暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

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2、反攻作戦開始

門からのフィルフサの進行を塞ぐ。それにはどうしたらいいのか。

 

簡単だ。

 

門周辺を縄張りにしているフィルフサの群れを滅ぼす。

 

そして門周辺に、水が豊かな地形を作る。

 

フィルフサは水が致命的に苦手だ。

 

実際問題、この周辺も水がまだあり。それをフィルフサは蹂躙できていない。或いは時間を掛けて少しずつ侵略しているのかも知れないが。

 

それでも、蹂躙して、母胎に出来ていないのも事実だった。

 

フィルフサを倒し。

 

この周辺の水を安定供給されるようにする。出来ればオーレン族と連携して、この辺りの水を守りたい。

 

だけれども、残念な事にあたしはグリムドル近辺のオーレン族と連携するのがやっとである。

 

此処の自然門は。

 

時間を掛けて封印するか。

 

或いは、誰かオーレン族を呼んで、守って貰うしかないだろう。

 

ただあれほど強力なフィルフサが跋扈していた土地だ。

 

オーレン族がいてくれればいいのだが。

 

この戦いが終わっても。

 

まだあたしは、王都から離れるつもりはない。

 

まず最初に機械を直さなければならない。

 

その後は、王都の調査もしなければならない。

 

それらが終わった後、やっとクーケン島に戻れる。

 

故郷だから戻るのではない。

 

グリムドルとの折衝とか支援とか、色々あるから戻るのだ。

 

王都は好きかと聞かれれば、べつにとしか答えは出ない。

 

住んでいる人に好きな人もたくさんいる。

 

だが王都そのものは好きには最後までなれなかった。

 

ただ、嫌いだからと言って、王都の重要性は無視出来ない。人類が魔物にいいように押されている今の時代。

 

三十万の人間を抱える王都は。

 

滅びてはまずいのだ。

 

交代で休憩をして。少し仮眠をしてから起きだす。タオとクラウディアはもう戻って来ていて。

 

地図を書き始めていた。

 

結論を聞くのは作業が終わってからだ。

 

軽く体を動かして、目を覚ます。

 

レントも既に一眠りしたようで、疲れは取れているようだ。

 

まだみんな、からだが若いから出来る事。

 

あたしは、もう肉体年齢のしがらみは捨ててしまうつもりだが。

 

それでも、みんなに無理はさせられないなと、こう言うときには思う。

 

「タオ、終わったら仮眠取っておいて」

 

「分かった。 ありがとうライザ」

 

「さてと……パティ。 物資の確認をするから、手伝って」

 

「分かりました」

 

パティがすぐに手伝ってくれる。本当は令嬢を顎で使うのは何事か、みたいなのがいてもおかしくないのだが。

 

パティは自然とあたしとの連携を嫌がらない。

 

あたしも、令嬢だの貴族だのというくだらん地位に胡座を掻かないパティには、今でも好感を持てている。

 

貴族やら王族やらが、この世界をよくしてきたなら、偉そうにする権利があるだろう。

 

この世界は、五百年前の古代クリント王国の破綻以降、悪くなる一方。

 

そんな中で血統がどうので地位にしがみついている連中に、なんの偉そうにする権利があるのか。

 

あたしのそういう冷たい怒りは。

 

少なくともパティには向かない。

 

それだけの話だ。

 

「かなり爆弾を消耗したみたいですね……」

 

「この時の為に作ってきた爆弾だよ。 それに、あくまで戦略用、制圧用の爆弾を用いただけ。 本命の接近戦用の奴は、殆ど残ってる」

 

「頼もしいです」

 

「そうだね」

 

まあ、そう言ってはみたものの。

 

ようやく対等の条件で戦える所まで場を整えるのに、これだけの消耗をしてしまったのも事実だ。

 

ここからが本番だという事を考えると、決して此方が有利とは言えない。

 

極端な話でいえば、王種も将軍も戦略級の大型爆弾で、みんな消し飛ばしてしまえれば良かったのだが。

 

そうもいかない。

 

今後は、敵をかいくぐって指揮官級のフィルフサを狙い、群れを瓦解させていくしかないだろう。

 

特にこんな状況になった以上、敵は戦い方を変えてくると見ていい。

 

少なくとも将軍級以上のフィルフサには戦術的な判断能力が存在していて。

 

三年前にも、様々な戦術を駆使して、豪雨の中必死に突破を狙って来たのだから。

 

「よし、地図出来たよ」

 

「タオ、最優先で休んで。 クラウディアも」

 

「わかった。 休憩後に、作戦会議だね」

 

「うん。 とにかく暖かくして眠って」

 

なんなら睡眠導入剤も持ってきてあるが。

 

タオもクラウディアも、相当に疲弊が激しかったのだろう。その場でこてんと落ちるようにして休んでしまった。

 

こう言うときのためにも、雨をしのげる拠点は必要なのだ。

 

後は交代で休みながら、外の状況も確認する。

 

クリフォードさんが時々手をかざして外を確認しているが。少なくとも、門にフィルフサは近付いていないし。

 

此処にも近付いていないようだった。

 

「なあライザ」

 

「どうかしましたか?」

 

「オーレン族がいるのか?」

 

「いや、なんとも。 ただこの付近は水があるので、いてもおかしくはないでしょうね」

 

腕組みして、小首を傾げるクリフォードさん。

 

どうも見られているような気がする、というのだ。

 

リラさんが、不審そうにする。

 

「私には感じ取れないが……」

 

「いや、気のせいだったら良いんだ。 敵意はなくて、ただ監視しているだけのように思えるからよ」

 

「それならなおさらオーレン族ではないだろうな。 此方の世界で人間が何をしたかを知らず、恨んでもいないオーレン族などいない。 フィルフサと同様に、此方にも敵意を向けてくるはずだ」

 

「そうか、確かにそうだな。 全く、二つの世界を無茶苦茶にするなんてな。 先祖とは言え、本当に恥ずかしい奴らだ」

 

クリフォードさんがぼやいた。

 

ともかく、交代で休みながら、休憩を入れ。

 

全員の疲れを取る。

 

タオが起きだしてきたタイミングで、休憩を終える。

 

敵が再編制を続けているだろう事もある。

 

あまり、長くもたついているわけにもいかないのだ。

 

 

 

タオとクラウディアが地図を拡げる。

 

クラウディアの音魔術。

 

更にはタオの分析。

 

この二つがあって、地図が出来る。どうやらこの辺りは、緩やかな丘陵地帯であり。近くに大きめの山脈があるという。

 

「他の場所でも見られる地形なんだけれど、雲が山脈に阻まれて、雨を豊富に降らせるんだよこう言う場所は。 もっと高度があったら、豪雪地帯になっていたかも知れないね」

 

「なるほどな。 それで水に弱いフィルフサが、進出を阻まれていたって事か」

 

「うん、そうなると思う。 ずっと西の方から常に風が吹いてきているようで、其処には砂漠があるのかも知れない」

 

「砂漠?」

 

タオが順番に説明していく。

 

砂漠という地形の上を流れる熱い風。それは、砂漠からなけなしの水分を根こそぎ奪っていくのだそうだ。

 

そんな風がぶつかるのが、此処の近くにある山岳地帯。

 

急激に冷やされた水分を含む風は、雲となって大雨を降らしていく。

 

本来は、此処で降る大雨は、砂漠で奪われた水分と。

 

更には、砂漠で巻き上げられた砂を核にしているのだろう。

 

そして、それらこそが、この辺りに豊かな自然を。

 

少なくともフィルフサが溢れる前にはもたらしていたのだろうと、タオが説明をすると。リラさんは腕組みしていた。

 

「なるほど、そのようにそれぞれの自然が相互作用しているのだな。 砂漠の存在が、むしろこの辺りの地形に緑をもたらしていたとは……」

 

「私も其処まで広い視点でものを考えた事はなかったわ」

 

セリさんも同意する。

 

咳払いすると、あたしは続きを促す。

 

今は自然学の講義ではない。

 

「ええと、それでね。 その山の方から、当然川が流れてきている。 フィルフサは少しずつその川を削ろうとでもしたのか分からないけれども、今は大きな流れになってここ、ここの辺りを流れているようだよ」

 

「川の流れを削った?」

 

「元々は、恐らくはこの辺りは多数の川が流れていて、大雨のたびに洪水が起きて、川の流れが変わってしまう。 そんな危険な場所だったんだよ。 たくさんの植物が生えていて、僕達が突入した時に見たような「植物もある」みたいな状況ではなくて、恐らくは「密林」というのが相応しい場所だったんだろうね」

 

「なるほどな。 そんな場所を、フィルフサは何百年も掛けて自分らに都合がいいように変えていったって事か」

 

レントが聞き役をしてくれるので、話が分かりやすい。

 

そして、問題は此処からだ。

 

タオが、二つの川について、示す。

 

これらの川は、フィルフサによってまとめられて、この辺りを流れていると。

 

地図の更に外側だ。

 

クラウディアの音魔術で、場所を確認したのだろう。

 

そして、タオが指さしたのは。

 

下流にある、少し小高い丘だった。

 

「フィルフサが拠点としているなら、此処に間違いないよ」

 

「理由を説明してくれるか」

 

「分かりましたリラさん。 この辺りで、不自然に川が複数分裂しているのを確認したんです。 要するに、この辺りだけフィルフサは手を入れず、「浅い川」がたくさんあるようにしているんですよ」

 

「つまり、どういうことだ」

 

タオはいう。

 

以前見たように、フィルフサは群れそのものを橋にして、この辺りを渡っているのだろうと。

 

つまり、だ。

 

この密林地帯だった場所に進出してきたフィルフサの群れは、この辺り。鉄砲水が頻繁に起きても流されない地点を拠点にしたと。

 

そして、何百年も。

 

いや、古代クリント王国関係でないとすると、下手すると千年以上。時間を掛けて、この辺りを自分達用に改造してきた、ということか。

 

ただし、それでも上手くは行っていないのだろう。

 

実際フィルフサの群れはあまり大きくない。

 

それに、この辺りはまだ水がたくさんある。

 

たまたま、この辺りに自然門を見つけたフィルフサは。

 

この辺りを開拓するよりはと、自然門の攻略に血道を上げはじめた可能性もある。

 

如何に全てを食い尽くし蹂躙し尽くす存在とは言え。

 

その話を聞いていると、あたしもちょっとだけ同情はする。

 

此奴らも生物なんだなと思うからだ。

 

「勿論、フィルフサの性質に何か知らない要素があって、それで動いている可能性はあるよ。 ライザがみたという話だけれども、王種に何か機械みたいなのがついているって話だし」

 

「うん、それは間違いない。 強い悪意も感じた」

 

「どちらにしても、居場所がわかったんなら好都合だ。 この大雨だ。 敵を少しずつ削るのも丁度良い」

 

「よし……」

 

あたしは立ち上がる。

 

全員が、あたしに注目した。

 

作戦を決めた。

 

まずは門を守る必要がある。カーティアさんに、彼女の一族を集めて、門を監視して貰う。

 

タオに一度戻って貰って、それを伝令として伝えて貰う。

 

というのも、あたし達が敵の王種をつぶしに行っている間に、別働隊が強行突破を図ってくる可能性がある。

 

カーティアさんだったら、少数の別働隊が無理矢理に突破を図ってきたとしても、充分に対応できる筈。

 

勿論あたし達も定期的に確認するが、最悪の事態には常に備える必要がある。

 

今タオが指定した地点に敵が司令部を設置したとしても。

 

それそのものを陽動に、王種が門の突破に動いてくる可能性も否定出来ないのだ。

 

「ライザ、かなり戦略的にものを考えるようになったね」

 

「まああたしもこの三年、クーケン島で色々あったしね。 本当に古老とかの頭が硬い連中がもうさあ……! 出来る事が増えて、それで島の為にしている事が増えて。 発言権が大きくなると、余計に感情だけで動いている人達がどれだけ愚かだかよく分かってきてさあもう!」

 

「色々すまんな。 俺がクーケン島に戻ったら、その辺りは俺が担当する。 お前はとにかく、錬金術で皆を豊かに平和を作る事だけを考えてくれ」

 

ボオスがそんな風に言ってくれると助かるが。

 

ともかくだ。

 

準備は必要になる。

 

「クラウディア、戦地になりそうな場所の雨はどうだった?」

 

「まだ土砂降りは続くと思う」

 

「そうなると……敵は雨に濡れたままじゃなくて、洞窟か何かに引きこもっている可能性も否定出来ないね」

 

「いずれにしても現地を見てみないと、だよ」

 

タオに頷くと、あたしは順番に指示。

 

まずタオに、伝令に出て貰う。

 

タオが戻る前に、移動。この拠点から、まっすぐ敵地を目指す。その過程でクラウディアには音魔術を展開して貰い、敵がどのように動いているか、展開しているかを確認して貰う。

 

再攻撃のために密集体型をとるか。

 

それともあたし達を手強いと認識して、攻撃して来たところを包囲する体勢を取るか。

 

いずれにしても大雨という致命的な状況で、どうフィルフサが動くにしても、此方としては対処は可能な筈だ。

 

一瞬でやられるような事にはならないだろう。

 

タオが戻ってくる前に、まずは門付近へと移動する。完全に湖になっている。元々が、こう言う土地だった。

 

それを聞くと、複雑な気分だ。

 

この土地に生きてきた生物は、ずっと大水に流され、復興。それを続けて来たのだろう。

 

安定はしていない。

 

だが、ダイナミックな生き方だ。

 

どんな強い生物でも、植物でも、死ぬときは一瞬で流されてしまう。

 

良い条件の場所を独占していた筈の大木が、それこそ一晩で下流に流され、無惨な姿を晒す事になる。

 

水中での争いも熾烈なはずだ。

 

潮の流れが激しい場所は、良い漁場になると漁師の人達には、あたしもクーケン島で聞いている。

 

川とて同様。

 

雨の時は川の中は生きるので精一杯だろうが。

 

そんな激しい環境で揉まれた生物たちは、恐らく普段から苛烈な生存競争をしていて。それでも、生き残るのは運が良い奴だと言う事だ。

 

タオが戻ってくる。

 

「ライザ! カーティアさんが、周辺の腕利きを集めて、迎撃の態勢を取ってくれるって!」

 

「よし。 みんな、行くよ! 敵司令部の状況を把握して、戦線を押し上げる!」

 

「応っ!」

 

此処からだ。

 

将軍級になると、総力戦になる。最低でも四体の将軍を仕留めないと、王種と戦うどころじゃあない。

 

もしも王種の周りに将軍級が固まっていた場合、何とかして各個撃破する事を考えなければいけなくなる。

 

敵もバカじゃないのだ。

 

雨の中、泥を蹴立てて走る。

 

皆、転んだりはしないが。

 

それでも最前列のレントが、時々気を付けろと声を張り上げる。

 

グリーブを履いているから、ちょっとやそっとの石だの根だので足を傷つける事はないが。

 

危ないものが泥の中にある場合があるから。

 

それを警告してくれるのだ。

 

「右、少し大きい岩!」

 

「回避する!」

 

「陣列は出来るだけ崩さないで! クラウディア、どう!?」

 

「今の所敵の気配なし!」

 

そうなると、雨の中此方を迎え撃つ構えではないか。

 

下流側。この場合は、必然的に風下から近付く。

 

そうすることで、敵に接近を察知させない。この状況だと、少なくとも生物的な感知方法だと、風下からの接近に敵は気付けない。

 

だがフィルフサは魔術も使う。

 

そういう連中が、接近に気付いてくる可能性もある。

 

油断は禁物だ。

 

顔を上げるクリフォードさん。

 

「止まれ!」

 

「!」

 

「まずいぞ、鉄砲水だ!」

 

「回避! 後退!」

 

一斉に、今度はさがる。まさかとは思うが。下流からの接近を察知して、鉄砲水で此方を狙って来たのか。

 

水が苦手なフィルフサが、水を使った戦術を使ってくるというのか。

 

全力でさがる。最悪、荷車を放棄するしかない。だが、クリフォードさんが早々に気付いた事。

 

更にはこの辺りが、ずっと拡がる湿地帯であることが幸いする。

 

水の勢いが想定ほどではなく、どっと来るが。それでも、全てを押し流していく程でもない。

 

ただ、それでも巻き込まれたら死ぬ。

 

「急いで!」

 

あたしが急かす。

 

リラさんが、アンペルさんの腕を掴むと、ひょいっと飛んでいた。

 

セリさんが荷車に飛び乗り、植物の壁を背後に作る。荷車を、レントとあたしが、フルパワーで引いて走る。

 

土砂降りに誘発された鉄砲水が、至近を掠めていく。

 

凄まじい勢いで水を浴びて、閉口するしか無い。

 

全力で走り戻り。

 

そして、やっと人心地つくことが出来ていた。

 

三年前。

 

鉄砲水で「蝕みの女王」率いるフィルフサの群れを、散々にあたし達は翻弄し壊滅させた。

 

そして今。

 

クリフォードさんがいなければ。恐らくあたし達は、逆に鉄砲水で壊滅させられていた。

 

呼吸を整えながら、点呼。

 

全員無事だが、強烈に消耗している。

 

レントが、地面を蹴りつけていた。まあ足首くらいまで水没しているが。

 

「くそっ! もう少しで全滅する所だった!」

 

「まさか下流から接近して来る事まで見越して、鉄砲水を起こしてくるなんて……」

 

「相手は本当にフィルフサか? 将軍級は確かに知能を持っている奴もいたが、こんなのはそれこそ……」

 

「人間の戦い方そのものだね」

 

リラさんに、あたしがぼやく。

 

悪意を感じたのは、どうやら間違いない。

 

フィルフサという存在の生態は既に確認済みだ。

 

取り込んだ生物の特徴をどんどん追加して強くなって行く。

 

だけれども、今まで交戦したフィルフサは。それぞれの個体が、特徴的な生物の性能を取り入れていた。

 

それが強さにつながるかはともかく、多数の生物の特徴を一辺に取り込むのは、生態的に難しいのだろうとあたしは分析する。

 

そうなると、これは。

 

恐らくあの機械による後付の悪意。

 

エンシェントドラゴン、西さんの言葉を思い出す。

 

古代クリント王国なんて模倣をした連中に過ぎない。真の邪悪は、神代の一派だと。

 

フィルフサが生物兵器かも知れないと言う仮説は既に出した。

 

だが、だとするとなんだ今度の王種は。

 

対人用の戦術でも学ばせた兵器だというのか。

 

だとしたら、なんのためにそんなものを。

 

そこまで考えて、ぞくりとする。

 

まさか。

 

対人間用に、最初からフィルフサは調整されていたのではないのか。その神代の一派が、邪魔な人間を土地ごと平らにして。その後を自分達で好き勝手にするために。

 

オーレン族に対しても、同じ事をしてもおかしくない。

 

ずっと長い間オーレン族とフィルフサは戦い続けて来たと言うが。

 

それがそもそも、最初から仕組まれていたのだとすると。

 

ぎりと、歯を噛みしめる。

 

その神代の一派とやらが、どこにいるかは知らないが。いずれにしても、古代クリント王国の生き残り同様。

 

見つけたら、生まれてきたことを後悔するくらいの目には合わせてやる。

 

文字通り全てに対する冒涜、強欲の極限がもたらしたエゴの怪物。

 

許せる存在ではない。

 

ただ、まだフィルフサが生物兵器と確信できた訳ではない。ともかく、作戦を練り直す必要がある。

 

「クラウディア、鉄砲水の被害範囲。 それとタオ、同じ戦術を敵が使うのに必要な時間、割り出せる」

 

「すぐに探るわ」

 

「計算する」

 

二人に知能活動を任せて、あたしはもう少しさがって、一度様子を窺う。

 

今みたいな策、幾ら自分達の体を斬り捨てるようにして動くフィルフサでも、何度も出来ない筈だ。

 

だが、計画的に今の攻撃をして来たとしたら、雑魚を使い捨てにしているとも思えない。

 

まさか、水を逆に使われるとは思わなかったが。

 

ともかく今は、一秒でも早く立ち直って。王種に肉薄する術を考えなければならなかった。




驚くべき事に嚢砂の計を使ってくるフィルフサ。

やはり今回の相手は一筋縄ではいきません。

激しいつばぜり合いが続く中。

ライザは泥にまみれながらも、それでも決戦に心を奮い立たせます。

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