暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2 作:dwwyakata@2024
そして大雨を引き起こすことにも成功。
ただし、相手はただでさえ手強いフィルフサの集団。
これで、やっと戦いになる状態です。
本番はこれからなのです。
柔らかい。
ただし、それはこっちもだ。
パティはそう思いながら、足下がどうしても不安定な事を理解しつつも、大太刀を振るう。
元々泥濘に塗れた土地での戦闘は経験があるし。
色んな状況で、様々な戦闘をここ最近、ライザさん達と一緒に行って来た。
それだけで、どれだけの経験になっただろう。
戦闘経験で、ひょっとするとお父様に並んだかも知れない。
すくなくとも、大半の騎士よりはもう上だ。
突貫してくる、複数体のフィルフサ。
土砂降りの中、目を開けているのも辛いが。
それでも、とにかくやるしかない。
まずは一体目。
犬みたいな奴。
飛びかかってくるのを受け流し。さっと、上下両断に切り裂く。ゴルドテリオンを中心に、グランツオルゲンで補強しているこの大太刀。
それに、パティの固有魔術であるエンチェントで最大限強化して、やっと出来る事だ。
見るとレントさんは、素の身体能力と経験だけで、それ以上の事をやっている。
まだライザさん達には追いつけない。
それは分かっているが。
それでも、手持ちの札で、出来るだけ戦況を好転させるしかないのだ。
コアを砕かなくても、今のは無力化出来た。
即座に次。
今度は鼬に似ている。
柔軟に飛びかかってくる其奴。牙と爪、来る位置を想定。
跳躍しつつ、二度輪切りにする。
着地。三番目。
目の前に迫っているそれは、巨大な口を開けて、それでもとんでも無い速度で襲いかかってくる。
ばくんと閉じられる口。
衝撃波で、周囲の雨が散るほどだ。
噛まれていたら、文字通り体を抉り取られていただろう。
だが、着地と同時にパティは全力で後方にすり足。
残像を抉らせていた。
そして、踏み込みつつ、大太刀を切り上げる。
それで、巨大な口のフィルフサは、口をそのまま切り取られ。更に返す刀で、両断していた。
次。
四匹目。五匹目。
左右から、殆ど同時に襲いかかってくるが。
右の方が僅かに早い。
地形の問題だ。
どっちも恐ろしい程よく似ている、犬みたいで、しかし背中に大量の棘が生えているフィルフサ。
踏み込むと同時に、相手の下をくぐるようにして右を。
立て続けに来る左を、そのまま切り上げて両断する。
こんなに簡単に切り裂けるのは、この大雨のおかげだ。
ひゅうと振り上げた大太刀から、水滴が飛び散り。
しかし、大雨で即座にまた水滴が大量に刀身に付着。
だが、この刃は錆びない。
後ろで、ボオスさんが動けなくなったフィルフサに、次々とどめを刺している。また来た。
今度は虫みたいなたくさん足がある奴。
ぞっとするが、それでも立ち向かう。
最悪の場合には、虫を食べないと生き残れないこともある。
戦場で、好き嫌いなんていっていられない。
野蛮、それは違う。
単にその習慣がなかっただけ。
虫食は、クラウディアさんも平気だと言っていた。
リラさんも。
一方セリさんは苦手だそうだ。
つまり文化の違いに過ぎない。
文化が違う事は、優劣とは関係がない。人間にはそれを勘違いしている者があまりにも多すぎる。
ましてや、危地においては、食べられるものが多い方がいいに決まっている。
だから、怖れる必要も。
嫌悪することもない。
理屈でまだ恐怖する惰弱な心をねじ伏せて、パティは眼前の敵に立ち向かう。
虫みたいなフィルフサが、二本の足を上げて威嚇し。更に口から明らかにヤバイ液体を吐きかけてくるが。
その時には、パティはすり足で右に逃れ。
それに即応してきた中型の虫型は、更に次を繰り出してくる。
背中が開くと、多数の触手が、立て続けに襲ってくる。触手といってもそれぞれが極めて強靱で、抉り突き刺すような速度だ。
その全てを斬り伏せた時。
既に虫型は、上空に躍り出ていた。
フィルフサは、喰うのでは無い。
殺して、潰して。
地面に獲物を混ぜ込むのが目的。
ライザさんにそれは聞いている。
だが、そうされてたまるか。パティは大太刀を鞘に収める。きんと、鋭い音が響いていた。
上空から、押し潰しに来る虫型。
それにあわせて。パティも飛ぶ。
更に触手を飛ばしてくる虫型に対して。
パティは危険なものだけ斬り伏せて。
虫型と交錯した瞬間。抜き打ちを叩き込んでいた。
手応え、あり。
着地と同時に膝を突く。
呼吸が乱れている。コアを胴体ごと真っ二つにされた虫型が、大雨の中どうと倒れる。
「パティ、さがれ!」
「はいっ!」
レントさんにいわれる。
分かっている。
今のは、パティも無傷じゃなかった。すぐに手当てしないと、足手まといになる。今、足手まといになる事は許されない。
ライザさんの傷薬は、回復魔術を使える魔術師がお役御免になる程の効能だ。
ともかく、怪我を即座に治す。
最前線で、リラさんとレントさんが大暴れしている。タオさんも、速度を生かして主に大型を翻弄。
セリさんは支援を続行。
クラウディアさんは、連続で矢を放ち、門や此方に近付くフィルフサを片っ端から射すくめていた。
ライザさんは、ボオスさんと一緒に、土盛りみたいな拠点を作っている。
この状況だ。
家みたいなのを作っている余裕は無い、ということだろう。
あの土盛りは、案外理にかなった形だ。
人間の住処は、最初は洞窟で。
洞窟から出られるようになった後は、土を掘って、そこに土盛りを被せるものが主流だったそうである。
タオさんに聞かされた、神代より更に昔の時代。人間が住んでいた場所を調べた結果の話だそうだ。
今は屋敷だの家だのいっている状況じゃない。
安全に物資を格納し。
休憩できる場所を、確保しなければならないのだ。
あれでいい。
どんなに無様であっても。
傷を塗り混んで、水を飲む。
大雨の中だ。ともかく、全てを迅速にやらなければならない。ライザさんが、拠点から出てくる。
ボオスさんが、荷車を拠点に運び込んでいる。
「拠点完成! まずは周囲の敵を削るよ!」
「任せろっ!」
レントさんが前に出る。パティも応急処置が終わったので、その横に。ライザさんが詠唱を開始している。
つまり、あの超火力魔術をぶっ放すと言う事だ。
既に今回の戦いでも、一度使っている。つまり此処からは、薬で無理矢理魔力を回復させながら、全力で超火力魔術を使っていくことになるのだろう。
凄まじい消耗戦だ。
だがそもそも、フィルフサはそれを強要してくる敵。
それもまた、仕方が無い事なのだろう。
「ライザ、敵の密集地は今の貴方の二時方向!」
「了解! ありがと、クラウディア!」
「セリ、私を手伝ってくれ! 指定の方向の敵を、ライザの今の正面に誘導する!」
「分かったわ」
アンペルさんが、クリフォードさんと動く。爆弾を次々に投擲。フィルフサの群れに着弾。
雨に濡れて装甲が弱っている上に、此処はそもそも屋外だ。
もう爆弾を使わない理由がない。
炸裂する氷結爆弾、雷撃爆弾。それぞれが、フィルフサの装甲を、今までとは嘘のように貫いて、沈黙させる。
大型すら、直撃を受ければひとたまりもなく黙っている。
パティは、正面から来る小型を捌きながら見る。低所で、川が出来はじめている。それをフィルフサが明らかに避けている。
そうか、タオさんが地図を確認していた。クラウディアさんも。
この川がフィルフサの動きを制限することも、全て計算済か。
とんでもない人達だ。
素敵な人達だと思う。
恋愛感情で結びついていない。
互いを大事に思っていて、本当の家族みたい。
家族というものが、必ずしも絆で結びついていないこと何て。幾つもの貴族の家庭を見てきたパティは知っている。
貴族でもそうだし、庶民だってそうだ。
とても腕がいい戦士が、家庭はボロボロで。お父様に、色々とアドバイスを受けているのを見た事だってある。
戦士としてはとても頼りにしているが、もう少し家族も大事にしてやれ。
そういっていたお父様と。
家庭では別人のように立派とは無縁な戦士の姿を、パティも強く印象に残している。
そういうものだ。
血縁だの肉体関係だので、人間は絆なんて作らない。
いま、此処で一緒に戦っている皆は、多分絆と人間が呼ぶものに、一番近いものを持っている筈だ。
パティも、それの中にいるのだろうか。
いると、思いたい。
ただ、今は雑念を払い、敵を斬る。
世界の全てを、壊させないために。
敵の群れが、更に圧力を強めてくる。一方後方は、既にかなり数を減らしているらしい。
元々包囲しているところを、半ば無理矢理雨と強襲で斬り破ったのだ。一カ所を打ち砕けば、敵は陣列を変えるしかない。
更に言えば、敵の数は万を超えているといっても、恐らくはその全てが組織的に動いている訳でもない。
この辺りは、少数でもライザさんの指揮に一日の長がある。
ライザさんの詠唱が終わる。
空が、明るくなる。
土砂降りの中だというのに。
普段は魔術は一切通用しないと言う事だが。それでも、あの超火力魔術をぶっ放すと言う事は。
何か目的があるということなのだろう。
「グラン……」
思わず顔を覆う。
今まで何度も見た超火力魔術。
今回は広域制圧型だろうが、それでもあまりにも熱と光がとんでもないのは間違いない。
確か同時展開出来る熱槍の数は二万だといっていた。
それも、一つ一つが、石造りの家屋複数を全壊させることが出来る程の代物なのである。
「シャリオ!」
降り注ぐ光の滝。
炸裂する。
爆発の中で、フィルフサの群れが踊るようにして翻弄されるのが見えた。まて。フィルフサを直接狙っていない。
勿論、爆発の余波で押し潰されたり、クレバスに落ちるフィルフサはいる。
ライザさんは、フィルフサを狙っていないのか。
炸裂する超火力広範囲制圧攻撃。
それが終わった時には、膨大な粉塵が周囲を覆っていた。それを更に、クラウディアさんが、巨大な矢で空に巻き上げる。
そうか、更に雨の範囲を拡げるためか。
クラウディアさんが、無言になっている。
連射する矢の威力も大きさも、尋常じゃ無い。
あんなものを連発していたら、体力が底を突くはずだ。魔力より先に。
それでもクラウディアさんは連発して。
天候そのものを変えてしまう。
どっと、更に雨が降り始める。今の超火力攻撃を耐え抜いたフィルフサの群れに、ライザさんが、爆弾を次々に放り込み始める。
元々大型のフィルフサ達だ。
更に今ので、完全に足場が死んだ。
逃げる事も避けることも出来ない。
そのまま、ライザさんが作りあげた凶悪な爆弾で、粉々に打ち砕かれていくフィルフサの群れ。
勿論爆弾の数は無限じゃない。
リソースを惜しみなくつぎ込んでの殲滅戦。
息を呑んでしまう。
其処に、アンペルさんとセリさん、クリフォードさんも加わる。集められたフィルフサの群れが、次々に打ち砕かれていくのが見えた。
四半刻ほどで、作戦の第一段階が終わったらしい。
大雨の降る中。
周囲のフィルフサの群れは消滅。
文字通りの消滅だ。
タオさんが走り回って、まだコアが壊れていないフィルフサを、容赦なく仕留めて回っている。
手伝おうかと思ったけれども。
肩を、リラさんに掴まれていた。
「まずは手当てと体力の回復だ。 タオは余裕があるから、ああしている」
「……分かりました」
余裕は、確かに無い。
ライザさんが作った土盛りの中は思った以上に本格的だ。入口はいざという時にはバリケードにもできるようになっていて、しかも水が流れ込まないように二重三重の工夫がされている。
内部も思った以上に広い。
奧にはトイレに使えるらしいスペースもあり。
既に水が溜まった桶が置かれていた。飲むためのものではなく、傷口を洗い流すためのものだ。
すぐに手当てを始める。
同時に、ライザさんが薬を渡してくれたので、すぐに飲む。
少し前に、破傷風対策の薬を飲んだが。
それと似たようなものだろう。
大雨の中戦い続けているのだ。どんな恐ろしい病になるか、知れたものじゃない。
興奮が冷めてくると、痛みもわかってくる。
レントさんが諸肌を脱いで傷の手当てをしてもらっている。手慣れた様子で、アンペルさんが手当てしていた。
「ライザの薬、本当に痛くないなあ。 傷口にねじ込むみたいに使うのに……」
「痛みを緩和する要素もいれてあるんだけれども、そもそも痛みってのは傷の大きさを警告する体の機能だからね。 傷が完全に治れば、それは痛みももうなくなるんだよ」
「理屈は分かるがとんでもねえな」
「ああ。 自慢の弟子だ」
アンペルさんはそう言って、次々と皆の手当をしていく。
タオさんが戻って来た。
「誰か、手を貸してくれる?」
「任せろ。 俺が行く」
「実は……」
クリフォードさんとタオさんが、一緒に出ていく。
パティも胸鎧を脱ぐと、背中の傷をクラウディアさんに見せて、薬をねじ込んで貰う。
背中の傷は剣士の恥なんていうが。
あの乱戦だ。
背中に傷を受けない事なんてあり得ない。
「大丈夫、これなら薬を塗り込んでおけば問題ないわ」
「良かった。 お願いします」
「ええ」
手当てを終えると、ライザさんが荷車を漁って。大きめの干し肉を取りだし。野性的に貪っていた。
今はお上品だのいっている状況ではない。
パティも胸鎧を着直すと。
同じようにして。
食べやすいように敢えて肉つきにしてある燻製肉にかぶりつく。
なんというか、生きている味がしていた。
クリフォードは、タオがいうままに一緒に掘り返す。
この地点は分かっている。
最初にあの竜巻を起こした場所だ。
土嚢を積んでいたが、それも綺麗に消し飛んでしまっている。タオが、何かの液体を垂らすと。
ライザの建築用接着剤が。
あの難攻不落の硬化剤が。
嘘のように柔らかくなっていた。
「何度見てもとんでもねえな。 古代クリント王国の連中も、多分もうライザには及ばないんだろうな」
「恐らく。 そもそもこの水を奪う道具だって、ライザは機能を知っているだけで再現しましたからね」
「つくづくとんでもねえ。 本当に善人で良かったぜ。 ライザに近い実力を持つ極悪人が昔は跋扈していたんだろ」
「ライザが善人かはともかく……少なくともエゴはほとんどないですねライザは。 変人の域です。 それは僕も同じですけれど。 ただそれが、決定的に今までの……特に古代クリント王国の錬金術師達と違う事だと思います」
タオはそんな風に言う。
それはライザをずっと知っていたから、故の言葉なのだろう。
まあライザは文字通りの親分肌で、年上のレントも含めて周囲の人間をどんどん引っ張るタイプだったそうだ。
だったら、そういう感想が出てくるのも納得である。
「掘り出しは僕がやります。 クリフォードさんは、周囲を警戒してください」
「ああ、任せておけ」
今、視界が最悪だ。
だから、クリフォードが支援を頼まれた。
それを理解しているから、そのまま手伝う。
無言でタオが掘り出して。やがて、水を奪い取る球体を、掘り出すことに成功していた。
こんなものは、砕いてしまうべきかも知れない。
そうタオは呟く。
分かっているが、まだ戦闘で役立てる。
フィルフサの群れを潰してからだ。
ライザも、これについては良く思っていなかったようだ。ボオスも。
ボオスも、それはと。道具について聞いた時に、明らかに声を荒げていた。
事情を聞く限り納得出来るが。
確かにこんなものを悪用したら、それこそ天地がひっくり返る。
そして過去に悪用されている。
ならば、その反応も当然なのだろう。
二人で戻る。
「いずれにしても、これだと門にフィルフサは接近できないだろうな。 今後どう動くんだ、あの化け物共」
「一度再編制すると思います。 まだ将軍を仕留めていませんし」
「そういえば、指揮個体がいるんだったな。 別物に強いんだろ」
「はい。 今戦闘しているフィルフサ達は、ただでさえ強力です。 三年前に交戦した群れの将軍でさえ、万全状態だとドラゴンを倒しうる力を持っていました。 この群れの将軍は、雨に濡れていても最低でもドラゴン以上とみて良いでしょうね」
ぞっとしない話だ。
急いで土盛りに戻る。
内部ではライザが作った熱を発する道具を使って、皆を乾かしている。クリフォードも、それで温まることにした。
幸い撥水の処置もしてあるので、服は乾かさなくても大丈夫だ。
「タオ、状況は」
「敵影無しだね」
「そっか。 まあ、そうだろうね」
「手強いよ。 今度の群れ」
頷くと、ライザが手を叩く。
皆が注目する中、作戦会議が始まる。
タオがすぐに地図を拡げる。地図には、川が書き加えられていた。
「現在確認されているフィルフサの将軍は四体。 フィルフサの群れは、この範囲からは掃討済」
「これだけ安全圏は確保できたんですね」
「フィルフサの王種は替えが簡単にはきかない。 将軍も。 最低でも四体、もっと多いかも知れないけれども。 群れの規模から考えて、十体は超えないと思う将軍をまずは仕留める事が戦略上の課題になるよ」
タオが淡々と説明していく。
クリフォードも、作戦については頭に入れておかなければならない。
タオが更に説明。
将軍と呼ばれるフィルフサの統率個体を仕留めると、麾下にいるフィルフサは全て統率をなくして離散するという。
それは確かに、仕留める事でやっと戦闘がまともに出来る状態になると言えるだろう。
まだ、やるべき事がある。
「問題は、この群れを率いている王種と将軍が、ある程度知能があること。 今回の状況を見て、交戦中のフィルフサを見捨てて、さっさと戦線を下げた。 それも、雨の影響を見ながら、再突入の機会を探ってる」
「それはつまり……」
「王種と将軍が残っていれば、群れは幾らでも再建できる。 実際連中の母胎になっている地盤がどこかは分からないけれど、少なくともこの近くじゃない。 この近くは、フィルフサが繁殖するには水が多すぎるんだ」
要するに、まだフィルフサは痛手を事実上受けていないと言う事だ。
確かにそれは厄介極まりない。
リラが咳払いした。
「それで此処からはどうする」
「まずこの大雨を活用して、周辺の状況を確認します。 クラウディア、ごめん。 タオと連携して、できるだけ急いで動いてくれる」
「うん、任せておいて」
「タオは、敵の母胎がある方向を特定して」
頷くタオ。
なるほど。
今度は王種の首を取るために、敵の本拠地を落とすと言う事か。
この辺りは、そもそもフィルフサの勢力がそれほど強くないらしいとライザは門を潜った後くらいに話をしていた。
それでもこれだけヤバイ存在なのだから、どれだけオーリムの状況が危機的なのかはクリフォードにも分かる。
だからこそ、戦い抜かなければならない。
フィーが、ライザの上で鳴く。
それで、ライザは苦笑していた。
「はい、タオ、クラウディア、これ」
「ん? これは」
「む、ライザ。 甘い匂いがするが……」
「ダメですよアンペルさん。 これは嗜好品じゃなくて……」
速攻で反応するアンペル。
ライザが取りだしたのは、なんだか甘い匂いがする塊だ。恐らくは蜂蜜を使ったものだろう。
二人に渡す。
なんでも、甘さの中に栄養を閉じ込めたものらしく。一気に体力を回復する切り札的な薬だそうだ。
雨の形に加工してあるのは、持ち運びをしやすくする為らしい。
「二つずつ用意したから、今から偵察をよろしく。 それが終わったら、地図を作って休憩して」
「分かった」
「任された!」
「他の皆は交代で休憩。 あたしが見た所、雨はまだ三日は降るとみて良いから、急がなくても大丈夫だよ」
すぐにタオとクラウディアが出ていく。
そういえばタオの奴、意図的に戦闘での消耗を抑えているように見えたが。いわゆるスカウトとしての仕事があると判断しての事だったのか。
なるほどね。
流石に連携が取れている。
クリフォードは、何度巻いたか分からない舌をまた巻いていた。
断言できる。
今此処にいるのが。
人類最強の集団だ。
少なくともこの世界では。そして、恐らく、人類最良の暴力装置だろう。それも歴史上で見て、だ。
人間の世界もオーリムも滅茶苦茶にしてきた人間が、今になってこういう集団を出現させたのは。
色々な意味で、歴史の皮肉と言うしかないのかも知れない。
そうクリフォードは思うのだった。
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