に言う。

 

クリフォードさんは、目を細めて周囲を見ている。遺跡が破壊されるに等しいが。それでも、まあこれは仕方がないと感じているのだろう。

 

ちなみに、水浸しの状態でも戦いやすいように、靴は改良を更にしてある。

 

これは土砂降りの中戦った、三年前の経験を生かしての事だ。

 

アンペルさんとリラさんも頷く。

 

タオは、既に壁の前にいて。

 

とっくに発見していた、光学式コンソールを起動。

 

いつでも壁を開けられるようにしていた。

 

作戦の第一段階。

 

それは門まで、フィルフサを押し返すことだ。

 

「北の里」である程度情報は調べる事が出来た。

 

この大きな壁の向こうは、地下に降りるような形で洞窟になっている。

 

その洞窟には元々水が流し込まれていて。

 

それを武器に、この土地にあった国の戦士達は、フィルフサを食い止めていたらしい。

 

エンシェントドラゴン西さんの言葉には、まだ不可解な事、気になる事はたくさんあるのだけれども。

 

今は、それが分かれば充分だ。

 

ともかく門まで敵を押し返すのが第一段階。

 

なお、この土地にあった国の人間も、流石にフィルフサを相手にしながら建築をする余裕はなかったらしく。

 

幻惑のシステムと、何よりもこの壁を作るのが精一杯。

 

多くの犠牲をだしながら、封印によって守られたこの壁を構築し。

 

どうにかフィルフサの封印を抑え込むだけで、力尽きたそうだ。

 

此処で失った戦士も多く。

 

後は古代クリント王国に蹂躙されて滅びてしまったのだろう。

 

だが、その滅亡は無駄にはしない。

 

本質的には、古代クリント王国と大差ない連中だったようだが。

 

それについても、今は目をつぶる。

 

少なくともオーリムに侵略を仕掛けて、滅茶苦茶にするような真似はしていない。

 

自分達の命と世界そのものを天秤に掛けたとき、世界を選ぶ事が出来た。ましてや、欲望で世界を犠牲にすることもなかった。

 

それだけで、例え性根が綺麗でなかったとしても。

 

古代クリント王国よりは、万倍もマシだ。

 

「アンペルさん、リラさん、一緒に戦うのは久方ぶりだな!」

 

「ああ。 レント、すっかり腕の錆は取ったか」

 

「おう。 どんな攻撃でも弾き返してやるぜ」

 

「頼もしい。 私のような老人には、若さがまぶしいよ」

 

アンペルさんがそんな寂しいことを言う。

 

あたしも、いずれ年齢は見た目と一致しなくなる。

 

それは分かっているが。

 

別に、それはもうどうでもいい。

 

ともかく、戦いに勝つ。タオが頷く。

 

「対空戦は任せるよクリフォードさん。 飛び出してきたフィルフサが、飛行能力を持っている可能性があるからね」

 

「本当に何でもありなんだな其奴ら……」

 

「魔術は効かないのに、向こうは使い放題だからね……」

 

「それでも物理的な打撃は通じるよ。 コアを砕かないと止まらないけれど、逆に言うとコアさえ砕ければ瞬殺だって出来る!」

 

全員が構える中、タオが操作を完了。

 

空気が、一瞬で冷えた。

 

そして、壁が横に動き始める。壁そのものの防御機能は、まだ死んでいない。だが、分かる。

 

壁の向こうから、おぞましい気配が多数。

 

フィルフサだ。

 

やはり、もう壁にまで到達していたのだ。

 

五感全てを狂わせる仕掛けを、何百年も掛けて突破して来たのだろう。壁だって、いつまでもったか分からない。

 

だが、もった。

 

だから、此処からはあたし達の番だ。

 

わっと、飛び出してくる。

 

翼を持った、巨大なフィルフサだが。見るからに全身がぼろぼろだ。クリフォードさんが即応。

 

ブーメランを叩き込んで、体勢を崩させる。

 

そこにリラさんとあたしが飛ぶ。

 

リラさんが上空に躍り出るのと同時に、あたしが全力で蹴りを真下から叩き込む。翼を持ち、巨大なムシみたいな巨体が揺らぐ。

 

そこに、上空から飛燕のようにリラさんが躍りかかり、翼を叩き落とす。

 

だが、傷んでいてこの強度か。

 

今の手応え、かなり重かった。

 

水だって浴びている筈なのに。

 

セリさんの植物魔術で、蔓がフィルフサに巻き付く。そのまま、地面に叩き落とす。一斉に攻撃を叩き込んで、外殻を剥がす。蹴りを叩き込む度に、手応えが重い。かなり力は上がっているはずなのに。

 

気合とともにレントが一撃を入れて。それでコアが露出した。

 

アンペルさんが、黒い線を走らせる。

 

空間切断の固有魔術。

 

それでコアが砕ける。

 

フィルフサが、びくんと跳ねて。

 

それで動かなくなっていた。

 

呼吸を整えるパティ。すぐに次が来る。

 

わさわさと、歩行型のフィルフサが来た。かなり小型だが、此奴らは斥候だろう。一匹だって、生かして返すわけにはいかない。

 

いずれもが犬のような姿をしているが、どれも甲殻で身を覆い。目は白濁している。背中に結晶体がついているが、それが必ずしも弱点ではない。また、甲殻で体を覆っている割りに、動きはとても敏捷だ。

 

「やっぱり斥候が来るか」

 

「総力戦だ! 幻惑を越えてきているなら、大軍は出てこられない! 最悪の場合、壁を閉じて仕切り直しをする! とにかく隙を狙え!」

 

リラさんが叫ぶ。

 

躍りかかってくるフィルフサの斥候部隊。次々に出てくるが、さっきの大きい奴ほど強くはない。

 

しかし、前に戦ったフィルフサより明らかに強い。

 

これは、予想はしていたが。

 

最悪の予想が当たったと見て良かった。

 

パティが斬りかかるが、ゴルドテリオンの刃に耐え抜いたフィルフサが、押し返して来ている。

 

ずり下がりながらも、パティは不意に力を抜き。相手が前に出るのと同時に、横薙ぎに体を斬り払った。

 

見事。

 

だけれども、ばっさり体を切り裂かれていても、フィルフサはまるで平気で。パティを組み伏せようと襲いかかる。

 

そのフィルフサの背中に、タオが二刀を叩き込み。そして、パティも気合とともに貫く。

 

多分、それでコアが露出したのだ。タオの一撃が、フィルフサを仕留めていた。

 

ボオスは二刀の内、長剣を用いて戦い。要所で不意に短剣を抜いて相手に刺し貫くような一撃を入れている。

 

その動きは洗練されていて。

 

泥にまみれた足場でも、充分過ぎるくらいにやれている。

 

まだ基礎能力が足りていないが。

 

ここしばらく、みっちりレントと鍛えていただけの事はある。

 

充分だ。

 

「フィー!」

 

「!」

 

あたしが蹴り潰したフィルフサのしがいを踏み砕くようにして、大きいのが来る。猿に似ているが、爪がとんでもなく鋭く、重厚だ。

 

そいつは胸を激しく叩き鳴らすと、喇叭のような重低音で不意に鳴いた。

 

それが、強烈な倦怠感を及ぼす。

 

魔術か。

 

だが、そんなもの。

 

気合とともに、吹き飛ばす。

 

あたしが突貫。

 

来て見ろ。そう体格に自信があるらしい猿型は、立ち上がって大きく丸い腹を突き出し、盾のようにしてみせる。

 

あたしは奴の至近で踏み込むと、不意に跳び上がる。

 

ベアハッグの容量であたしを捕らえようとした大型の頭上に出ると。

 

熱魔術で空中機動。

 

頭上から、文字通り叩き潰すようにして、蹴りを叩き込み。

 

更に、それで砕けた頭の甲殻の中に、熱槍を連射して叩き込んでいた。

 

数歩後ずさりながら、全身から熱を激しく放出する猿型。コアは、砕けなかったか。泥水を蹴立てて着地。

 

真横。

 

突っ込んできたのは、小型のフィルフサだ。踏み込みつつ、腕でガードして、無理矢理突貫を弾き返す。

 

腕の皮を切り裂かれ、数歩分吹っ飛ばされるが。それでも相手も動きが止まる。動きが止まった小型を、レントが大剣で叩き潰した。

 

そのまま、全身が焼け焦げた大型が、あたしに襲いかかってくる。

 

だが、それは無駄なあがきだ。

 

雄叫びとともにあたしも突貫。

 

泥水を蹴立てながら、一撃の下に腹に前蹴りで大穴を開けてやる。内側から熱槍を乱射された大型は、装甲が脆くなっていたのだ。

 

本来だったら通じなかった攻撃だが。

 

此奴らは、水浸しの洞窟の中を、無理矢理侵攻してきていたのである。

 

自慢の装甲だって水浸し。

 

それは弱っている事を意味する。

 

魔術でコアを砕けなかったのは流石だが。それでも。これで。

 

あたしは更に体を旋回させると、回し蹴りで露出したコアを粉砕。それで、嘘のように動きを止めた大型は、仰向けに倒れ。

 

激しく周囲に水を飛び散らせていた。

 

「負傷! 回復!」

 

「了解! 前に出る!」

 

壁の先には行かないようにとカーティアさんには念押ししておいたが。カーティアさんも、きっちり戦ってくれている。

 

カーティアさんは前に出て、小型数体を相手に、まるで引かぬ勇敢な戦いぶりを見せている。

 

流石だ。

 

あたしは荷車に飛びつくと、散々増やしてきた薬を傷に塗り混む。皮を抉って肉まで行っていたが、昂奮物質が脳をドバドバぬらしているからだろう。あまり痛いとは感じない。その間に、さっさと直す。脳が正気になったら、痛みで動けなくなる可能性だって低くないのだ。

 

すぐに戦線に復帰。

 

レントが叫ぶ。

 

「此奴ら強いぞ! 三年前の奴らより!」

 

「同感! でも、数が少ない!」

 

「こ、これでですか!? 一体一体が王都近辺に出てくるネームドの魔物と同等か、それ以上ですよ!?」

 

「かなり弱体化していてそれでもこれだけ強いとなると、ひょっとすると数そのものは少ないのかも知れない。 フィルフサとしては有り難い相手だよ。 かなり戦いやすくなる筈だからね!」

 

三年前の戦いでは。

 

水害にて押し流す戦略を採ったが。

 

それでもフィルフサは、自分達を橋にしたり。

 

かなりの力業で、水を突破しようとしてきた。その時は水で相当に弱っていた事もあって、小型単独だったら苦戦するような相手ではなかった。

 

だが、此奴らは。

 

また壁の向こうから飛びだしてくる。タオがさがったので、代わりにリラさんが穴埋めする。

 

あたしは最前衛で、次々にフィルフサを蹴り潰す。

 

包囲を突破しようにも、飛行型以外は水に突っ込むだけだ。後衛に廻った面子が、そいつらはそのまま仕留める。

 

激しい戦いが続く。

 

また飛行型が出てくる。

 

あれだけは、絶対に生かせてはいけない。

 

王種がいなければ繁殖は出来ないとは思うが、それでもあいつが此方の世界がエサ場だとでも知らせようものなら、王種と将軍がまとめて跳びだしてくる可能性があるのだ。

 

クリフォードさんが、既に跳んでいた。

 

勘で察知していたのだろう。

 

唸りを上げて飛んだブーメランが、フィルフサの翼の一つを、文字通り打ち砕く。もぎ取る所まではいかなかったが、それでも大きく体勢を崩したフィルフサに対して。

 

あたしは熱魔術で爆破を起こして、跳躍。

 

雄叫びを上げながら、斜め下から襲いかかった。

 

そのまま、もう一つの翼も蹴り砕き叩き落とす。

 

クラウディアの矢が、立て続けに飛行型に突き刺さる。巨大なムシのような姿をしているそれは、三人の猛攻を受けて、墜落。墜落する途中で、アンペルさんが黒い糸を放って、装甲の一部を切り裂く。

 

水を激しく噴き上げながら、泥水に叩き込まれた飛行型にレントが飛びついて、装甲を滅多打ちにする。

 

やがてコアを見つけたらしく、コアを砕くとレントが叫び。

 

そうしたのだろう。

 

泥水に着水したフィルフサ飛行型は、静かになっていた。

 

「また来る! 大型!」

 

「足止め、任せなさい」

 

セリさんが踊り出すと、魔術を展開。水の中から。巨大な蔓が出て来て、飛び出してきた巨大なトカゲみたいなフィルフサに巻き付く。

 

大量の水を浴びながらももがくフィルフサに、あたしはそのまま襲いかかる。熱。いや、痛み。

 

口から放たれた舌が、体を抉ったのだ。

 

だが、気にしない。そのまま突貫しつつ跳躍。

 

ドロップキックで、大型の顔面を蹴り砕いていた。

 

思わずのけぞる大型に、パティが横から躍りかかり、罅が入った首を大上段から斬り下げる。

 

首が取れたが、それでもフィルフサは死なない。だが、コアを見つけたのだろう。クラウディアが速射。

 

撃ち抜いて、完全に黙らせていた。

 

手傷が多いな。

 

そう思いながら、あたしはさがる。

 

戦いは、激しいまま続く。

 

ひっきりなしに誰かが負傷し、その間を誰かが埋める。

 

壁の向こうから現れるフィルフサは、三年前ほどの絶望的な数ではなかったものの。

 

三年前とは比較にならないほど腕を上げたあたし達が全力で最初から相手をし。

 

しかも、フィルフサは洞窟の中で散々水を浴びて弱体化している筈にもかかわらず。

 

手強かった。

 

 

 

一度、タオが操作して壁を閉じる。

 

体勢を立て直すべきだと判断したからだ。これだと攻勢に出るどころではない。威力偵察としては充分。

 

そういう事情もあったが。

 

ともかく、皆の手当てをする。全員が負傷を一度以上経験。それは、支援で戦闘をしてくれていたカーティアさんも同じだった。

 

「壁はまだ生きてる。 越えられないみたいだね」

 

「だけれども、フィルフサも馬鹿じゃ無い。 多分だけれども、壁が開いて戦闘になったことは、既に王種に伝わっているとみるべきだよ」

 

「そうだね……」

 

壁から少し離れた所。

 

水に濡れない瓦礫に座って、皆で話す。

 

ついでに、食事も急いで取った。

 

壁を敵が粉砕しても、おかしくない状況だから、である。

 

「先にどうしてこんなにフィルフサが強いのか、分析しておこう。 三年前に戦った群れに比べて、個体個体がね」

 

「可能性としては三つ考えていたんだ」

 

「全部きかせてタオくん」

 

「うん」

 

クラウディアが促して、タオが説明を始める。

 

ひとつ。

 

洞窟の中で水を浴びながら、耐性をつけた。だが、これは考えにくいという。

 

「フィルフサの装甲は、どうしても弱まっているのが分かった。 やはりそれで強くなったというのは考えにくい。 もしもフィルフサが水を克服したというのなら、多分壁では無くて洞窟の中を無理矢理突破して、地上に出て来ている筈。 それが出来ないのは、水脈を刺激して水没したくなかったからだよ」

 

「確かに理にかなうな」

 

アンペルさんも、タオの言葉に同意できるようだ。

 

続けて、タオが言う。

 

「もう一つ考えたのは、数が少ないタイプのフィルフサだと言う事。 オーリムで古代クリント王国が爆発的に増やしたフィルフサは、グリムドルであったオーレン族の人達に聞いても、ほとんど性質に差が無い。 爆発的に数が増える前のフィルフサは、ひょっとしてこういう強い種族だったんじゃないのかな」

 

「いや、それはないな」

 

リラさんが否定。

 

リラさんは、そういえば白牙氏族という対フィルフサの戦いを続けて来た氏族の出身者だ。

 

爆発的に増殖する前のフィルフサとの戦闘経験もあるはずだ。

 

「今戦闘したフィルフサは、私の記憶にある爆発的に増える前のフィルフサよりも明らかに強い」

 

「……なるほど。 その可能性も低いと」

 

「ああ。 それと、オーリムで私は数百年戦い続けたが、フィルフサはその間特に強くなると言う事も、その逆に弱くなると言う事もなかった。 フィルフサという存在は、どうも最初から完成形に思える」

 

「ふむ、興味深い話ですね」

 

タオが逆にリラさんの言葉に感心しているほどだ。

 

クリフォードさんが、壁の方をちらりと見た。

 

やはり、後続が次々に来ている、と言う事なのだろう。

 

そして、壁への攻撃が激化すれば。

 

いずれ、弱っている封印では破られる。

 

元々時間はなかった。

 

それに代わりは無いのだろう。

 

「最後の説は、タオ」

 

「あまり考えたくは無かったんだけれども、フィルフサの中の上位種なんじゃないのかなあれ」

 

「上位種?」

 

「食物連鎖がフィルフサの中にあるとして、その中で捕食者側、ということ」

 

タオは言う。

 

そもそも補食側のフィルフサだったら、数が少ないのも、それぞれが強いのも納得出来ると。

 

確かにこの説を否定する根拠がない。

 

だが、セリさんもリラさんも、どうにも腑に落ちないようである。

 

「リラ=ディザイアス。 貴方はオーリム各地で戦闘を続けていたようだったけれど、そういうフィルフサとの遭遇はあった?」

 

「いや、ないな」

 

「そう。 私もオーレン族の精鋭を集めた場所での戦闘をずっと見て来たけれども、そういう補食側のフィルフサというのは見た事がないわ。 存在する可能性は否定出来ないけれども、そもそもフィルフサは「補食」するよりも「蹂躙」する生物よ」

 

それについてはあたしも知っている。

 

そもそもフィルフサは大量の生物を殺して地面に混ぜ込み、土壌を「フィルフサの母胎」にするのだ。

 

そうしてフィルフサは、生物の情報を集めた土壌から生まれ出て増える。

 

爆発的に増えるのも、土そのものを味方にしているから。

 

グリムドルで増えたのは、古代クリント王国が増やそうと色々手を尽くしたからだと言う事が今ではわかっている。

 

資源として活用しようと、身の程知らずにも考えた結果だ。

 

しかし、今戦っているフィルフサは、それとは関係無いはずだ。

 

何が違っている。

 

「うーん、そうなると、ちょっと僕にはまだ説が出せないね」

 

「そうだな。 ともかく、今は一体ずつが強い、数が少ない。 この二つを軸に、撃破する作戦を練るしかない」

 

アンペルさんがまとめると。

 

皆もそれに頷く。

 

その間もカーティアさんはじっと壁を見て、フィルフサが突破してこないか警戒してくれているようだった。

 

休憩終わり。

 

皆に傷が治ったかは、確認をしておく。大丈夫、と返答がある。

 

そうなると、やるしかないか。

 

「タオ、第二地点に発破をお願い」

 

「分かった。 やるんだね」

 

「うん。 やるしかない。 足場が悪くなるから、覚悟して」

 

タオがすっとんでいく。

 

既に足下が水でひたひただが、此処からは違う。

 

一気に、門まで敵を濁流に浸す。

 

真正面からやりあうつもりは最初から無い。水がひたひた、くらいではとめられないというのなら。

 

一気に押し流してやるまでのことだ。

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  • 真女神転生Ⅲの二次創作(真Ⅴ要素なし)
  • 流行り神二次創作
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